正しく覚えたい!「承前」の意味・使い方
文章を読んだり、人と話したりしていると、自分の知識にない言葉と出会ったり、知らない単語に触れたりすることもあります。意味や使い方がわからない言葉と出会ったとき、どのように対処するかによって、語彙力や表現力に差が出ると言われています。
知らない言葉と出会ったとき、適当にやり過ごしたり、そのままにしたりしていると、いつまで経っても知らないままになってしまいます。しかし、その場で調べたり、後から意味などを確認したりすれば、自分の知識となり、語彙力やボキャブラリーの向上に繋がります。
今回は、最近はツイッターなどのSNSでも使われることが増えてきたものの、意味などがわかりづらい言葉の1つと考えられる、「承前」という言葉をピックアップして、意味や使い方、類語や対義語、例文などを考察・ご紹介していきます。
「承前」の意味
まず始めに、「承前」という言葉がどのような意味を持つ言葉なのか、基本的な意味について確認していきます。
「承前」の意味について、「コトバンク」では、以下の引用のような解説を掲載していました。引用した解説から、「承前」とは、前の文章の内容などを受けて、文章が続いていることを表現する言葉だと読み取ることができます。続きからの文章のはじめに書いて、続きの文章であることを表現するケースもあると言われています。
前の文章を受けて続いていること。また、続きものの文章の初めなどに書く語。
四字熟語で使われるケースもある
後述で詳しくご紹介しますが、「承前」という言葉は、四字熟語で使用されることもあります。
一例としては、「承前啓後」などの四字熟語で、「承前」という言葉が使用されています。しかし、その場合の「承前」の指す意味は、上記でご紹介した「前の文章の続き」といったニュアンスとは、異なる可能性があります。
ですから、四字熟語で「承前」が使われている場合は、「承前」という単語が持つ意味にとらわれず、四字熟語は四字熟語の意味として覚えた方が良いと考えられます。
「承前」の使い方
「承前」という言葉に含まれている意味を学んだところで、続いては「承前」の基本的な使い方について、考察していきます。
文章などで、「承前」という言葉を使用したい場合、一般的にどのように使うのか、上記で考察した意味などをもとにして、考えてみましょう。
メール
上記でもご紹介したとおり、「承前」とは、文章が続きの文章であることを表現する際に使用される言葉です。そのため、文章で使用されるケースが多いと予想できます。
「承前」は、メールでのやり取りにおいても、使用されることがあると考えられます。前に送ったメールの内容を踏まえ、その続きの内容を別のメールで述べる際などは、メールの文章の頭に「承前」という言葉が使用されることもあると予想できます。
文章の最初に「承前」と付けることで、そのメールの文章が、前のメールの文章を踏まえたものであることや、以前のメールの続きの内容であることを表現できると考えられます。
SNS
近年は、多くの人が何らかの形でSNSを利用しています。SNSのタイプや種類にもよりますが、ツイッターなどの短文の文章を投稿するタイプのSNSにおいては、「承前」という言葉が使われることも少なくないと言われています。
ツイッターを筆頭としたSNSには、1回の投稿で入力することができる文字数に、制限が設けられているケースが多いと言われています。そのため、どうしても文字数の制限内で伝えたいことを入力し切れないときは、連続で投稿をする必要が出てきます。
上記のように、1つの内容や話題について、何回かの投稿にまたがって述べる際などに、前の投稿からの続きであることを表現する言葉として、「承前」が使われることがあると言われています。
原稿・記事
「承前」という言葉は、原稿や記事などで続いていることを表現したい場合にも、使用することが可能だと考えられます。
原稿や記事などを作成していて、何らかの関係でページが変わったり、区切りなどで途切れたりした際に、前の原稿や記事から続いている内容だと表現するのに、「承前」を使用することもあると予想できます。
「承前」は文章で使用することが多い
上記では、「承前」という言葉の、具体的な使用例や用途についてご紹介しました。上記でご紹介した使用例や目的から、いずれも文章に関するものであることが読み取れます。そのため、「承前」は会話よりも、文章で使用されることが多い言葉だと言えそうです。
後述で詳しくご紹介していきますが、記事やSNSの投稿といった文章に関する分野で「承前」を使用する場合は、「(承前)」といった形で表記するケースが多くなっています。
「承前」の類語
