「よろしかったでしょうか」の意味
「よろしかったでしょうか」の意味についてですが、まず「よろしかったでしょうか」という言葉の意味はその文字が示すとおりに「それでよろしいですか」という、相手に特定の物事についての許可を求める際に使われます。
「○○してもよろしかったでしょうか」や「こちらでよろしかったでしょうか」と言う場合に使われる言葉であるため、さまざまな場面で「特定の物事について、相手に何らかの許容を訴え掛ける際に使われる疑問形式の言葉」として認められます。
「よろしかったでしょうか」の使い方
先でもご紹介しましたように、「よろしかったでしょうか」と言う場合は「相手に何らかの物事についての許容・許可を求める際に使われる言葉」となるため、それ以前に相手との特定の関係があることが見受けられます。
・補給させていただくガソリンの種類はこちらでよろしかったでしょうか。
・お荷物はこちらでよろしかったでしょうか。
・ご用件はこの内容でよろしかったでしょうか。
このように、話者と相手との何らかの関係がその会話以前にあったことがうかがわれ、それについて話者が相手に許容・許可を求める姿勢をもって「よろしかったでしょうか」という言葉が使われます。
初対面での「よろしかったでしょうか」
「よろしかったでしょうか」という言葉に含まれる文法上の働きに注目する場合、まず「よろしかった」という言葉には「過去形で示される意味内容」が見受けられます。つまり、その相手と話者との間で交わされた連絡内容に、「それでよいのかどうか」についての選択肢が前もってあったことがうかがわれます。
上記を踏まえた上で、話者が改めて「こちらでよろしかったでしょうか」と尋ねる姿勢が見受けられ、その相手が「やはりそれでよい」と言う対応に「よろしかった」という言葉への返答が認められることになります。
何度か関係を持つ上で使う言葉
これも先述の引き続きの内容となりますが、「よろしかったでしょうか」という言葉に過去形のニュアンスが含まれることによって、その話者と相手との関係には「何度かそれまでに接点があり、その接点においてそれなりの疑問形式の問答が取り交わされていたこと」が明らかになります。
つまり、初対面でいきなり「よろしかったでしょうか」と言うのは常識的に見て不自然であり、それまでに「何がよくて何がよくないか」という受け交わしがないのに関わらず、「よろしかった」と言うのは、これは話者側から相手に対するやや強制的な主張(疑問形式による主張)がうかがわれることになります。
ビジネスシーンでの「よろしかったでしょうか」
先述でご紹介しました「よろしかったでしょうか」の意味合いを踏まえ、ビジネスシーンでは「よろしかったでしょうか」という言葉はほとんど使われないのが原則としてあります。しかし一般的には多くの場面でこの「よろしかったでしょうか」が聞かれる場合があり、特に受付での確認事項によって「よろしかったでしょうか」が多く使われます。
常識的に見て「よろしかったでしょうか」という言葉は、先述のように「話者側の強制的な疑問形式の主張」や「それまでに関係を持っていないで、その上で何についてよろしかったのかがわからないままの話者と相手との関係」がうかがわれるため、一言で言えば「変な敬語表現」として認められることになります。
「よろしかったでしょうか」の敬語
「よろしかったでしょうか」という言葉はその字面を見ればわかるように、「よい」という言葉と接尾辞にある「でしょうか」という言葉によって、すでに丁寧語表現による敬語表現として認められます。
文体としては敬語表現として立派に認められますが、しかしその文法的な言葉・表現の使い方によっては、「よろしかった」という過去形での疑問表現がネックとなり、原則的には正しくない敬語表現として認められます。
「よろしかったでしょうか」は正しい日本語なのか
先述でもご紹介しましたように、「よろしかったでしょうか」という日本語は敬語表現としてと言うよりも、対話における文法として間違いであることがわかります。「よろしかった」という表現がすでに過去形であることにより、話者と相手との関係がそれまでに必ずあったことがまず想定され、その上で交わされる確認の姿勢が見受けられます。
受付などでいきなり初対面の人に対して「よろしかったでしょうか」と投げ掛けることが間違いとなります。それまでに話者と相手とが何らかの関係性を持っており、一度確認事項についての「よい・よくない」の疑問が交わされた後である場合は、「よろしかったでしょうか」という表現は適切な敬語表現として認められます。
間違い
先述でご紹介しました「よろしかったでしょうか」の意味合い・用法を把握する上で、とりあえず「よろしかったでしょうか」という表現は「日本語として正しくない敬語表現」として理解してよいでしょう。
それまでの話者とその相手との関係性に焦点を当てる必要があり、「よろしかったでしょうか」という言葉が使われるまでの話者と相手の関係が何らかの形で接点を持っており、そこで「特定の確認事項についての是非が問われた形跡がある場合」では「よろしかったでしょうか」という表現は使うことができます。
過去形の表現に問題あり
先述の引き続きとなりますが、「よろしかったでしょうか」という言葉が「間違った表現」とされる理由はまずその「過去形による疑問表現」にあり、「過去形で疑問表現が行なわれている以上、その話者と相手の関係はそれまでに必ず接点を持っていること」が前提とされます。
つまり、受付などでいきなり初対面の人に向けて「よろしかったでしょうか」と言うことが間違った表現となるため、それまでに話者とその相手が何らかの接点を持ち合い、そこで「確認事項についての問答があった場合」を想定する上では、「よろしかったでしょうか」という表現は適切な敬語表現となります。
