「行かれる」の敬語・方言・例文・可能の意味があるのか|尊敬語

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「行かれる」の敬語

日常生活で「行かれる」という表現は気軽に使われています。「行かれる」にはいくつかの異なる使い方があります。まずは、「行かれる」の「尊敬語」からご紹介します。

尊敬語

「行かれる」を「尊敬語」として使うときは、相手を敬う表現をするときです。相手の動作を高める表現を使うことで、その人自身を敬うことができます。ですが「行かれる」は敬語としての敬意は低いため、軽めの尊敬表現となります。動詞「行く」の未然形に助動詞「れる」を付けます。

「行かれる」とは可能の意味はあるのか

「行かれる」は「尊敬語」以外に「可能」の意味で使うことができます。

可能

「行かれる」は「行くことができる」という「可能」の意味を持つことができます。動詞「行く」の未然形に助動詞「れる」を付けた形を取ります。

「行かれる」とは受け身の意味はあるのか

「行かれる」は「尊敬語」「可能」の他に「受け身」の意味でも使うことができます。

受け身

「行かれる」は「~される」という「受け身」の意味を持つこともできます。「受け身」とは他からの働きかけを受けるという意味があります。他から「行く」という作用を受けたものが話の中心となります。

「行かれる」の例文

「行かれる」の使い方をわかりやすいように例文で見てみましょう。

行かれるんですか

「行かれるんですか」は「行かれる」に「のですか」が付いた形が元になっています。「のですか」の「の」が「ん」に変化しています。話し言葉では「の」が言いにくいため「ん」になったと考えられます。書くときは「のですか」と書きます。

「行かれるんですか」の例文を、尊敬・可能・受け身の表現に分けてご紹介します。

尊敬

「行く」という動作の主体に対して「尊敬」を表した例文です。

「どちらへ行かれるんですか」
「海外へ行かれるんですか」

可能

「行く」ということが「可能」であるかどうかの例文です。

「決勝に勝てばアメリカに行かれるんですか」
「招待状がないのにパーティーに行かれるんですか」

受け身

他から「行かれる」作用を受ける「受け身」の例文です。

「私たちはこのまま置いて行かれるんですか」
「証拠として持ち物を全部持って行かれるんですか」

行かれると思います

「行かれると思います」を尊敬・可能・受け身に分けて見ていきましょう。

敬語

「行く」という動作の主体に対して「尊敬」を表した例文です。

「社長は行かれると思います」

可能

「行く」ということが「可能」であるかどうかの例文です。

「たぶん行かれると思います」

受け身

他から「行かれる」作用を受ける「受け身」の例文です。

「私は遅いので、皆に先に行かれると思います」

「行かれる」と「向かわれる」の違い

「行かれる」と似た言葉に「向かわれる」があります。どのような違いがあるのか見る前に、「行かれる」と「向かわれる」の元となる「行く」と「向かう」について見てみましょう。

「行く」

「行く」の意味は「目的地を目指して進む、目的地へ移動する」になります。

「向かう」

「向かう」の意味は「ある方向を目指して進む」です。

到着しているかの違い

「行く」と「向かう」の意味を比べると異なる点があります。「行く」には、目的地に到達することも含まれてということです。「学校へ行く」は「学校にたどり着く」ところまでを意味しますが、「学校へ向かう」は学校を目指していても、到着の意味は含まれていません。

「れる」を付けた形の「行かれる」も「向かわれる」も意味は同じです。目的地へ到達しているかどうかが違っています。また、「行かれる」も「向かわれる」も尊敬・可能・受け身の用法があります。

「行かれる」はおかしい使い方なのか

「行かれる」は尊敬・可能・受け身の用法により、正しい使い方かどうかの捉え方が違います。また、時代や人の考え、方言、使うシーンなどにより「行かれる」の賛否は分かれます。それぞれについて見ていきます。

