「せっかく」の意味と使い方・敬語・類語・漢字表記・例文|丁寧語

ビジネススキル

日本語との向き合い方

日本語を学習する際に大切なことは「覚えるべき言葉を実践的に覚えること」で、一度覚えた言葉をさまざまな表現をもっていろいろな方法で使い分けることがベターな学習法となります。

たとえば例文を自分で作ってその中で覚えるべき言葉を組み入れ、その例文でさまざまな場面を想定した上で言葉の用法・活用を工夫し、何度も反復して言葉を学習していくことが大切です。

実践的に覚えることの大切

先述でもご紹介しましたが、言葉というのは「覚えてから実際に使わなければ身に付かない」という言葉があるように、「自分の言葉」として言語を学習する際には例文や会話などでその言葉を実際に使うことが大切になります。

英語を覚えるときでもそうですが、単語を覚えてその単語を例文中で使って覚えるということが学習時には重要で、そうすることによってその言葉を多角的に学ぶことができます。

さまざまな場面を想定して言葉を使い分ける工夫

先でご紹介しました「例文を使って言葉を覚える・学習する場合」もそうですが、会話中に言葉を使用して学習する場合でも「その言葉をいろいろな場面を想定して学習する」ということがとても大切になります。

いろいろな場面を想定して言葉を使い分けることによって「1つの言葉を流用して学習すること」が可能となるため、単純に「言葉と向き合う」という姿勢ではなく、「どんな場面でもその言葉を利用・活用することができる」という実践的な学習ができます。

そのため例文を使用して言葉を学習する際には、ぜひいろいろな場面・状況をあらかじめ設定しておき、その中で覚えるべき言葉を有効に活用して覚える・学習するということを心掛けましょう。

日本語の形容表現を的確に覚えること

日本語にはまず品詞の使用法という文法の基礎を作る過程があり、その上で、熟語、四字熟語、慣用句、いろいろな形容表現、敬語表現などという「文章表現する上で必須の項目」が用意されています。

これらの「日本語文法」を覚える際にはまず「品詞と形容表現」を学習することが大切で、両者をマスターした上で、日本語に見られるさまざまな言葉の活用方法を学習することが大切になります。まずは基礎となる「品詞のあり方」を覚えることから始めてよいでしょう。

「せっかく」の意味と使い方

さて、「せっかく」の意味と使い方についてですが、この「せっかく」の意味は「努力すること・徒労に終わること・心を砕くこと」などを基本的な意味合いに持ち、表現の上では「努力したのにムダだったこと」や「困難を経ても結局、努力が実らなかったこと」などを指します。

・彼に会いにせっかくきたのに、結局、会うことができなかった。
・せっかく論文作成のための準備をしたのに、論文を書く時間が与えられませんでした。
・せっかく東京まで来たのに、結局すぐに帰らなければなりません。

このように「せっかく」という言葉はやや文章の冒頭に持ってこられることが多く、「せっかく○○したのに」という言い方で表現されることが一般的です。

「せっかく」は尽力することが前提

先でご紹介しましたように、「せっかく」という言葉の基本的な意味は「努力したこと・尽力したこと」が前提となっており、「その努力・尽力が結果的に実らなかったこと」を改めて相手に伝える場合に使われることが一般的です。

・せっかくここまで勉強したのに
・せっかくこれまで努力してきたのに
・せっかく提出したのに

他にもいろいろな例があげられますが、「せっかく○○したのに」という表現がよく言われ、「したのにダメだった」とうい表現に終局する場合がほとんどです。

「せっかく」は困難な局面に遭うことが前提

また「せっかく」という言葉を使う際には、その「せっかく」を使うまでに「特定の困難に出遭っていること」などがあげられます。この場合は、「その困難を乗り越えて○○してきたのに」という言い方で「せっかく」が使われる流れになります。

