「見る」の謙譲語・尊敬語・丁寧語の違い?
「見る」という表現があります。「こちらに、目を通しておいてください。」に対して、「後ほど確認しておきます。」などという表現方法や言い回しをお聞きになったことはないでしょうか。
「目を通しておいてください」すなわち、「見ておいてくださいね」に対して、「見ておきますね」と返した場面のひとコマです。この「見ておきます」に使われた「見る」の意味合いの表現は、ビジネスや目上の方に使う場合に、果たして正しいのでしょうか。
こちらの記事では、「見る」という表現の謙譲語表現について主にご説明しながら、「見る」という言葉と「見る」を目上の方に用いたい場合の敬語として「謙譲語」、またその他の敬語について紹介します。
「見る」の謙譲語表現、敬語表現とはどのようなものがあるのでしょうか。まずは「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」から成り立つ、敬語表現について紹介します。
敬語表現とマナー
まずは「見る」の「謙譲語」表現とは何なのかを見るために、日本語の敬語表現について見ることにしましょう。
日本語の敬語表現は主に「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の三つに分類されて用いられます。「見る」という表現を用いたいときに「謙譲語」を使用したいとは、「見る」を誰が用いる場面で、相手はどなたに当たるのかを考える必要があります。日本語の敬語マナーに触れて見ることにしながら、「謙譲語」についてもご説明していきます。
「謙譲語」表現で「見る」を使用する場合と場面とはどのようなときで、誰が主語に当たり、誰を相手に使用するのが謙譲語で「見る」と使用する場面でしょうか。
尊敬語
「尊敬語」とは相手や第三者のことを高めていうもので、それに対して敬意を示す表現です。例文を挙げてみましょう。冒頭の一文、「こちらに、目を通しておいてください。」という文章がありました。
これはこれで相手に敬いを表した表現ではありますが、もう少し丁寧な表現にしてみましょう。「こちら、目を通して頂けますように」、または「こちら、ご覧頂きますように」と置き換えます。
「頂けますように」や「ご覧いただく」という表現に置き換えたことで、「ご覧になる」「していただく」という「見る」の尊敬語の表現に置き換えることができます。
謙譲語
さて、こちらの記事の核でもある「謙譲語」について見ることにしましょう。謙譲語とは、目上の人物に対して、自分の仕草や言動を下に表現することで相手に対して敬意を表す表現で、文字どおり「謙遜」して「譲る」の意味合いで「謙譲語」となります。
冒頭の一文を再び用いてみましょう。「こちらに目を通しておいてください。」を用います。「こちらに目を通して頂きたいのですが」となります。「して頂きたい」と自分の言葉を下に出して「見て頂きたい」という表現の謙譲語表現と置き換えることができます。
「目を通す」がそもそも「見る」「見て欲しい」という意味合いの言葉の尊敬語ですので、「見る」という表現を「見てください」に置き換えたまま、「頂きたいのですが」と表したことで「見る」「見て欲しい」の謙譲語表現になりました。
丁寧語
丁寧語とは相手や場面を問わず、丁寧な言葉遣いで相手に対して敬意を示す敬語表現で、「尊敬語」や「謙譲語」よりも少しフランクな日本語の敬語表現になります。具体的には「です、ます」で表される文体や、「でした、ました」などが挙げられます。
つまり、この記事で用いられている表現も丁寧語となります。冒頭の一文で見ることにしましょう。「こちらに、目を通しておいてください。」という一文の中に、「ください」という表現がありました。これを何もなしにしてみますと「これ、見ておいて」となります。
とても乱暴な表現です。友人同士ならともかく、会社のビジネス場面にあまり相応しくはない表現となってしまします。まして、目上の方になどもってのほかです。このような表現は控えるようにしましょう。
拝見します?
ここからは、「見る」の謙譲語表現について説明していきます。「見る」を「謙譲語」で用いたい場合にはどのような表現を用いれば良いのでしょうか。いくつかの言い回しを替えた「見る」を紹介するとともに、例文を挙げながら謙譲語表現での「見る」について触れていきましょう。
まず、「拝見」という表現をご説明します。「拝見」に使われている「拝」という言葉は拝むとも読みます。「拝謁賜りたく」など本の中でも出て来る表現ですが、実は日常で使えます。「拝見」という言葉はとても丁寧で礼儀正しい謙譲語での「見る」という表現になります。
「こちら、拝見させて頂きますね」と「こちら、見させて頂きますね」の二つを並べるとお解りいただけるのではないでしょうか。同じ意味ですが、とても相手に与える印象が異なってきます。「拝見します」という言葉を、まず「見る」の謙譲語表現として覚えておきましょう。
ご覧くださいますよう?
「見るの」の謙譲語表現である「拝見する」を用いた例文と言葉回しをご説明してきました。こちらでは、「見る」の謙譲語表現に対するものとして、「ご覧くださいますよう」という尊敬語を用いた表現と一文をご紹介します。
「こちら、お手数お掛けいたしますが、お手隙の際にご覧くださいますようにお願い申し上げます」
こちらは「拝見する」という謙譲語表現に対して、「ご覧頂きますように」という尊敬語を用いた文章になりますが、この文章に対して「はい、では後ほど、拝見させて頂きます」と返せば、冒頭にご紹介した「見ておきますね」の謙譲語表現となります。
お目通し頂きますよう?
