「ご期待に添えず」の意味と使い方は?
「ご期待に添えず」は社会人としての年数に左右されないビジネススキルです。熟練のビジネスパーソンでも知らない人は知らないです。社会人になりたてでも、しっかりと使いこなせている人はいます。コミュニケーションを良くするためにも、メールや文書を速く丁寧に仕上げるためにも、「ご期待に添えず」は覚えておいて損のないフレーズです。
「ご期待に添えず」の意味は?
「ご期待に添えず」の意味は、「期待」に丁寧語の「ご」が付いて「ご期待」、「添う」が五段活用して現代口語で使われる仮定形の「添え」、打消の「ず」、で「期待されていた内容や結果を提供することができず」です。「ご期待に添えず」はビジネスでは文書およびメールでの使用が顕著に見受けられます。
「ご期待に添えず」は実は、クレーム対応でひたすらに謝罪し続ける際に用いる言葉でもあります。クレーム対応においては、「ご期待に添えず申し訳ありません」などと、人の気分を害さない配慮が要ります。
さて、「ご期待に添えず」は一般に「断りの文面」で使用します。「無理です」、「お断りします」など頑として一歩も譲らず、断る姿勢も時には必要です。「ご期待に添えず」などの言葉で表現を和らげてあげることは業務を円滑に進めるコツとも言えるでしょう。
「ご期待に添えず」のビジネス文書での使い方は?
「ご期待に添えず」は、断りの文書などでクッションの使い方をするフレーズです。クッション言葉などと呼ばれる使い方でソフトな文面に仕上げることが可能です。断りの文書において仮にクッション言葉がなければ、どぎつい印象を与え兼ねません。相手の意に添えない場合には「ご期待に添えず心苦しいのですが」などの一文を添えるようにしましょう。
ビジネスでは人脈がものを言うことがあります。「ご期待に添えず」などのクッション言葉を添えるだけではなく、ご希望に添えない理由をキチンと伝えることが大切です。丁寧さも重要です。不採用通知などを、その場だけの間に合わせで済ませるのは言語道断です。
文書上によるお断りは、歴としたコミュニケーションです。下手なお断りでせっかくの縁やつながりを切らしてしまうことは、大層不経済と言えます。常に「ご期待に添えず」などを雑に扱わないことを意識しておけば良いでしょう。
「ご期待に添えず」のビジネスメールでの使い方は?
ビジネスメールの「ご期待に添えず」は、お断りメールなどで謝罪の気持ちに誠意を込める使い方をします。ビジネスメールでは、断る理由と詫びる気持ちを述べ、誠意を示すことが重要です。「ご期待に添えず」は例えば、「打合わせを開催いたします」と「ご予定くださいますようお願いいたします」の間に「おそれいりますが」を付けるのと同じです。
なお、見積もり依頼をお断りする際などに送るお断りメールの場合には、相手はクライアントです。今回の依頼の結果がお断りでも次回がどうなるかは不明です。ゆえに、言葉選びは慎重に行わなくてはなりません。
謝罪の気持ちを述べる際に「ご期待に添えず」などのクッション言葉を付けることで誠意を含めた謝罪のメールに仕上がります。本文に使用し、ビジネスにおける変わらぬお付き合いの所望と心からの謝罪を伝えるメールを送信できれば、「ご期待に添えず」などの使い方として間違いではありません。
「ご期待に添えず」の類語は?