・せっかく、受験勉強を乗り越えて第一志望の大学に向けて努力してきたのに、結局、第三志望の大学に入学することになりました。
・せっかく500キロもの距離を乗り越えてここまで来たのに、彼らに会うことはできませんでした。
・せっかく給料2カ月分を貯めたのに、ダイヤモンドが値上がりしたことで、お目当てのダイヤを買うことはできませんでした。

相手の努力に対して労う言葉

先述までは「自分が努力したのに、結局その努力の目的を果たすことができなかった」という意味合いでの「せっかく」の用法をご紹介しましたが、この「せっかく」という言葉は「相手の努力を労う際に使用する場合」が見られます。

・せっかくここまでご足労願いましたのに、何のお構いもできませんで、大変失礼いたしました。
・せっかく努力なされたのに、こんな結果になってしまってとても残念です。
・せっかくのご融資でしたが、事業プランは中断されましたので、申し訳ございませんがご返金させていただきます。

このように、相手の努力の結果が得られなかったことに対する慰労の言葉としても、この「せっかく」が普通に使用されます。

ビジネスシーンでの「せっかく」の使い方

ビジネスシーンでの「せっかく」の使い方についてですが、これは先でご紹介しました「相手の努力に対して労う言葉」として使われる「せっかく」の意味合い・用法がメインとなります。

・せっかくのお申し出でございましたが、この度は見送らせていただきます。
・せっかくおいでくださいましたのに、誠に申し訳ございませんでした。
・せっかくのご相談でしたが、お力になることができずに申し訳ございません。

他にもいろいろな「せっかく」の用法がありますが、ビジネスシーンで使われる場合は「自分の努力が実らなかったことに対する残念」を示す場合よりも、「相手の努力が実らなかったことに対する残念・労い」を示すために「せっかく」が使われる場合がほとんどです。

「せっかく」の敬語

「せっかく」そのものに敬語表現はありませんが、この「せっかく」と言う代わりに別の表現をもって敬語表現に置き換えることは多くあります。

・残念ではございますが
・誠に申し訳ございませんが
・無念ではありますが
・精一杯のご協力をさせていただきたいのですが
・出来得る限りのご尽力をさせていただきましたが

他にも場面や状況によっていろいろな「せっかく」の意味が差す「努力が実らなかったことへの残念」を相手に伝える表現がありますが、だいたい上記の言葉が主に使われ、どの場合でも相手に対する謝意の念を込める形で使用されます。

丁寧語

丁寧語というのは基本的に「です・ます調」で相手に敬意をもって伝える「丁寧な言葉遣いによる敬語表現」となります。普段の日常生活で使用されている敬語表現のうちで、最もポピュラーな敬語表現としてもよいでしょう。

・せっかくですが残念です。
・せっかくここまできたのに無念です。
・せっかく努力しましたけれど、目標を達成することはできませんでした。

このように、とりわけ特別な敬語表現を意識することなく、その接尾辞に「です・ます」を付けるだけで丁寧語による「せっかく」の表現をすることができます。この場合は「せっかく」をそのまま使用してよいでしょう。

尊敬語や謙譲語

尊敬語というのは一般的に「話者が目上の人・上司に対して一方的に敬意を払って敬意を示す敬語表現」を意味し、特にビジネスシーンで使われる場合が多く、日常生活においても年配の人や尊敬する人には自ずと使われる敬語表現となります。

謙譲語というのは「話者と相手の立場や関係性を問わず、話者が自発的にへりくだって相手に敬意を示す敬語表現」となります。丁寧語の次に多く使われる敬語表現となるでしょうか。

・せっかくご尽力されていましたのに
・せっかくのお申し出ではございましたが
・せっかくのご機会ではございましたが
・せっかくのご厚意ではありましたが
・せっかくお誘いいただきましたのに

このように、状況や相手によって尊敬語や謙譲語の使い分けはありますが、ほとんどこの謙譲語・尊敬語というのは併用されることが多くなります。

「せっかく」の類義語

「せっかく」の類義語についてのご紹介ですが、類義語を調べる場合はまず「その言葉が持つ根本的な意味や用法」をしっかり把握しておくことが大切です。「せっかく」の根本的な意味は「努力したのに結局○○でした」となるため、このような意味合いの文脈につながる言葉を探せばOKです。

