日本語を上手に学ぶ方法
日本語を学ぶときの姿勢についてですが、日本語に限らず言語・言葉を学ぶ際には「実践的に学ぶこと」が何よりも大切です。この実践的に学ぶというのは基本的に「その言葉や表現を使って言葉を覚える」ということになります。
「ただ机上の勉強だけで終わっては意味がない」というような言葉をよく聞くことでしょうが、これは「書いて覚えることが悪い」というのではなく、「一度覚えたらその言葉を使わなければ意味がない」ということで、「覚えたらそれで終わり」ではなくて、1つ1つの言葉を覚えた後は、どんどんその言葉や表現を使うことが大切になります。
実践的な学習が基本
先述のように、言葉というものは必ず初めは書いて・読んで覚えます。そしてその言葉を「自分の言葉」としてその後に使って把握するようになります。この過程がとても大切で、「一度覚えた言葉ならば、その言葉や表現をいろいろな場面で使い分けて学習していく」ということが語学の学習方法の基本となります。
慣用句を覚えることが大切
日本語には慣用句という「一般的によく人によって使われる言葉や表現」があり、この慣用句というのはそれぞれの言葉1つずつに用意されています。
そのため、日本語1つ1つを覚えていく際でもこの「慣用句をワンセットで学習すること」は大切で、「よく使うからこそその言葉を完璧に覚えることができる」という、語学に向かう際の基本的な学習姿勢を確認することが必要になるでしょう。
せっかく覚えた言葉でも、それを日頃から使っていかなければすぐに忘れてしまいます。英語を覚えるときでもその言葉を何度でも使うから覚えられるわけで、ほとんど使わない英単語はすぐに忘れてしまいます。一度インプットした言葉は忘れることなく、ずっと使い続けられる言葉・表現としてストックできるように工夫をしてみましょう。
「あいにく」の意味と使い方
さて、「あいにく」という言葉の意味や使い方のご紹介ですが、まず「あいにく」という言葉は「何らかの事情によって、都合が悪い場合」によく使われる言葉となります。
・今日はあいにくですが、○○することはできません。
・今日はあいにくの天気です。
・あいにく、○○氏は席を外しております。
上記のように、誰かが何らかの理由によって行動を起こすとき、その行動を完遂させないようにする状況に遭遇した際、この「あいにく」という言葉が使われます。
都合が悪い
先述のように「あいにく」という言葉は「何らかの特定の物事をしようとする場合に、それをするのに都合が悪い場合」において基本的に使われる言葉となります。それをしたいけれどできない、本来の目標は別のところにあるのにそれができない、などといった「個別の事情において都合が悪い場合・目的を達成できない場合」によく使われます。
・新聞を取りたいのですが、あいにく今は経済的に困窮しています。
・会社に出勤したいのですが、あいにく今日は電車が運転見合わせをしています。
・○○大学に合格したいのですが、あいにくそれだけの学力が足りません。
機会がないこと
「あいにく」という言葉はまた「○○する機会がないこと」を示す場合にもよく使用されます。この場合も「○○したいけれど、それをする機会がない」、「誰かに会いに行きたいけれど、その会いに行くだけの時間がない」などといった「不都合」を示す際に「あいにく」という言葉が使われます。
・Aさんに会いに行きたいのですが、あいにく今日は時間がないのでできません。
・その本を買いたかったのですが、あいにくあれから書店に行く機会がなかったので買えませんでした。
・先生に質問したかったのですが、あいにく先生と会える機会がなかったので質問できず、論文作成に時間が掛かってしまいました。
思いどおりに行かないこと
「あいにく」という言葉はまた「何らかの目的を達成しようとする場合に、それが思いどおりに行かない場合」によく使用されます。
・同志社大学のAO入試を受験するための資料を取り揃えようとしましたが、あいにく出願期間が今年は過ぎていたため、それが叶いませんでした。
・もっと深みのある論議ができるかと期待したのですが、あいにく誰も問題提起しなかったので、議論になりませんでした。
・車を購入しようとしましたが、あいにく貯金が足りなかったため、ほしい車を買うことはできませんでした。
「あいにく」の語源
「あいにく」の語源についてですが、これは「あいにく」の漢字表記としてある「生憎」にその語源が表れています。まず「生」とう字はその言葉のとおりに「生きること」や「生もの」の意味を示しますが、この場合は「ああ」や「いや」などといった感嘆詞の意味合いを指します。
そして「憎」という字は「にくいこと・憎しみ」をそのまま表すため、「ああ、憎らしい」といった「憎しみ(残念による憎しみ)」を示す言葉として誕生した、という由来が認められています。
「あいにく」の漢字
先でご紹介しましたが、「あいにく」の漢字は「生憎」となります。これはほとんど「当て字による熟語・既成語」とされる側面もあり、「ああ憎たらしい」という感嘆系の言葉として認められています。
生憎
「生憎」という言葉から「あいにく」という読み方は普通出てきません。日本語にはこのように「当て字や造語」といった部類に含まれる言葉が非常に多くあるため、日本語を勉強する際には、これらの「当て字や造語」がどのようにして成立したのかという、それぞれの言葉の成り立ちを把握することが大切になります。
「生憎」の「憎」は「にくいこと」を指す
