謙譲語の例・尊敬語と丁寧語との違い・変換方法|聞く/する/食べる

ビジネススキル

謙譲語の例

敬語は、「尊敬語」、「丁寧語」、「謙譲語」の3種類あります。

敬語に苦手なイメージを持つ人は多いでしょうが、社会生活において、あらゆる人たちと円滑にコミュニケーションをとるために、不可欠です。

また、人の第一印象は言葉づかいが決め手になります。特に、面接、職場などでは、敬語を使うことは必須でしょう。

敬語の一つである「謙譲語」とは、自分をへりくだって言う時に使うもので、間接的に相手を敬う言葉づかいです。「わたし」の行動を敬う相手に伝える時に、「謙譲語」を使います。

つまり、普通の話し言葉から、へりくだった言い換える時に「謙譲語」になり、行動をあらわす言葉の「動詞」が形を変えます。これを「変換」といいます。

よく使う「謙譲語」の変換例、「聞く」「する」「食べる」「行く」「見る」「もらう」の7つを選び、詳しく解説しました。

以下を参考にしてください。

聞く

「聞く」を謙譲語に変換すると、「お聞きする」、「伺う」、「拝聴する」です。

また、尊敬度合いがもっとも強いものが「拝聴する」で、次に「伺う」、「お聞きする」となります。

以下に、実際にどんな場面で使うのか、使い方や注意点をまとめました。

どんな場面で使うのか

「聞く」は、わたしが、目上の人、敬う相手の話を聞く場面を考えます。「わたしが聞く」を謙譲語に変換すると、「わたしがお聞きする」「わたしが伺う」「わたしが拝聴する」 と、なります。

細かい設定を表にしました。ので下記を参考にしてください。

誰から質問内容わたしの答え
上司誰が先方に○○を聞くのかわたしがお聞きします
お客さま○○の担当者は誰ですかわたしがお伺いします
先輩○○先生の講演聞いたかはい、拝聴しました

注意すること

「聞く」を謙譲語に変換して使うときは、文章中の名詞にも注意をします。

また、名詞を丁寧にあらわすことがあり、「お」や「ご」をつけた、丁寧な単語に言い換えます。

例えば、「わたしが意見を聞く」を謙譲語に変換すると、「わたしがご意見を伺います」となり、「意見」に「ご」をつけます。

また、「先生のご高話を拝聴いたしたいと存じます。」は、「先生の話を聞きたいと思う」という意味です。「ご高話」は、敬う人がする話を丁寧にあらわす言葉で、大抵は「拝聴する」とセットで使います。

する

「する」は、謙譲語に変換すると、「いたす」です。

「わたし」がどうするのかを、目上の相手に伝える場面で使います。また、「する」は、「◯◯する」の◯◯に入る言葉で、バリエーションが広がります。

謙譲語に変換しやすい

「する」は、謙譲語に変換するパターンがシンプルなので、使いやすいでしょう。

わたしが「○○する」は、謙譲語に変換すると「わたしが◯◯いたします」となり、前述のように、この場合も◯◯に入る名詞のあたまに「お」や「ご」をつけることがあります。

○○に入るものは、無数にありますので、日常や職場で、使う頻度が高い「謙譲語」のひとつです。また、◯◯の名詞を丁寧に言い換えた単語に、「いたす」をつけることで完成しますので、変換に悩むことが少ないでしょう。

変換例

「◯◯する」は、○○に入る言葉でバリエーションが豊富です。

○○に「ご」や「お」がつくものを含め、良く使う変換例をあげましたので、参考にしてください。

変換前変換後
わたしが連絡するわたしがご連絡いたします
わたしが検討するわたしが検討いたします
わたしが訂正するわたしが訂正いたします
わたしが担当するわたしがご担当いたします
わたしが電話するわたしがお電話いたします
わたしが返答するわたしがご返答いたします

食べる

「食べる」は、謙譲語に変換すると 「いただく」、「頂戴する」となります。

目上の相手が食べること言いあらわす、尊敬語の「召し上がる」と混同して、間違って使われやすいので、注意しましょう。

毎日使っている言葉

目上の人に、「わたし」が食べることを伝える場面で使います。相手に関係なく、毎日の食事の前に「いただきます」と言っていますが、まさに謙譲語です。

この「いただきます」は、食事を作ってくれた人や食事の材料に対して、敬意をあらわしているのでしょう。感謝の気持ちも感じられる、非常に日本らしい素敵な言葉です。

「食べる」の謙譲語は、食事の前の「いただきます」と同じだと、覚えておくといいでしょう。

「食べる」の謙譲語2つを使い分けるポイント

「いただく」と比較すると、「頂戴する」は、より丁寧な表現になります。「いただく」は、相手への尊敬度をあまり気にせず、幅広く使えて、場面を選ぶ必要がほとんどなく、使いやすいでしょう。