わざわざ/労力を惜しまずに/労力を掛けて/時間を掛けて/手間を掛けて/骨折って/汗水たらして/遠路はるばると/苦労の末/どうにか/かろうじて/ようやく/ようやっと/なんとか/やっと/やっとこさ

上記の言葉がまず並びますが、どの言葉にも「たくさんの労力と時間を掛けて目標を達成しようとしたのに、結局○○でした・ダメでした」というような意味合いが含まれます。

「せっかく」と「わざわざ」

「せっかく」と「わざわざ」の意味合いや用法についてですが、両者の言葉は非常に近い意味合いをもって使用されます。

・わざわざ(せっかく)知らせていただきましたのに
・わざわざ(せっかく)努力したのに
・わざわざ(せっかく)遠いところから来たのに

このように、「せっかく」と言う箇所をすべて「わざわざ」に置き換えてもその文意が通じる場合がほとんどです。

「せっかく」と「ご足労いただき」

「せっかく」と「ご足労いただき」についてですが、これはワンセットで使われる表現の例としてご紹介できます。「ご足労いただき」という言葉の意味は「わざわざ来ていただいたのに」という相手の訪問への労いの意思を伝え、同時に相手への謝意を述べる際に使われます。

・せっかくご足労いただきましたが、ご相談に乗れずに誠に申し訳ございません。
・せっかく遠いところをご足労願いましたが、この度のご商談は保留にさせていただきたく存じます。
・ご足労お掛けしましたのに、またせっかくのお申し出ではございましたが、この度は見送らせていただきます。

「せっかく」と「遠路はるばると」

「遠路はるばる」という言葉の意味合いも基本的には「ご足労」とワンセットで使われる・理解されることがほとんどです。「遠路はるばる」の基本的な意味は「長く険しい、遠い道のりを隔てて来てくれたこと」に対する謝意を述べる際に使われます。

・せっかく遠路はるばると来られましたのに、十分なおもてなしができませんで誠に申し訳ございません。
・せっかく遠路はるばる来たのに、結局、目的を得られなかった。
・遠路はるばるとせっかくここまで乗り継いで来たのに、最後の最後で目的地へたどり着けませんでした。

「せっかく」と「お時間を掛けていただき」

「せっかく」と「お時間をかけていただき」についてですが、「お時間を掛けていただき」という言葉は「相手が長い時間を掛けて何らかの目的を達成しようとし、その目的が話者にとって特定の利益をもたらす場合」を想定して使われる言葉となります。

・せっかくお時間を掛けていただきたくさんの書類をご記入いただきましたが、申し訳ございませんが、もう一度最初からご記入願えませんでしょうか。
・せっかくお時間を掛けていただきながらの事業参加でしたが、来期からはご参加を保留の形にさせていただきたく存じます。

「せっかく」の漢字表記

日本語にはそれぞれの言葉にたいてい漢字表記が用意されており、その中には「造語・当て字」などの見慣れない・聞き慣れない読み方をする漢字もあるため、漢字表記やその読み方を学習する際には注意することが大切です。

この「せっかく」の漢字表記は「折角」となり、特に他の漢字表記は認められません。小説やポエムなどでは筆者の価値観や造語などによって、別の表記がなされる場合もありますが、一般的に「せっかく」の漢字表記は「折角」となると覚えればよいでしょう。

折角の由来

この「折角」という漢字表記についてですが、この言葉はもちろん中国の漢語から由来したものであり、この漢字の成り立ち・語源も歴史的に認められています。その昔、中国の朱雲が五鹿に住む充宗と易を論じて勝ち、その際に鹿の角を折ることを評に見立てたことから、「尽力すること・苦労すること」を「折角」と言うようになりました。

