「ご請求書」の正しい使い方
「ご請求書」という文字は、これまでに幾度となく目にしたことがあることでしょう。しかし、いざ自分がご請求書を発行する立場になってみると、慣れるまでは難しいと感じる場面があります。
ご請求書の正しい使い方は、実はとてもシンプルです。自分や相手との関係がスムーズにいくようにアレンジを加えることもできます。
それでは、ご請求書の正しい使い方をみていきましょう。
在中
ご請求書を封筒で発送する場合には、必ず封筒に「ご請求書在中」と書きましょう。ご請求書は、お金をもらうための大切な書面です。受け取る人が一目見てすぐに「大切な書面だ」「請求書がきた」とわかるようにしたほうが良いことは明白です。
「ご請求書在中」は手書きでも良いですし、いまでは文房具屋さんだけでなく、100円均一ショップにも売っています。赤い字や赤色のスタンプのほうが、より重要な書類だという印象を与えることができます。色に特に決まりはありませんので、赤だけでなく、黒でも青でもかまいません。
メール
ご請求書をメールで送付することは問題ありません。ただし、ビジネスの場面では、メールの本文にご請求書をそのまま貼り付けるよりは、pdf形式のファイルで添付して送ることが多く見受けられます。
ネットショップの個人商店などでは、メールの本文にご請求書を書くケースもよくみられます。しかしこの場合も、商品を送る際にご請求書を同包したり、お金を受け取った後の商品発送であれば、明細を記載した領収書を同包したりすることが一般的です。
送付状
ご請求書をFAXで送る際には、1枚目に送付状をつけるのが一般的なマナーです。送付状はつけ紙ともいわれます。FAXは文面がすぐ見えることから、いきなりご請求書を送ることは避けた方が良いとされています。金額が目に付いてしまうからです。
どういうことかというと、経理担当者以外の一般社員には、こまかな請求金額を知らせる必要は無く、多くの会社では敬遠されるということです。ご請求書を送付状もなくFAXで送ると、そういった一般社員が目にする機会が増えてしまいます。
送付状をつけることで、「これから請求書がくるんだな」ということが相手にもわかり、不用意に関係のない人に見られる可能性を減らすことができます。
ご請求書を送る方法
ご請求書を作成したら、次のステップはそれを相手に届けることになります。ご請求書を送る方法は1つではありません。ここからは、ご請求書を送る方法についてみていきます。
まず、ご請求書を送る前に、必ず確認しておくべきポイントが2つあります。ご請求書の内容に間違いがないか、ご請求書の送付先、請求先に間違いがないかです。これらを確認したら、ご請求書を送付するステップへうつります。
メール
メールでご請求書を送る場合は、pdfファイルで添付して送るのが一般的です。まずはメールの文面を作成します。そして、相手のメールアドレスも確認します。TOだけでなく、CCやBCCもきちんと確認しましょう。
それらができたら、pdfファイルを添付します。メールを送った後は、そのことを取引先に電話で伝えるようにしましょう。
FAX
FAXでご請求書を送る場合には、送付状をつけましょう。送付状と一緒にご請求書を送ります。FAXを送ったら、確認の電話を相手先にいれるようにしましょう。
「いまFAX送りましたのでのちほどご確認お願いします」と一言添えると、他のFAXにうもれてしまう心配もありませんし、より丁寧な対応という印象を相手に与えることができます。
郵送
郵送でご請求書を送る場合、一般的には長3(長型3号)という封筒を用います。かならずこれでなければいけないということではありませんが、ほとんどの請求書はこの封筒で届きます。
いきなり請求書だけを送るのではなく、一緒に添え状を書いていれましょう。そして、請求書はきれいに折りましょう。折るのに失敗した場合、折り直しは避けたほうが良いでしょう。ご請求書にいくつもの折れ目の線がつくことは好ましくありません。
封筒の表には「ご請求書在中」と書きましょう。スタンプでもかまいません。色は黒でも青でも良いのですが、赤色を使うケースが最も多いでしょう。
宅配便
ご請求書は「信書」であるため、宅配便で送ることはおすすめできません。メール便で送ることもできません。なぜならば、宅配便で送れないもののなかに信書が入っているからです。信書の取り扱いは郵便のみとなっています。
確実に、しかもできるだけ安く、相手先に届いたかを確認したいという理由から、宅配便やメール便で信書であるご請求書を送るというケースもみられます。しかし、してはいけないことをしているということを忘れてはいけません。
ご請求書は正しい敬語なのか
ご請求書は、敬語表現として正しい使い方です。敬語表現のなかの丁寧語にあたります。したがって、「請求書」ではなく「ご請求書」と書くようにしましょう。
ご請求書の書き方
ご請求書には、いれなければならない項目が5つあります。これは、国税庁が推奨している項目だからです。それぞれについて詳しくみていきましょう。
書類作成者の氏名や名称
ご請求書に必要な項目として、ご請求書を作成する氏名や名称があります。氏名や名称のみではなく、住所や電話番号などもわかりやすく書くと良いでしょう。
ご請求書を作成するのが法人(会社)の場合は、住所や名称などの横に角印を押すのが一般的なビジネスマナーです。
取引年月日
取引をした年月日も、ご請求書には欠かせない項目です。取引と同時にご請求書を発行する場合には、請求年月日のみでも良いでしょう。