「ご期待に添えず」の類語はクッション言葉としての機能を持つ言葉、「お役に立てず」、「お力になれず」、「申し訳ありませんが」、「申し訳ございませんが」、「せっかくですが」などです。これらは全て異なるフレーズです。微妙な違いを頭に入れておくことでビジネスシーンによる使い分けが可能となり、便利です。
「お役に立てず」
「お役に立てず」は「ご期待に添えず」と同じくクッションとして使う言葉で「お役に立てず恐縮ですが」や「お役に立てずに心苦しい限りですが」などの使い方をします。
ビジネス文書でもビジネスメールでもビジネスの会話でも使用は可能です。細かく言えば、「ご期待に添えず」は就職先の紹介依頼を断るなど、かしこまるときに「お役に立てず」は人物の紹介のお断りなど、ややフレンドリーなときに用いるのが正解です。
もっとも、「ご期待に添えず」も「お役に立てず」も否定の形です。これらは後に謙遜表現を付ける使い方をします。「申し訳ございませんが」や「心苦しい限りですが」など、どちらも謙遜表現です。謙遜表現とは自分をへりくだる表現です。統括すると、あくまでも角が立たないようにやんわりとお断りするのがポイントです。
「お力になれず」
「お力になれず」は借金や借用のお断りの文面に用いるフレーズです。「ご期待に添えず」は本題で「ご期待に添えず、誠に申し訳ございません」などと「お力になれず」は結びで「何のお力にもなれず申し訳ございません」などと使用します。
断り状は依頼を断る訳なので文章は硬くなりがちです。そのため、文章まで重たくならないように注意が必要です。結びの文を「お力になれず」などとすれば、自分の無力さを詫びる断り状になるでしょう。もちろん、本題に「ご期待に添えず」などのクッション言葉を置くことも重要です。
なお、「お力になれず」はビジネス文書の結びだけではなく、本題にも適します。使い方は「お力になれず誠に申し訳ございません」などです。その際は「ご連絡いただきましたのにお断りして申し訳ございません」など結びます。断り状においては本題も結びも、やわらかな文面を心掛けましょう。
「申し訳ありませんが」
「申し訳ありませんが」はビジネスの対話で使われることの多いフレーズです。ちょっと手が離せないときなどに一言を付け加えると良しとされます。
「申し訳ありませんが」は「ご期待に添えず」と同じく、クッション言葉です。「ご期待に添えず」などと比較すれば程度の軽いお断りに使用します。それでも、お断りはお断りです。クッション言葉がなければ、耳障りな発言と解釈されても文句は言えません。
もっとも、「申し訳ありませんが」は言い出しにくい内容を切り出すときにも用います。例えば、有給休暇を希望するときなどです。「申し訳ありませんが」は一般的なビジネスシーンで頻繫に用いられています。
「ご期待に添えず」などよりも気軽に使用でき、使いやすいクッション言葉と言えます。しかしながら、その分、お断りの通用しない場面でもできてきます。他方、「ご期待に添えず」は絶対に通したい場での使用が適切です。
「申し訳ございませんが」
「申し訳ございませんが」は、「すみませんが」のビジネス使う正しい言葉です。「ありません」を「ございません」へと言い換えるのが適切なように「すみませんが」と言いたいときには、「申し訳ございませんが」や「恐れ入りますが」などを使用します。「申し訳ございませんが」も「申し訳ありませんが」と同じく、ビジネスで多く用いるクッション言葉です。
相手に配慮や気遣いを示せてなおかつ断りなど言い出しにくい場面で使用が可能な便利な言葉であるクッション言葉は、どうしても何となく使用してしまいがちです。しかし、いざという時に使うためにも乱用は控えておくべきです。
お断りするときには、やわらかでマイルドな表現が好印象に映ります。それは「ご期待に添えず申し訳ございませんが」でも「申し訳ございませんが」でも同じことです。しっかりと使い分けましょう。
「せっかくですが」
「せっかくですが」は、せっかくのお誘いや申し出をお断りするときに使用し、クッション言葉をしての機能も持つ言葉です。せっかくのお誘いやお申し出に謝意を示すのが目的です。否定の形を続ける「ご期待に添えず」とは異なり、後に続くのは「お断り申し上げます」などストレートな表現です。
これは「あいにくですが」などと同じようなクッションとしての使い方です。ちなみに、「せっかくの」の前には「付して」や「謹んで」などを付けると一層効果的です。
ただし、「ご期待に添えず」のように否定の形を続けるフレーズも存在します。その際には「せっかくご用命くださいましたのに」などと使います。これは「ご期待に添えず誠に申し訳ございません」などと同じく、謝意を示しつつ、へりくだる表現です。
「ご期待に添えず」の例文は?
