「ご不便をおかけしますが」の意味と使い方
「ご不便をおかけしますが」とは、相手に何かお願いをする場合に多く用いられる言葉です。ビジネスシーンでは頻繁に見かけられ、一種の決まり文句と化しています。「不便をかける」は漢字で書くと、「不便を掛ける」という字をあてます。
「掛ける」は、「迷惑や損害などを被らせる」という意味を持っています。「好ましくないことを相手に及ぼす」という意味合いも持っています。「不便」という言葉の後に「かける」と付けて「不便をかける」とすると、「不便」という好ましくないことを相手に及ぼす、という意味になります。
一般的な使い方
「ご不便をおかけしますが」の意味は、「相手に迷惑をかけてしまうことに対するお詫び」ですが、なぜお願いをする場合に多く用いられるのでしょう。これは、「ご不便をおかけしますが」の最後に使われている「が」がポイントになります。「が」は「けれど」と並び、逆接、順接、婉曲という三種類の接続ができます。
そのため、「が」より前の「ご不便をおかけします」と真逆のことを、「が」以降に述べることができます。「が」以降に「ご不便をおかけします」を受けた言葉を続けることもできます。「ご不便をおかけしますが、今後もよろしくお願いいたします」とも「ご不便をおかけしますが、申し訳ありません」とも使えます。
メール
「ご不便をおかけしますが」というフレーズは、ビジネスシーンで多く使われます。主にお客様に対し、しばらく不自由な思いをさせてしまうときの詫びの一文という形で使います。対面や電話で使われることもありますが、最近ではメールの文末に使われることが多くなりました。
工事のお知らせなどで、「○月○日断水のお知らせ」などとタイトルをつけられたメールや通知の末尾に、「住民の皆様にはご不便をおかけしますが、当日はよろしくお願いいたします」といった文面を目にしたこともあるでしょう。
お知らせの立て看板
「ご不便をおかけしますが」がよく使われているのが、工事中の立て看板や迂回路表示の立て看板です。「ご不便をおかけしますが、ご協力をお願いいたします」が決まり文句となっています。近くに工事現場があれば、少し気にして立て看板や工事告知の看板を見てみましょう。
「ご不便をおかけしますが」の例文
ここでは、「ご不便をおかけしますが」と使った一種の決まり文句としての使用例をご紹介します。「ご不便をおかけしますが」にはいくつかの定型ともいえる使われ方があるので、覚えてしまえば、自分が使うときも使い方を間違えずに使うことができます。
ご不便をおかけしますがご理解
「ご不便をおかけしますが、ご理解いただけますようお願いいたします」という使い方があります。このままのフレーズで使われることも多いので、定型文として覚えてしまいましょう。定型文として身についたあとで、アレンジを加えることもできます。「ご不便をおかけしますが」と「ご理解いただく」の間に、詳細な内容を挟み込むことも可能です。
【例文】
・工事期間中は騒音などご不便をおかけしますが、ご理解いただけますようお願いいたします
・工事期間中はご不便をおかけしますが、夜間の騒音には配慮いたしますので、ご理解いただけますようお願いいたします
ご不便をおかけしますがご了承
「ご不便をおかけしますが、ご了承ください」という使い方も、定型文として覚えてしまいましょう。「ご不便をおかけしますが」と「ご了承ください」の間に、詳細な内容を挟み込むことも可能です。また「ご了承ください」は、「ご了承いただけますようお願いいたします」など、さらなる丁寧文にすることも可能です。
【例文】
・○月○日は誠に勝手ながら休業させていただきます。ご不便をおかけしますが、ご了承いただけますようお願いいたします
・回答までには少々お時間をいただくことがあります。ご不便をおかけしますが、内容をご理解いただき、ご了承ください
「ご不便をおかけしますが」の類語
「ご不便をおかけしますが」の類語として、「ご迷惑をおかけしますが」「お手を煩わせますが」「ご負担をおかけしますが」「お骨折りいただきますが」などがあります。さらによく使われる「お世話になりますが」も類語として使うことができます。ここでは、それぞれの類語による言い換え例をご紹介します。
ご迷惑をおかけしますが
「ご不便をおかけしますが」とほぼ同じ意味として「ご迷惑をおかけしますが」が使えます。「不便」をかけるか、「迷惑」をかけるかという微妙な違いがあるので、言い換えた場合に文章の印象がどう変わるのか、考えてみましょう。
【例文】