月ごとにまとめて後払いをするタイプのご請求書では、取引をした日とその内容を一覧にした明細を付けることが多いです。商品内容を相手にわかりやすく書いたり、商品の単価と数量をあわせて書くなどの工夫があると、相手先からの問い合わせの連絡が減るでしょう。
取引内容
取引内容は、できるだけわかりやすく書くようにしましょう。相手に伝わりやすい書き方にしておかないと、「この項目について教えてください」と問い合わせがくることになります。
そうすると、ご請求書発行元の仕事が増えます。そして何より「よくわからない内容で請求が来た」と相手に不信感を与えてしまいます。ここは注意が必要なポイントです。
取引金額
取引金額は、請求書のなかでも特に大切な項目です。間違いがないように細心の注意を払いましょう。小計、消費税、合計金額と項目を分けることで、わかりやすくなります。
消費税については、1円未満の単位の端数を切り捨てる場合が多いですが、会社によっては端数切り上げのところもあります。細かな計算が合わないという場合は、この消費税の項目をまず確認してみましょう。
書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
ご請求書を受け取る側の会社の名前や代表者の名前などもご請求書には必要です。それは、これがないと誰に請求しているのかがわからないからです。相手の名前などだけではなく、住所もあわせて書くことが一般的です。
会社名や屋号、個人の氏名を書くのですが、敬称には注意しましょう。会社ならば「御中」、個人名なら「様」です。会社名や名前は間違えると大変失礼にあたりますし、「これはうちにきた請求書ではない」といわれてしまうこともあります。間違いのないように注意が必要です。
その他にご請求書に必要な項目
ご請求書に必要な項目は、まだまだあります。ご請求書は、相手とのやり取りを円滑にするべき書面なので、必要に応じてアレンジすると良いでしょう。
たとえば、請求書の番号をつけておくと、整理や分類をするのが楽になります。現金で直接支払ってもらう方法以外に、近年では振込も増えてきました。そういったことから、振込先の銀行名や支店名、口座番号などを書いておくのも良いでしょう。
振込料を請求書発行元で負担するか、お金を払う方が負担するかは、金額が大きくなるほど問題になってきます。あらかじめどちらが負担するかを決めておくと良いでしょう。多くの場合、振り込む方が振込料を負担しているのが現状です。
ご請求書の読み方
「ご請求書」は「ごせいきゅうしょ」と読みます。ご請求書が届いたら、いつの請求分なのか、ご請求書がいつ作成されたのか、請求金額、支払期日などを確認しましょう。
そして、ご請求書を確認して、納得のいかない点やよくわからない点は、遠慮せずにご請求書の発行元に連絡しましょう。
ただし、そのご請求書がまったく身に覚えのない架空請求の場合もあります。身に覚えがない場合は、ご請求書の発行元に問い合わせをせずに、消費者生活センターなどに連絡し、相談しましょう。
架空請求の場合は、ご請求書発行元に問い合わせの電話をすることで、こちらの個人情報が把握され、そこからさらに悪質な請求をかけてくることがあります。
取引自体に覚えがあるが内容に疑問点がある場合にはご請求書発行元へ、身に覚えのないご請求書がきたら消費者生活センターへ相談しましょう。
ご請求書に印鑑は必要か
ご請求書に印鑑は必ず押さなければならないということはありません。ご請求書に印鑑がなくても、請求書としての効力は変わらないからです。
一般的には、請求側の会社名の横に角印をおします。角印は、会社の認印のことです。無くても良いのですが、あったほうが良いでしょう。角印の代わりに、経理担当者の認印が押されている場合もあります。
ご請求書に印紙は必要か
50000円以上の取引がある場合は、収入印紙を貼らなければなりません。それでは、ご請求書にも貼らなければいけないのでしょうか。ご請求書には、収入印紙を貼る必要はありません。
ご請求書には収入印紙を貼らなくても良いのですが、領収書や契約書には収入印紙を貼らなければなりません。したがって、ご請求書と領収書が一体となっている書面では、収入印紙を貼る必要があります。
収入印紙は、間違えて貼ってしまった場合に、それをはがして再利用することはできません。そういった場合には、税務署に間違えて収入印紙を貼ってしまった書類を持っていきましょう。簡単な手続きで収入印紙代を還付してもらうことができます。
「ご請求書」と「御請求書」はどちらがいいのか
「ご請求書」と書いても「御請求書」と書いても、どちらでもかまいません。一般的には、「ご請求書」のほうが目にする機会が多いと言えます。
御請求書のほうを使うケースは、請求金額が高額な場合が多くみられます。ご請求書の「ご」を「御」にするだけで、格式があがったような雰囲気がだせるからです。「お見積書」と「御見積書」の場合と同じですが、「御」を使ったほうが、少しかたい印象を与えます。
「ご請求書」でも、「御請求書」でも、どちらでも失礼にはあたりませんので、金額や相手に応じて、与える印象を考慮しながら柔軟に対応すると良いでしょう。
「ご請求書」を出すときのポイント
国税庁が推奨しているご請求書の必要項目は、「書類作成者の氏名や名称」「取引年月日」「取引内容」「取引金額」「書類の交付を受ける事業者の氏名や名称」の5項目です。
しかし、ご請求書は相手とのやりとりをより円滑にする側面もあることから、これら以外にも必要な項目がでてきます。ご請求書にはこれといったきまりはありません。ご請求書を発行する側と、ご請求書を受け取る側の双方が、その書面をみてすぐにわかる内容にすれば良いということです。