「思います」の敬語は?
「思います」という言葉は日常的に使用されますが、ビジネスシーンでは適切な敬語表現で使用しなければならない場合があります。「思います」の敬語表現を考えるにあたり、まずは敬語の種類と役割について詳しく見ていきましょう。
敬語の種類とは?
敬語には、尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類があります。以下、それぞれ詳しくご紹介します。
尊敬語とは?
尊敬語とは、動作をする人を敬う敬語です。例えば、「おっしゃる」は「言う」の尊敬語ですが、まずは「おっしゃる」を例に尊敬語について考えてみましょう。
「部長がおっしゃる」という表現を例に挙げると、「言う」という動作をしているのは部長です。ここで「言う」を「おっしゃる」という尊敬語に変えて表現することで、「言う」という動作をする部長を敬うことができます。
ここで、「思います」について考えてみましょう。「思います」というのは、自分の動作です。もし「思います」を尊敬語にしてしまうと、「思う」という動作をしている自分を敬うことになってしまいます。自分を敬う敬語を使用することは、一般的なビジネスシーンでは不適切です。そのため、自分の動作としての「思います」は、一般的には尊敬語の表現は見られません。
謙譲語とは?
謙譲語は、動作の対象を敬います。尊敬語のように動作をする人を敬うのではなく、その動作の対象を敬うことに特徴があります。例えば「申し上げる」は「言う」の謙譲語ですが、ここでは「申し上げる」を例に、謙譲語の仕組みについて詳しく考えてみましょう。
「私が申し上げる」という表現を例に考えると、「言う」という動作をしているのは私です。ここで、「申し上げる」は「言う」の謙譲語となるので、「言う」という動作の対象、つまり言われている人に対して敬意を示します。
「申し上げる」は尊敬語ではないので、「言う」という動作をする人、つまり私を敬う言葉ではありません。先ほども述べたように、自分の動作を敬う言葉は、一般的なビジネスシーンでは不適切です。しかし、「申し上げる」は謙譲語となるので、「私が申し上げる」のように自分の動作として使用しても、その敬意対象は相手となるので、適切な敬語表現です。
「思います」の謙譲語とは?
「思います」は自分の動作となるので、「思います」を謙譲語にして表現すると、相手を敬うことが可能です。謙譲語は動作の対象を敬うので、自分の「思います」という動作を謙譲語にすることで、その対象、つまり相手を敬うことができるからです。
「思います」の謙譲語の一つに、「存じます」という表現があります。例えば、「お困りのことと存じます」という表現を例に考えてみましょう。「お困りのことと存じます」は、「お困りのことと思います」を謙譲表現にした言葉です。
相手が困っている状況に対して、ただ「困っていることと思います」「お困りのことと思います」と表現するだけでは、「思います」の部分で敬語表現が使用されていません。ここで「思います」を「存じます」という謙譲語にすると、「思います」という動作の対象、つまり相手を敬うことができます。
謙譲語の特徴は?
謙譲語は、自分の動作をへりくだって表現し、自分を下の立場として示すことで、相手を敬う敬語です。そのため、謙譲語は動作の対象を敬うことができます。上で例に挙げた「申し上げる」「存じます」のいずれも、自分の動作をへりくだって表現し、自分の立場を下にして、動作の対象(相手)に対して敬意を示しています。
丁寧語とは?
丁寧語とは、話の相手を敬う言葉です。話の相手を敬うというのは、会話の相手や電話の相手を敬うことを意味します。例えば、会話を「です・ます」調にすると、相手に対して丁寧な印象を与えます。これは、「です」「ます」が丁寧語だからです。
「です」「ます」などの丁寧語を使用することは、話の相手に対して丁寧な印象を与え、相手に対して敬意を示すことができます。ここで、「思います」を例に考えてみましょう。
「思います」は、「ます」という丁寧語が使用されています。「思います」は「思う」を丁寧語にしたもので、「ます」という丁寧語が加わっています。また、先ほど例に挙げた「存じます」も、「ます」の部分で丁寧語が使用されています。
「思います」の代表的な敬語は?
ここまででご紹介した敬語の仕組みをふまえ、「思います」の敬語についてさらに詳しく考えてみましょう。
「思います」の敬語には、「存じます」「存じております」を使用することができます。「存じております」は「思っております」の謙譲語ですが、「思います」の謙譲語として使用することも可能です。例えば、「存じます」だとやや強い表現になる場合は、「存じております」にすると、多少やわらかな表現として伝えることができます。
「存じます」の敬語の仕組みは?