相手に対して断定的な意味合いになる
先述の「よろしかったでしょうか」という言葉の意味合いに加え、さらに「よろしかったでしょうか」という言葉にはやや話者側からの「断定的な疑問形式による表現」がうかがわれます。
「よろしかった」と言う以上は、一度特定の件についてその相手が「よい」と認めたことを基準にしており、その相手による許容を改めて確認する姿勢になっています。
これも初対面の人にいきなり「よろしかったでしょうか」と尋ねる際に疑問視される「非常識な敬語表現」となり、この「断定的な疑問形式による表現」をもって「よろしかったでしょうか」と言うのはどんな場面でもとりあえず避けることが勧められます。
「よろしかったでしょうか」の正しい使い方
さて、「よろしかったでしょうか」の正しい使い方についてですが、とにかく「よろしかったでしょうか」と言う以上は、その話者と相手との関係が「以前から続いているもの」でなければならず、そうした関係を作っておくことが大前提となります。
・(以前に一度、その資料を話者と相手の間で確認し合った後で)こちらの資料でよろしかったでしょうか。
・(以前に一度、車の車種について話者と相手の間で確認し合った後で)こちらの車種の登録でよろしかったでしょうか。
・(以前に一度、相手の荷物を話者と相手の間で確認し合った後で)こちらのお荷物でよろしいでしょうか。
このように、話者と相手との関係がそれ以前にあり、そこで確認事項についての話し合いがあった後でなら「よろしかったでしょうか」という表現は適切となります。
メール
電子メールでのやり取りで「よろしかったでしょうか」が使われる場合も、先述の「以前に話者とその相手の関係がまずあり、そこで確認事項についての問答があったこと」が前提になります。つまり、この前提があればメールでも「よろしかったでしょうか」が普通に使われることになります。
・(以前に一度、使うべき資料を話者と相手の間で確認し合った後で)こちらの資料でよろしかったでしょうか。
・(以前に一度、会議の開催日程について話者と相手の間で確認し合った後で)次回の会議は9月5日の開催でよろしかったでしょうか。
・(以前に一度、事業プランの見直しを話者と相手の間で確認し合った後で)事業プランはAプランを採用する形でよろしかったでしょうか。
「よろしかったでしょうか」の返事
「よろしかったでしょうか」の返事の仕方についてですが、先述でご紹介しました「前提がきちんとあった上で、特定の物事について確認される場合」であれば、その確認事項に改めて「よい・よくない」をそのまま伝える姿勢でかまいません。
・それでよろしくお願いします。
・はい、そのとおりです。
・こちらでけっこうです。
基本的に「一度確認し合った内容の改めての確認事項」となるため、受け手はその改めて聞かれる確認事項にそのまま答える形となります。
「よろしかったでしょうか」の言い換え表現
「よろしかったでしょうか」という表現は話者と相手の事前の関係性が認められない以上は使えない表現となるため、あらかじめ「別の言い換え表現」をもって「よろしかったでしょうか」と同じ意味合いになるボキャブラリを増やしておくことは大切です。
・よろしいですか
・かまいませんか
・可能でしょうか
・大丈夫ですか
一般的に「よろしかったでしょうか」の代わりに使われる言葉としては上記があげられますが、この中でも特に使われる言葉は「よろしいですか」となるでしょう。シンプルに「これでいいですか」という旨をそのまま伝えればそれでOKです。
よろしいですか
先述でご紹介しましたように、「よろしかったでしょうか」の代わりに使える言葉としては「よろしいですか」が最も適切で、なお相手にとってもわかりやすい疑問表現となります。単純に「特定の確認事項についてよいか・よくないか」をそのまま尋ねる姿勢になるため、余計な表現や疑問を挟まずに相手に必要な意見提示をすることができます。
かまいませんか
「かまいませんか」という表現は、多くの場合ビジネスシーンではあまり使われません。「かまいませんか」という表現にある「構(かま)い」という言葉は「かまってあげる」という「構う」の本意につながる表現となるため、その点で「話者が相手よりも上位に立つ傾向」が場合によっては認められます。
大丈夫でしょうか
「大丈夫でしょうか・大丈夫ですか」という表現も、ビジネスシーンではほとんど使われることはありません。
「大丈夫」という言葉は敬語表現として使うにはどうしても馴れ馴れしい側面を持ち合わせるため、「大丈夫でしょうか・大丈夫ですか」が使われる場面は「かまいませんか」と同じく、それなりの信頼関係に結ばれた仲で使われるのが一般的となります。
「よろしかったでしょうか」の方言
「よろしかったでしょうか」の方言についてのご紹介ですが、この「よろしかったでしょうか」という言い方は「北海道の方言から来た」や「名古屋地方でよく使われている」といった、日常ではあまり聞き慣れない説がよく認められています。
「よろしかった」という表現そのものが敬語表現(特に標準語による敬語表現)では珍しい表現として認められ、その上で本州から四国・九州地方に掛けては従来ほとんど使われない文法による表現として見受けられます。
名古屋
「よろしかったでしょうか」という言葉・表現は、「昔から名古屋地方(その周辺地方)でよく使われていた言葉である」という説があり、これは特に商売において(サービス業において)接客で使われてきた言葉として認められます。
