「ご苦労様です」の意味と使い方
日常的に「ご苦労様です」というフレーズを耳にするという人は多いでしょう。「ご苦労様です」という言葉は、会社での上司と部下との会話や取引先の人との会話、学校での先生と生徒の会話などでよく登場します。
この記事では、「ご苦労様です」という言葉の意味と使い方について解説します。
前提
「ご苦労様です」という言葉は、相手の苦労や仕事をねぎらうときに使われます。大切なのは、「ねぎらう」というのは、目上の立場の人間が目下の立場の人間にすることです。例えば会社では、「上司が部下の仕事をねぎらう」のが正解です。「部下が上司をねぎらう」とは言いません。
もし、部下が上司に対して「ご苦労様です」という言葉を使ってしまうと、無礼な人間だと勘違いされてしまう可能性があります。普段から耳にすることが多い言葉で、意識せずに使ってしまうこともあるでしょうが、気を付けてください。
「ご苦労様です」の例文
「ご苦労様です」の意味と使い方がわかったところで、実際に「ご苦労様です」という言葉がどう使われているのかを紹介します。自分が誰かに「ご苦労様です」と声をかけるときの参考にしてください。
お勤め
映画やドラマなどで、「お勤めご苦労様です」というセリフを頻繁に耳にします。しかし、日常生活ではあまり聞きなれないフレーズでもあります。
基本的に、「お勤め」とは会社などで働くことです。さらに「お勤め」という言葉には、やらなければならない義務的なことを指す「お努め」という意味も隠されています。
「お勤めご苦労様です」という言葉がどういうときに使われるのか、以下で具体的に紹介します。
刑務所
「ご苦労様です」という言葉は、目上の人間が目下の人間に使うというのは先に説明したとおりです。なので、「お勤めご苦労様です」という言葉も、基本的には目下の人間から言うのはご法度です。
しかし、上司や部下という立場とは関係なく、刑務所や役所では、習慣的に「お勤めご苦労様です」という言葉が使われています。
ヤクザ
ヤクザと呼ばれる人たちの間でも、「お勤めご苦労様です」という言葉がよく使われます。一般人は、ドラマや映画などでこのセリフが使われているシーンを見たことがあるでしょう。
ヤクザの世界では、たいてい部下がボスなど目上の人間に対し「お勤めご苦労様です」と声をかけています。これは、「お勤め」が「嫌でもやらなければならない義務をこなす」という意味で使われているからです。
この場合も、刑務所や役所などと同じで、目下の人間から目上の人間に「ご苦労様です」と言う例外に数えられます。
幹事
二十歳を過ぎてお酒を飲めるようになった人は、何度も飲み会の席に足を運んだことがあるでしょう。大学での飲み会や社会人になってからの飲み会など、飲み会はあらゆるところで行われています。
飲み会が開催されるということは、誰かが幹事となって人集めや連絡、会計などをしてくれているということです。
一般の参加者は気軽に酒を飲み、楽しく過ごしていればいいですが、幹事は違います。お店の予約ひとつ取っても、人数確認を参加者とお店の両方にしなければならず、当日に会計の仕事をするならば、酔っ払わないようにお酒を飲む量を考えなければいけません。
幹事の人は、自分が楽しむというよりも、飲み会を楽しくすることを優先します。飲み会が終わったら、幹事の人に「ご苦労様です」という気持ちを込めたメールなどをするとよいでしょう。どんなメールを送ったらよいか、以下で具体的に説明します。
同僚や部下
部下や同僚が幹事だった場合は、問題なく「ご苦労様です」という言葉を使えます。厳密に言うと、同僚は目下の人間ではありませんが、上司ではないのでマナー違反にはならないと考えてよいでしょう。
お礼メールの例文は以下のとおりです。
「昨日は飲み会の幹事ご苦労様でした。○○君がお店の予約から会計までまとめてくれたおかげで、楽しく飲み会に参加することができました。お店の料理もお酒も、季節の旬な食材が使われていて、とてもおいしかったです。いま帰宅したので、感想も兼ねてお礼のメールをさせていただきました。ありがとうございました。」
