「拝借」の意味と使い方・類語・敬語表現・反対語・ビジネス

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「拝借」の意味と使い方

「拝借」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。「拝借」という言葉の意味は、何かを借りる必要があったときや、そのお礼として用いられる言葉です。

しかし、間違った使い方をされている方も多く、言葉の意味や使い方をよくご存知の方の前で間違った使い方をすると、はずかしい思いをしてしまいますので注意しましょう。

そこで今回は、「拝借」という言葉の正しい意味や使い方について紹介します。使い方や意味をご存じだという方も、もう一度確認する意味で読んでみてください。

拝借とは

拝借とは、何かを借りるときに使う言葉です。特にビジネスシーンでは、謝礼の際にも用いられます。ただし、使い方を誤ると相手の方に不信感を与えてしまいますので注意しましょう。

「拝借」の読み方と文字に含まれた意味

「拝借」は「はいしゃく」と読みます。「拝借」の「拝」の字は、「おがむ」という意味でも用いられます。つまり、何かを借りるにあたって「頭を下げて相手にお願いをする」という意味で使われます。

また、「拝借」の「借」の字は「借りる」という意味の漢字になりますので、「拝借」という言葉は、「感謝を込めつつ謹んで何かを借りる」という意味で用いられる言葉になります。

「拝借」の類語

「拝借」の類義語は、「借りる」、「借り入れる」、「チャーターする」などがあります。どの言葉も「拝借」と似た意味で使われる言葉ではありますが、「拝借」という言葉とは少しずつ意味が異なっています。それでは次に、それぞれの使い方について説明します。

「借りる」との違い

「拝借」と「借りる」の違いは謙譲語かどうか、ということです。「借りる」とは金銭や物品を後で返す約束の元に使うことを意味しますが、「拝借」とは「借りる」の謙譲語ですので、意味に違いはありません。

「借り入れる」との違い

「借り入れる」という言葉もまた、「拝借」と同じく金銭や品物に対して用いられる言葉で、例えば「資金を借り入れる」といった使い方をします。この場合は、「拝借する」という言葉は使いません。

「チャーターする」との違い

チャーターするとは、バスや船、航空機などを借りる際に使う言葉です。例えば、「航空機をチャーターする」といった使い方をし、似た意味合いがありますが、通常「バスを拝借する」といった表現はしません。

「拝借」の敬語表現

「拝借」という言葉は謙譲語ですので「、頭を下げて何かを借りる」という意味が含まれていて、相手に対してへりくだった表現になります。

実際の立場はどうであれ、相手に何かを借りる必要があった場合に、自分を相手よりも下の立場に置き、相手に対して敬意を払う表現方法です。

「拝借」という言葉だけでもかなり丁寧な言葉遣いになりますが、その下にどういった言葉をつなげるかによって、相手の方が受ける印象も変わります。

3種類の敬語表現

「拝借」は「借りる」を敬語にした言葉です。敬語は「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」の3種類にわけられますが、人に何かを借りるときはその時に応じて言葉づかいも変えなければいけません。そこで次に、「借りる」という表現をそれぞれの敬語に変換した場合には、どんな言葉になるのか紹介しましょう。

丁寧語

丁寧語は、その名のとおり丁寧な表現方法です。丁寧語とは、言葉遣いを丁寧にすることにより相手に敬意を表す言葉になります。「拝借」を丁寧語に変換する場合は、「借ります」という表現になります。

例えば、「○○をお借りします」など、敬語の中では最も使う頻度が高く、使いやすい言葉でもあります。

尊敬語

「尊敬語」とは、相手を高めて使う言葉になります。尊敬語もまた相手に敬意を表すための言葉ですが、謙譲語は自分を下げることにより相手を高く見せる言葉であるのに対し、尊敬語が相手の行動などに対して用いられる言葉になります。

相手の行動や状態に対して使われますので、何かを「借りる」ということを尊敬語として表現するのであれば、「お借りになる」という表現になります。例えば、「○○様がお借りになる」といった表現を使います。

謙譲語

謙譲語とは、へりくだった表現で自分を下に見せることで相手に敬意を表す敬語です。「借りる」を謙譲語にする場合は、「拝借」または「お借りする」といった表現をします。

「拝借」という言葉そのものが謙譲語になりますので、「拝借する」という言葉を用いるときは「拝借してもよろしいでしょうか」、もしくは「お借りします」という表現でも構いません。謙譲語は動作の対象が相手側になりますので注意しましょう。