現代用語としては「せっかく」と書くのが一般的で、わざわざ「折角」と漢字表記する必要はありません。

「せっかく」の例文

先述しましたように、日本語でも世界各国の言語・言葉を覚える際には、必ず例文を使用するなり会話で使うなりして、その覚えるべき言葉を実際に使って学習することが最適の勉強法になります。

・せっかくお越しいただきましたのに、何のお構いもできませんで申し訳ございません。
・せっかく勉強してきたのに、結局、目標としていた希望高校に入学することはできませんでした。
・せっかくのご融資のご相談でしたが、この度は見送らせていただきます。
・せっかくのお申し出ですが、しばらくご検討させていただきます。
・せっかくここまで来たのに、目的の物を得ることはできませんでした。
・せっかく車を買ったのに、結局すぐに壊れてしまった。

「せっかく」の英語表記と意味

「せっかく」という言葉を英語に直す場合、それぞれの英単語の意味合いや用法に配慮した上で以下のようにピックアップされます。

・mind as well(せっかく○○したのに)
・while you are(せっかくなのに)
・in spite of(にも関わらず、せっかく)
・however(しかしながら、せっかく)
・but(しかし、せっかく)
・but even so(それでも、せっかく)
・made an effort, but(努力したのに、せっかく)
・unfortunately(残念ながら、せっかく)
・can not expect(思いどおりにいかない、せっかく)
・even though I had a hard time(時間を掛けたのに、苦労したのに、せっかく)

「せっかく」の英語表現と意味(1)

先でご紹介しました「せっかく」の英語表記を参考にして、「せっかく」の意味合いを含めた英語の例文をいくつかご紹介します。

・I could not do anything after all, although I could get liberated freely.
「せっかく自由になれたのに、結局何もできませんでした。」
・Although I had a hard time so far, I could not achieve my purpose.
「せっかくここまで苦労したのに、目的を達成できませんでした。」
・I am sorry to have troubled you, but I am sorry.
「せっかくご足労いただきましたが、申し訳ございません。」

「せっかく」の英語表現と意味(2)

先述しました「せっかく」の英語表現に引き続き、さらに具体的な「せっかく」の意味を含む例文をご紹介します。

・We have participated in the business plan so far and we have been considering future business expansion plans, but unfortunately we will hold it.
「これまで事業プランにご参加いただき、せっかく今後の事業拡大案をご検討されてきましたが、残念ながらこの度のご計画は保留にさせていただきます。」
・Although I was planning to enjoy traveling abroad with my parents, after all, I did not have enough money.
「せっかく親子で海外旅行を楽しもうと思っていたのに、結局、貯金が足りなくて旅行できませんでした。」

「せっかく」の英語表現と意味(3)

先述の具体的な「せっかく」の英語表現に引き続き、今度はいろいろな場面で見られる「せっかく」の例文をご紹介します。

・If you use the word “precious” as a business term, it may be used in place of another honorific expression.
「「せっかく」という言葉はビジネス用語として使われる場合、別の敬語表現に置き換えて使用される場合があります。」
・It is undoubtedly rude to express expressions that leads to the meaning of “to have made you worry” due to business interaction.
「ビジネス上のやり取りで、「せっかくしてあげたのに」という意味につながる表現をすることは間違いなく失礼に当たります。」

「せっかく」の正確な意味と用法を覚えましょう

いかがでしたか。今回は「せっかく」の意味と使い方・敬語・類語・漢字表記・例文|丁寧語と題して、「せっかく」の意味と使い方・敬語・類語・漢字表記などの正確な情報についてのご紹介をはじめ、さまざまな場面で使われる「せっかく」の用例をご紹介しました。

「せっかく」という言葉は基本的に「努力したのにも関わらず、その努力によって得られるはずだった目的が得られなかった場合に用いられる言葉」として認められ、これは日常生活でもビジネス上のやり取りでも多くの場面で使われています。

特にビジネスシーンで使われる場合では、「せっかく○○してあげたのに」という意味の文脈にならないよう配慮しておき、基本的には「相手の苦労・努力」を労う形で「せっかく」を使用することがマナーとなります。

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