「存じます」は、謙譲語の「存じる」に丁寧語の「ます」を加えた表現です。「思います」は、「思う」に丁寧語の「ます」が加わっています。そのため、「思います」の謙譲語は「思う」の部分を謙譲語の「存じる」に変え、「ます」はそのままにし、「存じます」となります。
「存じる」だけでも敬語表現となりますが、一般的には丁寧語の「ます」を加えて「存じます」と表現します。これは、「思う」を丁寧語にして「思います」と表現する例が多いことと同じ理由です。
ビジネスシーンに限らず、会話の中では丁寧語が幅広く使用されます。「思う」も、そのまま「思う」と使用するより、「思います」と表現した方が幅広く使用できます。同じ理由で、「存じる」も「存じます」と表現する場合がほとんどです。
特に「存じます」は目上の人に対して使用するので、丁寧語の「ます」の使用は必須です。目上の人に対しては、基本的には「です・ます」調で話をするからです。
「思う」の敬語と区別すること
「思います」は自分の動作となるため、敬語は謙譲語の「存じます」を使用しますが、「思う」の敬語は尊敬語・謙譲語・丁寧語の全てが存在します。自分の動作となる「思います」の尊敬語は一般的には考えられませんが、「思う」の尊敬語は存在するので、注意しましょう。
「思う」という動作は、もちろん自分だけではありません。例えば「部長が思う」という表現であれば、「思う」を尊敬語にすることで、「思う」という動作をする部長を敬うことができます。この場合、「思う」の尊敬語としては「思われる」「お思いになる」などがあります。
一方で、「思います」は一般的に自分の動作として使用します。一般的には「私は~だと思います」と表現するからです。もし「部長は~だと思います」などの表現があっても、これは「部長は~だと、私は思います」という意味です。つまり「思います」が自分の動作となることに変わりはありません。
ビジネスシーンで「思います」を使用する例は?
ビジネスシーンで「思います」を使用する場合、「存じます」のように謙譲語にして使用する例が多いですが、「思います」のまま使用することもあります。例えば、同僚に対して使用する場合などは、一般的には「思います」の使用が多いでしょう。
また、目上の人や上司でも、日常的にコミュニケーションを取り、ある程度近い関係であれば、直接の会話の際には「思います」を使用することもあります。ただし、メールなどの文章では、やはり「存じます」を使用した方が好ましいです。
先ほど述べたように、「思います」にも「ます」という敬語表現が使用されています。一方で、「ます」は丁寧語となるだけで、謙譲語ではありません。謙譲語として使用する場合、「存じます」に変えなくてはなりません。特に目上の人に使用する場合、「思います」ではなく「存じます」を使用する必要があります。
「思います」の例文は?
次に、「思います」の例文を詳しく見ていきましょう。「思います」の例文は、謙譲語の「存じます」の例文を合わせて考えるとわかりやすいです。以下、それぞれ整理していきましょう。
「だと思います」
「思います」の代表的な表現として、「だと思います」が挙げられます。「だと思います」の例文としては、次のようなものがあります。
・日常的に努力をしているからこそ、彼は優秀なのだと思います。
・状況を幅広く理解する習慣があるからこそ、適切な判断ができるのだと思います。
「嬉しく思います」
「嬉しく思います」という表現も、幅広く使用されます。「嬉しく思います」の例文としては、次のような例があります。
・このような形で参加させていただき、大変嬉しく思います。
・ご連絡いただき、とても嬉しく思います。
・招待していただき、誠に嬉しく思います。
そのまま「嬉しく思います」と表現しても良いですが、「大変嬉しく思います」「とても嬉しく思います」「誠に嬉しく思います」のような表現で使用することもできます。
「存じます」
「思います」と比較し、「存じます」の例文もおさえておく必要があります。「存じます」の例文は以下のとおりです。
・ご多忙のことと存じますが、何卒よろしくお願いいたします。
・ご挨拶に伺いたく存じます。
・お役に立てるかと存じます。
「思います」の類義語は?
「思います」の類語は、「思う」の類語も含めて考える必要があります。以下、詳しく見ていきましょう。
「思う」の類義語は?
