「悪しからず」の意味と使い方・例文・敬語・類語|目上の人

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「悪しからず」の意味と使い方

「悪しからず」という言葉・表現を皆さんは聞いたことがあるでしょうか。この「悪しからず」という言葉は基本的に古語表現として知られており、日本ではかなり昔から使われていました。

日本語にはこのように、古語表現でも日常用語として使えるものは「現代語として普通に使われている」という傾向が見られているため、日本語を本格的に学ぶ際には「古語表現もしっかり学ぶ」という姿勢を持つことが大切です。

「悪しからず」の意味

「悪しからず」の意味についてですが、「悪く思わないでください」、「気を悪くしないでください・気を落とさないでください」、「気分が悪くなるような内容をあえて伝えています」などといった、文面や情報を相手に伝える際の伏線的な表現として使われます。

この意味合いは古来よりそのまま使われており、江戸時代ではこの「悪しからず」という表現が頻繁に使われていた時期があります。江戸言葉というのは基本的に「美学を重んじ、粋を重んじ、相手に対する自分の気持ちをすべて言葉に置き換えて表現する」といった芸術的センスが卓越した時代でした。

この江戸時代より「悪しからず」の意味合いは上記のように使われており、特に「相手にとって都合が悪い場合」をあらかじめ想定した上で、「すみません」と先に謝罪する言葉として使われていました。

「悪し」の意味

「悪し」の意味についてですが、この「悪し」という言葉もかなり古くから使われている言葉であり、古くは平安時代から頻繁に文学作品などにおいて使用されていました。

その基本的な意味合いはそのままの意味で「本性や本質が良くない・不快である」、「容姿が醜いこと」、「不適当な言動や表現」、「険悪なムード」などを指し、現代でも使われている「悪い・悪いこと」の意味合いとそのまま通じる意味合いとして認められます。

「悪しからず」の読み方

「悪しからず」の読み方についてですが、これはそのまま「あしからず」となります。日本語にはむずかしい読み方をさせる造語や当て字などが見られますが、この「悪しからず」の場合は変わった特殊な読み方をすることはないため、そのまま「あしからず」と覚えておきましょう。

「悪しからず」の具体的な使い方

さて、この「悪しからず」の具体的な使い方についてですが、これは先述しましたその言葉自体の意味合いに配慮した上で、「相手にとって都合が悪いこと・不快なことを述べる際に使われる表現」となります。

・銭湯の貸し切りは午後8時までとなっております。ご希望にお応えすることができず申し訳ございません。悪しからず。
・あいにく、そのような商品はありません。悪しからず。
・大変申し訳ございません。悪しからずご了承ください。
・このもとの女悪しからず しと思へるけしきもなくて(『伊勢物語』)

このような使い方がなされ、特に「相手の希望に沿えない場合・相手にとって都合が悪い場合・相手にとって不快な内容になる場合」などにおいて使われます。

文章の中程と文末で使える

先述でもご紹介しましたように、「悪しからず」という言葉はその文中(文章内容の中程)でも文末においても使用することができます。これは会話表現においてももちろん同じですので、しっかりインプットしておきましょう。

・大変申し訳ございませんがご了承ください。悪しからず。
・午後8時をもって閉店させていただきますので、悪しからずご了承ください。
・そのような経過はございません。悪しからず。

「悪しからず」は手紙でも普通に使える

この「悪しからず」という言葉はもともと文語表現(文章表現)として誕生しました。そのため、古来より日本では「書簡(手紙)・文(ふみ)」にて連絡交換や意思疎通が図られた経緯があるため、この「悪しからず」という言葉が手紙の中でも普通に扱われていたことは納得できるでしょう。

「悪しからず」は古語表現

先述でもご紹介しましたが、この「悪しからず」という言葉はもともと日本における古語表現として認められ、そもそもの表現としては「悪し・悪(あ)しい」などの表記によって示されていました。

「悪し・悪しい」という表現が誕生したのは奈良時代から平安時代に掛けてとされており、この場合でも「悪し」という(現代で言うところの)「悪い」の意味合いにそのまま直結する言葉のニュアンスとして多用されていました。

ビジネス

この「悪しからず」という言葉は敬語表現としてもそのまま使用することができるため、ビジネスシーンでも非常に多くの場面で使われています。その場合でも先述のように、「文章の中程で使われたり、文末に添える形で使われたりする場合」に分かれてあり、それぞれの場面・状況に見合った形で適切に表現することが求められます。

基本的にビジネス用語として「悪しからず」が使われる場合では、文末に添える表現よりも文中に置く形が好ましいとされており、「大変申し訳ございません。悪しからずご了承ください」などのように、謝意を伝える言葉の接頭辞のように使われる傾向が多く見られます。