上司
次は上司が幹事だった場合の例文の紹介です。ここまで説明してきたとおり、上司などの目上の人間に対して「ご苦労様です」という言葉はふさわしくありません。なので、「ご苦労様です」と同じような意味を持つ別の言葉で置き替えましょう。例文は以下のとおりです。
「○○さん、本日はありがとうございました。普段はなかなか足を運ぶことが難しいお店に連れていってくださり、さまざまな社会勉強ができました。これを励みにして、また明日からも頑張ります。携帯からのメールで失礼かとは思いますが、お礼を伝えさせていただきました。」
NG
「ご苦労様です」という言葉を使う際、やってはいけないことがあります。
部下や同僚にはついつい強く当たってしまう人もいるでしょうが、お礼メールの前半で「ご苦労様です」と相手をねぎらう言葉を使ったにもかかわらず、その後の文章で偉そうな言葉使いになってしまったり、ダメ出しをしたりなどはしないようにしましょう。
「ご苦労様です」といった相手を思いやる言葉を一回使えば、後は好き勝手書いてもいいというわけではありません。お礼メールは最初から最後まで、相手への感謝が伝わるように書きましょう。
友人など
友人など、親しい人が幹事をやった場合はどうでしょうか。
友人同士では対等な立場が前提なので、基本的には敬語を使う必要はありません。しかし、「親しき仲にも礼儀あり」という言葉もあります。友人が幹事をしてくれたときは、メールの件名などに、「本日はご苦労様です」と添えてみてもいいでしょう。
「ご苦労様です」の目上の人への使い方
「ご苦労様です」という言葉は、基本的には目上の人に対しては使いません。
任侠映画や時代劇などのドラマで「ご苦労であった」という言葉が使われることがありますが、この発言をするのは、必ず殿様や上級武士などです。下級武士や家来から、目上の立場の殿様に「ご苦労様です」とは言いません。
「ご苦労様です」は「よく頑張りました」と変換できます。現代の世の中であっても、こんな言葉は上司や目上の人には使えないことがわかります。
例外はあるけれど
度々説明してきたとおり、「ご苦労様です」は、目上の人間が目下の人間に対して使う言葉です。目上の人間に同じような気持ちを伝える場合は、「お疲れ様です」という言葉を使うべきです。警察や役所、暴力団関係などの例外はありますが、ビジネスシーンでは控えましょう。
「ご苦労様です」の敬語
「ご苦労様です」は「よく頑張りましたね」を丁寧な言葉に言い換えた言葉です。では、「ご苦労様です」をさらに丁寧な尊敬語にするとどうなるでしょうか。
「ご活躍、感銘を受けております」という文章が、「ご苦労様です」の敬語としてふさわしいでしょう。他には、「お疲れを癒やし、ご自愛ください」や「お疲れを癒やし、くれぐれもお大事になさってください」といった表現も考えられます。
「ご苦労様です」と「お疲れ様です」の違い
ここでは、「ご苦労様です」と「お疲れ様です」の使い方の違いを解説します。どちらも労をねぎらう言葉なので、意味は似ていますが、使えるシーンは大きく異なります。
ここまで説明してきたとおり、「ご苦労様です」は目上の人間が目下の人間に対して使う言葉ですが、「お疲れ様です」は目下の人間が目上の人間の苦労をねぎらうために使ってよい言葉です。
上司が大変な仕事をこなした後など、目上の人間の労をねぎらいたい場合は、「お疲れ様です」を使うとよいでしょう。
本来は「お疲れ様です」も目上の人間から目下の人間に対して使う言葉でしたが、現代では目下の人間から目上の人間に使ってもよい言葉として捉えられています。言葉は時代とともに意味や使い方が移り変わる可能性があることも押さえておきましょう。
お世話様
「ご苦労様です」は目上の人間から目下の人間に対しての言葉、「お疲れ様です」は目下の人間から目上の人間に対しても使える言葉でした。では、取引先や提携先の社員など、上下関係がなく、お互いに敬い合う関係の場合はどういう言葉を使えばよいでしょうか。
そうした間柄では「お世話様です」と言うのが最適でしょう。郵便や宅配便の配達員の人にお礼を言うときも、「お世話様です」という言葉がおすすめです。
