「仰る」の意味と使い方・例文・正しい敬語なのか・類語・活用

ビジネススキル

「言う」が「仰る」に?敬語につまづく新社会人

就活生や社会人になりたてのみなさんは「仰る(おっしゃる)」という言葉についてどのような印象をお持ちですか。丁寧な印象なのは理解できても、一体どんなときに使い分けたら良いのかが悩む方も多いでしょう。

敬語は使い分けが難しいために苦手としている方も多く、学生時代にはテスト前の丸暗記で対応できても、いざ就活となると困惑してしまうという声も多いです。

今回は、そんな「仰る(おっしゃる)」と言う言葉について詳しく紹介します。

「仰る」の意味とメールでの使い方

それではさっそく「仰る」の意味と書面での使い方を確認していきましょう。

「仰る」の意味とは

「仰る」は「言う」を尊敬の形にした言葉で、特に目上の方に対して使用されます。具体的な意味合いとしては「言う」と変わりはなく、声に出して相手に感情や考えを伝えるときに使用されます。

音声だけではなく文字として記されている内容から伝わる事柄にも「言う」という言葉が使用されます。たとえば先輩からのメールに何かしら指示内容が記されていた場合は、「先輩がメールで仰る内容」といった具合に表現されます。

メール・書面での使い方(書き言葉)

普段あまり意識することはありませんが、わたしたちは知らず知らずのうちに話し言葉と書き言葉を分けて表現しています。メール内では書き言葉が使用されるので、普段はあまり口にしないような敬語も使用することがあります。

今回の記事で学ぶ「仰る」は、敬語の中でもとてもオーソドックスで基本的な言葉になりますので、しっかりと確認しましょう。

「仰る」が適切な場面としては、目上の人を主語として「言う」という言葉を使うときです。わかりやすい言葉で例にしてみましょう。

【NG例】先輩が言うように、私も会議のために早く準備をしようと思います。
【OK例】先輩が仰るように、私も会議のために早く準備をしようと思います。

このように、敬う対象の人が主語になっているとき「言う」を「仰る」に置き変えるところから始めると、自然に敬語が身についていきます。

「仰る」に関連した例文

それでは、「仰る」に関連した具体的な例文を見てみましょう。

「仰るとおりです」

「仰るとおりです」という定型句は会話の中もよく用いられます。相槌の表現として使用されることもありますし、説明と併せて使用されることもあります。

上司に対して

たとえばあなたがなにかミスをして、上司から叱責を受けているとしましょう。
上司:だから納期を確認しろとあれほど言っただろう?

これに対してありがちな事例と適切な返答例を確認しましょう。
【NG例】あなた:すみませんでした。○○さんの言うとおりです。
【OK例】あなた:申し訳ありませんでした。○○さんの仰るとおりです。

NG例も日本語としては間違いではありません。しかし、日本のビジネスシーンで求められるのは、上司先輩に対して敬意を払うスキルです。特に謝罪のときは相手への誠意を見せなければなりません。できるだけ丁寧な表現を使用しましょう。

お客さまに対して

お客様に対して「仰るとおりです」を使用するときはどんなケースがあるでしょうか。たとえばあなたが接客を担当しているときに、会社のサービスについてお客様から疑問を投げかけられたとしましょう。

【例】お客様:あれ、灰皿置いてないの?普通こういった場所では用意しているもんじゃないかな?

あなた:恐れ入ります。お客様が仰るとおり、普段は灰皿をご用意しております。現在わたくしどもは会社をあげて健康推進キャンペーンを行っておりまして、それに伴って灰皿も撤去させていただいております。ご理解をよろしくお願いいたします。

お客様は社外の人間ですので、あなたの会社の中でのみ行われていることについては理解が及ばないことがあります。

極端な例でしたが「仰るとおり」を使用することで相手への理解の姿勢を示した後に、きちんと事情を説明することができます。「仰るとおり」と一緒に覚えておくと、ビジネスシーンでも役に立つでしょう。

「仰られる」は二重敬語・過剰敬語と言われる

「仰る」の活用形として、度々疑問が投げかけれれる「仰られる」という表現は、一体なにが問題なのでしょうか。

二重敬語であるという点

「仰られる」は会話の中で浸透していることもあり、何が問題なのかがわかりにくい言葉ですが、中でも日本語の乱れとして指摘されることが多いのが「書き言葉」についてです。

