「お越しになる」の敬語・類語・「いらっしゃる・来られる」の違い

ビジネススキル

「お越しになる」の敬語

「お越しになる」は「来る」の尊敬語です。つまり、「お越しになる」人に敬意を表す表現として使われます。

「お越しになる」という表現は、ビジネスシーンなどでよく使う表現です。また、社会人になる前にも、先生や親戚などに対して「お越しになる」という言葉を使ったり、聞いたりすることがあるほど一般的な表現といえるでしょう。

そこで、この記事では「お越しになる」がどのような敬語なのかや、「お越しになる」の類語、対義語などを解説します。ビジネスパーソンにとって必須のワードなので、この機会に正しい使い方を覚えておきましょう。

尊敬語

尊敬語とは、相手側や第三者の行為、ものごと、状態などについて、相手を立てて述べる表現であり、「来る」の尊敬語が「お越しになる」です。

尊敬語は「いらっしゃる・おっしゃる」型とも呼ばれます。「いらっしゃる」などは相手の行動を立てる表現です。また、名詞の場合は「社長のご連絡先」などのように、社長の連絡先を立てて表現します。

謙譲語

謙譲語とは、自分側の行為、ものごとなどを、相手に対して丁寧に述べる表現であり、「来る」の謙譲語は「参る」や「伺う」です。謙譲語は尊敬語を裏返した表現で、尊敬語が相手を立てるのに対して、謙譲語は自分側を低くする、へりくだる表現といえます。

「お越しになる」は、さきほど説明したように「来る」の尊敬語です。「来る」のは相手の行為なので、これを謙譲語にすると全く意味が変わってきます。「先ほど予定していた商談に出席するため、先方の社長が参られた」などと使えば、大変失礼な表現になってしまいます。

そのため、あえて謙譲語を使うとすれば「お越しいただく」という表現です。この場合、「いただく」という謙譲語を使うことによって「わざわざ私たちのような者のために相手が来た」という意味が生じます。

「お越しになる」の類語

「お越しになる」はよく使われる表現です。しかし、同じ表現をしたくない場合や、違うニュアンスで表現したい場合もあるでしょう。また、ビジネスシーンでは「お越しになる」という表現では敬意が足りない場合もしばしばです。

「お越しになる」には、類語がいくつかあります。そのような時に備えて、お越しになるの類語を覚えておきましょう。

おみえになる

「お越しになる」の類語の一つ目は「お見えになる」です。「見る」という動詞を尊敬語にした表現です。

いらっしゃる

「お越しになる」の類語の二つ目は「いらっしゃる」です。「居る」「行く」という動詞を尊敬語にした表現です。

お出でになる

「お越しになる」の類語の三つ目は「お出でになる」です。「行く」という動詞を尊敬語にした表現です。

来られる

お越しになる」の類語の三つ目は「来られる」です。「「来る」という動詞を尊敬語にした表現です。「来られる」には、可能の表現と同じなので使い方には注意が必要です。

「明日の飲み会来られるかどうか早めに教えてよ」などのように相手に敬意を払っていない表現に取られないように注意しましょう。

「お越しになる」はどのようなときに使うの?

さきほど説明したように「お越しになる」は相手に敬意を示す表現です。ビジネスシーンでは取引先やお客様など、自分より立場が偉い人に対して使います。また、支店に本社の社長が来る時なども「お越しになる」という表現を使います。

いずれにしても、目上の人に対して使う表現なので、間違いのないように注意して使いましょう。

例文

いくつか例文を紹介します。

・「視察団の方々がお越しになった。」
・「課長、AAA商事の金子さんがお越しになりました。」
・「5時にお越しになるはずだったお客様はキャンセルになりました。」
・「明日の発表会には、ぜひお越しなってください。」
・「遠いところから、お越しになってくださり誠にありがとうございます。」

「いらっしゃる・来られる」との違い

「お越しになる」という表現は、いくつかの類語があることを紹介しましたが、ビジネスシーンで重要となってくるのは、それらの言葉の違いです。「お越しになる」「お見えになる」「いらっしゃる」「お出でになる」「来られる」の違いは、敬意の深さだといえます。

一般的に、敬意の深いものから順に並べると、「お見えになる」→「いらっしゃる」・「お越しなる」「お出でになる」→「来られる」と言われます。なぜ、このような順番になるのかは諸説あります。

立場が上であればあるほど、一般的には些末な行動や雑事はしなくなります。そのイメージから、アクションの度合いの少ない「見る」→「居る」→「来る」「行く」と考えれば覚えやすいのではないでしょうか。

なお「来られる」の場合は、慣用的にあまり敬意が表されていないと言われます。

「お越しになられる」は正しい敬語?

「お越しになる」では、丁寧さが足りないように感じ、「お越しになられる」とつい使ってしまう人がいますが、「お越しになられる」は正しい敬語ではありません。より詳しく言えば、「二重敬語」という敬語のルール違反にあたります。

「来る」を「お越しになる」としていますから、すでに尊敬語は成立しています。それに「れる」という尊敬語の表現をさらに加えるのは「二重敬語」です。

また、別の問題もあります。「れる」「られる」という敬語は、相手に意図を正確に伝えられない可能で可能があるからです。もし、何も知らない人が「お越しになられる」と聞いたなら、「先ほどまでは不可能であった到着が、可能になったのか」と勘違いする場合もあります。

「資料を見られましたか」「明日はいらっしゃられますか」などは似たような間違いです。いずれも敬語として不適切でありながら、つい使ってしまいがちなので注意しましょう。

「お越しになる」の対義語

「お越しになる」に対義語はありません。しかし、それでは面白くありませんので、少々こじつけですが、対義語にあたるものを紹介しましょう。

「お越しになる」は尊敬語ですから、敬意を表したい相手が、近い将来自分のところに来てくることを意味します。したがって、その逆は、相手に対して目下の自分がすでに到着しているということになるでしょう。

したがって、「お邪魔させていただいております」が対義語になります。言葉遊びのようになってしまいましたが、このように尊敬語と謙譲語は対になっています。そのため、「お越しになります」に限らず、尊敬語と謙譲語はセットで覚えておきましょう。そうすれば、混同して使って恥をかくことも少なくなります。

お越しになるの英語表現

英語で「お越しになる」にあたる表現はないので、「come」を使います。

・If you did so to come here, servants will guide you to guest room.(こちらへお越しになるようでしたら、使用人にゲストルームまで案内させましょう)

・The doctor seems to come within ten minute.(医師が10分以内にお越しになるようです。)

敬語表現が難しい日本人ならば、英語のような簡単な表現はシンプルに感じることでしょう。羨ましくもありますが、敬意を表現しなければならないプレッシャーがあるとき、逆にどう言葉に表せば良いのか困ってしまうことも多いと言われます。英語圏では行動が優先されるのは、言葉の背景もあるのでしょう。

「お越しになる」はビジネスパーソンの必須ワード

「お越しになる」はビジネスシーンでよく使われます。そして、使う相手は自分より立場の上の人に対してです。そのため、「お越しになる」を誤ってしまうと、相手に不快な思いをさせたり、マナーを知らない人間として信用してもらえなかったりすることもあります。

「お越しになる」がどのような敬語なのか、尊敬語、謙譲語の意味にまでさかのぼってマスターするとともに、類義語を覚えておくことで、上手に使いこなせるはずです。

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