「気兼ねなく」の意味と使い方
日本人にとって日本語は喋り言葉としては苦になりませんが、何気なく使っている言葉でも、時々この言葉の意味や使い方は?と疑問に思う場合があります。「気兼ねなく」もそんな言葉の一つです。
ここでは「気兼ねなく」について、意味や使い方、敬語表現や類語・反対語・言い換え方法など、知っておくと得する情報を多方面から検証していきますので、今後の参考にしてください。
「気兼ねなく」の意味
気兼ねなく」の「気兼ね」は、他人のことを気にして躊躇したり、一歩後に引いたりすることで、文法的には「気兼ねなく」は「気兼ね(名詞)」+「ない(動詞)」の合体語で、「気兼ねなく」は「気兼ねない」の連体形になります。
「気兼ねなく」は、「相手を気遣って遠慮する」という意味と、相手にも「こちらのことは余り気にせずに、遠慮しないでいいよ」という意味で使用する場合の2とおりの使い方があります。
「気兼ねなく」の使い方:受動的
「気兼ねなく」には、自分が相手に遠慮する場合(受動的)と、相手に「遠慮はいりません(能動的)」と伝える場合の2とおりの意味がありますが、以下で2とおりの使い方の例文を紹介します。まず「自分が相手を気遣い遠慮する場合(受動的)」は次のようになります。
例文:入社したばかりでまだなにかと不慣れですが、どうか「気兼ねなく」言いつけてください。分らない所は教えていただきながら頑張ります。
「気兼ねなく」の使い方:能動的
「気兼ねなく」には、相手の気持をおもって(能動的に)、「遠慮はいりません」と伝える場合の意味がありますが、以下でその使い方の例文を紹介します。
例文1:新人のうちは、仕事の面でも対人関係でも、なにかと分らないことが多いでしょう。なんでも気兼ねなく聞いてください。分ることは力になります。
例文2:今日の集まりは、新入社員の意見交換の場です。どうか「気兼ねなく」おもったことを申し述べてください。
「気兼ねなく」の敬語表現
「気兼ねなく」は社交場やビジネスシーンで、頻繁に使われていますが、敬語表現ってあるのか、とおもったことはありますか?「気兼ねなく」をより丁寧に表現する方法があるなら、やはり知っておいて損はありません。
ここでは「気兼ねなく」の丁寧語や尊敬語・謙譲語などを例文とともに紹介します。社交場やビジネスシーンで有効に活用し、知識人として少しでも優位になれるよう頑張ってください。
「気兼ねなく」の敬語表現:丁寧語と例文
「気兼ねなく」を丁寧に表現するには、「気兼ね」に接頭語の「お」をつけ、「お気兼ね」という使い方もできます。さらに「お気兼ねなく」+「○○ください」を付け加えることで、より丁寧な言い方になります。
例文1:ご依頼の件、あのような対応で宜しかったでしょうか。今後もいつでも「お気兼ねなく」、なんなりとお申しつけくださいませ。
例文2:大したおもてなしもできませんが、これからも「お気兼ねなく」お越しください。
「気兼ねなく」の敬語表現:尊敬語
「気兼ねなく」を丁寧に言うと「お気兼ねなく」になりますが、それでは「気兼ねなく」を尊敬語として表現する方法はあるのだろうか、あるとしたらどんな表現になるのか、ここでは「気兼ねなく」の尊敬語としての表現方法を検証します。
「気兼ねなく」の尊敬語的表現方法はありませんが、丁寧語の「お気兼ねなく」に尊敬語「~なさって」を合体させることで、尊敬語としての意味をもたせることは可能です。
「お気兼ねなく」+「~なさって」の例文
「気兼ねなく」を尊敬語表現にしたい場合は、「お気兼ねなく」と「~なさって」というフレーズを合体させることで、尊敬語的表現にする事ができます。
例文1:先日お届けしました××に関する資料、お役にたつのであれば、「お気兼ねなく」お気のすむまで、お好きになさって構いません。
例文2:当方へのお気遣いは御無用にお願いいたします。どうぞ「お気兼ねなく」好きなだけ滞在なさってくださいませ。
「気兼ねなく」の敬語表現:謙譲語は存在するか
尊敬語の主語は相手なので、「気兼ねなく」を尊敬語的に表現することはできますが、謙譲語というのは自分をへりくだって言う言葉で、主語は自分になりますから、「気兼ねなく」の謙譲語は存在しません。
もともと「気兼ねなく」は、「気楽にして」とか「遠慮しないで」という意味ですから、自分に対してへりくだって「お気兼ねなく」などということはありません。そういう使い方をすると恥をかきますので要注意です。