もう一つ、敬語表現での一文をご紹介してみましょう。「拝見する」という謙譲語表現に対して、「お目通し頂きますように」という尊敬語表現での「見てください」と「見る」という例文と一文です。
「お目通し」とは「目を通す」という意味ですので、「見る」の敬語表現に当たります。そこに「頂きますように」と加えて、「こちら、お手数お掛けいたしますが、お手隙の際にお目通し頂きますように」となりました。
この一文に対しても謙譲語表現で返すことができます。先程と同じく「拝見する」と用いてみましょう。「承知しました。後ほど、拝見させて頂きますのでお待ちください」となります。ご紹介しました二つの例文は「見る」の謙譲語に対して尊敬語での一文になります。
ビジネスシーンなどではどちらもが礼をかかさないように言葉を踏まえるのがマナーですから、覚えておかれて使い道に困ることはありません。
「見る」の謙譲語での使い方は?
「見る」の謙譲語表現についてはご説明してきました。こちらでは、具体的な場面での例文を紹介します。
メール?
「頂きましたメールを拝見致しました。お返事が遅れまして大変に申し訳ありません」と一文を作り上げてみました。拝見するという謙譲語表現はビジネスメールの場面において使用しても何ら問題のない一文です。
「メールを見させて頂きました」という意味で、「メールを拝見しました」と用いました。問題はなく日本語としても敬語表現としてもビジネスメールとしても成り立っています。
ビジネス?
「はい、伺っていた資料については目を通させて頂きました」または、「はい、伺っていた資料については拝見しました」と一文を挙げてみます。ビジネスシーンでも問題を起さずに使用できる「見る」または「見ました」の謙譲語表現で会話が成り立ちます。
「拝見しました」と謙譲語表現での「見る」を用いても差し支えありませんし、もう少し柔らかく「目を通させていただきました」を用いてもいいでしょう。お気付きでしょうか。この「目を通す」という表現は、「拝見する」に対しての尊敬語としてご紹介した「お目通しいただきますように」と同じ言葉が使われています。
「目を通す」という表現に対して「お目通し」として尊敬語としての「見る」を成り立たせるのか、「通させて頂きました」と謙譲語を用いて「見る」の謙譲語表現と成り立たせるのか、日本語の敬語マナーというのは前後の文脈一つ変えるだけで、尊敬語にしたり謙譲語としたりすることができます。
「見る」の謙譲語での例文?
繰り返しにはなりますが、では「見る」の謙譲語表現でどのような例文を用いることができるのか見ていきましょう。
資料
ここではビジネスシーンで「資料を見ました」と用いたい場合の表現と鈴分について見ることにしましょう。「こちらの資料ですが、目を通させて頂きました」もしくは、「こちらの資料ですが、確かに拝見致しました」などと用いることができます。どちらもきちんとした印象を与える日本語ですので、ビジネスシーンでの資料に対して用いることができます。
映画を見る
映画に対して「見る」の謙譲語を用いたい場合となると少し悩む気もしますが、実のところは同じです。「拝見しました」を用いることができます。「仰っていた映画ですが、先日拝見しました」などと用いても不自然ではありません。
「目を通す」はこの場合には少し用いるには相応しくない表現になるかと存じます。「仰っていた映画ですが、先日目を通させて頂きました」と一文にしてみると、違和感を覚える一文になるとお見えになるでしょう。
展覧会
展覧会などの場合はいかがでしょうか。「見てきました」と同じ意味合いで、「拝見してきました」も用いることができますが、「伺ってきました」や「観覧させて頂きました」なども同じ意味合いとして成り立つのではないでしょうか。
相手と場面に応じてこの場合は使い分けましょう。仕事上での付き合いでの展覧会などであれば「伺いました」や「拝見しました」といったように使いたいところです。
テレビ
テレビとなるとどうでしょうか。「拝見しました」は基本としてどの場面でも用いることはできますが、なにか重苦しい気もします。テレビに関しては、どなたかが出られた番組を見ての感想であれば「先日の番組、拝見しておりました」と使用するのもいいでしょう。
薦められた番組などであれば「見させて頂きました」などと少し砕けた言い回しでも構わないと存じます。
「見る」と「聞く・読む」の謙譲語?
ここまで「見る」の謙譲語表現について順を追ってご説明してきました。では、同じような場面で用いられることも多い、「聞く、読む」という表現の謙譲語についても少し触れて見ましょう。
拝聴しました?
「聞きました」の謙譲語として「拝聴しました」というものがあります。「拝見」と同じく最大級の謙譲語での敬語表現ですので、目上の方や失礼の無いようにしたい方のご意見やお話については、「拝聴しました」を使いましょう。
拝読しました?
「読みました」という表現の謙譲語での敬語表現で、「拝読しました」となります。「作品、拝読させていただきました」や、「先日いただきましたメール、拝読させていただききました」などと用いることができます。
メールというのは前述に出てきた折に「拝見しました」とも使いましたが、文章でもありますので、「拝読しました」と「見ました」の代わりに「読みました」を用いることもできます。
使い方をマスターしよう
「見る」という表現の場面に応じた使い分け、また、「聞く、読む」という表現、日本語の敬語表現とマナーやルール、いかがでしたでしょうか。
ぜひともこの記事をご参考にして頂き、「こちらの案件ですが、ご覧いただけますでしょうか」や、「伺っていたものですが、拝見いたしました」と日常会話で見るの謙譲語とその他の敬語表現を使いこなして行っていください。