「出来かねます」の意味と使い方・敬語・類語・例文・失礼なのか

ビジネススキル

「出来かねます」の意味と使い方について

「出来かねます」は「出来ません」という意味です。

相手先の要望に応えられなかった時に使われています。しかし「出来かねます」は一見、丁寧に言い代えているようですが、実は敬語ではありません。「出来ない」の『ない』の部分を遠まわしに言っているだけです。

それからお客様や取引先には使えません。その理由を詳しく説明していきます。

「出来かねます」ってどんな意味?

「出来かねます」の主語は自分です。それは「自分は出来ません」という意味になります。しかし、ストレートに否定する表現は、角が立つ感じがします。ですから肯定文に変えて、丁寧に言い換えているのです。

「かねる」とは「できない」という意味です。ですから、厳密にいうと「出来かねる」は「出来できない」という言葉になります。それは少しおかしい表現です。この場合は、「しかねる」とするのが良いでしょう。そうすると「することが出来ない」という意味になります。

「出来かねます」の使い方は?

ビジネスシーンにおいて、「それは出来かねます」とよく耳にします。目上の方に使えるのか迷うときがあります。

どんな会話の中で使うのか、誰にでも使えるのか、または上司や同僚にはどう使うのかを見ていきましょう。

同僚に対して断るとき

同僚に頼みごとをされて断るときは、「出来かねる」は使いません。同僚に使うのは他人行儀です。

「ごめん。今すぐは出来ないけど後でなら」とか、「これ終わってからでもいい?」とか、
断るにしても、頼みごとを受ける気持ちはあることを伝えたほうが良いでしょう。同じ職場の仲間です。相手に不快な思いをさせない気遣いが大切です。

上司に対して断るとき

では上司に対してはどうでしょうか?

上司には丁寧に、「申し訳ありません。別な案件にかかっておりまして、今すぐは出来かねます(しかねます)。こちらが終わってからでもよろしいでしょうか」などと、断りの言葉だけで終わらず、やる気持ちがあることも伝えましょう。

たまに「急ぐんだけどな」とねばる上司がいます。そのときのために、日ごろから仕事の優先順位はしっかりと決めておきましょう。理由が明確であれば、上司にも角が立たずに済みます。

「出来かねます」の敬語って?

「出来かねます」は丁寧な言い方ですが、敬語ではありません。では元の言葉としての、「自分は~することが出来ません」というのはどう言い換えたら良いでしょうか。

「する」は敬語では「いたします」となります。「出来かねます」や「しかねます」は、「いたしかねます」となります。ちなみに、いたす(致す)は謙譲語です。謙譲語とは、自分がへりくだって相手に敬意を表す言葉になります。謙譲語は敬語の一種ですので、覚えておきましょう。

敬語の種類

敬語は相手に敬意を示すためのものです。敬語の種類には、尊敬語・謙譲語・丁寧語があります。

尊敬語

尊敬語は相手を敬う言葉です。たとえば「ここへ来てください」と言う言葉は、「こちらへお越しください」となり、「食べてください」という言葉は、「お召し上がりください」となります。主に自分より目上の人に使います。

謙譲語

謙譲語は自分から相手にへりくだって敬意を表します。

たとえば「そこに行く」という言葉は「そちらに参ります」となり、「食べる」は「いただきます」となります。尊敬語と似ているようですが、『尊敬語』は相手がすでに自分の上に位置しています。『謙譲語』は自分が相手と同格だとしても、自らが一段下がって相手を上にすることです。

丁寧語

丁寧語は、表現をやわらかく丁寧にした言葉です。家族や親しい友人以外に使います。たとえば、「体に気をつけてね」は、「お体に気をつけてください」となり、「そこに座ってください」は、「そちらにおかけください」となります。

また丁寧語には『美化語』というのも含まれています。美化語とは、「お酒」「お料理」「ご飯」など、頭に「お」や「ご」を付けて丁寧にした言葉です。なお、外来語には「お」や「ご」は付けません。ですから「お茶」とは言いますが、「おビール」と言うのは間違いです。覚えておきましょう。

「出来かねます」に似た言葉とは?

「出来かねます」は出来ないことを伝える言葉です。ただ、表現としては少し硬い印象を受けます。では他に、どのような似た言葉があるのでしょうか。

類語 その1:お受けできません

「出来かねます」が肯定型なのに対して、「お受けできません」は否定型です。きっぱりと断っています。「出来かねます」は、「でも、もしかしたら出来るかも」という印象を相手に与えてしまうこともあります。ですが、「お受けできません」ときっぱり断れば、期待を持たせずに済みます。

類語 その2:お断りせざるを得ません

「お断りせざるを得ません」は言い換えると、「自分の本意ではないけれど、断らなければならない」というニュアンスを含んでいます。また、「〜しなければ、お断りせざるを得ません」のように、条件によっては引き受けられるときに使います。丁寧ですが、相手にとっては距離感を感じる言い方です。。

類語 その3:致しかねます

「致しかねます」は「出来かねます」の敬語です。上司や取引先の方に使います。相手先に丁寧に断るときに使いましょう。

「出来かねます」はどう使う?

自分は出来ないとお断りするとき、どのような言葉で言い換えると良いのでしょうか。失礼にならない表現を、例文を交えてお伝えいたします。ただし、取引先やお客様には使えないことを覚えておきましょう。

出来かねます為

「出来かねます為(しかねます為)」というのは、「出来ないので、そのために~します」という意味が含まれています。では、どのように使われるのか、例文をみていきましょう。

「この案に賛成出来かねます為、再度ご検討をお願い致します」

上記のような使い方が出来ます。

出来かねますことを

「出来かねますことを」というのは、「出来ないことをわかってください、許してください」ということです。

たとえば、「取引先から納期を急ぐように言われたので頼むよ」と上司に言われたとします。無理なので断る際に、「申し訳ありません。出来かねますことを(しかねますことを)ご理解ください」と使います。

ちなみに「出来かねます為、ご理解ください」、「出来かねますので、ご理解ください」という言い方はどうでしょう。どちらも間違ってはいません。ですが、理解して欲しいと『お願い』するより、理解するしかないと相手を諭すような表現になってしまいます。

出来かねますので

「出来かねますので」というのは、「出来ないので~したらどうでしょうか」というときに使います。

たとえば「この資料、お昼までに作れるかな」と上司に聞かれたとします。その際に、
「午前中は取引先と打ち合わせなので出来かねます(しかねます)。午後からでもよろしいでしょうか」と、出来ない理由をきちんと述べてから提案するとよいでしょう。

「出来かねます」は失礼ですか?

「出来かねます」「しかねます」は丁寧な言い回しなので、目上の方や上司には失礼ではありません。ですが、敬語ではありませんので、取引先やお客様へ使うのは失礼です。使う相手を間違わないようにしましょう。

「出来かねます」というならば

では、何かを頼まれて「出来かねます」だけではどうでしょう。それだけだと硬い表現なので、反感を持たれることもあります。出来ないときには「すみません」または、「申し訳ございません」と謝罪してから、『なぜ出来ないのか』理由を述べて『代案を提示する』ことで、相手への誠意を表すことが大切です。

「出来かねます」と「致しかねます」

いかがでしたでしょうか。「出来かねます」についてご理解いただけましたでしょうか。「出来ます」は上司や目上の方には使えますが、取引先やお客様には使えません。取引先やお客様には「致しかねます」を使います。

また、出来ないとお断りする際にはくれぐれも失礼のないよう注意して下さい。『申し訳ないという謝罪』『出来ない理由』『相手の要望に沿った代案』をもって、誠意ある対応をしましょう。

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