「頂戴」の意味と使い方
「頂戴」という言葉は、家族や友人との会話、仕事でのやりとりなど、生活する中でとてもよく使用されている、とても身近な言葉です。
「頂戴」という言葉は、たくさんの意味を持っており、そのたくさんの意味として日常生活で使用されています。
「もらう」
「頂戴」という言葉は、「他人から何かをもらうこと」や「もらったものを飲食すること」という意味を持ち、その場合の「頂戴」は「~を頂戴する」と使用されます。
この場合の「頂戴」は「もらう」の謙譲語であるため、へりくだった言葉なので、相手に丁寧な印象を与えることができます。相手が目上の方の場合で、「もらう」と伝える場合に使用します。
また、他人の家や取引先で出していただいたお茶やコーヒーを飲む時によく言う「頂戴します」や、食事や飲み物を勧められた際に断る場合に言う「もう十分に頂戴しました」に使用される「頂戴」も、同じ意味です。
例えばどんな使い方?
例えば、以下のように使用します。
「遠慮なく頂戴します」
「お忙しいところ申し訳ございませんが、少々お時間を頂戴してもよろしいでしょうか」
「この間いただいたケーキ、家族みんなで美味しく頂戴しました」
「お褒めの言葉を頂戴しまして、とても光栄でございます」
「○○をください」
「頂戴」という言葉は、「○○をください」という意味も持ち、その場合の「頂戴」は「○○頂戴」(○○はほしいもの)と使用されます。
この意味としての「頂戴」は、小さな子どもからお年寄りまで、どの年齢層の方にも使用されている、とても身近な言葉です。
例えばどんな使い方?
例えば、以下のように使用します。
「それ頂戴」
「私にもそのお菓子ひとつ頂戴」
「魚屋さん、そのさんま5本頂戴」
「~してください」
「頂戴」という言葉は、「~してください」という意味も持ち、その場合の「頂戴」は「~して頂戴」と使用されます。
「~して頂戴」は、「~してください」よりも親近感があり親しみやすさを感じさせる言葉です。自分にとって身近な人に、主にちょっとしたことや相手にとって苦ではないだろうといういうことをお願いする時に使用されます。
例えばどんな使い方?
例えば、以下のように使用します。
「そこにあるリモコンをとって頂戴」
「今から夕ご飯を作るので手伝って頂戴」
「雨が降ってきたから、ベランダに干してある洗濯物を取り込んで頂戴」
「散歩から帰ってくる時、ついでに郵便受けから新聞を持って来て頂戴」
「頂戴」の例文
では次に、「頂戴」を使用した例文を見てみましょう。
頂戴する
「頂戴する」という言葉の意味は、「~をもらう」という意味です。
「温かいお心遣い、ありがたく頂戴します」
「せっかくですが、お気持ちだけ頂戴します」
「お名前を頂戴する」は誤り
「お名前を頂戴する」という言葉について見てみましょう。
「お名前を頂戴する」という言葉は、相手の名前を知りたい時によく使用される言葉ですが、この言葉は、日本語として誤りです。なぜなら、「頂戴する」という意味は「○○をもらう」という意味なので、「お名前を頂戴する」ですと「名前をもらう」という意味になります。名前はもらうこともあげることも不可能なため、「名前を頂戴する」という言葉は誤りとなります。
相手の名前を知りたい時は、「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」や「お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」という言葉が正解です。
頂戴いたします
次に、「頂戴いたします」という言葉について、見てみましょう。
「頂戴いたします」は二重敬語なので誤り
「頂戴いたします」は、スーパーマーケットなど店での会計時やビジネスシーンなどで、よく耳にする言葉です。
例えば、店での会計時に店員が代金を渡された際に「○○円頂戴いたします」と使用したり、取引先との挨拶時に名刺をいただく際に「頂戴いたします」と使用したりします。
とても丁寧な印象を受ける言葉ですが、この「頂戴いたします」という言葉は、日本語として正しくない、二重敬語にあたります。なぜなら、「頂戴する」という言葉は「もらう」という言葉の謙譲語(敬語)です。「いたします」という言葉も敬語です。その2つの言葉が組み合わさった「頂戴いたします」は、2つの敬語使用した二重敬語の表現となります。
二重敬語は日本語として正しくありませんので、「頂戴いたします」とは使用しない方が良いです。
頂戴しました
次に、「頂戴しました」という言葉を使用した例文を見てみましょう。