「拝借」の例文

では実際に「拝借」という言葉を使ってみましょう。主にビジネスシーンで多く使われる言葉になりますので、目上の方にも失礼にならないよう、正しい使い方を覚えておきましょう。

猫の手拝借

「猫の手も借りたい」という表現方法がありますが、冗談で「猫の手拝借」などという使い方をすることはあっても、これは正しい使われ方ではありません。

猫の手も借りたいとは、「誰でもいいから力を借りたい」という意味で使われる言葉ですので、面と向かって「猫の手も借りたい」という言い方は失礼に当りますので注意しましょう。

「猫の手も借りたい」の語源

猫は夜行性ですので昼間はほとんど寝ています。また、犬とは違い人の思うように動くことはなく、あまり言うことを聞きません。そのため、「いつもゴロゴロしている猫の手でもいいから、借りたいほど忙しい」ということが語源となっています。

「猫の手も借りたい」の使い方

「猫の手も借りたい」という言葉はいい意味でも悪い意味でも使われます。例えば「お店が繁盛して猫借りたいほど忙しい」など、良い意味で使われることもあり、逆に「なかなか仕事が終わらないので猫の手も借りたい」という悪い意味でも使われます。

拝借願います 拝借する

「拝借」という言葉は、その下に何を付け加えるかということも大切です。

「拝借する」ということを伝えたいのであれば、「拝借します」、「拝借いたします」、「拝借させていただけませんでしょうか」など、丁寧な言葉遣いをする必要があります。

また、「拝借願います」という使い方をすることがありますが、これは厳密には正しい使い方ではありません。「拝借」という言葉を使いたいときは、「拝借しました」、「拝借させて下さい」、「拝借させていただきたいのですが」という使い方をしましょう。

「拝借」の間違った使い方

「拝借」は「借りる」の謙譲語になりますので、敬意を示すために相手よりも自分を低く見せる表現です。

「拝借」は自分が相手にお願いする立場であるときに使う言葉ですので、相手の方の行動に対して使う言葉ではありません。

相手の行動に対して「借りる」という表現をするのであれば、「お借りできましたか」といった表現になります。

「拝借する」は誤解されやすい

「拝借する」という言葉を「拝借する」と使う場合もありますが、「拝借する」という言葉はは厳密にいえば正しい使い方とはいえません。「拝借する」という言葉には、「その場から持ち去る」、「盗む」という意味がありますので、間違って使わないよう注意しましょう。

例えば、「ペンを拝借する」という使い方をしてしまうと、そのまま返さず、「自分のものにしてしまう」という意味に聞こえてしまいます。

何かを借りたいのであれば、後で必ず返すということを伝えなければいけませんので、借ります、お借りしますといった表現をして下さい。

二重敬語に注意

「拝借」は謙譲語ですので、「拝借」という言葉一つだけでも「借りる」と同じ意味をもつ「謙譲語」になりますので、それ以上丁寧にする必要はありません。

謙譲語は自分を低く見せて相手をたてたり、へりくだった表現をする場合に用いられますので、敬語を二つ重ねてしまうと二重敬語になってしまいます。二重敬語は、敬語の使い方としてマナー違反となりますので、「ご拝借」という使い方はしません。

より丁寧な表現をしようとして二重敬語になることはよくありますので注意しましょう。「拝借」という言葉を使うときは、「ご」をつけずそのまま「拝借します」という使い方をして下さい。

「いただく」を付け加えない

「拝借させていただく」と間違った表現をされている方をよく見かけますが、これは二重敬語になりますので注意しましょう。何げなく使われている二重敬語も多く、あまり神経質になる必要はありませんが、その表現によってはくどく感じるため相手に不快感を与える恐れがあります。

目上の方には使わない

目上の方は何かを借りた葉表現する際には拝借という言葉を使わない方がよいでしょう。拝借は、自分をへりくだる表現になりますので、「部長が拝借されました」または目上の方に対して「拝借して下さい」といったような表現はふさわしくありません。

