「吹聴」の意味と使い方・読み方・類語・語源と言い換え表現・敬語

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「吹聴」意味を知っていますか?正しく読めますか?

「吹聴」という言葉を知っていますか。話し言葉では日常的に使う言葉ではありませんが、本や雑誌を読んでいると、時々見かける言葉です。多くの場合、「~する」を後ろにつけて「吹聴する」という動詞として使われます。

ところであなたは「吹聴」を正しく読むことはできますか。

「吹」の音読みは「スイ」ですが…

二字熟語ですからどちらの字も音読みだ、と察しはつくでしょう。ですのでつい「すいちょう」と読んでしまう方が多いのですが、それは間違いです。「吹聴」は、正しくは「ふいちょう」と読みます。

「吹」を「ふい」と読むのは特別な読み方です。「吹聴」以外では、「吹子(ふいご、火をおこしたり火力を強めたりする時に使う道具のことです。鞴、吹革とも書きます。)」ぐらいしかありません。

なぜこのような特別な読み方をするようになったのでしょうか。

もともとは「風聴(ふうちょう)」だった

「吹聴」は、「風聴(ふうちょう)」という言葉が転じてできた、とされているため、「ふいちょう」という特別な読み方をするようになりました。

「風聴」には下記のように二つの意味があり、以下の後者の方の意味だけ一人歩きする形で、「吹聴」に転じていったと考えられています。

ふうちょう【風聴】① 風のたよりに聴くこと。うわさ。風聞。② 世間に言いふらすこと。

https://kotobank.jp/word/%E9%A2%A8%E8%81%B4-371084

「吹」の訓読み「ふ(く)」にはこんな意味も

「吹」を訓読みにすると「ふ(く)」ですが、「吹く」という言葉には、調子に乗って出まかせを言う、という意味もあります。周囲から見て、決して感心できる言動ではない、ということがイメージできます。「ほらを吹く」という言葉はよく使われますので、いい意味ではない、ということがイメージしやすいでしょう。

ふ・く【吹く/噴く】2㋕(吹く)出まかせや大げさなことを言う。「ほらを―・く」[補説]2㋕は「また、調子に乗ってふいている」のように自動詞的にも用いる。

https://kotobank.jp/word/%E5%90%B9%E3%81%8F-617068#E3.83….

「吹聴」は「あまりよくないことを言いふらす」こと

以上のことから、「吹聴」は、「いいことも悪いことも、あることもないことも見境なく言いふらすこと」という意味になります。あまりいい意味では使われない言葉です。

ですから、人の善行や吉報を広く伝える時は「吹聴」という言葉は使いません。つまり「3丁目の○○さんの息子さんが連続空き巣犯を取り押さえた、という話を吹聴する。」「○○係長が婚約されたということを吹聴する。」というのは間違った使い方だ、ということです。

また、内容に良し悪しのない事項を大人数に伝える時にも使いません。たとえば「試合の日程を吹聴する。」「明日の社長の予定を吹聴する。」などという使い方もしません。

「吹聴」するのはどんな内容の話?

人が相手に吹聴するのは、決していい内容ではない、ということがわかりましたが、具体的にはどんな内容の時に「吹聴」という言葉を使うのでしょうか。

いろいろな場面が想定できますが、基本的には「誰しもが『人に言われたら困る、知られたら嫌だ』と感じること」や「聞くと不愉快になること」が、吹聴される内容になります。

嘘(不確かなことも含めて)

誰でも、自分のことで「真実ではないこと」を言われると嫌がります。言った方も、それが真実ではないことがわかっていると、心のどこかに引っかかるものが残るでしょう。

また、それが真実ではないことを知らずに、もしくはそれが真実であるかどうかわからないのに、つい話してしまうということもあるでしょう。その場合、あとでそれが真実ではなかったと知ると、落ち込むことになります。

嘘は、吹聴する方にもされる方にも嫌な気分を残すものです。

悪口

悪口は、吹聴する側はスッキリする、ということもあるでしょうが、それを聞いている側は嫌な気持ちになります。人の悪口ばかり言っている人のそばにいると自分の心まですさんでしまいそうな気持ちになったことのある方は多いのではないでしょうか。

また悪口は、言われる本人を一番傷つけます。それがたとえ事実だったとしても、です。自分が短所だと自覚していることをわざわざ悪口で言われたら自信をなくしてしまうでしょう。