先述で「生憎」に含まれる「憎」という言葉は「にくいこと・憎しみ」を指すということをご紹介しました。これは「にくいこと・憎しみ」という感情がそのまま「思いどおりにならなかったこと」に対する「憎しみ」と変わり、「自分の(自分たちの)目標を達成できなかったこと」への残念を表す言葉として認められます。
「あいにく」の例文
先述のように、言葉を覚える際には必ず「実践的に学ぶこと」が大切で、その「実践的に学ぶための1つの工夫」には「例文を自作して、その例文の中で覚えるべき言葉を使って学ぶ」という方法があります。
・あいにく財布を忘れたため、服を買うことができませんでした。
・あいにく電車に乗り遅れたため、約束した時間に間に合いませんでした。
・あいにくタクシーに乗れなかったため、駅から家まで歩くことになってとても疲れました。
このように、どんな場面でもよいのでその言葉を使える場面を想定しておき、その場面と一緒に「覚えるべき言葉」を学習する・インプットするということが大切です。
雨
「雨が降っている」という状況は「あいにく」が使われる場面としても非常に多く散見されます。雨や雪などといった自然災害は、この「あいにく」という言葉を使う場面を非常に多く用意してくれます。
・今日はあいにく雨が降っているため、ドッジボールすることができません。
・今日はあいにくの激しい雨が降っているので、運動会は延期になりました。
・あいにく台風による暴風雨のため、電車は見合わせで運行していません。
天気
先でもご紹介しましたように、自然災害による環境の移り変わりは非常に多く「あいにく」が使われる場面を想定されます。
・あいにくの豪雨なので、今日は釣りに行くのはやめましょう。
・あいにく今日は雷が鳴っているため、凧揚げはできません。
・今日はあいにくの悪天候のため、漁に出るのはやめました。
このように、雨や雷といった天気の移り変わりによって「本来の目的が達成されない」という場合に、「あいにく」という言葉が普通に使用されます。
「あいにく」のビジネスシーンでの使い方
「あいにく」のビジネスシーンでの使い方についてですが、このビジネスシーンで使用される「あいにく」の意味合い・用法も、先述しました「あいにく」が使われる場合とほぼ同じとなります。「都合が悪い」、「本来の目的を達成できない」などといった場合に使用されます。
・あいにくそのようなご対応は当社では受理させていただいておりませんので、別の方法をご検討ください。誠に申し訳ございません。
・あいにく係長の○○は、ただいま席を外しております。
・企業説明会におきましては、あいにく弊社の事情によりまして、開催を延期させていただいております。誠に申し訳ございません。
都合が付きません
基本的に「あいにく」という言葉は「○○するのに都合が付きません」という旨を示すために使用されます。
・その件につきましては、あいにくご都合が付きませんので、ぜひ改めてご検討させていただければと存じます。
・あいにく○○氏は外出しております(○○氏と会う都合を付けることができません)。
・あいにく新車を買うだけのお金がありません(新車を買うための都合が付きません)。
席を外しております
「席を外す」というのは一般的に「不在であること」を相手に伝える言葉となります。これもビジネスシーンでよく使われる「あいにく」の表現となりますが、「誰かがいない・出張している」などと言う場合には、この「あいにく」を冒頭に冠して「相手にその人の不在のこと・相手の目的を叶えてあげられないこと」を伝えます。
・あいにく課長の○○は現在出張しておりまして、席を外しております。
・○○はあいにく席を外しておりますので、何かご用件がございましたらわたしが承ります。
・あいにく社長の○○は、午前中は席を外しておりまして、午後には会社へ戻ると存じますが。
「あいにく」の敬語
ビジネスシーンでのやり取りでは、必ずすべての言葉を敬語表現で相手に伝えられなければなりません。この「あいにく」という言葉についてですが、「あいにく」という言葉を直接的に示す敬語はありません。そのため、文脈や補足の言葉を付け足す形で「あいにく○○」と伝える際に、その場面に見合わせた形での敬語表現とする必要があります。
・あいにく、○○はいま席を外しております。ご用件がございましたらわたくしが承ります。
・申し訳ございません(あいにく)、この度の事業プランの成果につきましては、現在のところは検討が付きません。
・弊社では(あいにく)そのようなご対応はさせていただいておりません。
「あいにく」の類義語
日本語を覚える際には「その覚えるべき言葉の関連語をワンセットで学習すること」が大切です。この関連語のうちに類義語と対義語があるため、まずは類義語や対義語を一緒に学んでおくことが大切です。
残念ながら/折り悪く/不都合にも/不具合にも/悲しいことに/残念ですが/やまやまですが/できれば○○したいのですが/望みを叶えてやりたいが/申し訳ございません/ごめんなさい/すみません
これらの言葉が並びますが、どの言葉にも「相手からの要求に応えられない(すぐには応えられない)」といった「目的を達成できない状況」を示す意味合いが含まれます。「すみません」や「申し訳ございません」などの言葉は、先述の例文でもご紹介しましたように「冒頭に冠する言葉」として使用されます。
「あいにく」の対義語
