「差し上げる」の使い方・例文・類語・失礼なのか|敬語/相談

ビジネススキル

日本語を覚える際に効率の上げ方

日本語を学習する場合はまず「1つずつの言葉に与えられた意味・用法を根本的に覚えること」と、それらの言葉がいかに多くの形容表現をもって使い分けられているかを確認することが大切です。

1つ1つの言葉の中には、意味や用法が非常に似ている語群などがあるため、それぞれの言葉を覚える際に「複数の言葉の意味を混同して覚えてしまう」というカオティックな学習法をしてしまう場合があります。

このような「それぞれの言葉の意味・活用法を混同してしまわない学習法」を身に付けるためにもまずは例文などによって言葉の使用法をきちんと学習しておき、それぞれの言葉の活用法をいろいろな場面を付随させて使い分けることが大切です。

敬語表現の覚え方

日本語にはいろいろな表現方法があり、そのうちに敬語表現があります。敬語表現というのはその名のとおり、「目下の人から目上の人に対して使われる表現」をはじめ日常生活でも改まった場面では普通に使われる表現となります。

この敬語表現の覚え方については特に「実践的に覚える方法」が最も効果的で、実際にいろいろな敬語表現を使って覚えていくことが最適の方法になるでしょう。例文で使ってみたり、あるいは会話をする際に使ってみたりする形で、とにかくさまざまな場面で敬語を使っていくことが大切です。

日頃から表現の練習をしておく

これも特に大切なことですが、言葉の学習や敬語表現などをある程度覚えた後は、その言葉を日頃から反復して練習していくことが大切です。言葉は日頃から使って覚えることが特に大切になるため、そうした反復練習の成果によって「自分の言葉・表現」としていろいろな言葉を根本的に学習することができるでしょう。

「差し上げる」の意味

さて、先述では主に「言葉の学習方法」のいくつかをご紹介しましたが、ここから「差し上げる」という言葉の具体的な意味や使い方についてご紹介していきます。まず「差し上げる」という言葉の意味は「特定の誰かに何かをあげる・やる・差し出す・提出する・提示する」などと、いろいろな「あげる」形での行動を指します。

特に「あげる」という言葉を謙譲語表現によって言い表した言葉が「差し上げる」となるため、この言葉が使われる場面の多くはビジネス上のやり取りや、日常生活でも改まった場面が主に想定されます。

・あなたにこの書物を差し上げます。
・今回の会議で使用しました資料を差し上げるつもりでいました。
・お相手差し上げるつもりです。

このように、「差し上げる」の意味には「物をあげる」場合と「何かをしてあげる」という意味合いがあります。

自分は持っているが相手は持っていない

先述の続きのようになりますが、「差し上げる」と言う場合にはまず、「相手が持っていない物をあげる」という姿勢になります。これは基本的に「相手から○○を提示してくれ」と言われた場合をはじめ、差し上げる側から自発的に「○○を差し出す」という姿勢が含まれます。

「差し上げる」の敬語での使い方

「差し上げる」という言葉は先述のように、基本的に謙譲語としてあるため、そのまま使っても敬語表現として認められます。そのため、わざわざ「差し上げる」という言葉を特別な方法で敬語表現に置き換える必要はなく、場面・状況を見計らった上で、適切な表現を心掛けることが必要となります。

・○○を差し上げる(特定の物をあげる場合)
・○○して差し上げる(行動してあげる場合)

基本的に「差し上げる」という言葉には上記の2種類の活用法があるため、それぞれの場面を想定した上で適切な表現を把握しておくことが大切になります。

謙譲語

謙譲語というのは一般的に「話者と相手の立場や関係性を問わず、話者がへりくだった姿勢をもって相手に敬意を示す敬語表現」となり、これはビジネス上のやり取りや日常生活でも多くの場面で使われる敬語表現として認められます。

この「差し上げる」という言葉はそもそもが「○○をあげる・○○してあげる」という言葉の謙譲語表現としてあるため、話者は最初から相手に対してへりくだった姿勢をもって会話をする形になります。

尊敬語

尊敬語というのは一般的に「話者が目上の相手に対して、一方的に敬意を示して伝える敬語表現」となるため、これは主にビジネス上のやり取りで使われることが多いでしょう。日常生活でも目上の人(年配の人)や尊敬する人などをはじめ、自分よりも立場が上にある人に対して使われることが多くなります。

「差し上げる」という言葉は先述のように謙譲語表現として認められるため、もし「あげる」という言葉を尊敬語表現で伝える場合は基本的に「自分の行動」を指すのではなく、「相手の行動」を指して尊敬語表現を示す形になります。

・お与えになられる
・くださる
・お渡しになりました

これらの表現が主に尊敬語による「あげる」の表現として認められます。

丁寧語

丁寧語というのは一般的に「です・ます調」によって相手に伝えられる「丁寧な言葉遣いによる敬語表現」として認められます。そのため「差し上げる」(あげる)という言葉を丁寧語表現する場合でも「あげます」や「くれました」、「くださいました」などの表現でOKです。

