「そちら」の正しい使い方・敬語表現・ビジネスで使う際の注意点

ビジネススキル

「そちら」の正しい使い方

ビジネスシーンで「そちら」という言葉はよく使われたり耳にしたりしますが、「そちら」は「こそあど言葉」の中の一つで、「そっち」を改まった言葉にしたものを指します。

「そちら」は使い方で場所を示したり、人物を指したりする意味に変わります。「そちら」は聞き手のほうが話し手よりも近い場所を示すときや、聞き手側の立場を指す二人称の人称名詞、あるいは聞き手のすぐ近くにいる人を指したりする三人称の人称名詞を意味します。

メールで「そちら」を使う場合

ビジネスシーンで相手にメールを送る際、打合せや問い合わせに対する返事で「そちら」を使用することがあります。

「そちらの都合に合わせます。」
「そちらで間違いありません。」

しかし、メールでのやり取りが頻繁なケースや、メールが会話のような流れになった中での使用が正しいといえ、メールの文頭に突然「そちら」が使われることはありません。

電話で「そちら」と使ってもよい?

「そちら」は実際に会話の相手が目の前にいる状態で使用するなら、敬語に準ずる改まり語のために特に問題はありません。

対面した状態で「そちら」を使う例として、「〇〇室はどこにありますか」という質問に対して聞かれた方向を手で示しながら「そちらにございます」と使用したり、「〇社の住所は〇〇で合っていますか」に対し「そちらで間違いありません」などの使い方をしたりするのが正しいといえます。

ただし電話では表情や手の動きが相手に見えませんので、「そちら」は敬語に準ずるとはいえ、もう少し丁寧な言い方が好ましいといえるでしょう。

「そちら」の敬語表現

では「そちら」をビジネスシーンで使う場合、もっと丁寧な言い方や尊敬語などはあるのでしょうか。

「そちら」は丁寧語

敬語は尊敬語・謙譲語・丁寧語の3つに大きくわかれます。「そちら」はすでに「そっち」の丁寧語に当たるため、これ以上の丁寧語にはなりません。こそあど言葉の「それ」や「そこ」の丁寧語も「そちら」となります。

「そちら」の尊敬語は?

それでは「そちら」の尊敬語にあたる言葉はなんでしょうか。先ほど、電話での会話の中で「そちら」を使うことは失礼にあたる可能性があることに触れましたが、ビジネスシーンで会話の相手が大切な取引先や年配の方の場合は、「そちら様」という表現なら失礼にあたることはないといえるでしょう。

「そちら」は敬語に準ずる言葉ですが、続ける言葉によって、相手に対して印象が悪くなることもあります。特に地位の高い人や目上の方に対しては「そちら」を「そちら様」や「お連れ様」などに言い換え、そのまま使うことは避けることが望ましいでしょう。

謙譲語として「そちら」を使うなら

それでは「そちら」の尊敬語にあたる言葉はなんでしょうか。先ほど、電話での会話の中で「そちら」を使うことは失礼にあたる可能性があることに触れましたが、ビジネスシーンで会話の相手が大切な取引先や年配の方の場合は、「そちら様」という表現なら失礼にあたることはないといえるでしょう。

「そちら」は敬語に準ずる言葉ですが、続ける言葉によっては相手に対して印象が悪くなることもあります。特に地位の高い人や目上の方に対しては、「そちら」を「そちら様」や「お連れ様」などに言い換え、そのまま使うことは避けることが望ましいでしょう。

ビジネスで「そちら」を使う際の注意点

ビジネスシーンでは、敬語の使い方を間違えると大変なことになってしまうことがあります。「そちら」は敬語に準ずるのだから問題ないだろう、と気軽に使ってしまう人もいますが、改めて使用する際の注意点を見てみましょう。

「そちら」を会社に対して使う敬語にするなら

対話や電話での会話で、相手の会社に対して「そちら」と使用せず「そちら様」と使用すれば尊敬語にあたりますが、前後の文脈や話し方によって敬語に感じずに違和感や不快感を覚える人もいます。

