他言無用という言葉
他言無用という言葉の意味をご存知でしょうか。内密の話題を「他人に言ってはいけない」と、相手に対して口止めをするときに使う言葉です。
「誰にも言わないで欲しい」を硬い言葉で表現したものなので、内輪でする内緒話よりもフォーマルな言葉と考えましょう。また、時には「ここだけの話ですが」のような使われ方もされます。
ここでは他言無用の意味や使い方、注意事項などをご説明します。場面に沿った使い方を学んで、円滑なコミュニケーションを心がけましょう。
他言無用を使うシーン
他言無用という言葉は、日常会話の中ではあまり耳にしない言葉です。一体どういう場面で使うのでしょうか。一般的には、ビジネスシーンやかしこまった場所で内密の話をする場合に他言無用という言葉を使います。他言無用という言葉自体が硬い言葉なので、軽い気持ちで使わず、本当に話の内容を漏らさないようお願いしたい場面で使いましょう。
メールで使う
ビジネスメールなどで他言無用を使うと秘密度が増します。
メールでは他人に見えてしまうので意味がないのではないかと思われるかも知れません。しかし、ビジネスメールの中で他言無用という言葉を使えば、「ここだけの話ですが」「あなただけに伝えようとおもうのですが」という意味合いを伝える強い表現になり、「あなただけに打ち明けています」という特別感を出せます。
1対1で会話をする時
他言無用は、相手と対面で会話をする場面でも「他言無用なのですが」と一言付け加えると、ここだけの内密な話というニュアンスを出せます。
すなわち、他言無用と言えば「これは他人に言ってはいけない程の話なのか」と相手は考え、「これは真剣に聞かなければ」という心構えをしてくれるようになります。真面目な話をしたい時には、この言葉を前置きすると、相手の反応も普段とは違ったものになるでしょう。
他言無用の読み方
他言無用という言葉はどうやって読むのでしょうか。人によって読み方は異なりますが、一般的には、他言無用は「たごんむよう」と読みます。基本的にはこのように読みますが、「たげんむよう」という読み方もあります。
一方が正解で他方が間違いというわけではありませんが、一般的には「たごんむよう」と読まれるので、覚えておきましょう。
他言無用を使う文章
他言無用を文章で使う時は、どういうふうに、どういう場面で使うのか分かりにくいかも知れません。この項では他言無用の使い方について例文を載せています。
さまざまなシチュエーションに合わせた他言無用の使い方を知ったうえで、それを自分の使いやすいようにアレンジしてみましょう。
お願いをするとき
他言無用は相手にお願いをするときに使えます。
例えば、「この話は他言無用なんだけど、あの店の限定商品の在庫は残りわずかだから、今のうちに買ってきて欲しい」などど言えば、相手にあなたの真剣さが伝わり、急いで買い物に出かけてくれるでしょう。
お誘いをする時
例えば、相手と一緒に自分の行きつけのお店に行きたい、相手と二人だけで遊びに行きたいと思う時があるでしょう。そんな時には「いい店があるので一緒に行きませんか、この話は他言無用ですよ」と言うと二人だけで食事を楽しみましょうというニュアンスが出せます。
ここでは、他言無用と一言添えることは、「他の人を交えずに」という意味になります。そのため、相手が誰かを連れてきてしまうような事態を防げますが、親密でない相手に使ってしまうと距離を取られることもあるので使う場面には気を使いましょう
相談をする時
他言無用は、人に相談をする時に使われることが一番多いでしょう。相談事というのは、プライベートなものであり、不特定多数の人に知れ渡って欲しいものではありません。例えば、転職の相談であれば「他言無用にしていただきたいのですが、転職を考えています。何かいいアドバイスはないでしょうか」などのようにあなただけに相談していますというニュアンスで使うといいでしょう。
他ならぬあなたにだけ相談していますという意図が伝われば、相手も真摯に答えてくれるようになるものです。
他言無用を敬語で使う
