「可及的速やかに」の意味と使い方とは
「可及的速やかに」という言葉は、一見難しい言葉にも見えますが、新聞などでは目にします。また、政治家のインタビューや公的機関の文書などでも、よく登場する言葉です。
ビジネスでも使われますが、使い方を間違えると失礼になる場合もあります。ここでは、「可及的速やかに」の意味と使い方をご紹介します。きちんと意味を理解し、正しい使い方を知って、上手に使いこなしましょう。
「可及的速やかに」はどんな意味
「可及的速やかに」は、「できるかぎり急いで」という意味です。「可及的」という副詞と、「速やかに」という形容動詞が合体して、「可及的速やかに」という慣用句になっています。
「可及的」とは、漢文の「可レ及」(およぶべく)が語源となっており、「できるかぎり」、「なるべく」という意味です。一方、「速やかに」は、「すぐに」、「時間をおかずに」という意味です。この二つの語が合わさるため、「可及的速やかに」は「できるかぎり急いで」という意味になります。
ビジネスで「可及的速やかに」を使うには
ビジネスでは「可及的速やかに」という言葉は、自分のこれからの行動を表す語の最初につけて使用します。例えば、「可及的速やかに対応します。」や、「可及的速やかに報告します。」というような使い方が挙げられます。
ここで注意しなければいけないのは、相手に行動してほしいときには「可及的速やかに」という語は使わない方が良いということです。相手に「可及的速やかに行動してください。」というと、高圧的な態度で相手に命令しているととられてしまい、大変失礼な言い方です。
些細な言葉の使い方ひとつで、場の空気が一変してしまうこともあります。「可及的速やかに」という言葉は、自分の行動あらわす言葉に合わせて使うように注意しましょう。
「可及的速やかに」は敬語として使えるか
「可及的速やかに」という言葉は、敬語として使用することができます。「可及的速やかに」という言葉に、これからの自分の行動を表す語を丁寧語あるいは敬語にしてプラスしましょう。例えば、「可及的速やかに調査します。」という文は、ビジネスシーンでもとても有効な使い方です。
「可及的速やかに」という語は、その語源が漢文であり、一見堅苦しいイメージを与える言葉です。昔から公的機関で使用されたり、法律的表現として使われてきました。そのため、「できるだけ、急いで」という意味の丁寧な表現といえます。
「可及的速やかに」は丁寧な印象をあたえる
「可及的速やかに」という言葉に、自分のこれからの行動を表す語をプラスすると、とても丁寧な印象を与える文になります。特に、目上の人や取引先の人に対して、使用するのにとても適しています。
もし、相手から何かしてほしいというリクエストを受けたときに、「可及的速やかに対応します。」と答えたら、相手はあなたが行動することを請け合ってくれたと感じ、相手に対して信頼感を与えることができます。
「可及的速やかに」の読み方と正しい漢字
これまで「可及的速やかに」の意味や使い方をご紹介してきました。意味はわかったけど、読み方がわからないでは、実際にビジネスシーンで使うことはできません。正しい読み方とよくある漢字の間違いについてご紹介します。
「可及的速やかに」の正しい読み方
「可及的速やかに」は、「かきゅうてきすみやかに」と読みます。「可及的」とは、漢文の「およぶべく」が語源であることはご紹介しましたが、実際に読むときには「かきゅうてき」と音読みをします。そして、「速やかに」は訓読みの「すみやかに」と読み、それらを合体させ、「かきゅうてきすみやかに」と一語のように読みます。
「火急的」ではなく「可及的」が正しい
ネットなどで、「火急的速やかに」と書いてあることもありますが、この漢字は間違いで、正しくは「可及的速やかに」と書きます。
「火急」という言葉は、「非常に差し迫った」、「緊急の」という意味で、本当に非常事態の場合に使う言葉です。「火急の用」、「火急を要する」などの使い方をします。「可及的」は「できるだけ」、「なるべく」という意味なので、「火急」のように、緊急性を示す言葉ではありません。書類なのに書く時には、漢字を間違えないように注意しましょう。
「可及的速やかに」の例文と注意すること
