「ご助言」の意味と使い方は?
「ご助言」という言葉はビジネスの場面ではよく聞く言葉です。仕事などで困ったとき、分からないことがあったときに、上司や取引先などに助けやアドバイスを求める場面で使います。
ただし、「ご助言」というのは使う場面や相手によっては少し失礼に感じられる場合もあり、使い方がむずかしい言葉です。「ご助言」を適切に使えるように、例文や類義語なども併せて見ていきましょう。
「ご助言」とはどういう敬語?
「ご助言」とは「助言」の敬語です。「助言」=助けになるような言葉、アドバイス、励まし、などの意味で使われます。「助言」を相手に対する尊敬語にしたのが「ご助言」です。
敬語ですので、相手の助言が欲しい場合に「助けていただけますか?」「アドバイスやヒントをいただけますか?」、あるいは助言をもらったときに「助けていただいてありがとうございます」というような意味で使われます。
「ご助言」は使い方が難しい場合も
「ご助言」という言葉は使うのに難しい場面もあります。「ご助言」は正しい敬語なのですが、使う場面によっては失礼に思われてしまう場合もあります。きちんとした敬語である故に、定型文としては正しくとも、実際のビジネスシーンでは適切ではないことも出てきます。どうやって使い分ければいいのでしょうか。
「ご助言」をどう使うのか例文を見てみよう
「ご助言」という単語だけを知っていても、実際に使う場面になるとどう使えばいいのか困ることもあります。「ご助言」の前後にふさわしい言葉を選ぶのが大切です。「ご助言」はどういった言い回しで使うのかいくつか例文を見てみましょう。
ありがとうございます
・ご助言ありがとうございます
「助言、アドバイスをくださってありがとうございます」という意味です。
相手によっては失礼になることも
気をつけたいのは、「助言」というのはあくまで「助けになる言葉」「アドバイス」という意味だということです。
例えば、会社の上司が仕事に対してアドバイスをくれたならば、それは「助言」と言えます。しかしアドバイスではなく、指導や忠告であるとしたらどうでしょう。仕事の指導をしたのに「アドバイスありがとうございます」と返されると、上司の指導や忠告をアドバイス、すなわち助言程度にしか考えていないと捉えられてしまうことでしょう。
また、取引先や顧客からのアドバイスは、「助言」ではなく「意見」や「要望」、あるいは「提案」などである場合が多々あります。
助言と意見要望の違い
取引先や顧客がこうしてほしいと示した意見や要望に対して、「ご助言ありがとうございます」というのは、相手の発言を軽視しているように取られる場合もあります。その場合は「ご助言」ではなく、「ご意見」「ご要望」などを使うのがふさわしいでしょう。
例えば顧客に対してなら、ご助言ではなく「貴重なご意見ありがとうございます」という言い方が適切なことがあります。また取引先から意見を受けた場合は、「ご要望いただいた件は早急に対応いたします」などの言い回しが使われます。「ご意見」や「ご要望」を使うことで、相手の発言をしっかり問題提起として受け止めたことを示すことができます。
仰ぐ(あおぐ)
「ご助言」に続く言葉としては、「仰ぐ(あおぐ)」があります。
・ご助言を仰ぐ。
・ご助言を仰ぎたく存じ上げます。
というように使います。
「仰ぐ」は敬語として正しい言い方であり、ビジネスの例文でもよく出てくる表現です。しかし、実際に使う場面となると、少し違和感があると感じられる人も多いのではないでしょうか。「仰ぐ」とうのはかなり相手のことを敬った表現ですので、通常の社内業務で使うのではなく、恩師やお客様、取引先などの文書で使うのが適切な場合が多いでしょう。
賜りたく(たまわりたく)
また、ご助言に続く言葉として「賜りたく(たまわりたく)」という言い方もあります。
・ご助言賜りたく・・・
・ご助言を承りたく存じ上げます。
というように使います。
「賜りたく(たまわりたく)」というのもビジネス文書の例文でよく見かける言葉です。これも敬語として間違いはないのですが、さらに敬語表現としてはかしこまっており、やや古語的な言い回しとも言えます。
取引先などに「どうか教えてください」と文書でお願いするには適していることが多いでしょう。ただし自社の上司に対しては、少し大袈裟な表現になる場合もあります。
頂ければ(いただければ)
社内で上司に対して「ご助言」を使う場合は「ご助言いただければ」というのが適切でしょう。「助言」を「いただければ」助かります、という意味です。
「ご助言いただければ」に続く言葉としては、さまざまな言い方があります。
・ご助言いただければ幸いです。
・ご助言いただければ助かります。
・ご助言お願いいたします。
・どうかご助言ください。
などです。
前後の言葉を選ぶことでニュアンスを伝えよう
「ご助言」は前後につける言葉によって、ニュアンスや丁寧さがかなり変わってくる言葉です。相手との関係性や仕事の内容によってどの言葉を選ぶのが適切かは変わってきます。シチュエーションによって上手く使い分けましょう。
「ご助言」の類語は
「ご助言」は相手との距離感や助言の内容によって、使うのが難しい場面もあることをご紹介しました。それでは、「ご助言」ではなく他の言葉を使ったほうが適切な場合もあるのでしょうか。「ご助言」の類義語をいくつか例にご紹介します。
ご教示
「ご教示願います」「ご教示いただければ幸いです」というように使います。「ご教示」は「ご助言」よりもさらにかしこまった言い方といえますので、大事な取引先や、直属ではない上の上司に指示を仰ぐときなどには「ご教示」を使うのがよいでしょう。
「ご教示」と「ご教授」どっちが正しい?