他言無用自体は敬語ではありません。かしこまった言葉ではありますが、この言葉自体は丁寧語ではありません。「他言無用でお願いします」という言葉も、ある程度信頼関係がある人に対して使わなければ不躾に感じられてしまいます。
そのため、敬語として使う場合には「ご他言は無用に願います」や「ご他言はお慎みいただけますようお願い申し上げます」のように他言無用という言葉を分解して丁寧な文章に直しましょう。ある程度の信頼関係がない相手に対して唐突に他言無用を使ってしまうと、失礼になることもあるので注意しましょう。
他言無用と似た言葉
他人に話して欲しくない話をしたい時に使う言葉は、他言無用以外にもあります。それぞれのケースによって使い分ければ、勘違いや思い違いのない会話に繋がります。
他言無用以外の言葉とその使い方をこの項目で学ぶことで自分の会話のレパートリーを増やしましょう。言葉の引き出しの多い人ほど会話や文章の上での些細な行き違いを避けることができ、結果として人からの尊敬を集めることができます。
口外無用
他言無用と意味は同じですが、口外無用の方がより漏洩禁止のニュアンスが強い言葉です。
他言無用は、口外無用に比べれば柔らかく、さまざま場面で使えますが、口外無用は「絶対にコレを話してはいけない」と命令するような場面で使われます。高圧的な印象を与えるので、上司や先輩のような目上の人に対して使うのは控えましょう。
口外無用の例
口外無用という言葉は、強い口調で相手の口止めをする意味合いがあるので、「この話は口外無用だ」「この株式について絶対に口外無用とする」などのように、話の内容を絶対に他者に漏らしてほくない場面で使いましょう。
ただ、先程も書きましたが、口外無用は聞き手に高圧的な印象を与えるので、目上の人に使うと生意気な人間だと思われてしまったり、場合によっては無礼な奴だという悪い印象を与えてしまうので注意しましょう。
ここだけの秘密というフレーズ
友人との会話では、他言無用などと硬い言葉を使わず、「ここだけの秘密だけど」などと言って秘密の話をしましょう。ただし、軽く聞こえるため、人によっては「秘密だと言っていたけど、誰かにこっそり教えちゃっても大丈夫だろう」と思う人もあるかもしれません。そのため、「ここだけの秘密だけど」と言って内緒話をするときは、他人に知れ渡ってもいいような軽い秘密の話にとどめておきましょう。
ここだけの秘密を使った例
「ここだけの秘密だけど、あの二人付き合ってるんだって」「ここだけの秘密だけど、あの人借金をしているらしいよ」などのような使い方になります。
最近では、「ここだけの秘密だけど」という言葉は、字義通り秘密を守るようにお願いする言葉としてではなく、会話のアクセントとして使われることも多いです。「この話は秘密のビックリな話だよ」などというように前置きの意味で使う人もいるので、話の内容次第では軽く聞き流しても問題はないでしょう。
「ご内密に」を使う
他言無用も口外無用も、目上の人に対して使うと刺々しい印象を与えてしまいます。そんな時には「ご内密に」という言葉に言い換えましょう。
他言無用という言葉に比べてへりくだった表現なので、相手に対して失礼になることはありません。そういった意味でも、目上の人に内緒の話をする場合には「ぜひともご内密に」のように伝えることを心がけましょう。
「ご内密に」を使った例
「この話につきましてはぜひともご内密に」「ご内密に相談があるのですが、少しお時間よろしいでしょうか」などのようにして使います。「他言無用」や「口外無用」と違って、「ご内密に」という言葉は立場が下の者が上の者に対して使う言葉になります。
そのため、上司や目上の人が部下や目下の人に対してこの言葉を使うことは、正しい用法ではありません。自分と立場が同じか低い人には「この話は他言無用だ」のように使い、高い立場の人には「ご内密に」と使い分けましょう。
「ご内密に」の注意
ところで、「ご内密に」という言葉は慣用的に「不祥事」や「ミス」を隠そうとする場面で使われることが多いため、実際に使う際には誤解が起きないよう注意が必要です。