「そちら」に代わる相手の会社を表現する言葉には「御社(おんしゃ)」「貴社(きしゃ)」があります。しかし「貴社」は書き言葉のため、会話で使用するなら「御社」が正解です。

書き言葉で敬語の「貴社」を使う場合の注意点

メールや書類で相手の会社に対し、ビジネスシーンでは敬語として「貴社」を使用することは先にも触れましたが、まれに「貴社様」と表記してしまう人もいます。しかし「貴社」に「様」をつけるのは二重敬語に当たり、ビジネスマナーができていないと相手に感じさせてしまうため、「様」をつけないように気を付けましょう。

団体で「そちら」を使うなら

会社だけではなく団体組織に対しても「そちら」を使用することがあります。団体の場合も先ほどの会社に対する使い方と同じで、話し言葉としてなら「御~」を使用し、書き言葉なら「貴~」を使用しましょう。

そのため相手が一般企業ではなく、銀行なら「御行」「貴行」、法人は「御法人」「貴法人」、学校では「御校」「貴校」となります。しかし校名が「○○学園」の場合は「御学園」「貴学園」と相手の正式名称に合わせて、「御」や「貴」の後に続ける言葉を選びましょう。

また、「御~」と表現することが一般的でない団体もあります。例えば「〇〇クリニック」という名称に対して、話し言葉の中で敬語として「御クリニック」という表現ではなく、「こちらの病院」や「そちらの病院」といった表現が正しいでしょう。

実際に相手がいる場合に「そちら」を使うなら

「そちら」は指示代名詞として使うのか、人代名詞として使うのかで変わります。指示代名詞として使う場合は、方向やものに対して使うためにそのまま「そちら」と使用します。一方、人代名詞として使う「そちら」は、聞き手のそばにいる人を指して使うために「そちら様」と使うのが望ましいでしょう。

しかし「そちら様」は敬語として使えるとはいえ、相手によっては不快に感じる恐れがあるため、「お連れの方」や「お連れ様」と言い換えることを常に心がけることをおすすめします。

「そちら」と「こちら・あちら・どちら」の違い

「こちら・あちら・どちら」も「そちら」と同じようによく使われる言葉です。どの言葉も指示代名詞ですが、「こちら・そちら・あちら」は自分と聞き手がどのくらい離れているかで使い分けます。

「こちら」は、話し手の近くにいる人や側にいる人を指したり、自分自身を指したりするときに使い、その場合は「当方」と使うこともあります。ただし、身内や目下に対しては「こちら」ではなく「これ」を使用し、目上の方や敬意を払うべき人に対しては「こちら様」と使います。

「あちら」は、自分にも相手にも属さない第三者や、自分から離れた場所にいる人を指すときに使う言葉です。しかし、この場合も目上であったり地位の高い方に対しては「あちら様」と使います。

「どちら」は、不明なものや人物に対して使う言葉で、例えば「どちらにしますか」や「どちら様のご紹介ですか」といったように、複数の中から一つ選ぶ際や、相手が不明な場合に使用します。

「そちら」の言い換え方法

「そちら」は場所や方向を表すので、人物以外で使用するのであれば「そちら側」や「そちらの方」などの他、「あなたの側」も言い換える言葉としてあげられます。

しかし、「あなた」は自分よりも下の立場に対して使う言葉とされ、目上の方に対して使うのは失礼とされています。そのため敬語のつもりで「あなた様」に変えれば使えると考える人もいますが、ビジネスシーンでは使用を避けることをおすすめします。

なお、「そちら」をビジネスシーンや改まって使用するのでなければ、「そっち」「そこ」「その辺」などにも言い替えられます。

「そちら」を正しく使いこなそう!

つい気軽な気持ちで「そちら」は使いがちですが、使う相手や使い方を間違えてしまえば、後々の仕事に響いてしまう可能性があります。

「そちら」は敬語に準ずる改まり語とはいえ、前後の文脈によっては相手に不快感を与えてしまう可能性もあります。「自分がその言葉を使われる立場だったら」と考えれば、自然と正しい使い方ができるはずです。

ビジネスシーンで敬語は必要不可欠です。「そちら」を正しく使いこなして、できるビジネスマンを目指しましょう。

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