「ご教示(ごきょうじ)」と「ご教授(ごきょうじゅ)」、口に出すと似たような発音なので混同しやすい言葉です。「ご教授」は「教授」の敬語で、学問や研究などで教えを乞いたいときに使われています。ビジネスの場面では学問などには当てはまらないので、「ご教示」を使うのが正解です。
ご指導
「ご指導ください」「ご指導よろしくお願いいたします」のように使います。「ご指導」は基本的に文章などで使われる場合が多く、話し言葉としての敬語というより書き言葉としてふさわしいと言えます。
日常的に会話をしている相手に、「ご指導」と使うのは過剰になる場合もあります。また、お礼の文章では「ご指導」がふさわしくても、実際に口頭で話すときには違和感を感じる場合もあります。
また、よく聞くフレーズとして「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」という言葉があります。これはいわゆる手紙やお礼状などの定型文、挨拶文として使われることが多い言葉です。取引先への年賀状やお礼状などに使うのには適していますが、話し言葉としては少し大袈裟すぎるので注意しましょう。
勉強になりました
「ご助言ありがとうございます」などのさらにくだけた言い方としては、「勉強になります」「勉強になりました」という言葉があります。実際に日常業務で使うのはこちらという方も多いのではないでしょうか。
ただし、「勉強になりました」は会社の先輩や、取引先の親しい担当者などに使うのには許される場合もあるという、非常にフランクな言葉です。敬語ではなく、ですます体で言っているだけですので、かなりくだけた言い方であることを忘れないようにしましょう。
教えてください
これまでご紹介してきた言葉はメールや文書などでの書き言葉が主でした。実際に仕事をしている場面では、「教えてください」など、さらにくだけた言い方が適している場合も多くあります。
取引先の業務内容に深く関わる仕事をしている場合、さきほどの「勉強」と合わせて、「勉強不足で申し訳ありませんが、教えて頂けますか」などと率直にお願いするのが効果的な場合もあります。
あるいは自社でいつも仕事を教えてもらっている先輩などには、「すみませんが教えてください」など、かなりくだけたカジュアルな言い方をするのがふさわしい場面もあります。あえてくだけた言い方をすることで、率直さ、素直さが表現できる場合もあるでしょう。
「ご助言」は慇懃無礼?
相手との関係性によっては、過剰に敬語を使うと「慇懃無礼」だと取られることもあります。普段よく会話している取引先などに助言を受けた場合、「ご助言ありがとうございます」「ご教示いただきありがとうございます」と使うのは敬語が過剰と取られる場合もあります。
相手との関係性によっては、「たいへん勉強になりました。ありがとうございます」などと話し言葉を使うのが適切な時もあるでしょう。
敬語を使い分けて関係性アップ
相手との関係性、親しさ、また口頭なのか文書なのかなどの違いによって、ふさわしい言葉は変わってきます。正しい敬語表現だから間違いがないということではありませんし、くだけた言い方だから一概にふさわしくないというものでもありません。
そのあたりは非常に難しいところです。その場にふさわしい言葉を選ぶには、社会人としての経験を積んでいくことも大切になってくるでしょう。判断に迷ったときは先輩や上司のやり方を参考にし、助言を仰ぎましょう。相手やその場に合った言い方を選ぶことで、相手の意見を引き出しやすくし、関係性をさらにアップさせることができるでしょう。
「ご助言」を使いこなして自分に生かそう
今回は、「ご助言」の意味と使い方についてご紹介しました。例文などでご説明しましたが、類義語や前後につける言葉などによって、微妙にニュアンスが変わってくる言葉です。場面によってこれは適切かそうでないか、判断が難しいと感じられた方も多いのではないでしょうか。
書き言葉の敬語表現にはある程度の定型文がありますが、話し言葉としての敬語にはシチュエーションによって適切な言葉が異なる場合も多くあります。相手との距離感や仕事の内容によって、上手く敬語を使い分けていきましょう。
ふさわしくない言葉使いは、結果として相手の助言を引き出せない場合もあります。仕事をしていく上で困ったとき、助けが欲しいとき、そんなときに「ご助言」やその類義語ををうまく使いわけて、さまざまな意見をもらいましょう。
使い分けが難しい場面もありますが、ふさわしい言葉を選べば、その助言は、自分自身への役に立つ言葉になるでしょう。