逆に長所を悪口にされることもあります。たとえば「誰からも好かれる、明るい存在」という長所を「あの子、モテるからって、友だち多いからって、いい気になってる。」と悪口にしてなじられたら、言われた方は場合によっては、せっかくの長所を短所ととらえてしまい、やはり自信をなくしてしまうことになりかねません。

自慢話

善行は、第三者が誇張なしに事実だけを広める分には構わないのですが、当人が話してしまうと自慢話になってしまいます。自慢話は悪口と同じく、たとえ事実であっても聞いていて不愉快になる話の代表格です。しかも、話している方は楽しい、いい気分なので、放っておくと延々と続くこともあり、非常に厄介です。

自慢話は、すべて寸分たがわず事実だというのであれば、笑って聞き流すこともできますが、話が大げさになり、さらに大げさが過ぎて嘘になってしまうこともあります。聞いた自慢話があとからほとんど嘘だとわかると、余計嫌な気持ちが残ります。

「吹聴」を別の言い方にできないだろうか?

「吹聴」する、という動作は、あまりよくないことですが、日常的にあちらこちらで行われています。しかし「吹聴」という言葉自体は日常的には使いません。

「吹聴」を、もっと簡単に、日常的に使う言葉で言い表すことはできないでしょうか。

「言いふらす」

一番一般的なのは「言いふらす」でしょう。「吹聴する」と同じように、「言いふらす」という一言を聞いただけで、その内容は決して感心できるものではない、ということがわかります。「吹聴する」と「言いふらす」は、完全に同義語だと考えて差し支えありません。

「触れ回る」

「触れ回る」は、本来は「お触れ(役所など、上位の者から一般大衆に知らせる決まりや命令)を人々に広く伝える」「芝居や相撲といった興行の日時・内容を人々に広める」「商売人が売り物の名前を広める」という意味です。広く伝える、という意味が転じて、「(あまりよくない内容を)広く言って回る」という、「吹聴」と同じような意味を持つようになりました。

「噂する」

「噂する」という言葉は、「今、その場にいない人についてあれこれと話して広める」という意味がありますが、その内容が事実なのかどうかは問いません。事実もあれば事実でないこともある、ということです。「噂する」も、「吹聴する」と同じように「ある人についての、あることないことを話して回る」という意味になります。

「吹聴」と混同しやすい言葉

「吹聴」と似ているようで、意味がまったく違う言葉があります。同じ意味だと勘違いして使ってしまって、言いたいことが相手に全然伝わらなかった、ということのないように気をつけましょう。

「吹聴」と「風潮」

「風潮」は、「吹聴」の語源となった「風聴」と読みが同じです。また、「風」という字が同じなので、字面も似ています。さらに「吹聴」と読みが似ています。

しかし「風潮」は、「風によって変わる潮の流れ」「時代によって変わる世の中のあり様」という意味なので、「吹聴」や「風聴」とは意味がまったく違います。

吹聴と書こうとして、間違えて「風潮」と書いてしまった、読みが似ているので言い間違えてしまった、ということが起こる可能性がありますので注意しましょう。

「吹聴」と「拝聴」

「吹聴」と「拝聴」も、読み方が似ているので聞き間違えたり言い間違えたりしやすいです。

「拝聴」は「聞く」を敬語表現にしたもの(正確には謙譲語)です。目上の人の話を聞く、という意味です。従って、「吹聴」とはまったく意味が異なりますので気をつけましょう。

「吹聴」と「風聴」

「吹聴」は「風聴」が転じてできた言葉ですが、いつも同じ意味になるわけではありません。「風聴」には、「風のうわさに聞く」という意味もあります。風のうわさに聞く内容は、悪いことばかりではありません。いいこともあります。

「風のうわさに聞く」という意味のつもりで「吹聴」を使うと間違いになってしまうので気をつけて下さい。

「吹聴」と「流布」

テキスト「流布」は、世に広まる、広く知れ渡る、という意味がありますが、この言葉単独では、広まる内容が悪い内容である、という意味は持っていません。いい内容が広まる場合にも使います。

もし「吹聴」という表現を「流布」という言葉を使って言い換えるならば、「私の知られたくない秘密が流布してしまった。」というように、よくない内容であることを示す一言を加えなければなりません。

また「流布」の場合は、「吹聴」と違って、広め始めた人が特定されません。誰が広めたのかわからないが、気がついたら広まっていた、というニュアンスです。

「吹聴」と「暴露」

「暴露」には、「まだ誰にも知られていない悪事を明るみにする、もしくはそれが明るみになる」という意味がありますが、「吹聴」のような、人々に広める、という意味までは含んでいません。