「頂戴しました」という言葉の意味は、「頂戴する」の過去形で「もらいました」という意味です。
他人から物品をもらった場合の「頂戴しました」
「取引先の○○さんより、お土産にクッキーを頂戴しました」
「美容室のオープンにあたり、皆さまからたくさんのお花を頂戴しました」
「先日ご来店いただきましたお客様からお手紙を頂戴しました」
「先日参加したマラソン大会の入賞賞品として、1万円分の商品券とテーマパークの入場券を頂戴しました」
大切なものをもらった場合は「確かに頂戴しました」
その物品が相手や自分にとって大切なものだったり重要なものの場合は、「頂戴しました」の前に「確かに」を付けて、「確かに頂戴しました」とします。
「先日依頼いたしておりました書類、確かに頂戴しました」
「○○の契約に関わる代金は、確かに頂戴しました」
頂戴したく存じます
次に、「頂戴したく存じます」という言葉を使用した例文を見てみましょう。
この「頂戴したく存じます」という言葉は、「○○がほしいと思います」をとても丁寧に言った、相手へ敬意を表すことのできる言葉です。取引先や上司など自分にとって目上の人にお願いする際に使用する言葉です。
「お忙しい中申し訳ございませんが、今回の件につきまして、○月○日までにご返事を頂戴したく存じます」
「今回のプロジェクトに関して相談したいことがありますため、お時間を頂戴したく存じます」
頂戴願います
次に、「頂戴願います」という言葉を見てみましょう。
「頂戴願います」は誤り
まず、「頂戴願います」という言葉の意味は、日本語として誤りです。
「○○願います」の○○にあたる部分には、相手にしてもらいたい動作を入れなければなりません。例えば、相手に確認してほしい場合は「確認願います」、相手に返信してほしい場合は「返信願います」というように使用します。
今回の「頂戴」という言葉は、「もらう」という意味です。「もらう」は、相手にしてもらいたい動作ではなく自分のする動作です。ですので、「頂戴願います」は、日本語として誤りとなります。
「頂戴」の敬語
次に、「頂戴」という言葉は、敬語で表す場合、どのようになるのかを見てみましょう。
「頂戴」という言葉は、1つの言葉で「○○を頂戴する」「○○頂戴」「~して頂戴」の3つの意味を持っていますが、「頂戴」を敬語にする場合、3つの意味がそれぞれ違う言葉になります。
「○○を頂戴する」
まず、「○○を頂戴する」という意味の敬語表現を見てみましょう。
「○○を頂戴する」は謙譲語になるため、この言葉自体で敬語となります。
「○○を頂戴する」という言葉は「○○をもらう」という意味のため、下記の言葉を使用すると、敬語表現となります。
「○○を頂戴する」
「○○をいただく」
「○○を拝受する」
「○○頂戴」
次に、「○○頂戴」という意味の敬語表現を見てみましょう。
「○○頂戴」という言葉は「○○をください」という意味のため、下記の言葉を使用すると、敬語表現となります。
「○○をください」
「○○をいただきたい」
「~して頂戴」
最後に、「~して頂戴」という意味の敬語表現を見てみましょう。
この「~して頂戴」という言葉は「~してほしい」という意味のため、下記の言葉を使用すると、敬語表現ができます。
「~してください」
「~していただきたい」
「頂戴」の読み方
次に、「頂戴」の読み方について見てみましょう。
日常生活で使用される「頂戴」の読み方は「ちょうだい」ですが、昔の文学作品の中では、さまざまな読み方で「頂戴」という漢字は登場しています。
「頂戴」の読み方いろいろ
では、「頂戴」の読み方はどういったものがあるのか見てみましょう。
「頂戴」は、
「ちょうだい」
「ちやうだい」
「いただ」
「ちようだい」
「てうだい」
「いたゞ」
「ちゃうだい」
「ちょうでえ」
というような読み方をされています。1つの言葉ですが、本当にたくさんの読み方があります。
さまざまな読み方の「頂戴」が登場する作品
上記の読み方は、夏目漱石や樋口一葉、宮沢賢治、新美南吉、三遊亭円朝、幸田露伴、江見水蔭など、とても有名な著名者の作品の中でも使用されています。いくつかの例を下記に挙げます。
【ちやうだい】
新美南吉「良寛物語 手毬と鉢の子」
と頂戴(ちやうだい)してしまつた。何しろ仙桂和尚の春風のやうな、のんびりした人柄が、良寛さんの心も、さいうふ工合にしてしまふのであつた。
【ちようだい】
樋口一葉「十三夜」
再ふたゝび言いひそびれて御馳走の栗枝豆ありがたく頂戴(ちようだい)をなしぬ。
【いたゞ】
幸田露伴「五十塔」