名古屋地方の方言には他の地方にはない独特の表現が散見され、「ほかった(捨てた)」や「吊って(あげて)」、「しずに(せずに)」、「そうだて(そうだよ・そうよ)」などといった中には「過去形を基準にした言い回し」がよく見掛けられます。
「ほかった」や「そうだて」という言葉にしても、「捨てた」や「そうだった」という表現が前提にあり、その上で現在進行形の表現として相手にそのまま伝えられます。日常的な方言に使用法によって、「よろしかった」という過去形の疑問表現が生まれ、それがそのまま接客用語になったという説があります。
北海道
北海道では主に「○○でした」や「○○だった」という過去形の言葉がそのまま現在進行形の言葉・表現として見られる傾向があります。この場合も名古屋の方言と同じく、時系列において過去形の表現をもって現在進行形の表現として上手く使い回すという「地方特有の表現法」により、特に「でした」という表現が「丁寧な表現」に認められます。
「よろしいですか」という表現も「よろしかったですか・よろしかったしょうか」という丁寧な「過去形の表現」として捉えられ、特にサービス業などでなされる接客用語としてそのまま定着したという経過が見られます。
「よろしかったでしょうか」の英語表記と意味
「よろしかったでしょうか」という言葉を英語に直す場合、それぞれの英単語の意味合いや用法に配慮した上で以下のようにピックアップされます。
・was it good?(よろしかったでしょうか、よろしかったですか)
・is it good(よかったですか、よろしかったでしょうか)
・were you allowed?(許されますか、よろしかったでしょうか)
・did you understand?(理解されましたか、よろしかったでしょうか)
・did you acknowledge it?(了承されましたか、よろしかったでしょうか)
・Have it been accepted(容赦されましたか、容認されましたか、よろしかったでしょうか)
・will you forgive me?(許容されますか、よろしかったでしょうか)
「よろしかったでしょうか」の英語表現と意味(1)
先でご紹介しました「よろしかったでしょうか」の英語表記を参考にして、「よろしかったでしょうか」の意味合いを含めた英語の例文をいくつかご紹介します。
・Would you like your luggage here?
「お荷物はこちらでよろしかったでしょうか。」
・Was the reference material OK here?
「参考資料はこちらでよろしかったでしょうか。」
・Was the meeting place good at this venue?
「会議場はこちらでよろしかったでしょうか。」
「よろしかったでしょうか」の英語表現と意味(2)
先述しました「よろしかったでしょうか」の英語表現に引き続き、さらに具体的な「よろしかったでしょうか」の例文をご紹介します。
・The reference material of the business plan we sent you the other day is currently in my hand Is it good in this material?
「先日にお送り下さった事業プランの参考資料は、現在わたしの手許にありますこちらの資料でよろしかったでしょうか。」
・Regarding the type of vehicle we received on Thursday, was the car type you purchased was good with this car model?
「木曜日に承りました車種につきまして、ご購入される車種はこちらでよろしかったでしょうか。」
「よろしかったでしょうか」の英語表現と意味(3)
先述の具体的な「よろしかったでしょうか」の英語表現に引き続き、今度はいろいろな場面で使われる「よろしかったでしょうか」の例文をご紹介します。
・The expression “Was it good?” Is not a proper grammar because it is a question of past tense.
「「よろしかったでしょうか」という表現は、過去形の疑問表現となるため、正しい文法ではありません。」
・When saying “Was it good?”, It is assumed that the relationship between the speaker and the party is in “before”.
「「よろしかったでしょうか」と言う場合は、話者と相手の関係が「以前にあること」が前提となります。」
「よろしかったでしょうか」を正しく使いましょう
いかがでしたか。今回は「よろしかったでしょうか」は正しい日本語なのか・敬語表現と題して、「よろしかったでしょうか」という言葉の正確な意味合いや用法のご紹介をはじめ、いろいろな場面で使われる「よろしかったでしょうか」の用例についてご紹介しました。
「よろしかったでしょうか」という表現は文法的に言えば「過去形の疑問表現」となるため、その話者と聞き手が「以前にそれなりの関係性を持っていたこと」がまず必要であり、その上で「特定の事項について一度でも確認し合っていた」という経過が必要になります。
上記を踏まえた上で、受付などでいきなり初対面の人に対して「よろしかったでしょうか」と尋ねるのは強制的な疑問表現となる上で、文法的にもおかしな表現となり、特にビジネスシーンでは原則的に使用しない言葉となります。