先述の「あいにく」の類義語と逆の意味合いを持つ言葉群のご紹介となりますが、この場合は「何かするのに都合がよいこと」や「目的達成するのにうってつけの状況」を示す言葉が並びます。
都合よく/抜群で/状況が好ましい/おあつらえ向きの/適している/最適の/狙いすましたような/恰好の/好条件の/ぴったりな/ばっちりの/相応の/適当な/適切な/問題がない/差し支えない
上記の言葉が並びますが、どの言葉にも「それをするのに丁度よい状況」や「目的を達成するのに最適の条件がそろっていること」などの意味合いが含まれます。
「あいにく」の英語表記と意味
「あいにく」という言葉を英語に直す場合、それぞれの英単語の意味合いや用法に配慮した上で以下のようにピックアップされます。
・unfortunately(不具合の、不適切にも、あいにく)
・failure(故障、不良、不適切、あいにく)
・rupture(破裂、破局、不成立、あいにく)
・rejection(不成立、拒否、あいにく)
・hernia(脱線、不具合、あいにく)
・inconvenient(都合が悪い、あいにく)
・awkward(不具合な、不適切な、あいにく)
・unpleasant(喜ばしくない、あいにく)
・unsympathetic(疎ましい、あいにく)
・disagreeable(不適切な、嫌な、あいにく)
・unattractive(醜い、不適合な、あいにく)
・loathsome(都合が悪い、あいにく)
・hostile(疎ましい、都合が悪い、あいにく)
「あいにく」の英語表現と意味(1)
先でご紹介しました「あいにく」の英語表記を参考にして、「あいにく」の意味合いを含めた英語の例文をいくつかご紹介します。
・As it is raining today, I will cancel the sports festival.
「本日はあいにく雨のため、運動会は中止します。」
・Unfortunately he’s not ready yet so I can not go on a trip.
「あいにく彼の準備がまだ整っていないため、旅行に出かけることができません。」
・I would like to ask the professor about the composition of the paper, but unfortunately there was no professor.
「教授に論文の構成について質問したいのですが、あいにく教授はいませんでした。」
「あいにく」の英語表現と意味(2)
先述しました「あいにく」の英語表現に引き続き、さらに具体的な「あいにく」の例文をご紹介します。
・Originally, country A should devise measures to control population overcrowding in political strategy, but unfortunately we could not improve the environment for that.
「本来ならばA国は、政治的戦略において人口過密を抑える方策を考案するべきでしたが、あいにくそのための環境整備ができませんでした。」
・He went out for a foreign trip, but unfortunately it was an early return due to overstay.
「彼は外国旅行に出掛けましたが、あいにくオーバーステイのため早期の帰国となりました。」
「あいにく」の英語表現と意味(3)
先述の具体的な「あいにく」の英語表現に引き続き、今度はいろいろな場面で使われる「あいにく」の例文をご紹介します。
・The word “unfortunately” is basically recognized as “words used when it is not convenient”.
「「あいにく」という言葉は基本的に「都合が悪い場合に使われる言葉」として認められます。」
・The word “unfortunately” is also used in the business scene, but at that time, it is necessary to devise a way to use it properly as a language suitable for the situation.
「「あいにく」という言葉はビジネスシーンでも使用されますが、その際には、状況に適した言葉として使い分ける工夫が必要です。」
「あいにく」の正確な意味と用法を覚えましょう
いかがでしたか。今回は「あいにく」の意味と使い方・漢字・例文・敬語・類語・対義語と題して、「あいにく」の意味と使い方・漢字・例文・敬語・類語などについての正確な情報のご紹介をはじめ、いろいろな場面で使われる「あいにく」の用例についてご紹介しました。
「あいにく」という言葉は基本的に「何らかの物事をしようとしたとき・目的を達成しようとした場合に、それをするのに都合が悪い旨を示す言葉」として用いられます。そのため、「あいにく○○できません」や「あいにく○○させていただくことはできません」などといった、「できません」という否定形の言葉が後続することになります。
ビジネスシーンでも多くの場面で使用される言葉であるため、この「あいにく」という言葉を正確に使い分けられる方法を日頃から学んでおくことが大切となるでしょう。