「気兼ねなく」の例文
「気兼ねなく」は、この言葉自体が「気楽に」「遠慮なく」の丁寧語なので、尊敬語としても組み合わせが必要ですし、謙譲語に至っては存在しないという結果になりますが、いろいろの場面で日常的に使われている言葉ではあります。
たとえば「話せる」や「言ってください」、「連絡ください」や「飲める」などと組み合わせた場合の例文はどうなるか、などを紹介します。
気兼ねなく話せる:例文
ここでは「気兼ねなく」と「話せる」を組み合わせた場合の使い方を紹介します。
例文1:この課の上司の○○さんは、「気兼ねなく話せる」懐(ふところ)の深い人です。
例文2:わたしの目標は、誰からも「気兼ねなく話せる」と言って貰えるような人間になることです。
例文3:あの人は年齢に関係なく「気兼ねなく話せる」話題の豊富な人です。
例文4:あのお店は「気兼ねなく話せる」格好の場所です。
気兼ねなく話せない:例文
「気兼ねなく」+「話せる」の組み合わせとは反対に、「気兼ねなく」+「話せない」という場合の例文も紹介しておきましょう。
例文1:あの人は気難しいのでなかなか「気兼ねなく話せません」。
例文2:あの人がいると「気兼ねなく話せない」ので、若い人からは敬遠されています。
例文3:「気兼ねなく話せない」のでは、この会を催した意味がありません。
気兼ねなく言ってください:例文
「気兼ねなく」+「言ってください」という言い方はよく聞きますが、どんな場合に正しく使われているのか、例文で見てみましょう。
例文1:貴社のご要望には極力対応してまいる積りですが、気になる点はいつでもどうぞ「お気兼ねなく言ってください」。お互いに切磋琢磨してよい製品にして参りましょう。
例文2:先日の的確なご指摘、「お気兼ねなく言ってくださり」ありがとうございました。早速改善いたします。
気兼ねなく言えない:例文
ここでは「気兼ねなく」+「言えない」の正しい使い方を紹介します。以下が例文となります。
例文1:あの人悪い人だとは思わないけど、やっぱり言いたいことが「気兼ねなく言えない」です。
例文2:あの人に「気兼ねなくものが言えない」のは、わたしだけではないみたいです。
例文3:「気兼ねなく意見が言えない」会議は、雰囲気がよくないです。
気兼ねなく連絡ください:例文
「気兼ねなく」+「連絡ください」はどんな使い方があるか、例文を紹介します。
例文1:こちらにお出かけの節は「気兼ねなくご連絡ください」。いつでも歓迎いたします。
例文2:最近当地で観光ガイドのアルバイトを始めました。興味があったら「気兼ねなく連絡ください」。仕事抜きでご案内いたします。
例文3:当地の資料が必要な時は「気兼ねなく連絡ください」。ご希望のものを直ぐに送ります。
気兼ねなく連絡できない:例文
「気兼ねなく」+「連絡できない」という使い方も、よく耳にするフレーズです。以下に例文を紹介します。
例文1:幼馴染とはいえ、彼には「気兼ねなく連絡できません」。この所ずっと疎遠でしたから。
例文2:彼女には「気兼ねなく連絡できない」理由があるんです。理由はちょっと言えませんが。
気兼ねなく飲める:例文
「気兼ねなく」+「飲める」にはどのような使い方があるのか、以下で紹介します。
例文1:いつでも「気兼ねなく飲める」相手は、わたしにとっては学生時代の友人です。今でも月に一度は連絡を取り合っています。
例文2:親子で「気兼ねなく飲める」という日を、ずっと待っていましたから、息子が成人して、その日が来た時は嬉しかったです。
気兼ねなく飲めない:例文
「気兼ねなく」+「飲めない」について、いくつか例文を紹介します。
例文1:あいつとは「気兼ねなく飲めない」よ。彼は理屈屋でね、一緒に飲んでいても楽しくないよ。
例文2:あの課長とは「気兼ねなく飲めません」。やはり上司ですから気楽にと言う訳にはゆきませんし、課長は気難しい人ですから、言葉を選びながら飲むのって楽しくないです。
「気兼ねなく」の類語
「気兼ねなく」は「気楽に」や「遠慮なく」という意味の丁寧語ですが、「気兼ねなく」に類語はあるのでしょうか。「気楽に」や「遠慮なく」ももちろん類語に入りますが、その他にも「お楽に」や「お気軽に」・「気安く」などがあります。
ここでは「お楽に」や「お気軽に」・「気安く」の正しい使い方を例文で紹介していきます。
「気兼ねなく」の類語:どうぞお楽にの例文