「差し上げる」の例文

先述のように日本語(言葉)を覚える際にはまず「例文を自分で作り、その例文でいろいろな場面を想定して言葉の意味や表現を学習する」という姿勢が大切になります。

・わたしは彼にこの資料を差し上げました。
・こちらのプラントを差し上げるつもりです。
・彼らの話を聴いて差し上げるつもりにしています。
・子守唄を歌って差し上げる。
・ピアノを弾いて差し上げる。
・ご案内差し上げる

上記の例のように、主に「○○をあげる」という場合と「行動してあげる」といった2種類の用法に分けられるため、「差し上げる」という言葉の用法をしっかり学んだ上で、状況に見合った使い分けをすることが大切になります。

差し上げます

「差し上げました」というのは文字どおり「差し上げる」の過去形の表現となります。何か物をあげた後、行動してあげた後で示される表現となります。

・わたしは彼に道案内をして差し上げました。
・ピアノを弾いて差し上げました。
・浪曲を演奏して差し上げました。
・資料を差し上げました。

このように、過去において「○○をあげた」や「行動してあげた」ということを後述する形となります。

また、「道案内をして差し上げました」という表現がしばしば「動詞の重複表現」として認識される場合がありますが、この場合は「してあげました」という「あげました」の部分に「差し上げる」が相当するため、この「差し上げる」は副詞的表現となるのでこの形でOKです。

相談差し上げる

「相談差し上げる」という表現も先述の「道案内をして差し上げました」と同じように、「差し上げる」という言葉が「相談する」という動詞の副詞的表現となります。そのため、「相談して差し上げる」という形でもかまいません。

・A国の政治的戦略についての相談をして差し上げる。
・もっと効率のよい家計の工夫についての相談をして差し上げる。
・クライアントのニーズについて相談差し上げる。

ご連絡を差し上げる

「ご連絡を差し上げる」という表現もよく聞く言葉でしょうか。これは主にビジネス上のやり取りで使われることが多く、また日常生活でも初対面の人との会話の場合であれば普通に使われる表現となります。

・入試のことについてご連絡を差し上げる。
・今週の土曜日に、ピクニックの内訳についてのご連絡を差し上げます。
・資料請求につきましてご連絡を差し上げるつもりです。

引き出物を差し上げる

「引き出物を差し上げる」というのは「物をあげる」といった場合の典型的な例として認められます。特に引き出物でなくても、他の物を誰かにあげる場合であればすべてこの「○○差し上げる」という「○○をあげる」の形になります。

・結婚式のお祝いに、高級な引き出物を差し上げます。
・AさんとBさんの婚約のお祝いに、Bさんへの着物の引き出物を差し上げました。
・現金を引き出物として差し上げるのはいかがなものかと存じます。

して差し上げる

先述でもご紹介しましたように、「行動してあげる」、「誰かのために何かをしてあげる」という場合にはこの「○○して差し上げる」という形の文法が取られます。この場合は「物をあげる」という名詞との組み合わせの場合とは違い、動詞との組み合わせによる表現となります。

・相談して差し上げる。
・ご案内差し上げる。
・ご連絡して差し上げる。
・コピー用紙を購入して差し上げる。
・飲食物を豊富に用意して差し上げる。

「差し上げる」と「させていただきます」

「させていただきます」というのは主に謙譲語表現としての最上級の敬語表現となるため、非常に多くのビジネスシーンでも頻繁に使われています。「差し上げる」という表現も同じく謙譲語表現としては上級の敬語表現となるため、両者の敬語表現はあらゆる場面において普通に通用する言葉となるでしょう。

・お電話をさせていただきます(お電話を差し上げる)。
・ご案内をさせていただきます(ご案内差し上げる)。
・お手を引かせていただきます(お手を引いて差し上げる)。
・ご連絡させていただきます(ご連絡を差し上げる)。

このように、「差し上げる」と「させていただきます」という言葉は多くの場面で併用される形で使われます。

「差し上げる」の類義語

「差し上げる」の類義語についてのご紹介ですが、これは「差し上げる」の元々の意味である「あげる・してあげる」の類義語を調べる形になります。

差し出す/あげる/やる/呈する/提出する/提示する/掲示する/見せる/進呈する/贈呈する/渡す/奉納する/献上する/くれる/持たせる/賜う/与える/授与する/付与する

上記の言葉がまずピックアップされますが、どの言葉の意味合いにも「○○を相手に差し出す・あげる」という用法が含まれます。

「差し上げる」の使い方

「差し上げる」の使い方についてですが、先述しましたように多くは「ビジネス上のやり取りをはじめ、日常生活でも非常に改まった場面で使われる場合」が非常に多く認められます。「○○をあげる」という意味合いを持つ言葉の謙譲語表現となるため、その話者と相手の立場は自然に「それなりの上下関係にあること」がうかがわれます。

また「させていただく」という言葉と多くの場面において併用されることが多いため、相手や状況によっては「差し上げる」という言葉よりも「させていただく」が使われることがあります。

主に「差し上げる」という言葉が使われる場面は、謙譲語表現を使用する場面においても「特に改まった場面で使われる」という側面を持つため、事前に状況・場面をしっかり把握しておき、どの言葉・表現を使えばよいかを的確に判断することを心掛けましょう。