「承前」という言葉の基本的な意味や使い方を学んだところで、続いては「承前」と似ている意味を持つ、類語や同義語と呼ばれる言葉をご紹介していきます。
類語や同義語に、どのような言葉があるのか学んでみることで、「承前」という言葉をより深く理解できる可能性もあります。
続き
「承前」という言葉は、前の文章や内容から、文章や内容が続いていることを表現する言葉です。ですから、「続き」という言葉は、「承前」の類語の1つであると考えられます。
とはいえ、メールやSNSなどの投稿で、何回かの投稿にわけて1つの内容を述べる際、「続き」という言葉は、あまり使用しません。「続き」であることを表現するための、よりスマートな表現として、「承前」が使われることが多いと考えられます。
前述
「前述」という言葉もまた、意味や解釈の仕方次第では、「承前」という言葉の類語に該当する可能性がある言葉の1つです。
「前述」という言葉の意味について、「コトバンク」では、以下の引用のように説明しています。引用から、「前述」という言葉には、前述べたことや、既に述べてあることを表現する意味するがあると言えそうです。
前に述べたこと。前陳。先述
先述
「前文」と似たような意味を持つ、「先述」という言葉も、使い方や解釈によっては、「承前」の類語と言える可能性がある言葉です。
「先述」という言葉の意味を確認するにあたり、今回は「weblio辞書」の解説を引用して、参考にしていきます。
引用から、「先述」とは「前述」の類語であることがわかります。「前述」の意味は上記でご紹介したとおりとなっており、前に述べた内容や以前書いた文章などを指す意味もあるとされています。
「前述ぜんじゆつ」に同じ。
既出
「既出」という言葉もまた、広い目で見れば「承前」の類語の1つだと言えるでしょう。「既出」の意味について、「weblio辞書」では、以下の引用のように説明しています。
引用から、「既出」という言葉には、既に出ているものや、以前に出されているものを指す意味があることがわかります。「既出」という言葉は、アイディアなどにも使われることが多く、必ずしも文章を指す言葉ではありません。しかし、文章において、以前提示された文章や内容を表現する意味で使用される際は、「承前」と近い意味があると考えられます。
以前にすでに提示されていること。
「既出」の読み方
「承前」という言葉を学ぶこととは、直接的には関係ありませんが、上記で取り挙げた「既出」は、読み方を間違いやすい言葉でもあるため、この機会に読み方の確認もしておきます。
「既出」という言葉の正しい読み方は、「きしゅつ」だとされています。上記で、意味を確認する際に引用した「weblio辞書」の「既出」のページにおいても、「きしゅつ」という読み方で掲載されています。
いわゆる「ネットスラング」などと呼ばれる、インターネット上で使用される言葉では、「既出」のことを「がいしゅつ」と表現するケースがあります。しかし、「既出」の正確な読み方は「きしゅつ」なので、誤った読み方で覚えないように注意しましょう。
既存
「既出」と近い意味を持つ、「期既存」という言葉もまた、「承前」の類語と言えるでしょう。
「goo辞書」では、「既存」の意味については、以下の引用のように説明しています。引用から、「既存」とは、既にあるものや存在しているもの、また既に出されているものなどを意味する言葉だと、読み取ることができます。
以前から存在すること。
「承前」の対義語
上記では、「承前」という言葉と似ている意味を持つ、類語や同義語をご紹介しました。続いては、類語などとは対称的に、「承前」とは正反対の意味を持つと言われている、対義語や反対語をご紹介していきます。
「承前」という言葉について学びながら、その反対の意味を持つ言葉にどのような言葉があるのか確認してみることで、語彙力やボキャブラリーの向上に繋がる可能性もあるでしょう。
後述
上記でもご紹介したように、「前述」や「先述」といった言葉は、解釈次第では「承前」の類語にあたる言葉だと考えられます。そんな「前述」「先述」の対義語として、「後述」という言葉が挙げられます。ですから、「後述」は解釈次第では、「承前」の対義語でもあると考えられるでしょう。
「後述」の意味について、「コトバンク」では以下の引用のように説明しています。引用の内容から、「後述」とは後から述べることや、後で述べる内容を指す言葉だと、読み取ることができます。
あとで述べること。また、その事柄。
「承後」は一般的に使用されない
今回のテーマである「承前」という言葉の対義語となれば、「承後」という言葉もあるのではないかと考える方もいらっしゃるでしょう。しかし実際には、正式な日本語として、「承後」という言葉は、存在しないと考えられます。