親方まことにありがとうはござりまするが、御親切は頂戴(いたゞ)いたも同然、これはそちらにお納めを、と心はさほどになけれども言葉に膠のなさ過ぎる返辞をすれば
【ちゃうだい】
宮沢賢治「いてふの実」
あら、あたしこそ。あたしこそだわ。許して頂戴(ちゃうだい)。
「頂戴」の類語
次に、「頂戴」と似ている意味を持つ言葉、言い換えて使用することができる言葉、類語を紹介します。
こちらも、前述しました敬語表現と同じように、「頂戴」という言葉は、1つの言葉で「○○を頂戴する」「○○頂戴」「~して頂戴」の3つの意味を持っていまして、「頂戴」の類語は3つの意味がそれぞれ違う類語を持っています。
「○○を頂戴する」
まず、「○○を頂戴する」という意味の類語を見てみましょう。
「○○を頂戴する」という言葉は「○○をもらう」という意味のため、下記の言葉が類語となります。
「○○をもらう」
「○○をいただく」
「○○を受け取る」
「○○頂戴」
次に、「○○頂戴」という意味の類語を見てみましょう。
「○○頂戴」という言葉は「○○をください」という意味のため、下記の言葉が類語となります。
「○○をください」
「○○をくださいな」
「○○をいただきたい」
「○○をほしい」
「~して頂戴」
最後に、「~して頂戴」という意味の類語を見てみましょう。
「~して頂戴」という言葉は「~してください」という意味のため、下記の言葉が類語となります。
「~してください」
「~してほしい」
「頂く」「戴く」「いただく」
次は、「イタダク」という読みをする、「頂く」「戴く」「いただく」について、紹介します。
3つとも「イタダク」と同じ読みをしますが、それぞれの持つ意味は同じなのでしょうか。同じ使い方をして良いのでしょうか。言葉別にそれぞれの特徴を見てみましょう。
「頂く」は「もらう」「食べる」「飲む」
まず、「頂く」という言葉について見てみましょう。
「頂く」という言葉は、「もらう」「食べる」「飲む」という意味を持ちます。この言葉は「もらう」「食べる」「飲む」という言葉の謙譲語で、自分にとって目上の方へ「もらいます」「食べます」「飲みます」などと言いたい時に使用する言葉です。常用漢字のため、一般社会の中で使用されています。
「戴く」は常用外漢字なので使用しない
次に、「戴く」という言葉について見てみましょう。
「戴く」という言葉も、「もらう」という意味を持ちます。この言葉は「もらう」という言葉の謙譲語ですが、日常生活でこの言葉をあまり見たことのないように、常用外漢字のため一般社会の中では使用されておりません。
次に、「戴」という漢字について見てみましょう。
「戴」という漢字は、「ありがたくうける」「あがめる」「目よりも高くものを捧げる」「頭の上にのせる」という意味を持ちます。こういった意味からわかるように、この「戴」という漢字は、上司や取引先など自分にとって目上の人に対して使用する漢字となります。
このような意味を持つ「戴」を使用した言葉には、「戴冠」(帝王が即位して初めて王冠を頭にのせること)と「押戴」(物を目より上の方にささげ持つ)などがあります。
「いただく」は補助動詞で敬語に変化
次に、「いただく」という言葉について見てみましょう。
ひらがなの「いただく」という言葉は、主に、動詞のうしろに付けて使用される「イタダク」として使用されます。このような使い方の「いただく」のことを、補助動詞といいまして、「いただく」が動詞のうしろに付くことでその言葉が敬語として表現されます。
例を挙げますと、
「お越しいただく」
「ご覧いただく」
「教えていただく」
などです。
動詞(お越し・ご覧・教えて)のうしろに「いただく」が付くことで、敬語となっています。
補助動詞としての「いただく」は、誤って「頂く」を使用している方もいますので、今回の記事をご覧になるまで知らなかったという方も意外と多いのではないでしょうか。
同じ読み方でも三者三様
以上、「頂く」「戴く」「いただく」の3つの「イタダク」と読む言葉について紹介しました。「頂く」は謙譲語、「戴く」は常用外漢字、「いただく」は補助動詞というように、同じ読み方でも、言葉の意味や使い方は、それぞれがそれぞれの役割を持っていて全く異なっていることがわかりました。
言葉を正しく理解して使用してみましょう
いかがでしたでしょうか。「頂戴」という言葉は、いろいろな意味や使い方ができることがわかりました。
また、「イタダク」という3つの表現の使い分けや、「頂戴いたします」や「お名前を頂戴する」など使用してしまいがちな誤りなど、日常生活ですぐに役に立つようなことも紹介しましたので、参考にしてぜひ使用してみてください。