目上の人に使う場合は尊敬語を用い、「お借りになる」といった表現方法を使ってください。例えば「部長はお借りになりました」といった表現が正しい使い方になります。

「拝借」は謙譲語ですので、相手に対してへりくだった表現になります。そのため、目上の方に対してや会話で用いることはできません。目上の方に対しては、「お借りになる」などの尊敬語を用いましょう。

だれに対するものなのかを意識する

「拝借する」は謙譲語になりますので、「借りる」という動作の対象はあくまでも相手側にあります。そのため、「部長が○○を拝借する」という表現はマナー違反になります。この場合は、「部長が○○をお借りした」という表現が正しい表現方法になります。

「拝借」の反対語

「拝借」とは、何かを相手から借りるときに使う言葉ですので、反対語は、「貸す」、「貸与」、「貸し出す」という言葉になります。「貸す」という言葉もまた、金銭や品物のほか、他人の手助けをするときにも「力を貸す」といった表現を用います。

「借用」との違いについて

「借用」もまた、何かを借りるときに使う言葉ではありますが、この「借用」という言葉を使うときには注意が必要です。

例えば「お知恵を拝借願いませんでしょうか」といった表現をすることはあっても、「お知恵を借用願えませんでしょうか」とは言いません。

また、借用するという言葉には、「借りた後で使う」という意味が含まれていますので、これがお金と結び付けられると、借金や負債を意味することになりあまり良いイメージをもたれません。

借りたものを自分の手元に置いておく、受け取ってしまうといったマイナスのイメージも多く、目上の人に使うと失礼になる場合があります。

「貸与」との違いについて

「貸与」とは、何かを相手に貸す時に使います。返してもらうことを前提として貸す場合に用いられる言葉で、対象は主に金品になります。さらに、公共機関などが物を貸してそれを持ち出すことを許可する場合は「貸し出す」という言葉が用いられます。

「借り上げる」との違いについて

例えば、「借り上げる」という言葉がありますが、これは県庁や区役所から民間に対して使う言葉になります。ほかの場合とは違い、「自分のものにしてしまう」という意味はなく、「一時的に受け取る」という意味で使われます。

「拝借」は、話し言葉にも文章にも用いることができますが、「借り上げる」は、主に文章に使われる言葉で、話し言葉として使うことはほとんどありません。

ビジネスシーンで「拝借」を使うときの注意点

ビジネスシーンでは、物の貸し借りが頻繁に行われますので、「拝借」という言葉の使い方を押さえておきましょう。急いでいるときは「貸してほしい」ということを伝えるときに、ついつい雑になりがちですが、人間関係をスムーズにするためにも丁寧な言葉遣いや表現方法を覚えておきましょう。

「拝借」を使わない方が良い場合

「拝」という言葉は、「拝借」のほかにも「拝聴」、「拝見」など、ほかの言葉と組み合わせ、さまざまなシーンで用いられます。しかし、お金の話しはデリケートですので、目上の方にお金を借りた場合には使い方に注意が必要です。

例えば、飲み会で目上の方にお金を借りてしまった場合、後日お金を返す時になって、「先日お金を拝借しまして」と話してしまうと、まるで「お金を無断で使った」、または「盗んでしまった」ような表現になってしまいますので注意が必要です。この場合は、「飲み代をお借りして」といった表現を使いましょう。

「拝借」の使い方を覚えれば仕事もスムーズ

特にビジネスでは、さまざまなものの貸し借りが頻繁に行われますので、「借りる」という意味をもつ「拝借」をスムーズに使えるよう正しい使い方を覚えておきましょう。

ただ「貸して」というのではなく、「拝借」という言葉を正しく使えば、相手に良い印象を与えることができ、仕事や人間関係も円滑になります。

「貸し借り」とはお金のことに限らず、能力や物品などにも使われます。しかし、お金に使うこともある言葉ということで、使い方を誤ると相手に悪い印象を残してしまいますので注意しましょう。

また、「拝借」という言葉は自分に対して使う言葉で、相手に使う言葉ではありません。特に日本はマナーに厳しい国でもありますので、言葉のマナーも重要になります。どんなに仕事ができても正しい言葉遣いができないと、高い評価につながりません。「拝借」の正しい使い方を覚えてビジネスシーンでも役立てて下さい。

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