「可及的速やかに」は、ビジネスシーンで適切に使えると、相手にとても丁寧な印象を与える便利な言葉です。でも、どんな時でも使える言葉というわけではありません。使い方によっては、逆効果になることもあります。
「可及的速やかに」という言葉を使った例文と使うときの注意点をご紹介します。自分のシチュエーションに合わせて使いましょう。
例文①:可及的速やかに対応します
目上の人や取引先に何か行動するようにリクエストされたときに、「可及的速やかに対応します。」と返答するのに使うことができます。直ちに行動しますという意思を相手に伝えるとともに、相手に丁寧に対応している印象を与えることができます。
ただし注意しなければならないのは、本当は対応できないというときは「可及的速やかに対応します。」と返答しないほうがよいということです。相手に無駄な期待をさせ、信用を落とす結果となってしまいます。
例文②:可及的速やかに報告します
「可及的速やかに報告します。」という表現はビジネスシーンでよく使われる表現です。相手に、なるべく早く報告するので、もう少しだけ待ってくださいという意思を丁寧な表現で相手に伝えることができます。
注意しなければならないのは、「可及的速やかに」という言葉は、場合によっては、遠回しに「やりたいけど、今はできません。」という意味に解釈されてしまうこともあるということです。本来の「なるべく早く」という意味とは逆の意味になってしまうので、誤解をまねかないように、いつごろ報告できるのかという情報を添えるといいでしょう。
例文③:可及的速やかに再検討します
この表現もビジネスでよく利用できる表現です。相手から間違いを指摘されたときに、「可及的速やかに再検討します。」と返答することができます。間違いにきちんと対応しようとする姿勢と、謝罪の意味を若干込めることができます。
注意しなければならないのは、相手の間違いを指摘するときには「可及的速やかに」という言葉は使うべきでないということです。「可及的速やかに再検討してください。」というと、上から命令しているように聞こえてしまいます。
例文④:可及的速やかに対策を講じる
「可及的速やかに」という言葉は、ビジネスでよく使われますが、会議だけで使われるわけではありません。「可及的速やかに」という言葉は、通常のビジネス文書の中でも使用することができます。
例文のように書くと、「急いで、なんとかしなければいけない」ということが、読む人に明瞭に伝わります。
「可及的速やかに」を相手に使うのは失礼
相手に急いで何かしてほしいことがあるとき、「可及的速やかに」という言葉を使うのは、やはり失礼にあたります。「可及的速やかに」という言葉は、自分がへりくだって使用する言葉だからです。では、どうすれば失礼にあたらないのでしょうか。
目上の人に急いでしてほしいことがあるときは
「可及的速やかに」という語ではなく、同じ意味の類語に敬語をプラスしましょう。例えば、「できるだけ早くご連絡頂きますようお願い申し上げます。」という使い方であれば、相手が目上の人でも、失礼なく依頼ができます。
ここでは、「可及的速やかに」を「できるだけ早く」という柔らかい類語に変え、そのあとに敬語で依頼内容をプラスしています。こうすれば、相手は命令されているとは感じません。
ビジネス枕詞をつけよう
「できるだけ早くご連絡いただきますようお願い申し上げます。」という文でも、十分丁寧です。さらにビジネス枕詞を一言つけると、より一層丁寧な印象を与えることができます。
ビジネス枕詞はクッション言葉とも呼ばれ、一言添えると相手の不快感を軽減し、丁寧な印象を与えることができる言葉のことです。たとえば、「恐れ入りますが」、「できましたら」、「申し上げにくいのですが」などのビジネス枕詞が、よく目上の人や取引先に依頼するときに使われます。
「恐れ入りますが、できるだけ早くご連絡いただきますようお願い申し上げます。」という使い方をします。ただし、このビジネス枕詞も使いすぎると、逆に不快な印象を与えることもあるので注意が必要です。
「可及的速やかに」の類語
「可及的速やかに」という言葉を、自分の行動の修飾語として使用すると、相手に丁寧な印象を与えることができますが、相手に行動してほしいときには適していません。ここでは「可及的速やかに」という言葉を使わずに、相手に行動してほしいと伝えられる類語をご紹介します。