インターネットで「承後」という言葉について検索してみたものの、日本語における「承後」という言葉について、解説したり使用したりしている記事やページは、見つかりませんでした。ですから、「承前」の対義語は、上記でご紹介した「後述」などが該当すると覚えておくことをおすすめします。
「承前」の読み方
続いては、「承前」の読み方について、ご紹介していきます。上記では「承前」の意味や使い方について、考察・ご紹介しました。しかし、意味や使い方を知っていても、読み方がわからないと、いざ使う時に誤った使い方をしてしまったり、文章を声に出して読むときに恥をかいたりする危険性があります。ですから、この機会に正しい読み方を確認しておきましょう。
「承前」の正しい読み方は、「しょうぜん」だと言われています。上記で、「承前」の意味を確認する際に、「コトバンク」に掲載されている解説を参考にしましたが、「コトバンク」の「承前」に関するページにおいても、「しょうぜん」という読み方で掲載されています。
「承前」を使用した例文
続いて、「承前」を使用した、例文をご紹介していきます。
「承前」という言葉の基本的な使い方については、上記で考察しました。しかし、実際に「承前」という言葉を文章などで使用したい場合、どのような使い方をすれば良いのか、頭を悩ませる方も少なくないと考えられます。
ですから、例文を通して、より実践的な「承前」の使い方や言い回し、使いどころについて、確認していきましょう。
承前啓後
ここまでご紹介してきた「承前」という言葉とは別に、「承前」という言葉を使用した四文字熟語も存在しています。「承前啓後」という言葉は、「承前」という言葉が含まれる四字熟語の1つで、以下の引用のような意味があるとされています。
以下に引用した「四字熟語辞典ONLINE」の解説によると、「承前啓後」という言葉には、昔からのものや伝統を受け継いで、未来にいかしたり切り開いたりすることを表現する意味があるとされています。特に、文化や学問について述べる際に使われる言葉で、文化や文明を受け継ぐことの大切さについて説いている四字熟語だと言われています。
昔からのものを受け継いで、未来を切り開くこと。学問や事業などのことをいう。文化や文明を受け継いでいくことの大切さをいう言葉で、中国で昔から重要視されてきた考え方。
承前啓後を使った例文
上記でご紹介した意味を踏まえて、「承前啓後」という四字熟語を使用した例文を確認していきます。「承前啓後」という言葉の実践的な使い方について、例文をとおして考えてみて下さい。
・承前啓後の精神で、先祖からの伝統を絶やすことなく子孫に伝えたい。
・承前啓後という言葉にもあるように、伝統を大切にしていくべきだ。
・承前啓後に努め、先輩が守ってきた伝統を後輩にきちんと伝えていこう。
「承前=続く」「承前=続いている」
上記でも何度か述べているように、「承前」という言葉には、前の文章を踏まえた内容を指す意味や、前の文章や投稿から続いていることを表現する意味があるとされています。ですから、文章においては、「承前=続く」という意味で使用することも可能です。そこで続いては、「承前」を「続く」や「続いている」という意味合いで使用した例文をご紹介していきます。
・(承前)前述にもあるように、近年の人々の暮らしの変化は、大きいと言えるだろう。
・(承前)以上のことを踏まえて、以下のような推測をすることができる。
・(承前)続いて、近年の環境の変化について考えていきます。
「承前起後」は誤り?
ここまで、「承前」という言葉が含まれた四字熟語などの例文をご紹介してきました。「承前」を使用した例文や使い方などについて、インターネットで検索などをしていると、「承前起後」という言葉を見掛けることがあります。
しかし、「承前起後」という言葉は、日本語として正式に存在している言葉ではない可能性があります。インターネットなどで、「承前起後」という言葉について検索をしても、詳細などに関するページは見つかりませんでした。
ですから、「承前起後」という言葉は、誤って生まれたり使用されたりしてる言葉である可能性が考えられます。
「承前」の意味・使い方は正しく覚えておこう
いかがでしたでしょうか。今回は、「承前」という言葉をテーマにして、意味や使い方、類語・対義語や例文などを、考察・ご紹介しました。
「承前」という言葉は、日常的な会話などではあまり使用しません。「承前」は文章を書く際に使われることが多く、前の文章の内容などが続いていることを表現する言葉です。また、四字熟語の中には、「承前」という言葉を使用しているものもあります。
この機会にぜひ、「承前」の意味や使い方を正しく覚えておきましょう。