「亡くなる」の意味と使い方
知人が死んでしまった際、「亡くなる」という言葉を使うことが多いです。「○○さんが亡くなった」「先日亡くなった知人の葬式に参列した」のように使われます。皆さんもご存知のとおり、「亡くなる」という言葉は人が死ぬことを柔らかく表現した言い方です。
「○○さんが死んだ」よりも「○○さんが亡くなった」と言った方が、同じ意味であっても柔らかく聞こえます。また直接的な表現を避けているため、失礼に当たりにくいという見方もあります。
手紙
家族が亡くなった際、ほとんどの方が故人の親族や親しかった友人など、関わりのあった方々に訃報として手紙を送ります。その際、亡くなった人物の名前はもちろん、亡くなった日時や通夜の日時・場所などについて書くことになります。
手紙には「○月○日○時○分、亡くなりました」という文面を記載することがあります。しかし手紙の場合、「亡くなる」という言葉を「永眠いたしました」や「生涯を終えました」「生涯を閉じました」といった言い回しに換えることが多いです。
手紙は死亡通知として非常に重要な役割を果たします。公式に知人に知らせる役割を持つため、より手紙に合った正しい言い方を選択するべきでしょう。
メール
最近では、より早く故人の死亡を親族や知人に知らせるために、手紙ではなくメールで知らせることも多いです。若い人からご年配の方まで、幅広い世代の人がスマートフォンや携帯電話を使用しているため、伝えやすいことも理由の1つでしょう。
メールで死亡を知らせる際も手紙と同様、「○○が○月○日に亡くなりました」というように「亡くなる」という言葉を使用することがあります。手紙よりも簡潔に知らせることができるツールのため、メールの場合は「亡くなる」を使用する人も多いです。
連絡
家族や親族の場合、通夜や告別式の準備も手伝ってもらう必要があるため、最も早く亡くなったことを知らせる必要があります。そのため、早急に直接連絡を取る方法として電話で伝えることも多いでしょう。
直接口頭で亡くなったことを伝える場合、「この度、父が亡くなりまして」というように伝えることが多いです。直接伝えるということもあり、亡くなったという事実だけではなく、この病院で、このような状態で亡くなったと伝える人も多いでしょう。
「亡くなる」の敬語表現
仕事の上で関係者が亡くなった場合、または取引先の方が亡くなった場合など、「亡くなる」の敬語表現が必要となることもあります。しかし、「亡くなる」という言葉を敬語表現としてそのまま使用している人も多く、「亡くなるという言葉は目上の人に対して使用しても良いのか」と疑問を持つ人も少なくありません。
では、「亡くなる」という言葉自体は敬語表現として正しいのでしょうか。敬語の種類である丁寧語、尊敬語、謙譲語ごとに「亡くなる」の敬語表現について確認していきましょう。
「亡くなる」は婉曲表現
まず始めに覚えておきたい情報として、「亡くなる」という言葉は「死ぬ」という言葉の婉曲表現であるということを覚えておきましょう。「死ぬ」という言葉はあまりにも直接的であるということから、もう少し柔らかく角が立たない言い方を、という理由から「亡くなる」という言葉が一般的に使われるようになりました。
したがって、「亡くなる」という言葉は正しい敬語表現ではありません。また、元々は身内が亡くなった際にのみ使用される言葉だったため、他人が亡くなった際に使用する言葉ではありませんでした。
しかし、時が経つにつれて「亡くなる」という言葉は相手に対し、失礼には当たらないという考え方から、敬語表現としても使用されるようになったと考えられています。ですが、やはり上記でも取り上げたように正しい敬語表現ではありません。ここでは正しい丁寧語、尊敬語、謙譲語をそれぞれ確認していきましょう。
「亡くなる」の丁寧語
丁寧語は基本的に「お~なる」という形を使用します。したがって、「亡くなる」の丁寧語は「お亡くなりになる」が正解です。よく「○○さんがお亡くなりになった」という表現を耳にしますが、これは敬語表現の中の丁寧語に当てはまるということになります。
「亡くなる」という言葉に「お~なる」の丁寧語表現を当てはめると二重敬語になってしまい、間違った敬語になってしまうのではないかという声もあります。しかし、先ほどお話ししたように、「亡くなる」という言葉自体は「死ぬ」の婉曲表現であり、敬語ではありません。したがって、二重敬語には当てはまらないため安心してください。
「亡くなる」の尊敬語
尊敬語は目上の人に対して尊敬の意味を込めて使用する敬語表現です。したがって、使用する対象者が自分よりも目上の相手になる必要があります。つまり、他人に対して身内の死に尊敬語表現を使用することは不適切です。
