「尽力」の意味と使い方
言葉というものは、あまり使われないものはその意味と使い方が把握されていない場合があります。
「尽力」という言葉も耳にしたことはあっても、その意味や使い方を改めて考えてみるとよくわからないという人もいるでしょう。
言葉というのはその時代に合わせて利用価値が変化するので「尽力」は現在ではあまり使われなくなったと言えますが、言葉は日常だけでなく仕事でも使われるので、その際には普段使わない言葉も当然に使われています。
仕事でなくても、その状況に応じてどうしても「尽力」についても用いなければいけない事態が起きることもあるので、その意味と使い方について説明しましょう。
「尽力」の意味とは
「尽力」は使われている漢字からもわかるように、全ての力を出し尽くすという意味です。人間はその状況に合わせて持っている力の全てを常に出しているわけではなく、その程度を自分で調整してその場に対応しています。
しかし「尽力」とは持てる力の全てを使って物事に対処することであり、そのような機会は頻繁に起きるような事態にはならないものですが、いつ起きるかわからないこそ「尽力」だとも言えます。
「尽力」の使い方
「尽力」は自分の持てる全ての能力を発揮して物事に対処する場面で使われます。多くは緊急切迫したような状況で一刻も早い解決が必要な場合で使われていますが、時間がかかっても最後までやり遂げることも「尽力」と使います。
現在はこの「尽力」という言葉は頻繁に使われるようなものにはなっておらず、別のもっとわかりやすい類語の方を使うことが多くなっていて、「尽力」は文章を書く場合や人前で話をする場合などで使用されています。
「尽力」の例文
あまり使われない言葉の使い方を覚えるには例文を用いるのが効果的です。「尽力」は日常的に使われるような言葉とは言えないのですが、現在まで残っている以上はどこで利用しなければいけなくなるのかわかりません。
「尽力」は一定の条件で使用されるため、例文で覚えていればそれを応用して他の似たような場面でも利用することができるので、例文を参考にして使わなければいけない状況になった時に利用してみて下さい。
を尽くす
例文は「人命を救うために尽力を尽くす」となります。
同じ「尽」という漢字を使用しているので意味が重複しているようですが、これはそれだけその行動が重要であり、中途半端な心構えでは対応できないことを意味しています。
災害復旧といった場面では人命が関係することが多く、この使い方をすることが多いのですが、このように災害復旧だけでなく、他にも時間の経過と共に人的な被害が予想されるような事態では「尽力を尽くす」という使い方がされています。
いたします
例文は「今回のミスは早期に解決するように尽力いたします」となります。
「いたします」というのは敬語であり自分と歓迎する第三者のために使われるので、そのような人に対して「尽力」するとなっているので、これは決意を表明したことになります。
たたし「尽力いたします」と言うのは絶対的な約束にはなっておらず、努力目標のような意味合いになっているのが特徴であり、「尽力」となっていてもできない可能性もあると明言していることにもなります。
いただき
例文は「今回の事案については尽力していただき、解決に向かっています」となります。
「いただき」だけを使用する場合、前の文章で原因を示して後ろの文章でその経過報告をするのが一般的であり、当然に悪い結果になることもあります。
「尽力」という言葉が自分の持てる全ての能力を使うという意味になるため、そこには必ずいい結果を招くとは限らないため、その結果の方向が変わってしまうのは仕方がありません。
させていただきます
例文は「今回の対応については尽力させていただきます」となります。
「させていただきます」というのは既に起きてしまった物事に何か不具合があった場合に、その物事に対する対処法を示したものになっています。
「させていただきます」は敬語であり、既に自分の落ち度を認めていることから「尽力」と表記されていても限りなく相手の意向を叶える形になっていて、もしも相手が満足のいく形にならない場合にはそれに応じた対応をするということも含まれています。