次に、「頂戴する」の使い方の具体例をあげます。

お取り引き先に招かれた食事会の場面で、相手から「どうぞお召し上がりください。」と食事をすすめられたら、「ありがとうございます。それでは頂戴します。」と答えるのが、適切です。

「もらう」を謙譲語に変換するときは、場面や、相手との関係の距離や尊敬度によって使いわけましょう。

行く

「行く」を謙譲語に変換すると、「伺う」、「参る」となります。この2つの使い分け方、場面設定などを以下に、詳しく説明しましたので、参考にしてください。

どんな場面で使うのか

「わたし」がどこかへ「行く」ことを、目上の人に伝える場面です。

例えば、「わたし」が銀行に行くことを目上の人に伝えるとき、「わたしが銀行に参ります」となります。「お」や「ご」をつけて、銀行を丁寧な言葉にすることはありません。

次に、「伺う」の使い方は設定が異なります。銀行という「場所」にいる目上の人に、「わたし」が会いにいくことを伝える場面になり、「わたしが銀行に伺います」となります。

「行く」の謙譲語2つを使い分けるポイント

「行く」の謙譲語については、使い方にはっきりした違いがあり、注意が必要です。

「わたしが行く場所」に、相手はいるのか、その相手は敬う対象なのか、などによって、「参る」か「伺う」のどちらを選ぶのかによって、謙譲語が変わります。

つまり、相手がいる場所に行くことを伝えるなら、「伺う」を使い、相手は関係なく、ただその場所に行くことを敬う相手に伝えるときは「参る」となります。

言う

「言う」は、謙譲語に変換すると「申します」、「申し上げます」となります。

「申し上げます」は、「申します」よりも、丁寧で、かしこまった印象になります。よって、相手への尊敬度合いで、使い分けるといいでしょう。

どんな場面で使うのか

「わたし」が「言う」ことを目上の相手に伝える場面で使います。

場面問わず、電話の対応などに頻繁に使うでしょう。また、目上の人に報告や連絡する場面では、必須ですので、職場でかかせない謙譲語のひとつです。

頻繁に使う謙譲語

自分が名のるときに「○○(自分の名前)と申します。」と使っているときの「申します」は、「言う」の「謙譲語」です。

この例に限らず、「言う」の謙譲語は、日常に頻繁に使っています。無意識に使えるほど、使い慣れている言葉でしょう。

例えば、職場で上司に「この案件について、誰が言うのか。」と質問されたら、謙譲語を使って「わたしが申します」と答えます。また、自分以外の第三者を代弁する時にも使います。例えば、受けた電話を取り次ぐべき担当者が不在の場合です。

「□□(担当者の名前)が、外出ているから、こっちからかけ直すと言ってました。」という内容を、謙譲語を使って「□□が、外出しておりますので、こちらからからご連絡いたしますと、申し上げておりました」と言い換えます。

見る

「見る」を謙譲語に変換すると、「見せていただく」、「拝見する」となります。

「わたし」が何か「見る」ことを相手に伝える場面で使いますが、「見せていただく」と「拝見する」の使い方はやや複雑なので、以下に詳しく説明しました。参考にしてください。

場面の雰囲気を考えて使い分ける

「見せていただく」か「拝見する」かの使い分けのポイントは、その時々の雰囲気や相手との親しさなどに合うものを選ぶことです。

例えば、「わたし」が相手に何かを提示されて、「ありがとうございます。見ます。」と答える場合は、謙譲語を使って「ありがとうございます。拝見します。」となります。

ですが、その場面がなごやかで緊張感が少ない雰囲気ならば、「ありがとうございます。見せていただきます。」と使うのも良いでしょう。

対象物によって使い分ける

もう一つの、使い分ける基準は、「見る」対象物によって、謙譲語を選ぶ上級のテクニックです。

例えば、相手が見積もり書を提示している場面で、「見積書を見る」は「お見積書を拝見します」となります。また、相手が「わたし」に不動産の物件を見せる場面で、「不動産物件を見る」は、「(不動産物件を)見せていただく」となります。

