「いただいております」の使い方・例文・間違いなのか|敬語

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「いただいております」の敬語での使い方って?

ビジネスのさまざまなシーンで、「いただいております」という言葉を耳にする機会がよくあります。しかし、これは間違った敬語表現なのではないかという疑問の声もまた、耳にすることが少なくありません。あなたも「いただいております」について疑問に思ったことはないでしょうか。

この「いただいております」という言葉が、果たして正しい敬語表現なのかどうか、これから考えていきましょう。

「いただいております」は間違いなのか?

間違った敬語なのではないかとよく言われている「いただいております」という言葉ですが、果たして本当に間違った敬語表現なのでしょうか。間違っているとしたら、どこがどう間違っているのでしょうか。

まずは、敬語の基本から確認していきましょう。

敬語にはどんな種類がある?

一般的に、敬語は大きく3種類に分類されています。「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類が昔からある基本の分類です。現代では、この3種類に「美化語」を加えて4種類の分類、さらに「謙譲語」を2分割して計5種類に分類されることもあります。

尊敬語って?

尊敬語とは、相手や相手の物や行動を高め、敬意をあらわす言葉です。例えば「いらっしゃる」「なさる」など、相手の動作を示す言葉などに対して使います。

謙譲語って?

謙譲語とは、自分や自分の物や行動を謙遜することによって、間接的に相手を敬うという手法の敬語です。自分を下げて相手を上げる・高めるという、日本語ならではの奥ゆかしさを持った美しい表現方法といえるでしょう。

二重敬語って?

丁寧な言葉を使おうとして無駄に敬語を重ねてしまった結果、間違った言葉遣いになってしまっている人を見かけることも少なくありません。

そのなかの代表的なものに、「二重敬語」というものがあります。二重敬語とは、その名のとおり、同じ種類の敬語を重複して使ってしまっていることを指します。「尊敬語+尊敬語」または「謙譲語+謙譲語」の構造になってしまっているものを指します。

具体的な例をいくつかあげてみましょう。

尊敬語+尊敬語のパターン

「お帰りになられる」→「お帰りになる」「帰られる」

「お越しになられる」→「お越しになる」「いらっしゃる」「おいでになる」

「おっしゃられています」→「おっしゃっています」

「ご覧になられました」→「ご覧になりました」

「お召し上がりになられる」→「召し上がる」「お召しになる」「お食べになる」

「お会いになられる」→「お会いになる」

尊敬後+尊敬語の二重敬語ではこのように、すでに敬語になっているものにさらに「~れる」を重ねて二重敬語になってしまっているパターンが多く見受けられます。気を付けましょう。

謙譲語+謙譲語のパターン

「承らせていただきました」→「承りました」「お受けしました」

「拝見させていただきました」→「拝見しました」

謙譲語+謙譲語の二重敬語では、へりくだり過ぎておかしな言葉になってしまっているパターンが多くみられます。丁寧にしようとし過ぎて間違った言葉遣いになってしまい、先方に不愉快な思いを与えてしまったり、ビジネスマナーがなっていないと思われてしまったりするのでは、本末転倒です。

二重敬語にはくれぐれも気を付けましょう。

「いただいております」の例文って?

それでは、「いただいております」の具体的な使われ方をいくつか見ていきましょう。

お休みいただいております

ビジネスシーンで、特に社外からかかってきた電話への応対で、「△△は本日お休みをいただいております」と言っているのを耳にしたことがある人は少なくないでしょう。「休みを貰っている」という意味のことを丁寧に表現しようとしているのですが、この「お休みをいただいております」という言葉は、本当によくある間違いです。

まず「お休み」の「お」は誰に対する敬語なのでしょうか。そしてそのお休みは、一体誰から「いただいている」のでしょうか。電話の相手からいただいているわけでも、世間様からいただいているわけでもなく、社内の話なのではないでしょうか。

これは、悪い例をあげると「弊社の社長さんがおっしゃっておられました」のように、丁寧に言おうとするあまりに尊敬語と謙譲語が混乱し、敬うべき対象が見失われて間違った敬語表現になってしまっている状態と同様です。

正解は?

敬意を払うべき対象は、電話の相手である取引先や顧客など社外の人間なのですから、社内の「休み」に「お」を付ける必要はありません。そして「いただいております」ではなくて「休んでおります」「休みをとっております」「休暇をとっております」といった言い方で十分丁寧な表現といえます。

「△△は本日お休みをいただいております」ではなく、「申し訳ありませんが△△は本日休みをとっております」のように言うのが正解です。

いただいておりますか

「いただいておりますか?」という言葉もまた、間違った敬語表現なのではないか、二重敬語なのではないか、と疑問に思われることの多い言い回しです。

「いただいておりますか」を分解して考えてみましょう。「いただいて」は「貰って」の謙譲表現です。「おります」は「おる」「いる」を丁寧にした表現です。

さきに述べましたように、二重敬語の定義は、「尊敬語+尊敬語」または「謙譲語+謙譲語」のように、「一文内に同じ種類の敬語が重複して使われていること」です。この場合は「謙譲語+丁寧語」ですから、二重敬語には該当しません。

いただいておりますでしょうか

しかし、上記の「いただいております」に「でしょうか」が加わると、また話は変わってきます。

ここで注意したいのは「ます」+「でしょうか」の部分です。「ます」だけで丁寧なのにさらに「でしょうか」を重ねるることで、「丁寧語+丁寧語」の二重敬語になってしまっています。ですから、重複を避けて「いただいておりますか」とした方がスッキリと正しい言い方といえます。

お会計いただいております

「お会計いただいております」という表現もよく耳にする言葉です。例えば、飲食店などで「△△様からすでにお会計いただいております」というように使われます。

・「お会計」の「お」は、店側の人間がお客さまに対して使う丁寧語
・「いただいて」は△△さまに対しての尊敬語
・「おります」は「いる」という店側の謙譲語

このように、違う種類の敬語が複数使われている表現です。

二重敬語にはなっていませんので、「お会計いただいております」という表現には問題はありません。

「いただいております」「頂戴しております」の違い

ここまで「いただいております」について考えてきましたが、それでは「いただいております」と「頂戴しております」には、一体どんな違いがあるのでしょうか。

「頂戴」の「頂」という字も「戴」という字も、どちらも「いただく」という意味をもつ漢字です。「頂戴する」という言葉は、人から何かをもらったり、もらったものを飲食したりする時に、自分をへりくだって使う謙譲表現です。

「いただいております」が「一般的なもらうこと」に対して使われる言葉であるのに対し、「頂戴しております」は「モノをもらうこと限定」で使われる、という違いがあります。

例えば、よく耳にする「お名前を頂戴する」という表現がありますが、これは間違いです。「頂戴」は「モノをもらうこと限定」で使われますので、名前そのものをもらうことになってしまうからです。

ですから「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」などの表現の方が正しいといえます。気を付けましょう。

「いただいております」を上手に使いこなそう!

「いただいております」という言葉は、ビジネスシーンで目にしたり耳にしたりする機会の少なくない言い回しです。が同時に、「二重敬語なのではないか」「間違った敬語なのではないか」と言われることも少なくありません。

しかしここまで紹介してきましたように、「いただいております」は決して間違った言葉ではありません。「もらっている」という意味の正しい謙譲語です。

「いただいております」は、取引先や顧客とのビジネスシーンでも利用する機会の多い言葉です。「いただいております」を上手に使いこなして、コミュニケーションスキルを磨きましょう。

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