「尽力」の類語
類語は同じ意味を持っていて印象が異なるので、その状況に合わせて使い分けられます。
「尽力」という言葉は日常ではあまり使用されることがない言葉ですが、日常生活の中でも「尽力」に該当する行動はするので類語を知っていると便利になるでしょう。
日常だけでなく仕事や学校など多くの場面で「尽力」を使う機会が発生するので、その状況に合わせて類語を選んで使ってみて下さい。
一生懸命
「一生懸命」とは今までの人生の中でも最大に努力することを意味しています。
この「一生懸命」は比較的多くの場面で使用されているため、その意味についてはほとんどの場面で理解されていて使い勝手のいい言葉と言えるでしょう。
それでいて本人が努力していることを相手にアピールすることができるので、「一生懸命」という言葉を用いられると相手には自分の誠意を正確に伝えることが可能になってきます。
ただし「一生懸命」と言ってその結果が悪いものになると相手の失意も大きくなるので、使う以上はその責任が重くなるという一面を持っています。
渾身
「渾身」とは自分の体の全体を意味していて、全部の力を出し切るような時に使います。
ただし「尽力」とその意味が少し違っていて、「渾身」は短い時間で一気に力を出すのにのに対し、「尽力」は時間をかけて継続して力を出し続ける場合に使われています。
このような力の出し方については違いがありますが、自分が持っている限りの力を出して努力するというところや、手を抜かずにやり通すといった部分は同じになっています。
精一杯
「精一杯」というのは現在の自分ができる最大限の努力をするということです。
「精」というのは「精力」という意味に該当していて、自分が所持している能力や行動力など、全ての活力をまとめたものを表しています。
その全ての力を使って物事に対処するという意気込みを相手に示していますが、これも確約ではないために「精一杯」に物事に対応しても、相手が納得しないという事態は起きても仕方がなくなっています。
誠心誠意
「誠心誠意」とは自分の心からの意思を持って、誠実な対応を行うという意味です。
この「誠心誠意」という言葉を使うのであれば相手にその本気の姿を見せる必要があり、そこでだらけていたり嫌々行っているようなことをしていれば、それは「誠心誠意」と言った意味がなくなってしまいます。
言葉にはそれだけ重い意味が込められているのですから、最初からできないのがわかっていながら口先だけで解決しようとすると、それは逆効果にしかならないことを認識して下さい。
できる限り
「できる限り」とは自分が現在持っている能力を使って対処するという意味です。
そのため自分の能力を越えた事案については対処しきれないことを事前に表明していますが、それでも努力をしていることは相手も理解してくれるので一定の効果はあります。
人間にはその人の能力でできることとできないことがあるので、自分の能力以上のことを言って相手を困らせるより、最初から自分ができる範囲で努力することを言った方がいい場合があるでしょう。
「尽力」の反対語
言葉には同じ意味を持つ類語もあれば、逆の意味になる反対語というものが存在しています。
その場の状況で反対語を使うことはありませんが、現在の状況とは正反対の状況になれば当然に使用することもあるので、知っていて損にはなりません。
それに反対の意味を持つ言葉は意外に簡単には出てこない場合があるので、「尽力」についてもその反対語を知り役立て下さい。
中途半端
「中途半端」とは最後まで行わずに、物事を途中で止めてしまうことを言います。
最初はやる気があって始めても集中力が切れて気力が失せたり、最初の考えていた進捗状況と違っていたために挫折するということも考えられるでしょう。
ある程度の年齢に達したなら「中途半端」は許されないのですが、以前よりも集中力が早く途切れてしまって他のことを考えてしまう人が増えているため、物事を途中で止めても何も思わない傾向が強くなっています。
放棄
「放棄」とは所持していたものを手放したり、依頼を受けても何もしないことを言います。
