「ご足労いただき」の例文は?
仕事をしていると「ご足労いただき」という言葉には、「わざわざこちらまで足を運んでいただき」という意味があり、御礼や恐縮、謝罪、ねぎらいのニュアンスで使えることがあります。
社外の人とやり取りをするのに欠かせない便利な語句で、使い方を覚えると相手方と気持ちよく仕事ができ、良い印象を持たれることもあるでしょう。どのように使うか、例文を紹介します。
意味1.ありがとうございます
お礼で使う場合は、「ご足労いただき、ありがとうございます」と伝えられます。取引先や顧客が自社や、こちらが開いた展示会などのイベント会場に都合をつけて来てくれたことに対して礼を述べることができます。
「ご足労いただき、誠に感謝しております」、「ご足労いただき、感謝の念に堪えません」という使い方も可能です。
意味2.恐縮です
恐縮しているという気持ちは、「ご足労いただき、恐縮しております」とか、「ご足労いただき、恐れ入ります」と表せます。相手の立場の方が上で、こちらから伺わなくてはいけないのに来ていただいた場合に使える文例です。
顧客がわざわざ来てくれたという場合にも、挨拶代わりに言うと印象が良くなります。普段使う言葉で言えば、「すみません」に近い感じに考えると分かりやすいでしょう。
意味3.申し訳ございません
相手にわざわざ来させてしまって済まなく感じているとか、申し訳ない気持ちで一杯の時にも「ご足労いただき、申し訳ございません」と言うこともできます。
結婚式や催し物のスピーチ、アナウンスなどで、雨や雪などの天気の悪い時に「本日はお足元が悪い中、ご足労いただき誠に申し訳ございません」と流れることがあります。謝罪の意味で使われる場合、このような文章になります。
意味4.「お疲れ様です」に代わるねぎらいの言葉
社外からお客様がお見えになった時には、「お疲れ様です」というねぎらいの言葉は、立場が上の者からかける言葉なので相応しくありません。顧客が当社に来てくれた場合にいたわりの言葉をかけたい時にも「ご足労いただき」が使えます。
「お暑い中、ご足労いただきありがとうございます」や「お寒い中、わざわざご足労いただき恐縮しております」というように用います。
「ご足労いただき」の意味と使い方
「ご足労いただき」という語句を使う時に、実際に話をして応対したり、メールや手紙を送付したりすることがあります。それぞれの使い方を見て文例を挙げます。
「ご足労いただき」の「足労」には、「歩く骨折りをさせる」とか「歩いて来させる」という意味があります。相手が本来なら出向く必要がないのに来させるという意味合いが強いです。「いただき」は「もらう」の謙譲表現が変化した言葉です。
自分より高い立場の方に「わざわざ歩いて立ち寄っていただく」とか、「わざわざ労力を使って来ていただく」と考えるといいでしょう。
ビジネスの場での応対
ビジネスの場で社外の方とやり取りをするには、電話や直接会った場合、お礼状を送る場合があります。それぞれの「ご足労いただき」を使った対応方法の例を挙げます。
面会の約束時の電話応対
取引先が自社に出向いて打ち合わせなどをする時にも「ご足労いただき」という語句を使って対応できます。
相手先から「直接伺いたい」とか、「そちらで打ち合わせをしたい」と持ち掛けられて、日時を決めた際に「ご足労いただき恐縮しております」と応対できます。自社やこちらが頼んだ場所に直接出向いてくれることに対して、「恐れ入ります」という意味合いで使えます。
来客への応対
相手側が会社に出向いてくれた際に、「お待ちしておりました。ご足労いただきありがとうございます」と挨拶をします。相手が約束をした日時に骨折りして足を運んでくれたことに対して、お礼の言葉を述べられるでしょう。
受付を設けている会社であれば、受付の担当者が「ご足労いただきありがとうございます」と声をかけることもあります。来客に対しての挨拶と、自社の担当の元に来てくれたことに対していたわりの言葉をかけることもできます。
直接の担当者でなくても、お茶出しなどの来客応対をする時に、相手に「ご足労いただきありがとうございます」と声をかけると喜ばれることがあります。
訪問者へのお礼
訪問があった後日に、電話や手紙などで訪問してくれたことへの御礼として「ご足労いただき」という言葉を使います。
顧客に用事があって電話をかける際に、「先日はご足労いただきありがとうございました」と御礼を言えるでしょう。その後、本来の用件を述べて、スムーズに進めることもできます。