対象物が、手元で見れるものなら、「拝見する」を選び、他人が所有しているものや、サイズが大きいものならば、「見せていただく」を選ぶことがあります。

「見る」対象によっての使い分けには、正解や不正解などハッキリした答えはありませんが、しっくりすることを目指して選びます。

もらう

「もらう」を謙譲語に変換すると、「いただく」、「頂戴する」、「賜わる」の3つです。

「わたし」が相手から「もらう」場面です。また、場面や対象物などよって、使い分けが必要となります。

前述の他の謙譲語と同じく、文章中の名詞に「お」や「ご」をつけて丁寧に言い換えることがあります。

「もらう」の謙譲語3つを使い分けるポイント

この使い方が正解というものでなく、その場面にふさわしいものを選択すればいいでしょう。

「いただく」と比較すると、「頂戴する」は、固い印象で、仰々しくなりやすく、「賜る」は、相手を敬う意味合いがもっとも強くなります。

例えば、「メールをもらう」は、謙譲語であらわすと、「メールをいただく」」になり、「頂戴する」や「賜る」は使いません。ほとんどの場面で「いただく」は使いやすく、頻繁に使います。

下記の表を参考にしてください。

変換前変換後
電話をもらうお電話をいただく
返事をもらうお返事をいただく
連絡をもらうご連絡をいただく

「頂戴する」と「賜る」の使い分け

使う場面がどれくらいかしこまったものか、伝え方は口頭か文書か、などで2つの使い分けを考えます。

「頂戴する」は、もらう相手への尊敬度合いが高い謙譲語で、やや特別な場面で使われることが多いでしょう。

例えば、お互いが初対面の名刺交換の場面です。また、表彰されるような場面でも、賞品を受け取る際に、「頂戴します」を使うことが適切でしょう。

「賜る」は、ビジネス文書などでよく使われます。

例えば、「平素より格別のお引き立てを賜り誠にありがとうございます」は、「いつもひいきしてくれて、本当にありがとう」という意味です。大抵はかしこまった文書に使われ、日常には使うことほとんどありません。

謙譲語と尊敬語・丁寧語の違い

「謙譲語」は、「わたし」がへりくだって、相手に敬意を示す言い回しです。つまり、自分から発信して、相手に行動や状態を伝える時、相手の立場を自分より上に置いて考えます。また、主語は「わたし」ですが、自分より目下の者の代弁する場合にも使います。

「尊敬語」は、相手や第三者など人物の、行動、状態などを高めて使う敬語です。また、主語に「わたし」は使わず、目上の人など、敬う対象者を主語にします。例えば、

「丁寧語」とは、自分の行動を丁寧に言うために使い、直接相手に敬意をあらわします。主語は「わたし」です。

主語は何かという点と、「わたし」が主語の場合は、へりくだるか、丁寧に伝えるのかという点の違いを考慮して、使い分けます。

「見る」ことについて、3つの違いを下記の表にしましたので、参考にしてください。

謙譲語尊敬語丁寧語
わたしは拝見する会長はご覧になるわたしは見ます

謙譲語への変換方法

残念ながら、「謙譲語への変換方法は、1パターンではありません。

前述の「する」を変換した謙譲語「◯◯いたす」、「○○いたします」は、口語文と同じ名詞を◯◯に入れると完成するので、積極的に使ってみましょう。

謙譲語の主語は「わたし」以外に、目下の第三者を主語にすることもあります。例えば、「息子が行く」は「息子が伺います」となり、主語の部分には、部下、後輩、家族などが入ります。

また、難しい変換の例で、「わたしはできない」の変換で「わたしは致しかねます」「わたしはできかねます」があります。「謙譲語」を使って否定するときのパターンとして覚えておきましょう。

最後に、難しい変換例で「謙譲語」に変換すると、字面が変わってしまうものがあります。これらに特に法則はないため、覚えるしかないでしょう。下記の表を参考にしてください。

変換前変換後
わたしが会うわたしがお目にかかる
わたしは帰るわたしはおいとまする
(わたしは)わかった(わたしは)かしこまりました、承知いたしました

相手を気持ちよくする謙譲語

どんな場面においても、美しい日本語を使う人は、好感度が高く、とても洗練されて見えます。

さらに、敬語を使いこなすことで、会話に深みが出て、信頼度も上がり、関係性の異なるあらゆる人たちとのコミュニケーションに役立てることができます。

敬語の中のひとつの謙譲語は、自分を控え目に見せて、相手の立場を尊重した印象を与えます。

謙譲語をうまく使えると、上司、取引先など、目上の相手との会話が円滑になって、楽しくなるでしょう。苦手意識を忘れて、まずは使ってみてください。

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