実は「仰られる」をよく見ると、「仰る」と「~れる」という二つの敬語が合わさってできています。これを特に二重敬語と言い、書き言葉の時は特に厳しく指摘される傾向にあります。

ほかにも「~れる」がついた二重敬語としては、「お見えになられる」「お召し上がりになられる」などが挙げられますが、二重敬語は文法的な間違いとなりますので、メールや書面などで書き言葉を使用する際には特に注意しましょう。

過剰な敬語が生まれた背景

実は二重敬語が生まれた背景としては、「より丁寧にしたい」「きちんとした印象にしたい」「より相手への敬意を強めたい」という日本人の心が挙げられます。

特に話し言葉の時は二重敬語を使用されても、違和感を覚える人は少ないのではないでしょうか。それはやはり言葉の中の相手の思いや敬意が詰まっているからで、日本語の乱れとして簡単に一蹴できるものではありません。

上のような二重敬語は、文法として間違っていても話し言葉というケースであれば許容されることもあるのだということを、ぜひ知ってください。それだけで、敬語に対する不安感が和らぐでしょう。

二重敬語で気に留めなければならないのは、相手に対して慇懃無礼にならないかという点です。「お召し上りください」のように文法上はNGでも、すでに接客の慣用表現として定着しているフレーズも数多くあります。

会社の中で敬語が間違って使われている時は?

社会人は学生とは違う面がたくさんあります。学生の時に授業で「間違いです」と習った言葉が、会社の中では使用されることもあったり、会話の中で使用されることがあったり、困惑してしまうことも多いでしょう。

残念ながらインターネット上のマナー解説記事では文法の解説はしても、こういった現状への疑問は解決されていないことが多々あります。会社の中で、特に上司の誤用に遭遇した場合は修正せず、目を瞑るという対応がベターです。

大切なのは、あなたが自分の居る環境に順応していくことです。「仰られる」という表現についても、二重敬語という面から見れば間違いと言わざるを得ませんが、そもそも二重敬語は慣用句との線引きが非常に難しい物です。

そのため、「仰られる」という言葉があなたの所属している会社の会話の中で慣用句として使用されているのであれば、その方針に従う必要があるでしょう。

「仰る」は正しい敬語なのか?不安なあなたへ

敬語の復習をしているとややこしい事柄が非常に多く、自分の使っている日本語にすら自信が持てなくなってしまうことがあります。また、上司から指摘されても、実際は日本語として間違っていないこともあります。

まずは、一旦整理して「仰る」について文法の基本から確認していきましょう。

「仰る」は「言う」の尊敬語なので正しい敬語!

「尊敬語」「丁寧語」「謙譲語」という敬語の3大パターンは学生時代に習っているはずですが、あなたは覚えていましたか。

「仰る」は正しい表現

「仰る」というのは、敬語の中では「尊敬語」に分類されています。

ラ行五段活用で「仰らない(未然形)」「仰います(連用形)」「仰る(終止形)」「仰るとき(連体形)」「仰れば(仮定形)」「仰い(命令形)」と活用します。

連用形に「ます」が後続する場合はイ音便化するので、「仰ります」ではなく「仰います」となるのが一般的です。

自信がないときは声に出してみよう

調べ物をするときに、みなさんが検索の中で見るのは「書き言葉」です。また、書類作成や作文のときにも「書き言葉」が使われます。

子供の頃はあまり「書き言葉」と「話し言葉」の違いを意識することはありませんが、大人になるにつれてどんどん意識する機会は増えるでしょう。

「書き言葉」が日本語として正しいかどうか迷った時には、声に出して読んでみて違和感を覚えるかどうかを基準にすると良いでしょう。声に出してみることで、間違った表現を見つけやすくなります。

また、アナウンサーやキャスターなど、立派な日本語を使える方がもしも自分のこの文章を読んだらどうだろうという想像力も非常に役に立つでしょう。正しい言葉を使用するには「間違えては直す」を繰り返すことが大切です。

「言う」に関するほかの敬語表現も確認しよう

「言う」が尊敬語では「仰る」になることが理解できたら、次は丁寧語、謙譲語を確認しましょう。

基本の形!「言う」の丁寧語は「言います」

丁寧語はとてもシンプルな敬語の形で、「ます」を語尾につけます。たとえば「言う」なら「言います」、「居る」なら「居ます」、「食べる」なら「食べます」となります。

一般的な日常会話や作文などで使用される敬体にはこの丁寧語が使用されます。

自分がへりくだる場面!「言う」の謙譲語は「申す」

謙譲語というのはへりくだる場面、特に自分自身を下げることで相手への敬意を表す言葉です。たとえば「言う」なら「申し上げる」、「居る」なら「居ります」、「食べる」なら「いただく」となります。