「悪しからず」の例文

日本語を勉強する際でも外国語を学ぶ場合でも、その「覚えるべき言葉」を実際に使って学習する姿勢はとても重要です。そうすることによって、あらゆる言葉を柔軟に学習することができ、場面・状況によってそれぞれの言葉を適切に使用することが可能となります。

・この度は事業プランの進行具合が理想的ではなく、誠に悪しからずご容赦ください。
・こんな商品はうちでは取り扱っておりません。ご期待に添えず、悪しからず。
・ご要望されたCDフィルムはまだ届いておりません。悪しからず。

ご了承

この「悪しからず」と一緒に使われる言葉としては「ご了承ください」という言葉が非常に有名です。この「ご了承ください」という言葉の基本的な意味は「どうかご許容ください」や「お許しください」などとなるため、この場合は「悪しからず」という謝意に加えてさらにもう一度お詫びの言葉を重ねている形になります。

・理想的な設営準備ができず、誠に悪しからずご了承ください。
・今夜は午後7時までの営業となっております。悪しからず。
・アンケートのすべての項目にお答えすることができませんでしたが、どうぞご了承ください。悪しからず。

ご容赦ください

先述の「ご了承ください」と同じくらい「悪しからず」とワンセットで使われる言葉がこの「ご容赦ください」という言葉で、この場合も「悪しからず」を「ご容赦ください」の前に付けたり、あるいは文末に置いたりして調子を整えます。

・この度は事業プランの新規計画が捗らず、悪しからずご容赦ください。
・天ぷらは現在売り切れ中でございます。悪しからずご容赦ください。
・今後の掛け売りはどうかご容赦ください。悪しからず。

文末に添える

基本的に日常用語として使われる「悪しからず」の場合は、その主張・文章の末尾に添えられる形で置かれることが非常に多く見られます。「大変申し訳ございません。悪しからず」などの形で使われる用法が広く浸透しています。

しかしビジネス用語で「悪しからず」を使う場合は、「悪しからずご容赦ください(ご了承ください)」などのように、その文中に謝意を示す言葉の接頭辞のように置かれるのが一般的であるため、日常用語として使われる場合とは多少違ってきます。このような用法の違いにもよく注意しておきましょう。

「悪しからず」の敬語

まず、「悪しからず」という言葉は敬語表現ではありません。この点をしっかり把握した上で、ビジネスシーンで「悪しからず」と同じ意味合いを持つ言葉を示す場合には、この「悪しからず」と同意の言葉をもって代用しなければなりません。

・大変申し訳ございません。
・ご期待に添えず、誠に申し訳ございません。
・今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
・ご期待にお応えすることができず、誠に申し訳ございません。

上記の表現のように、「悪しからず」の意味合いに含まれる「相手にとって期待に添うことができずに申し訳ありません」という気持ちをそのまま表現する言葉を使うことによって、「悪しからず」と同意の言葉を示し、さらに丁寧な表現で相手に伝えることができます。

ビジネス用語でも使える

先述しましたように、「悪しからず」という言葉は他の敬語表現などと併用する形で、ビジネスシーンでも普通に使うことができます。そもそも「悪しからず」の意味合いが「相手に対する謝意を伝えるためのクッション用語」のようにしてあるため、この言葉・表現は尊敬語や謙譲語のどちらにも使用することが可能です。

表現としては失礼ではない

「悪しからず」という言葉の表現そのものは失礼な表現ではなく、むしろ相手に対して「期待に添えず申し訳ございません」といったへりくだった姿勢を示すことになるため、やや謙譲語表現による言葉として認められます。

しかしここで注意が必要ですが、「悪しからず」という言葉を語尾・文末に添えて表現することは避けるべきです。これは、文末に「悪しからず」という言葉を沿えることによって体言止めの形となってしまい、体言止め特有の強調表現によって「悪かったです」といった内容がおもむろに相手に伝わってしまう形になり、失礼な表現になる場合があります。

「悪しからず」の類語

「悪しからず」の類語についてですが、これは先述でもご紹介しましたように「悪しからず」の意味にある「ご期待に添えずに申し訳ございません」といった、「相手の要望に沿えなかったことに対する謝意」の意味合いを持つ言葉がそのまま類義語となります。

ご期待に添えず申し訳ございません/非常に恐縮ですが/お気を悪くしないでください/悪く思わないでください/恨まないでください/すみません/申し訳ございません/ご希望には沿えません/ご対応いたし兼ねます

上記の言葉が「悪しからず」の一般的な類義語としてピックアップされますが、どの言葉にも「相手の要求に添うことができなかった謝意」の気持ちが込められています。

「悪しからず」の目上の人への使い方

先述でもご紹介しましたが、「悪しからず」という言葉はビジネスシーンでも普通に使われる言葉・表現であるため、上司に使うことは可能です。

しかしその場合は、「悪しからず」という言葉を体言止めによって伝えることは避けておくことがベターで、使う場合は「悪しからずご了承ください・ご容赦ください」というように、謝意を伝える言葉の接頭辞のように使用する方法がベターとなります。