「お気兼ねなく」の類語として、ここでは「どうぞお楽に」について紹介します。「どうぞ」は品詞は副詞ですが、「どう」という副詞と「ぞ」という助詞の合体語です。他に対してなにかを丁寧にお願いする場面で使う言葉です。
「お楽に」に「どうぞ」を付け加えると、より丁寧な言い方になります。「気兼ねなく」の類語としては使いやすい言葉になります。
例文:そんなに緊張しないで「どうぞお楽にしてください」。
「気兼ねなく」の類語:お気軽にの例文
「気兼ねなく」の類語として「お気軽に」を紹介します。「気楽に」も「気軽に」も「気兼ねなく」の類語になりますが、「お気軽に」は「お気楽に」とは少し使い方が違うので注意しましょう。以下に2つを比較した例文を紹介します。
例文:お気軽にお出かけください→遠慮しないでの意味が強い。
例文:お気楽にお出かけください→緊張しないでという意味が強い。
どちらを使うかは場面によります。
「気兼ねなく」の類語:気安くの例文
「気兼ねなく」の類語として「気安く」がありますが、「気兼ねなく」と同じように、「遠慮が要らない」とか「気楽である」という意味になります。ただ「気安く」には「考えが浅い」という意味もあり、否定的な場面で使うことも多いので、使い方に気をつけましょう。
類語としての例文:「気安く」お引き受けいただき感謝します。
否定的使い方例文:そんなに「気安く」引き受けて、後で問題が起きないといいのですが。
「気兼ねなく」の言い換え例文
「気兼ねなく」の言い換え方としては、「気兼ねなく」の類語を使いますが、「気兼ねなく」を使う場合、動詞と組み合わせる場合と、名詞と組み合わせる場合があるので、ここではそれらの例文を紹介しながら、正しい使い方を紹介します。
「気兼ねなく」の言い換え:動詞との組み合わせ
「気兼ねなく」は相手に対して「遠慮しないで」とか「気楽にして」という意味で使いますので、「気兼ねなく」の言い換えは「遠慮しないで」とか「気楽にして」という言い方になります。ここでは「気兼ねなく」の類語を、動詞と組み合わせるとどういう言い方になるかの例文を紹介します。
例文:わたしにできることがあれば、「ご遠慮なく」お申しつけください。
例文:「お気楽に」お声をかけていただければ、精一杯努力いたします。
「気兼ねなく」の言い換え:名詞との組み合わせ
「気兼ねなく」の言い換えには、「遠慮なく」や「お気楽に」の他に「忌憚なく」や「お気軽に」を使いますが、ここでは名詞と組み合わせて使う場合の例文を紹介します。
例文1:あなたの「忌憚ない意見(名詞)」は大いに参考になりました。
例文2:いつでも「お気軽にお声(名詞)」を掛けてください。準備万端整えておきますので。
「気兼ねなく」の反対語
「気兼ねなく」は「遠慮なく」や「気楽に」という意味で使われることはこれまで説明してきましたが、反対語ってあるのだろうか、と考えて見ました。「気兼ねなく」の反対語としては、「肩が凝る」や「気を遣う」・「気が許せない」などがあることが分りました。
ここでは 「肩が凝る」や「気を遣う」・「気が許せない」の使い方を紹介していきます。
「気兼ねなく」の反対語:肩が凝る
「気兼ねなく」の反対語として挙げられるのは「肩が凝る」ですが、「気兼ねなく」の反対語としての使い方は次のようになります。
例文:彼は理屈屋だから、一緒にいると本当に肩が凝るよ。
「気兼ねなく」の反対語:気を遣う
「気兼ねなく」の反対語には「気を遣う」もありますが、どんな時に使うのが正しいのか、正しい使い方を紹介します。
例文:彼は「気を遣うな」といいますが、そういわれても「気を遣わず」にはいられません。
「気兼ねなく」の反対語:気が許せない
「気兼ねなく」の反対語として「気が許せない」を使うことがありますが、正しい使い方の例文は以下になります。
例文1:彼にはなにを考えているのか分らない時がありますから、なかなか「気が許せない」です。
例文2:彼には表裏(おもてうら)がありますから、安心して「気が許せない」という人は多いです。
「気兼ねなく」を「気兼ねなく」使うコツはコレ
「気兼ねなく」を恥をかかないように「気兼ねなく」使うコツは、「気兼ねなく」が「遠慮しないで」とか「気楽に」という言葉の丁寧語であることを頭に入れておく事でしょう。
ビジネスシーンや手紙やメールなど「気兼ねなく」はよく使われますが、「気兼ねなく」の例文も、類語や反対語も幾つか紹介しました。折々の参考にしてください。