「ご苦労様です」のマナー
ここでは、「ご苦労様です」という言葉を使うときのマナーを紹介します。マナーはルールではないので、守らなければならないというわけではありませんが、相手を不快な気持ちにさせることがないよう、守っておいたほうが無難です。
同僚
同僚は目下の人間ではありませんが、「ご苦労様です」という言葉を使ってもアウトではありません。ただし、「ご苦労様です」という言葉は目上の人間から目下の人間に使うものという前提は忘れないようにしましょう。頻繁に使うと、見下されていると勘違いされる可能性があります。
取引先
取引先の相手に「ご苦労様です」と使う場合もあります。このときも同僚に使う場合と同じく、見下されていると勘違いされないように気を付けましょう。取引先であっても、相手が明らかに自分よりも年上とわかったら、「ご苦労様です」ではなく「お疲れ様です」という言葉を使った方がよいでしょう。
「ご苦労様です」の返事
ここでは、「ご苦労様です」と言われたときの返事の仕方について解説します。返す言葉も大事ですが、「ご苦労様です」と言われたときの気持ちのあり方についてもみていきます。
恐れ入ります
ビジネスマンが「ご苦労様です」に返答する場合、一番ふさわしい言葉は「恐れ入ります」でしょう。
「恐れ入ります」は、「ありがとうございました」と同じような意味合いですが、「恐れ入ります」の方がビジネスライクで、社会人としてよりふさわしい言葉と言えます。
ありがとうございます
目上の人間から労をねぎらってもらったとき、一番無難で間違いがない返答が「ありがとうございます」です。文脈からしても間違いではありませんし、お礼を言われて嫌な気分になる人間はいません。
前項では「恐れ入ります」がふさわしいとしましたが、「ご苦労様」への返しがとっさに出てこなかったときは、「ありがとうございます」で乗り切りましょう。
お先に失礼します
会社で仕事を終えて帰宅しようとしているとき、上司から「ご苦労様」と声をかけられた場合は、「ありがとうございます。お先に失礼します」と返事をするのがよいでしょう。
上司よりも早く仕事が終わり、先に帰るというシチュエーションでは、労をねぎらわれたことに感謝しつつ、先に帰宅することに断りを入れる「お先に失礼します」という言葉がふさわしいと言えます。
頭を下げる
「ご苦労様です」と労をねぎらってもらったとき、お礼の返事を伝えるのは当然です。このとき、直立不動で返事をするのは不自然です。「ありがとうございます」の言葉にお辞儀を加えると自然でよいでしょう。
大切なこと
ここまで「ご苦労様です」と言われたときにふさわしい返事について紹介してきました。「ご苦労様です」は、目上の人間が目下の人間に使う丁寧な言葉です。つまり、「ご苦労様です」に対する返事は、目下の人間が目上の人間に対して使うのにふさわしい内容でなければいけません。
それ以上に大切なことは、「どういう内容の返事をするか」「どういう敬語を使うか」ではなく、目上の人間から労をねぎらってもらったことを感謝する気持ちです。感謝の気持ちがないと、いくら表面ではいいことを言っていても、相手には伝わりません。
口先だけで返事をしていると受け取られてしまったら、感謝の気持ちを伝えるどころか相手に不快な思いをさせてしまう可能性もあります。そうしないためにも、気持ちを込めて返事をすることが大切です。
言葉は適切に使いましょう
この記事では、「ご苦労様です」という言葉の意味と使い方について、さまざまな角度から解説してきました。
「ご苦労様です」は目上の人間から目下の人間に使う言葉であること、ビジネスシーンで頻繁に使われる、労をねぎらう意味を持つ言葉であることだと覚えておけば、基本的には問題ありません。
自分が部下のときは、「ご苦労様です」と言われる立場で、自分が上司になって部下を持てば「ご苦労様です」と労をねぎらう立場になります。大切なのは、気持ちを言葉にすることと、本心からねぎらうことです。表面だけの言葉では意味がありません。心の底から相手の努力をねぎらいましょう。