「悪しからず」の語源

「悪しからず」の語源についてですが、まず「悪しからず」という言葉は「悪し・悪しい」という「悪い」という意味を示す言葉として奈良時代頃より使用され始め、その後に「悪し」の未然形である「悪しから」に打ち消しを示す助動詞の「ず」がくっ付いた表現になります。

つまり、「悪し」(悪いこと)とは知りながら、あえて先に伝えることによって、「その悪しい気持ち(悪い気持ち)を収めてください」(悪く思わないでください・落胆しないでください)という「悪しい気持ちになること」を打ち消す用法で用いられるようになりました。

友人同士でも使える柔軟な表現

この「悪しからず」という言葉は友人同士や知人の間、また親戚や縁戚の間などでも普通に使われる慣用句的な表現として多くの場面で用いられています。その場合でも「悪く思わないでください・気落ちしないでください・不快な心地にならないでください」といった、前もっての謝意を伝える言葉として用いられます。

この場合は「悪しからず」を文中(中程)に置いても文末に置いても(体言止めしても)どちらでもOKで、とにかく「悪しからず」の意味合いを伝えることに意味がある、という用法で「悪しからず」が使われることになります。

「悪しからず」の英語表記と意味

「悪しからず」という言葉を英語に直す場合、それぞれの英単語の意味合い・用法に配慮した上で以下のようにピックアップされます。

・severely(ひどく、悪く、悪しからず)
・badly(悪く、まずく、悪しからず)
・deeply(深く、ひどく、悪く、悪しからず)
・bitterly(苦く、悪く、悪しからず)
・awfully(とても、怖く、悪く、悪しからず)
・sorry(ごめんなさい、すみません、悪しからず)
・extremely(激しく、悪く、厳しく、悪しからず)
・terribly(悪く、ひどく悪しからず)
・I can not follow your expectations(ご期待に添えず、悪しからず)
・I can not respond to your request(要望に応えられず、悪しからず)

「悪しからず」の英語表現と意味(1)

先でご紹介しました「悪しからず」の英語表記を参考にして、「悪しからず」の意味合いを含めた英語の例文をいくつかご紹介します。

・Review of the business plan has not been completed, please be aware.
「事業プランの見直しが捗っておらず、悪しからずご了承ください。」
・We have not yet opened our shop. Sorry.
「まだ当店は開店いたしておりません。悪しからず。」
・We can not accept such responses. Sorry.
「そのようなご対応はいたし兼ねます。悪しからず。」

「悪しからず」の英語表現と意味(2)

先述しました「悪しからず」の英語表現に引き続き、さらに具体的な「悪しからず」の例文をご紹介します。

・Although I was able to receive a great deal of support this time, I can not get enough progress to meet your expectations, please forgive me without worry.
「この度は非常にたくさんのご支援をいただくことができましたが、ご期待にお応えできる程の進展を得られず、悪しからずご容赦ください。」
・I attempted to negotiate students abroad by cooperating with partner universities, but I am afraid that it is late.
「提携大学との協力によって学生の海外留学を取り決めようと試みましたが、悪しからず遅延しております。」

「悪しからず」の英語表現と意味(3)

先述の「悪しからず」の英語表現に引き続き、今度は具体的な「悪しからず」の例文をご紹介します。

・The word “sorry” is basically treated as “expression used when you can not meet the needs of the other person.”
「「悪しからず」という言葉は基本的に「相手のニーズに応えられなかった場合に使われる表現」として扱われます。」
・If you use the word “sorry” as a business term, avoid adding it at the end of the sentence.
「ビジネス用語として「悪しからず」という言葉を用いる場合は、文末に添えることを避けるべきです。」

「悪しからず」の正確な用法を把握しましょう

いかがでしたか。今回は「悪しからず」の意味と使い方・例文・敬語・類語|目上の人と題して、「悪しからず」の意味と使い方・例文・敬語・類語|目上の人についての詳細情報のご紹介をはじめ、いろいろな場面で使われる「悪しからず」の用例についてご紹介しました。

「悪しからず」という言葉は日本でも非常に古くから使われてきた古語表現として認められており、その古来の意味合いにおいても「ご期待にお応えできずにすみません・悪く思わないでください」などの、相手の落胆に配慮した上で使われる表現としてありました。

日本語を学習する際には、このような「昔の言葉の成り立ち・使われ方」をワンセットで覚えることが大切で、それによって1つ1つの言葉を根本的な理解をもって再確認することができるようになるでしょう。

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