展示会などで多くの取引先に来てもらった場合には、「時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。先日の当社の新商品展示会を開催した折には、ご足労いただきまして誠に感謝しております。」というようにお礼状を出すことも可能です。
メールのやり取り
直接電話を取るのが難しい顧客や取引先の場合は、電話よりも直接メールやチャットで連絡を取り合うことが多いでしょう。メールを使った際のやり取りの例を挙げます。
予約を受けた返答
打ち合わせの予約をメールでし合うこともありますが、相手が伺いたいといった場合には、「ご足労いただき、ありがとうございます」もしくは「ご足労いただきまして恐縮しております」と使えます。
都合の良い日時を指定した場合に、相手にお礼とお願いしますの意味を込めて述べられます。チャットでメッセージをやり取りする際も、同じように返事をしながら使えます。
例文
件名:打ち合わせの日時について
A様、いつもお世話になっております。○○日の○○時にご来社とのこと、お待ちしております。ご足労いただきまして恐縮しております。
「ご足労いただきまして恐縮しております」は、相手の立場が上だとか、本来は自分が行かなくてはならないのに、相手が善意で来てくれるという場合に使いましょう。
来てくれた方への御礼メール
打ち合わせの返事のメールを相手に送信する際に「ご足労いただきありがとうございます」と使えます。挨拶代わりに使えるので、冒頭部分に入れるといいでしょう。
例文
○○会社 ○○様
いつもお世話になっております。先日は打ち合わせの際に、当社までご足労いただきありがとうございました。さて、○○の件に関してですが~以下略」と、本題に入る前に使うのがおすすめです。
ビジネスの場でもメールでもやってはいけないこと
「ご足労いただき」という語句は、使用する時にどこで入れるかを注意をしなくてはいけません。例えば、打ち合わせをするかどうかの話になりかけていることがあります。
相手が自社への訪問を決めている訳ではない場合に、「ご足労いただき恐縮しております」と自ら言ってしまうと、相手は自分の所に来るのが筋ではないのかと気分を害することもあります。
また、出向くことなく電話やメールでやり取りをするだけでいいのではと考えていることもあるでしょう。遠方の場合は、来社するのを決めかねていることもあります。相手の意向が分からないうちに、相手が来ると考えて先走ると失礼になります。
メールでも電話でも、確実に相手から「そちらに訪問したいが、日時はいつが都合が良いか」と聞かれて、正式な日時を決めてから「ご足労いただき」という言葉を使いましょう。最後の締めくくりで使うように心がけると失礼になる心配がありません。
「ご足労いただき」の目上の方への使い方
「ご足労いただき」は、目上の方に使える尊敬表現です。社外の方に使うのに失礼になることはありません。しかし、状況を考えずに使うととんでもない間違いとなることがあるので、注意が必要です。注意点を2つ挙げます。
「ご足労いただき」上司にはNG
「ご足労いただき」という表現は、社外の方に使える尊敬の言葉ですが、上司には使ってはいけません。上司が部下の元に足を運ぶのは、自分の仕事のためであって、わざわざ出向くことにはなりません。目上でも社内の人に使うのは不適当でしょう。
ねぎらいの言葉で使うには「お疲れ様です」で構いません。お礼を言う場合は、「お力添えいただき、ありがとうございます」という言葉を使うといいでしょう。
もちろん、お客がいる前で後から客の元に出向いた上司に向かって「ご足労いただきありがとうございます」と言うのもいけません。上司に使ってはいけないのは確かですし、社外の方よりも上司の方の立場を高めていることになるため、非常に無礼になります。
「ご足労いただきますようお願いいたします」もNG
相手が既に来ることを了承していて、ぜひ招待したいと考える場合に「ご足労いただきますよう、よろしくお願いいたします」や「ご足労いただきますよう、お願いできますでしょうか」と言うのは失礼です。
「ご足労いただき」というのは、相手にわざわざ来ていただくということになるので、いくら丁寧語で表現しても「願う」という言葉を使うのは間違いです。自分がそのような事態になるように期待するという意味なので、来てもらうのを強制することになるからです。