「ご期待に添えず」の例文には『「ご期待に添えず」お詫び申し上げます』、『「ご期待に添えず」恐縮いたします』、『「ご期待に添えず」残念です』、『「ご期待に添えず」誠に申し訳ございません』などがあります。いずれも「ご期待に添えない事実」を詫びる、謝罪する、詫びながらお断りする例文です。
「ご期待に添えず」お詫び申し上げます
『「ご期待に添えず」お詫び申し上げます』は、フレーズ「ご期待に添えず」を、謝罪の言葉に組み合わせる使い方です。基本的「ご期待に添えず」はお断りで用いるクッション言葉ですが、お詫びにも使えます。
お断りにおける理由と同じく、謝罪では経緯や事実関係の説明が必要です。そこで有効なのが、「ご期待に添えず」、「ご要望にお応えできず」、「ご不快の念をおかけしまして」などです。
なお、『「ご期待に添えず」お詫び申し上げます』はクレーム対応でも使用します。謝罪の場面とはいうものの、単に詫びるだけでは示しがつかず、かと言って中途半端な対応はできない場合に用いるフレーズとして知られています。心情に配慮したお詫びを述べることで対応する方法です。「ご期待に添えず」などクッションを用いて心中をお察ししましょう。
お客様のご期待に添えず、心よりお詫び申し上げます。
「ご期待に添えず」恐縮いたします
恐縮は「恐縮ながら」や「恐縮ですが」などと「ご期待に添えず」の前に置くことが多いので『「ご期待に添えず」恐縮いたします』は「ご期待に添えず」の比較的レアな使い方です。
「恐縮いたします」は「恐縮です」の敬語表現です。恐縮はビジネスでは感謝や謝罪や依頼の言葉として用いることもあります。それゆえに、『「ご期待に添えず」恐縮いたします』は「ご期待に添うことができずに恐れ多いです」などと解釈できます。
「ご期待に添えず」はお断り、恐縮は感謝や謝罪や依頼、用いるビジネスシーンは異なるようですが、相手への気持ちがこもり、気遣いが適切に示されていれば間違いではないです。上辺だけの感謝や謝罪や依頼ではないことが明らかであるとき、使える例文です。
当院では最近、満床が続き入院ご希望の方のご期待に添えず、恐縮いたします。
「ご期待添えず」残念です
「ご期待に添えず」の例文、『「ご期待に添えず」残念です』は、「あいにくですが」や「申し上げにくいのですが」などと、同じような使い方をするクッション言葉です。相手の要望や希望を今すぐには実現できない場合などに使用します。『「ご期待に添えず」誠に残念です』などとするケースも見受けられます。
ビジネスでは無理な依頼を断らなければならいことがあります。その際、自分の都合でお断りする訳にはいきません。相手の立場に立ち、「誠に残念ですがご期待にそうことができません」などします。不快感や悪い印象を相手に与えないことが最優先事項です。
『「ご期待に添えず」残念です』は、効果の薄めなお断りの例文です。ビジネスパーソンよりけりと言えるでしょう。キッパリと、やんわりと、とがめるように、お断りの様は人それぞれです。それは、「ご期待に添えず」が適切に使用すれば応用の可能な言葉だからです。
弊社の秋田便は、今回ご乗車いただいたタイプのみの運行のため、お客様のご希望に添えずとても残念です。
「ご期待に添えず」誠に申し訳ございません
『「ご期待に添えず」誠に申し訳ございません』は取引先からのお願いを、自分側の都合でお断りする際などに使用し、「ご期待に添えず」の一般的な使い方と言えます。『「ご期待に添えず」誠に申し訳ございません』は「内情をおくみとりくださいませ」などとセットで用いると効果的です。
もっとも、謝罪でも使用の可能な『「ご期待に添えず」誠に申し訳ございません』です。その用例は、生産の追い付かないほど人気のお菓子の品切れのお詫びなどです。このような場面において重要なのは角が立たない伝え方をすることです。そして、相手の心情を思いやりつつも、キッチリ詫びる姿勢は相手に誠実な印象を与えます。
ともあれ主流な言葉の使い方でも状況に適合しなければ使用は困難です。『「ご期待に添えず」誠に申し訳ございません』だけで乗り切れるほどビジネスの世界は甘くはありません。状況に応じて「ご期待に添えず」を使いこなしましょう。
多くのお客様よりご要望をいただいておりますのにご期待に添えず、誠に申し訳ございません。
敬語表現にプラス「ご期待に添えず」のような言葉
「ご期待に添えず」のようにクッション言葉などと呼ばれ、表現を和らげる言葉は他にもあります。それぞれ用いるシチュエーションが異なるので「ご期待に添えず」だけではなく、しっかりと暗記しておくのがおすすめです。なお、クッション言葉は敬語表現に付け加えて使用します。