人によっては、この言葉を聞くと何か裏があるのではないかと訝しんだりする場合があります。そこで、「目上の人に使う場合」を除き、多用しないようにしましょう。
他言無用と言われた時の返事は
他言無用と言われた時、大抵の人は思わず「はい」と返事をしてしまうかも知れません。しかし、「この話は他言無用で」と言われた時に返事をする方法は一つだけではありません。
秘密にするべきでない事実を隠そうとして「他言無用」を使う人や、他人に相談する機会を与えないまま判断させようとして「他言無用」を使う悪意のある人も現実に存在します。こういった人達に適切に対応するためにも、他言無用と言われた場合の返答の仕方について考えていきましょう。
信頼できる相手の場合
信頼できる相手からの相談などで、「他言無用でお願いします」と言われた場合にはどうすればいいのか。相談された内容が犯罪や事件に関わるものでなければ「分かりました」と答えてあげるのがマナーです。
その相談内容を秘密にすることであなたに害がおよぶ場合は別ですが、相手が真剣に話してくれているのであれば、誰にも言わないようにしましょう。
営業やセールスの場合
営業やセールスの人に「これは他言無用の話なんですが」と言われた場合にはどうするべきでしょうか。そんなときは、「少し考えさせてください」と返答するのがいいでしょう。
営業やセールスの人間が使う他言無用というフレーズは、本当に内密の話ではなく「商品を売るための便法として使う」場合が多いです。そのため、他言無用と言われた時には少し考える時間を作りましょう
それでもしつこい場合には
しつこいセールスマンや営業の人間だと、「わざわざ他言無用の話をあなたにしたんですよ」という強気の態度を取る場合があります。その場合にはきっぱりと「必要ないです」と断る勇気も必要です。あまりにも勧誘やセールストークがしつこかったり強引な場合は、警察・身内の人・友人など頼れる人に相談するのがいいでしょう。
一人では押し切られてしまう場合もありますし、一度相手を追い返して結論を保留するのも、自分の身を守るうえで大切なことです。
知り合いからの話
例えば、それほど付き合いの長くない知り合いから「他言無用の話があるの」と言われた時には注意しましょう。親しくない人から秘密のはなしをされるというのは稀であり、何か良からぬことが待ち受けている可能性があるからです。
簡単に信用してうなずいたりはせずに、「そういうのに興味がないから」というように断ったほうがいいでしょう。「他の子も呼んでいいか」と聞いてもいいです。とにかく、相手のペースに巻き込まれないようにするのが肝心です。
身内からの話
兄弟や親も含めた親族から「他言無用の話がある」と言い出されることがあるかも知れません。個人個人それぞれの事情がありますし、なかには誰にも言えなかったことを打ち明けようと決意している場合もあります。そんな時には細かいことは尋ねず、「わかった」と一言だけ言って真摯に相手の話に耳をかむけてあげましょう。
こちらに相手の話を聞く時間的な余裕がない時は、話を聞く前にどういう内容なのか、長くなるのかを聞いておきましょう。話の長さなどが分かれば、相手の意図も分かるものです。とても長くなるようであれば相当に込み入った話になる可能性があるので、自分の用事よりも相手の「他言無用の話」を聞くことを優先しましょう。
他言無用は選んで使う
ここまで学んできたように、他言無用という言葉は使い方一つで相手に与える印象が変わります。内密の話を伝えるときにも、話のアクセントとして使う場合もあります。ですが、共通するのは「他言無用は軽い言葉ではない」ということです。
他言無用の話をみんなが知っていれば、「あいつは誰にでも他言無用と言って人の興味を引こうとする人間だ」と思われてしまいます。他言無用という言葉は、秘密の相談であり相手との個人的な信頼関係があってこそ成り立つ言葉です。
軽く使わず、ここぞというときに、秘密を守れる口の堅い人を選んで使いましょう。他言無用という言葉の重みがあれば、会話のメリハリも生まれます。