尊敬

「尊敬」の意味の「行かれる」は文法的に正しいとされていますが、「行く」自体が尊敬語でないため敬意は低めです。「いらっしゃる」の方がより丁寧な尊敬語として使われています。「お行きになる」も尊敬語ですが、日常で使える表現ではありません。

このようなことからも「行かれる」は軽めの尊敬語として、一般的な尊敬語では「いらっしゃる」を使うのがおすすめです。

可能

「可能」の意味を持つ「行かれる」は、「行ける」と共に正しい使い方とされています。「行かれる」は、五段活用の動詞「行く」の未然形に「れる」を付けた「可能」の表現です。古い時代から使われています。

一方「行ける」は、五段活用の動詞「行く」を下一段活用の動詞に変化させた可能動詞であり、古くからあったものが近代になって普及されていった用法です。

このように「可能」の意味を持つ「行く」には、「行かれる」と「行ける」の2とおりあることになります。

「行ける」と「行かれる」のどっち?

「行かれる」は間違っている、「行ける」こそ間違っていると、双方で意見が分かれることもありますが、「行ける」の方が現代では主流となってきている傾向にあります。

「行かれる」と「行ける」は言葉の成り立ちや作られた時代、広まった時代が異なっているためどちらも廃ることなく、現在でも「可能」の用法が2つあることで混乱を招いています。

「可能」の意味を正しく伝えるために「行ける」を使いましょう。「行ける」は「可能」の表現でしか使われないため、「尊敬」や「受け身」との区別がしやすくなり便利です。

受け身

「行かれる」の受け身は「行かれる」という形で正しいとされています。他からの作用を受けたものを主体にして言うときに使います。

「行かれる」の表現の区別

「行かれる」には尊敬・可能・受け身のどれにあたるかによって、意味が違ってくることもあるため、区別する必要があります。

「行かれる」の紛らわしさ

「行かれる」の表現は尊敬・可能・受け身の区別が難しいケースもありますが、話を聞く側のときは、文脈から判断します。

例えば「行かれますか?」という場合、敬語と可能のどちらの意味でしょうか。相手が目上の人や立場が上の人では「尊敬」の表現と解釈できます。ですが「行くことができますか?」の意味の「可能」であっても同じ言い方をするため、どちらの意味かわかりかねます。

他の例として「先に行かれてしまった」では、敬語または受け身のどちらか区別がつきません。相手が目上の人や立場が上の人であれば「尊敬」、相手が先に行ってしまって取り残されている状況であったら「受け身」と判断できますが、正しい区別はしかねます。

「行かれる」の意味を正確に伝えるには

「行かれる」の持つ尊敬・可能・受け身という紛らわしい意味を正しく伝えるときには、「行かれる」と同じ意味の別の言葉に置き換える方法があります。

「尊敬」のときは「いらっしゃる」に置き換える

「いらっしゃる」は「行かれる」の尊敬語であるため、丁寧な敬語表現として置き換えることができます。

ですが「いらっしゃる」は「来られる」と「行かれる」の両方の意味を持っているため、注意が必要です。「こちらに」なのか「あちらへ」なのかわかるように場所についての言葉を添えましょう。

「可能」のときは「行ける」を使う

「行かれる」に「可能」の意味を持たせたいときは、可能動詞「行ける」の方を使います。「行ける」の表現は「可能」でしか使わないため、明らかに「可能」の表現であるとわかります。

「行かれる」の方言

可能の意味を表す「行かれる」は、東京を含む関東や、ある地方に残る方言であるという見方があります。

江戸時代中期以降から「行ける」の可能動詞が普及してからは、五段活用動詞に「れる」を付けた古いタイプの「行かれる」を使う人は減少してきています。

さらに可能動詞「行ける」が主流になっていくと、それまで話されていた「行かれる」はさらに話す人が減り、方言と見なしていくことが考えられます。

誤解のない「行かれる」の表現を

「行かれる」には主に3つの異なる用法があることがわかりました。「行かれる」の表現は、意味の紛らわしさを回避するために、置き換えの言葉も活用して、誤解のない表現ができるように心がけましょう。

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