では、「亡くなる」の尊敬語にはどのような言葉が当てはまるのでしょう。実は「亡くなる」という言葉の尊敬語に、絶対にこの表現でなくてはいけないという表現はありません。中には「亡くなる」という言葉を尊敬語として扱ってもいいのでは、という声さえあるほどです。
しかし、最初にお話ししたとおり、「亡くなる」は婉曲表現であり、正しい敬語表現ではありません。したがって、尊敬語として正しく使用する場合は「死ぬ」の尊敬語に当たる「逝去」を使用し、「ご逝去する」が適切でしょう。
「亡くなる」の謙譲語
謙譲語は尊敬語の反対に当たる敬語表現です。つまり自分を相手よりも下に見立て、相手を敬う敬語表現です。「亡くなる」という言葉の場合、故人を下に見立てて他人に話す行為は非常に不適切です。したがって、「亡くなる」の謙譲語は存在しません。
丁寧語や尊敬語を使用しない対象故人として、家族や親族が挙げられますが、この場合は「父が亡くなりました」や「父が他界しました」と伝える方法が一般的です。他にも「息を引き取りました」や「永眠いたしました」という言い換え表現も多く使用されます。
「亡くなる」の類語
「亡くなる」という言葉は「死ぬ」の婉曲表現のため、敬語表現ではないということを理解した上で、「亡くなる」の敬語表現にはどのような言葉が適切であるかを確認しました。「お亡くなりになる」や「ご逝去する」といった言葉がある一方、謙譲語がないということも理解していただけたでしょう。
では、敬語表現ではなく、「亡くなる」という言葉と同じ意味を持つ言葉、あるいは似た意味を持つ言葉にはどのような言葉が当てはまるのでしょうか。ここでは「亡くなる」の類語について見ていきましょう。
死ぬ
まず「死ぬ」という言葉が類語として挙げられます。ここまで何度も登場しているように、「亡くなる」という言葉自体が「死ぬ」という言葉の婉曲表現です。したがって、もちろん意味は同じです。
しかし、「○○さんが死んだ」というように「死ぬ」という言葉を使ってしまうとストレートな表現となってしまい、場合によっては失礼に当たる可能性もあります。そのため、婉曲的な表現である「亡くなる」という言葉を使用するようにしましょう。
逝去する
先ほど「亡くなる」の尊敬語に当てはまる言葉として「ご逝去する」という言葉を取り上げました。こちらの「逝去」も意味は人が死ぬことを表す言葉のため、「亡くなる」と同義です。しかし、前述したように尊敬語表現ですから、身内に対して使うことはできません。
「逝去する」と類似する表現に「死去する」という言葉がありますが、こちらは敬語表現ではありません。通常の表現方法です。したがって、目上の人や他人に対して使用せず、身内の死に対してのみ使用することが可能です。
永眠する
「亡くなる」の類語として、永遠の眠りに就くと書いて「永眠する」という言葉も当てはまります。「死ぬ」の婉曲表現でもある「亡くなる」という言葉を「永眠」に置き換えることで、さらに柔らかく角の立たない表現になります。
また、「亡くなる」という言葉は死を直結して考えさせる言葉でもあります。しかし、「永眠する」という言葉は「死」という言葉と直結してる言葉ではなく、遠回しの言葉となる上、ネガティブなイメージを想像させない印象も受けます。
そのため、長生きしたご年配の方が亡くなった際のお知らせに「○○が○歳で永眠いたしました」という言葉を目にすることが多いです。
崩御する
あまり馴染みのない言葉と感じる方もいらっしゃるでしょう。「崩御(ほうぎょ)する」という言葉も「亡くなる」の類語に当てはまります。しかし、この「崩御する」という言葉は、天皇家の方々(天皇、皇后、皇太子、太皇太后)のみに使用されることを覚えておきましょう。
この「崩御」という言葉は、天皇家の方々に対して敬意を示す意味を込めて使われる言葉です。「亡くなる」という言葉の類語の中でも最も位の高い言葉と考えて良いでしょう。
「亡くなる」の言い換え方法
「亡くなる」の類語について確認しましたが、類語だけでなく、他にも違う言い換え表現を知っておくことで、様々な状況に対応することができます。もちろん、先ほどご紹介した類語だけでも十分ですが、言葉のボキャブラリーを増やし、その人にあった言葉を使うということはとても大切です。
ここでは主に身内の死に対して使うことができる「亡くなる」の言い換え表現をいくつかご紹介していきます。ぜひ頭の片隅に入れておきましょう。
息を引き取る
先に身内の死を知らせる際に使われる言葉の例として挙げた言葉です。「亡くなる」の言い換え表現として非常に多く使われる一般的な言葉でしょう。皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