「思う」の類義語は、「考える」「みなす」「推測する」「感じる」などがあります。「思う」はさまざまな使い方ができるので、類義語も多いですが、代表的な類義語としては「考える」などがあります。
「思います」の類義語はどうなる?
「思います」の類義語は、「考えます」が代表的です。先ほど述べたように、「思う」には「考える」「みなす」「推測する」「感じる」などの類義語がありますが、「思います」と同じように使用する場合は、「考えます」が自然な表現と言えます。
「思います」と「存じます・考えます」の違いは?
「存じます」は「思います」の謙譲語で、「考えます」は「思います」の類義語ですが、これらの違いを整理しておくことが重要です。以下、詳しく見ていきましょう。
「思います」と「存じます」の違いは?
「存じます」については先ほどもご紹介しましたが、「思います」との違いについて、再度整理しましょう。
「思います」と「存じます」の違いは、使い分けにおいて重要です。「思います」の謙譲語が「存じます」となるので、両者の違いは比較的わかりやすいでしょう。一方で、使い分けには十分に注意しなくてはなりません。
例えば「彼は優秀なのだと思います」という表現を例に考えてみましょう。これは、同僚などとの会話や、比較的近い関係にある上司や目上の人との会話などで考えられる表現です。メールなどの文章では、このような表現はあまり見られないでしょう。
ここで「存じます」を使用すると、やや違和感があります。もし同じ内容で「存じます」を使用するのであれば、「彼は優秀な人材であると存じます」などの表現を使用します。このように、「思います」と「存じます」を使い分ける場合、他の言葉にも注意し、違和感のない表現にする必要があります。
「思います」と「考えます」の違いは?
「思います」と「考えます」の違いはややこしく、「思う」と「考える」の違いから整理する必要があります。以下、詳しく見ていきましょう。
「思う」と「考える」の違いは?
「思う」は、「考える」「判断する」「信じる」「決意する」「想像する」「予想する」などの幅広い意味があります。「思う」の意味の中に「考える」が含まれているため、「思う」は「考える」よりも幅広い使い方ができます。この点が「思う」と「考える」の大きな違いです。
「考える」は、「判断する」「予測する」「決意する」などの意味があり、これらは「思う」の意味にも含まれています。しかし、「思う」の意味に含まれている「信じる」は、「考える」とはニュアンスが異なります。「思う」を「信じる」の意味で使用することはありますが、「考える」を「信じる」の意味で使用する例は少ないです。
このように、「思う」は「考える」よりも広い意味で使用されます。
「思う」と「考える」のややこしい違いは?
「思う」と「考える」が持つ「判断する」という意味は、「信じる」と意味が似ていますが、「考える」の場合は「信じる」とはニュアンスが異なります。ややこしいですが、「判断する」という意味で使用する場合、「考える」は「結論を導き出す」というニュアンスです。これは「信じる」とは異なります。
「思う」の場合、「これで良いと思う」であれば、「これで良いと判断する」「これで良いと信じる」のいずれの意味でも使用できます。一方で、「これで良いと考える」の場合、「これで良いと判断する」という意味はあっても、「信じる」とは異なったニュアンスです。
「思います」と「考えます」の意味の違いは?
「思います」と「考えます」の違いは、「思う」か「考える」かの違いです。上で述べたように、「信じる」という意味で使用したい場合など、より幅広い意味で使用するには「思います」が適切です。「考えます」だとニュアンスが異なるので、使い分けに注意しなくてはなりません。
また、ビジネスシーンで謙譲語として使用する場合には、「思います」と「考えます」のいずれも、「存じます」と表現しましょう。「存じます」の「存じる」は、もともとは「存ずる」という言葉ですが、「存ずる」は「思う」「考える」の謙譲語です。つまり、「存じます」は「考えます」の謙譲語としても使用できます。
敬語表現と例文から使い方を知っておこう
今回は、「思います」の敬語や例文、類義語などをご紹介しました。「思います」は「存じます」という敬語にして使用する例が多く、「存じます」はビジネスシーンでは重要な表現です。一方で、同僚との会話など、ビジネスシーンで「思います」が使用されることもあります。「嬉しく思います」などの表現をもとに考えると、イメージが浮かびやすいのではないでしょうか。
「思います」の類義語や「存じます」の例文も含め、「思います」の使い方をおさえ、ビジネスシーンで活かしてみてください。