目上の方に自分の事情を優先するように求める失礼な表現の仕方になりますので、「ご足労おかけしますが、よろしくお願いいたします。」とした方がいいでしょう。この場合の「ご足労」は、相手に手間をかけさせる際に恐縮して言う「お手数おかけしますが」と同じような意味合いになります。
「ご足労いただき」の敬語
「ご足労いただき」も敬意を含んだ表現ですが、もっと敬意が強い表現もあります。3つの語句を挙げます。
来てもらう相手が社長や重役などの重責についている方であったり、何らかの代表で地元の名士のような立場の方であったりする場合には、敬意の強い表現の方が相応しいことがあります。使い分けができるようにしましょう。
「ご足労くださり」
「ご足労いただき」を「くださり」に変えるだけで、強い謙譲表現となり、相手からそのようにしてもらうという意味合いが強くなります。
「ご足労いただき」の場合は、感謝や謝罪、恐縮などの表現が続きますが、「くださり」の場合は、謝罪や恐縮などの語句が続くことが多いです。感謝の表現が続いても、「誠に」というように後の語句を強める意味の言葉が付くことがあります。
「ご足労くださり、誠に恐縮しております」、「ご足労くださり、誠に申し訳ございません」などのように使います。
「ご光臨を賜り」
「ご光臨を賜り」と言う言葉は、元来、身分の高い人が招待に応じてその場に足を運んで来ることを言います。招待客の中でも立場や役職がかなり上の方や来賓に対して使われます。
「ご光臨を賜り、誠に感謝申し上げます」と言うような使い方をします。
「お越しいただき」
「お越し」という言葉は、行くことや来ることへの尊敬の言葉ですが、「越」という字には遠い場所からこちらに向かうという意味があるので、わざわざ離れた所から来るという意味合いになり、敬意が高めの言葉となります。
「当社にお越しいただきまして、誠にありがとうございます」というように、使うといいでしょう。同じ意味の言葉に「お出でいただき」がありますが、「お越し」の方が遠くからわざわざ出向くというニュアンスが強くなるため、敬意が高い表現になります。
「ご足労いただき」の類語
「ご足労いただき」の類語もいくつかあります。状況に応じて使ってみるといいでしょう。電話や直接会って話す際の言葉ではあまり気にならないでしょう。
しかし、手紙やメールを送る際に同じ言葉が何度も重なると、文面自体が相手にくどい印象を持たれる恐れがあります。表現が重なりそうな時には、色々と使ってみるのがおすすめです。
「お出でいただき」
「お出でいただき」と言う言葉は、こちらが指定した場所までわざわざ出かけてくれるとか出向いてくれると言う意味があります。「お越しいただき」よりも敬意が低くなり、「ご足労いただき」と同じくらいの敬意と考えていいでしょう。
「会合にお出でいただき、ありがとうございます」という使い方になります。
「ご来場(ご来社)いただき」
イベントなどの会場に来ていただいた場合は「ご来場いただき」、自社に来ていただいた場合は「ご来社いただき」となります。丁寧語の「ご」を名詞の上につけ、尊敬語の「いただき」という字を付けて敬意を示しています。
「本日は○○イベントにご来場いただき、ありがとうございます」とか「何度もご来社いただき、申し訳ございません」と使います。
「お呼び立て」
「お呼び立て」とは、相手を会社や指定の場所に呼び出した時に使える言葉です。どちらかと言うと、こちらが日時を指定し、相手に迷惑をかけていることをわびる時に使うことが多いです。
「お忙しい中、お呼び立てをいたしまして申し訳ございません。」とか、「担当者が急病にかかりまして、何度もお呼び立てをいたしまして誠に恐縮しております」と使います。
「お手数」
「足労」が歩くための労力ということから、労力や手間という意味の「お手数」を代わりに使えることがあります。「お手数おかけして」とか「お手数おかけしますが」という形で用います。
「打ち合わせの件でお手数おかけしますが、よろしくお願い申し上げます」とか、「お手数おかけして申し訳ございませんが、当社までお願いいたします」のように、相手が来る意思を示してから使うといいでしょう。
「ご足労いただき」正しく使うために
「ご足労いただき」と言う言葉は、社外の方にのみ使える語句と覚えておけば誤用する心配がありません。使い方を覚えれば、足を運んでくれるお客や取引先への感謝やお詫び、済まないとかいたわりの気持ちを表せるようになります。
類語の言葉も覚えておき、同じ言葉を使って相手からあきれられないように使い分けをするとビジネス文書やメールを作成するのも怖くありません。