目上の人や取引先に行動してほしいと依頼するのは難しいことですし、失礼にあたらないように慎重に言葉を選ぶ必要があります。使う相手や場面によって、相応しくない類語もありますので、言葉の持つニュアンスを理解して、適切な類語を使用しましょう。
迅速に
「迅速に」という言葉は、「できる限り早く」と同じ意味ではありますが、少し強めの表現です。
例えば、「迅速に進めてください。」という使い方をすると、「できる限り早く」という言葉より、少し命令のニュアンスを醸し出す文になります。使う相手と場合を間違えないようにしましょう。
早急に
「早急に」という言葉は、「迅速に」と同じ意味ですが、若干柔らかい印象をあたえる言葉です。
「迅速に」と同じように、相手に急いで行動してほしいと依頼するときに使用できます。「早急にご対応ください。」という使い方をします。
できるかぎり早く
「できるかぎり早く」という言葉は、多くの動詞と合わせて、相手に行動を依頼しつつ、柔らかい表現をすることができます。例えば、「できるかぎり早くご連絡ください。」という使い方をすれば、失礼にならずに相手に行動を促すことができます。「迅速に」、「早急に」では強すぎるときに使用しましょう。
また、「ご連絡ください。」だけでは、敬語として不十分だと感じる場合は、「ご連絡いただければ幸いです。」という言葉に変えてもいいでしょう。これなら、相手に敬意をしめしつつ、行動するかどうかは相手次第というニュアンスを含められ、柔らかい印象を与えられます。
なるべく早く
「なるべく早く」という言葉は、「できるかぎり早く」と同様の使い方ができる活用度の高い言葉です。
例えば、「なるべく早く検討をお願いします。」という使い方をすれば、「できるかぎり早く」と同じように、相手に失礼な印象を与えずに依頼することができます。相手により丁寧に依頼したいというときは、敬語をプラスして、「なるべく早く検討いただけると大変助かります。」などの言い方もできます。
大急ぎで
同僚や部下に対して、少しくだけた言い方をしたいときには、「大急ぎで」という言葉も使えます。
「大急ぎで回答してください。」という使い方をします。「大至急」という言葉に置き換えも可能です。くだけた表現なので、目上の人や取引先に対しては使わないほうがよいでしょう。
なるはやで
「なるはやで」は「なるべく早く」の略した現代の口語なので、親しい相手にのみ使える言葉です。
「なるはやでお願いします。」という使い方をします。かなりくだけた表現なので、使う相手は親しい相手だけにしましょう。目上の人や取引先がいる会議では、使用しない方がよいでしょう。
英語だとASAP
これは日本語の類語ではありませんが、英語で「可及的速やかに」という言葉をどのように表現するか、ご紹介します。英語では、「可及的速やかに」を「ASAP」(エーエスエーピー)と表現します。これは「as soon as possible」という慣用句の頭文字です。
ただ、この「ASAP」という言葉は、上から命令する強い言葉なので、目上の人や取引先に対して使うにはふさわしくありません。部下などに使用する際も、略さずに「as soon as possible」を使った方が柔らかく聞こえます。
また、「as soon as possible」と似たような言葉で、「as soon as practical」という言葉もあります。なるべく早くという意味としては一緒ですが、「as soon as practical」の方が、「自分ができる限りの範囲で早く」というニュアンスが含まれ、より実際的な言葉として使用できます。
「可及的速やかに」を使いこなそう
「可及的速やかに」という言葉にまつわる意味や使い方をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。一見難しく見える言葉ですが、きちんと使いこなすことができれば、このひとは語彙力があるという印象を与えることができます。
ただし、「可及的速やかに」という言葉を使う場合は、かならず実行できる事柄に合わせて使いましょう。相手はあなたががんばって行動してくれることを期待してしまうので、その期待を裏切らないようにしなければ、自分の信用を高めるどころか落とす結果となります。上手に「可及的速やかに」という言葉を使いこなしましょう。