ビジネスでは、ため口やバイト言葉などではなくて敬語表現が当たり前です。自暴自棄なビジネスパーソンにクッション言葉は必要ありません。しかしながら、相手と良好な人間関係を築きたいならば、「ご期待に添えず」などのクッション言葉をしっかりと用いる必要があります。
誰しも断られればガッガリします。「ご期待に添えず」などをクッションとして使用することで少しは、相手が落ち込むのを防げます。
断る | 尋ねる・依頼する | 反論 | 報告 |
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申し訳ありませんが | お手数ですが | お言葉を返すようですが | おかげさまで |
残念ながら | 差し支えなければ | おっしゃることはわかりますが | ご心配かもしれませんが |
失礼ですが/失礼とは存じますが | 恐れ入りますが | ご意見なるほどとは思いますが | お話し中、大変恐縮です |
せっかくですが | 大変恐縮ですが | 確かにそのとおりでございますが | 大変申し訳ないのですが/大変申し上げにくいのですが |
申し訳ございませんが | 重ね重ね恐縮ですが | 誠に恐れ入りますが | |
ありがたいお話ではございますが | 勝手申し上げますが | 誠に勝手ながら | |
身に余るお言葉ですが | 私ごとで恐縮ですが | あいにくですが | |
大変残念ですが | ご多忙とは存じますが | ||
大変申し訳ないのですが/大変申し上げにくいのですが | ご足労をおかけして申し訳ございませんが | ||
お役に立てず大変恐縮でございますが | ご面倒をおかけいたしますが | ||
私どもの力不足で申し訳ございませんが | |||
ご期待に添えず大変申し訳ございませんが |
コミュニケーション技術における実用的文書とは?
紹介するのは「ご期待に添えず」の使い方などの明記されているビジネス書籍です。メールや対話での「ご期待に添えず」は除外されていますが、ビジネス文書における「ご期待に添えず」は、コミュニケーションスキルと言っても過言ではないです。ビジネス文書のスキルとコミュニケーションスキルの両方に効くお得な一冊です。
コミュニケーション技術―実用的文章の書き方
「コミュニケーション技術―実用的文章の書き方」に取り上げられているのは、「ご期待に添えず、遺憾に存じます」などの実用的な文書で用いるフレーズです。また、例文も記載されています。ビジネス文書に頭を抱える全てのビジネスパーソンに上達法を伝授してくれる、そのような一冊です。
私もこの本を読む前は上司によく怒られていたが、読んでから文章をほめられるようになった。たった一ヶ月間で!この本に出会えたおかげで仕事もはかどるようになった。私のバイブルだ。
好かれる人の話し方にはコツがあった
ビジネスの言葉づかいや話し方は、自然とできる人もいます。けれども、ビジネススキルと捉えて努力して身に付ける人の数も決して少なくはありません。この本は「ご期待に添えず」などと言えば相手を不快な気持ちにさせてしまうのではないか、と危惧するビジネスパーソンにこそ、一読をおすすめする一冊です。
好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい
「好かれる人の話し方、信頼される言葉づかい」は、言葉よりも大切なことを教えてくれる本です。ビジネスでは人からの信頼を得るために多大な苦労を強いられるビジネスパーソンの中には「ご期待に添えず」と土下座するのが日常茶飯事な人だっていることでしょう。
この本はそれでも、十分に伝えられていない気がするという人におすすめの本です。反対に、伝え方に自信のある人には自分の伝え方と比較してみることを強くおすすめします。
実体験を随所に入れながら、分かりやすく言葉の使い方を教えてもらえる。特に謝り方の言葉の使い分けは、モヤモヤしたものがスッキリした(笑)
「ご期待に添えず」で印象をアップさせよう
「ご期待に添えず」など、たった一言添えるだけで相手の受ける印象は良くなります。それをどうして省くことができるでしょうか。第一印象はもちろん、ビジネスで好印象な人は得をすることが多いです。適切な一言を付け加えるだけで印象が良くなるならば試してみて損はないはずです。
「ご期待に添えず」は相手にとって喜ばしい内容に用いられる言葉ではありません。自分が使用される立場で考えてみると、苦手意識を抱きやすい言葉と言えます。無論、日頃から「ご期待に添えず」などをなんとなしに使用している人ならば話は別です。自分の都合と相手の都合とを上手に対比し、両者のプラスを優先させられることでしょう。
ビジネスでも都合は、自分側にだけ、相手側にだけ、ある訳ではありません。そして、大切な信頼関係をぶち壊したくないのは自分も相手も同じです。「ご期待に添えず」などの言葉で相手を思いやる姿勢だけでも忘れないようにしましょう。