・工事期間中は、ご不便をおかけしますがご了承いただけますようお願いいたします
・工事期間中は、ご迷惑をおかけしますがご了承いただけますようお願いいたします
お手を煩わせますが
「お手を煩わせますが」も「ご不便をおかけしますが」の類語として使えますが、「相手に何かしてもらう必要がある」か、「相手に我慢してもらう必要がある」かの違いがあります。
【例文】
・デジタル機器の故障により、ご不便をおかけしますが、ご容赦ください
・デジタル機器の故障により、お手を煩わせることとなりますが、ご容赦ください
ご負担をおかけしますが
「ご負担をおかけしますが」も「ご不便をおかけしますが」の類語です。「相手に何かしてもらう必要がある」という意味も、「我慢してもらう必要がある」という意味も含んでいます。
【例文】
・配送が遅れており、ご不便をおかけしますが、ご理解いただけますようお願いいたします
・配送が遅れており、ご負担をおかけしますが、ご理解いただけますようお願いいたします
お骨折りいただきますが
「お骨折りいただきますが」も「ご不便をおかけしますが」の類語です。「お手を煩わせますが」や「ご負担をおかけしますが」に近い意味であり、相手に何かを頑張ってもらうというニュアンスが含まれています。
【例文】
・当日は、ご不便をおかけしますが、ご協力お願いいたします
・当日は、お骨折りいただきますが、ご協力お願いいたします
お世話になりますが
「お世話になりますが」も「ご不便をおかけしますが」の類語として使えます。万能といえるフレーズであり、あまり使う状況や場面を考慮する必要はありません。
【例文】
・当日は、ご不便をおかけしますが、ご協力お願いいたします
・当日は、お世話になりますが、ご協力お願いいたします
ビジネスで「ご不便をおかけしますが」を使う注意点
「ご不便をおかけしますが」は、相手に一言断りを入れることで、後に続く言葉を受け入れやすくするという効果があります。「すみませんが」と断っておいて、「○○してください」とお願いするのに似ています。
しかし、「ご不便をおかけしますが」のあと、「ご理解ください」「ご了承ください」などと続けていう場合、相手に問答言わせず「理解」や「了承」を押し付けているようにも聞こえます。「ご不便をおかけしますが」の前後の文章で、相手の理解や了承を乞うための補足をきちんと記載しましょう。
「ご不便をおかけしますが」の敬語表現
「ご不便をおかけしますが」は、多くの場合、何かをお願いする文面に使います。「ご不便をおかけしますが、よろしくお願いします」というだけでは、目上の人に対しては、説明もなしにお願いだけしているという不躾な使い方と受け取られることもあります。
目上の人に「ご不便をおかけしますが」という表現を使う時には、内容の説明や、状況の汲んで欲しい旨の一言を付け加えて使います。文末も「お願いします」というだけではなく、「ご理解」などの言葉を使うことをおすすめします。
丁寧語
「ご不便をおかけしますが」は、このままの形で「丁寧語」の形になっています。続ける文面も、丁寧語の形で使いましょう。「ご不便をおかけしますが、お願いいたします」や、「ご不便をおかけしますが、ご理解ください」といった形が丁寧語の形式となります。
尊敬語
取引先や上司に対して使う場合は、尊敬語の形にする必要があります。「ご不便をおかけしますが」は、丁寧な表現ですが、「不便をかける」のは話者であり、相手ではないので、尊敬語の形にすることはできません。
「ご不便をおかけしますが」に続く「理解」や「了承」という言葉を尊敬語にしましょう。「ご不便をおかけしますが、ご理解いただきますようお願いいたします」や、「ご不便をおかけしますが、ご了承いただきますようお願いいたします」などの敬語表現で使います。
謙譲語
「ご不便をおかけしますが」の主語は話者であり、謙譲表現を使うことができます。「おかけいたしますが」とすれば、謙譲表現になります。しかし実際にはこのような謙譲表現では使われません。「ご不便をおかけしますが」の部分については、丁寧語としてこのまま使うのが一般的です。
「ご不便をおかけしますが」を使ってお願いを円滑に
「ご不便をおかけしますが」は、相手に我慢や対応をお願いする際に使うと、相手の気持ちを少し和らげることのできる言葉です。ビジネスシーンなどで、心苦しいが相手にお願いをしなければならない状況が必ず発生します。そのようなときに、「ご不便をおかけしますが」を正しく使って、コミュニケーションを円滑に進めましょう。