「差し上げる」は失礼なのか

「差し上げる」という言葉はビジネス上のやり取りでも多く聞かれる日常的な敬語表現ですが、場合・状況、または相手によっては、失礼な表現になることがあります。

これは「差し上げる」という言葉に含まれる「上げる(あげる)」という言葉にポイントがあり、「してあげる」、つまり「○○してやる」というニュアンスを相手に突き付けることに問題があります。

たいていこの「差し上げる」という言葉の代わりに使われる無難な言葉として選ばれるのは「させていただく」という言葉であり、この場合は「いただく」という言葉が基本的な謙譲語として認められるため、「差し上げる」の意味合い・用法よりも適切な敬語表現として認められます。

「して上(あ)げる」がネック

先述しました「差し上げる」の「上(あ)げる」が失礼な表現となる理由についてですが、これは他の敬語表現にしても多く見られる例です。特に「あげる」という言葉が使われる場合では、「それを持っていない人にあげる」や、「窮地で困っている人を助けてあげる」などのやや「上位に立った話者の立場」が目立つことになります。

そのため、「聞き手としては、話者が自分よりも上位に立ち、なおかつその話者が自分に何かをしてくれることで自分は助かる」といった暗黙のニュアンスが漂うことになります。この微妙なニュアンスが失礼を醸し出すことがあり、ビジネス上のやり取りでは「させていただく」という言葉の方を主に使う理由につながります。

やや上から目線になる

これも先述の続きとなりますが、「○○をあげる、○○してあげる」と言う以上は、この「差し上げる」という言葉の響きに「やや上から目線」的なニュアンスと用法が同時にうかがえることになります。

特にビジネス上のやり取りでは「常に相手に対する礼儀」を重んじる性格があることにより、このような「失礼なニュアンスが派生してしまう言葉の使い方」を避ける傾向があります。

そのため、ビジネス上のやり取りで使用するべき「あげる」の敬語表現としては、誰がどんな場面で聞いても「必ず失礼なニュアンス・用法をうかがわせない表現」が優先されることになり、「させていただく」という表現が好まれます。

「差し上げる」の英語表記と意味

「差し上げる」という言葉を英語に直す場合、それぞれの英単語の意味合いや用法に配慮した上で、以下のようにピックアップされます。

・will give(あげる、与える、差し上げる)
・give(あげる、与える、付与する、差し上げる)
・inflict(与える、出す、差し上げる)
・grant(与える、差し上げる)
・confer(差し上げる、捧げる、与える)
・affect(準備する、与える、差し上げる)
・produce(作る、生産する、差し上げる)
・put out(出す、用意する、差し上げる)
・send(送る、差し上げる、差し出す)
・serve(奉仕する、差し出す、差し上げる)
・award(授与する、差し上げる)
・hold up(あげる、差し上げる)
・offer(申し出る、差し出す、差し上げる)
・promote(上昇する、あげる、差し上げる)
・apply(差し上げる、施す、提供する)

「差し上げる」の英語表現と意味(1)

先でご紹介しました「差し上げる」の英語表記を参考にして、「差し上げる」の意味合いを含めた英語の例文をいくつかご紹介します。

・We will give him a certificate.
「彼に賞状を差し上げる。」
・I got in touch with him about the results of the meeting last week.
「先週の会議の結果につきまして、彼にご連絡を差し上げました。」
・She was awarded Shiju Medal from the country due to the achievements of a fine paper.
「彼女は立派な論文の成果によって、国から紫綬勲章を授与されました(差し上げられました)。」

「差し上げる」の英語表現と意味(2)

先述しました「差し上げる」の英語表現に引き続き、さらに具体的な「差し上げる」の例文をご紹介します。

・We will surely contact you on the information on the joint corporate briefing on Saturday afternoon this week.
「今週の土曜日の午後に、合同企業説明会のご案内のご連絡を必ず差し上げます。」
・We will provide coverage of real-time results by Olympic sports events.
「オリンピックの競技種目別に、リアルタイムの結果の報道を差し上げます。」
・Please deliver a black car to the emperor ‘s shrine as you visit.
「天皇陛下の神社ご参拝の折りに、黒い車の手配を差し上げてください。」

「差し上げる」の正確な意味と用法を覚えましょう

いかがでしたか。今回は「差し上げる」の使い方・例文・類語・失礼なのか|敬語/相談と題して、「差し上げる」の使い方・例文・類語・失礼なのかについての詳細情報のご紹介をはじめ、いろいろな場面で使われる「差し上げる」の用例についてご紹介しました。

「差し上げる」という言葉は基本的に「あげる」という言葉の謙譲語表現となり、ビジネス上のやり取りでも日常会話の中でも、非常に多くの場面で使われる日常的な敬語表現となります。

しかし、「差し上げる」という言葉に含まれる「上(あ)げる」という表現のニュアンスがどうしても「○○してあげる・○○してやる」というニュアンスを漂わせる響きがあるため、特にビジネス上のやり取りでは場面や状況に注意して「させていただく」などの言葉に使い分ける必要があります。

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