人が死ぬということは、既にその人の息がない状態を指します。この「息を引き取る」という言葉は、「この人は息がない状態ですよ」という事を暗に意味していると考えられます。したがって、「死ぬ」「亡くなる」の言い換え表現として使用されることが多いです。
この世を去る
芸能人、著名人が亡くなった際、ニュース番組などで「昨夜、○○さんがこの世を去りました」という表現を耳にする事があります。この表現も「亡くなる」の言い換え表現として適しています。また、先ほどの「息を引き取る」という言葉よりも婉曲的な言い換え表現という印象も受けます。
これはこの世とあの世があるという思想に基づいて使用される言葉です。そのため、「息を引き取る」のように「死」を伝えるだけでなく、「あちらの世界に無事逝かれた」という意味もあると考えられます。
生涯を終える
こちらの言葉も誰かが亡くなった際に耳にすることがあります。また、お葬式などで喪主の言葉として、「○○が生涯を終えました」と挨拶することがあります。言葉のとおり、その人の一生に終止符が打たれたことを意味する言葉です。「息を引き取る」のように「死」を直結させて考えられます。
またこの言葉に似た表現として、「生涯を閉じる」「生涯の幕を閉じる」という言葉も使われることがあります。「生涯を終える」と共に覚えておきましょう。
「亡くなる」の正しい言い方
ここまで「亡くなる」という言葉の意味や類語など、様々な疑問を解消してきました。特に敬語に関しては「亡くなる」という言葉は婉曲表現であり、正しい敬語ではないということを理解していただけたでしょう。
ここでは「亡くなる」という言葉の表現や適した言葉について、まとめとしてもう一度確認して行きます。どのような表現があるか、また敬語を使用するべき状況ではどのような言葉が適切であるかについて見ていきましょう。
「亡くなる」の表現
「亡くなる」という言葉は、人が死んでしまった際に使われる言葉です。「死ぬ」という直接的な言葉を避けるため、婉曲的な言い換え表現として使われます。
しかし、故人の悲報を知らせる際には、「亡くなる」という言葉だけでなく、「永眠しました」や「息を引き取りました」など様々な表現がされます。他にも「逝去する」という言葉を使うこともあります。
「亡くなる」に適した言葉
上司や自分よりも年配である目上の方に対して「亡くなる」という言葉を使用したい場合、「亡くなる」は敬語表現ではないため失礼に当たるのではないかと心配される人も多いでしょう。これは元々「亡くなる」という言葉は身内に対して使用する言葉であるためでした。
では、「亡くなる」の敬語として適した言葉は何が当てはまるのでしょうか。敬語として使用する場合は、「お亡くなりになる」や「ご逝去する」といった丁寧語、または尊敬語を使用することが望ましいです。
「亡くなる」知らせをする際の注意点
身内が亡くなった際、突然のことでどのように故人の悲報を知らせるべきかわからないと慌ててしまう人も多いです。ここでは身内が亡くなった際、身内の親戚や友人、知人に対してどのようなタイミングで知らせるべきか、注意点についてご紹介します。
関係の深い順に連絡する
まず基本的には故人と関わりが深かった順に知らせましょう。まずは家族が第一優先です。次に親族に連絡をします。この場合、故人の葬式に関する話し合いも行われることがあるため、早急に連絡をする必要があります。手伝ってもらう可能性を考えても、最も早く正確に伝わる電話で連絡するようにしましょう。
知らせのタイミングは相手によって異なる
家族や親族にはお葬式の準備が始まる前、つまり亡くなった直後(場合によっては危篤状態になった際に知らせることもあります)に知らせます。では、故人の友人や知人に関してはどのタイミングで知らせるべきでしょう。
まず、お葬式には誰を呼ぶか、線引きをする必要があります。できることならば故人の関係者全員を呼びたいところですが、これは金銭的にも時間的にも非常に難しいです。そのため、どこまで呼ぶかを親族で話し合い、葬式の日時や場所が決まり次第、呼ぶ方々に連絡をしましょう。一般的には手紙で通知します。
通夜、告別式共に呼ばない場合、後日葬式を執り行ったことを知らせる通知をはがきで伝える方法が一般的です。
「亡くなる」は場合に応じて言い換えよう
いかがでしたでしょうか。「亡くなる」という言葉は婉曲表現ですが、最近では敬語として使用されることも多くなってきました。しかし、ビジネスマナーとして、正しい敬語や他の言い換え表現も知っておくべきでしょう。ぜひ今回ご紹介した知識を今後の参考にしてください。