「尽力」というのはできない可能性がある内容であっても持てる力の全てを使って対応するという意味ですが、この「放棄」は最初からできないと判断して何もしないことを意味します。
何事もやってみなければ結果がどうなるのかわからないのに、その可能性すら最初から捨ててしまう「放棄」は責任感の無さを相手に示していることに他なりません。
怠惰
「怠惰」とは本気で物事に対処しようとせず、だらだらと行っている状況を言います。
人間の行動はその人の考え方で大きく異なってきて、やる気を持たずに行えば覇気がな素早い動きというものができません。
無理やり行おうとしても長続きせず、結局は嫌々行っているような動作にしかならないため、相手からすると真剣に取り組んでいないと感じてしまい、いい印象は持たないのは間違いないでしょう。
横着
「横着」とは途中の工程を適当に行い、手を抜いた行動をとることを言います。
同じ作業をして慣れてくると楽なやり方というのがわかってくるので、「横着」をして正規の手順から逸脱した行動を取ってしまう人がいます。
それは当人からするとその方がやりやすいからですが、手を抜いた行動は結果でもそれが出てしまい、正規手順を省いてもいい結果が出るならそのようにしているはずであり、そうなっていないということはやはり不具合が出るという意味だからです。
「尽力」の読み方
この言葉は「じんりょく」と読みます。
「尽」という漢字は訓読みでは「つきる」となりますが、音読みでは「じん」と読み、「尽力」以外に使われる漢字は「無尽蔵」というのがありますが、こちらも「むじんぞう」と読むので「じん」となります。
「力」の方は訓読みの「ちから」が一般的ですが、音読みの「りき」というのもよく使われていますが、「尽力」に関してはもう一つの音読みである「りょく」の方を用いています。
「尽力」の敬語
「尽力」という言葉は相手に対して用いるので、敬語での表現方法も必要になります。
それにこの「尽力」は相手に自分の行動を認めてもらう要素も含まれているので、そのためには自分の立場や相手の状況をよく理解した上で適切な敬語を使うことが重要になるでしょう。
相手に敬意を払わなければいけない以上は間違った敬語を使うのはとても失礼になってしまうので、どのような敬語を使えばいいのか参照して下さい。
目上の人への使い方
目上の人は尊敬語を使う必要があるので、「尽力する」は「尽力いたします」となります。
この目上というのは年齢が一般的ですが、客や依頼人といった場合には年齢はあまり関係なくなりますが、それでも立場が上なので謙譲語の表現方法を用いては失礼に該当します。
「尽力」という言葉を使用している時点で相手には何らかの迷惑をかけていることが多いので、その相手の気持ちを考えても正しい敬語の使い方をしなければいけません。
謝罪の言葉を入れる場合
「尽力」という言葉で謝罪の文言を入れ場合は、その敬語表記は最上級のものが必要です。
「尽力」という意味が相手に何か不具合を発生した可能性があるからであり、ただ「尽力」を持って対処するのでは足りないために謝罪しているので、何重にも敬語を重ねた使い方をしましょう。
言葉は自分の気持ちを端的に表現する最大のアイテムなので、それを疎かにすると取り返しのつかない状況に陥ることもあります。
不特定多数の人に使う場合
特定の人にだけ「尽力」を使わないのであれば、目上の人に用いる敬語が適しています。
不特定多数の人を対象にして「尽力」を使うのであれば、そこにはどのような立場の人がいるのかわからないので、あまりに強い敬語を用いると相手が委縮する場合があります。
そうかと言って軽くするとそれも失礼に該当してしまうので、目上の人に対応するような感覚で「尽力」という言葉を使えばいいでしょう。
「尽力」は相手が理解することが重要
「尽力」は相手に自分の意思を表明していて、理解してもらえなけれは意味がありません。
人間社会の中では不可抗力であっても相手に迷惑をかけてしまうことがあり、それを正したいのであれば相手が自分の真意を汲み取ってもらはなければ解決はできないでしょう。
「尽力」というのは確約とは違いできない場合もありますが、その言葉を使う以上は相手が自分を認めてくれてこそ、その意味が発揮されていくことになります。