もちろん実際には、悪いことは暴かれるとほぼ自動的に世に広まってしまうのですが、それは「暴露」されたことを誰かしらが広めているからです。「暴露」という言葉だけでは広まるところまで表すことはできません。

「吹聴」と「喧伝」

「吹聴」も「喧伝」も、「いいことも悪いことも関係なく広める」というところは同じですが、その広まり方が若干違います。

「吹聴」は、一人の言葉が、一人もしくは少人数の複数の耳に直接入る距離で伝わっていくので、広まり方が静かですが、「喧伝」は、「やかましい、騒がしい」という意味を持つ「喧」という字を使っているところから、不特定多数へ大声で伝える、という意味合いがあります。

伝わり方のニュアンスを表現したいのなら、「吹聴」の代わりに「喧伝」を使うことはできなくなります。逆もまた然りです。

「吹聴」と「カミングアウト」

「カミングアウト」は、「自分自身の秘密を打ち明ける」という意味があります。その秘密は、今までできれば人に知られたくなかった内容です。それを、他人から白眼視されるのを覚悟の上で打ち明ける、という意味合いがあります。

「吹聴」は、他人のことを広めるとしたらそれは、その人が知られたくない秘密であることもありますが、自分自身のことを広めるならば、その内容は自慢話になります。知られたくないどころか、話したくて仕方がない内容です。なので、「カミングアウト」とはまったく意味が違う、ということになります。

「吹聴」を敬語表現にしたい

こうして、ある語句の意味や使い方を考える上でどうしても気になるのが「敬語表現はどうすればいいのか。」です。

「吹聴」という言葉を敬語表現にするにはどうしたらいいでしょうか。

いい意味のない言葉は敬語にならない

「吹聴」という言葉は、真実かどうかわからないことや人の悪口、自慢話などを周囲に言いふらすという、決していい意味を持たない言葉です。

たとえば、もしこの言葉をあえて敬語表現にすると、「部長が、社長の不倫を吹聴された。」となります。部長という目上の人がする行動を「~される」という表現を使って敬語にしましたが、敬語は目上の人を敬う言葉のはずなのに、この例文だとあまり部長を敬っている感じがありません。

それは、「吹聴」という行動をする人自体が、あまり尊敬されないからです。社長の、あまり人に知られたくないこと、言わなくてもいい話をあちこちで吹聴している部長が、人の上に立つ、尊敬されるべき地位にいるにもかかわらず、さげすまれている感じがします。

もともといい意味を持たない言葉は、どう頑張っても敬語にならない、ということがわかります。

「目上の人の吹聴」は吹聴するべからず

部長とて、社長のよからぬ噂を自分が吹聴している、などということを知られたくないでしょう。ですから、もしあなたが「部長が、社長の不倫を吹聴された。」などと、周りの人に言いふらして回ったら、それこそ「部長の尊敬できない言動を吹聴している」ということになります。

どんなに「吹聴される」などと敬語表現にしてみても、部長を尊敬しているどころか悪意さえ伝わりますし、何よりも、あなた自身が「吹聴」という、尊敬されない行動をする人、というイメージがついてしまいます。

目上の人にとってもあなたにとっても、いいことはありませんので、「吹聴」をわざわざ敬語表現にするのはやめておきましょう。

「いい意味ではない」ということを覚えておこう

「吹聴」という言葉自体は、あまり日常会話では使いませんが、日常のあちこちで行われている動作です。しかしそれは、真実なのかどうか確認できていない、嘘の可能性が高い話や人の悪口、自慢話などを言いふらして回ることで、人として感心できる行動ではない、ということを覚えておいて下さい。

「人に広く知らせること」と勘違いして「来週の行事日程、みんなに吹聴しといて。」などと言ってしまうと間違った使い方になるので注意しましょう。

「吹聴」で得をする人は誰もいません。よくない噂を吹聴された人が傷つくのは当然のことですし、それを聞く方も嫌な気持ちになります。吹聴する人も、「あの人はすぐあちこちで自慢話をする。」「他人のあることないことを平気であちこちでしゃべる。」などと悪いレッテルを貼られてしまいます。

人の噂や自分の自慢話を吹聴しないこと、誰かから何かしら吹聴されても、笑って聞き流すこと、それが一番です。

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