謙譲語の使い方として注意したいのは、自分が主語になる文章で使用することです。「私が言いましたように~」という文章は、「私が申しましたように~」となります。

「仰る」の類語・類似の表現を覚えておこう

日本語は文章の中で同じ言い回しを避ける習慣があります。文章の中で何度か「言う」というニュアンスを使用したい場合、目上の人が言っていることを「仰る」の他にはどのように表現したら良いでしょうか。

「発言される」

「仰る」を別の表現として言い換える時に、「発言される」という表現はいかがでしょうか。

【仰るの例文】○○さんがいつも会議で仰るように、考えるべき課題は他にもあると思います。
【発言されるの例文】○○さんがいつも会議で発言されるように、考えるべき課題は他にもあると思います。

考えを述べるのが「言う」「仰る」という表現ですので、それを「発言」という言葉に置き換えても自然な流れとなるでしょう。

「ご指摘される」

また、ケースによっては「ご指摘」という言葉に置き換えることも可能です。

【仰るの例文】先ほど○○社の担当の方が仰られたように、先月納品した製品に問題がありました。
【ご指摘されるの例文】先ほど○○社の担当の方がご指摘されたように、先月納品した製品に問題がありました。

目上の方が発言された内容が、特に自分の行為に対して言及されていた場合などには、「仰る」を「ご指摘される」という言葉に変えても表現することができます。

「仰る」のシーン別活用方法を覚えておこう

さて、ここまで読まれた方なら「仰る」についての理解がとても深まったのではないでしょうか。いよいよ実践です。「仰る」のシーン別の用例をたくさん上げていきます。

日常のシーンでは丁寧さを出したいときに

日常の中でも、相手を敬う場面はたくさんあります。たとえば家に招くご親戚の方や習い事の先生など、お客様や近隣の方に対してきちんと敬語を使えることで、あなたの印象はとても良くなります。

【用例】
・昨日大おばさまは、このお皿の模様がとても好きだと仰っていました。
・先生が仰ったように、きちんとピアノの練習をしなくてはならない。
・隣のご主人が、町内会のゴミ拾いが雨天で中止になったと仰っていた。
・町内会長さんは、いつも優しくこんにちはと仰る。
・ガスのメーター確認にいらした方が、来月から値上がりすると仰っていた。
・大家さんが、夜はあまり大きな音を出さないようにと仰っていた。
・班長さんが仰るとおり、この花壇も手入れをしっかりしないといけない。

ビジネスシーンでは尊敬を表すときに

これまでにも解説してきたように「仰る」は、上下関係のあるビジネスシーンでは必修の言葉であると言っても過言ではありません。先輩、上司、管理職の方など想定される方はたくさんいますが、日常から敬語を使えるようにしておくことが大切です。

【用例】
・プレゼンテーションの資料は早めに作成するようにと先輩は仰った。
・上司の○○さんが仰る接客の基本について、自分も改めて振り返る必要がありそうだ。
・○○部長が仰るように、経営改善指針を早急に設定せねばならないと感じています。
・朝礼で社長は挨拶を大切にしろと仰っていた。
・取引先の○○さんがコーヒー好きと仰っていたので、銘柄を選んでいます。
・調理担当の方が来月から新メニューが出ると仰っていたのを楽しみにしています。
・お客様が仰るとおり、我々はもっと質の良いサービスをすべきだ。
・先輩が仰るとおり、エクセル関数について初めのうちにもっと知っておくべきだった。

自信を持って使えるようになろう!

今回の記事では「仰る」についてさまざまな例を挙げました。一度つまづくと苦手意識を持ってしまいがちな敬語ですが、克服してしまうとその後は楽に使えるようになります。

今回のように、困ったときは基本に立ち返って丁寧に振り返ってみるのも良いでしょう。日本語の乱れが指摘される現代ですが、敬語に関しては乱れよりも誤用の方が多い様子があります。

言葉の間違いは新社会人だけでなく、社会人として何年も経っているような方にもよくあることです。一度の指摘に落ち込むことなく、ひとつの勉強の機会だと捉えて前向きにレベルアップしていきましょう。

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