「いらっしゃる」の敬語・「お越しになる」との違い・漢字・類語

ビジネススキル

「いらっしゃる」の敬語

まずは、「いらっしゃる」という言葉のバリエーションについて解説していきます。

いらっしゃるという言葉を使う場合、どのような形へ変えて話し言葉にする事ができるのでしょうか。状況ごとに分けて紹介していきます。

謙譲語

謙遜語を辞書で引くと上記の様な解説がなされています。本来、いらっしゃるという言葉の意味は、「来る」という意味になります。この言葉を日本語ではへりくだり「いらっしゃる」と表現している事になります。

なお、ちなみに「いらっしゃる」という言葉は謙遜後として適しています。聞き手へ敬意を表する時には、このいらっしゃるという言葉を活用しましょう。

動作・存在の主体を高め、その人に話し手が敬意を表すもの。

https://www.sanseido.biz/main/words/hyakka/sonkei/

尊敬語

謙遜する立場の第三者が「来る(こちらへ向かって来る)」という場合には、聞き手へ「おいでになる」という言葉を使います。これは尊敬語となっており、インターネットで辞書を引くと、上記のような解説がされています。

謙遜語と比較すると少し難しい表現となっている点に注意しましょう。偉い人・立場的に目上の方が来訪される事を身内に伝える時などに「おいでになる」と言う事があります。

動作(存在)の主体を低め、動作の客体または聞き手に話し手が敬意を表すもの。

https://www.sanseido.biz/main/words/hyakka/sonkei/

丁寧語

「おこしになる」というのは、こちらも上記の尊敬語と同じような役割を担っている言葉となっています。基本的には、上記の言葉を代用する意味合いを持っている言葉として活用されていると言ってもかまいません。

丁寧語での表記を行う時には、これからこちらへ来る第三者にも、聞き手にも敬意を払っている場合に使いましょう。少し難しいですが、来訪者も身内も立場的に敬意を払わなければならないような場合に活用する表現です。

動作・存在を、話し手が聞き手に敬意を表して言ったり、上品に言ったりするもの。

https://www.sanseido.biz/main/words/hyakka/sonkei/

「いらっしゃる」と「お越しになる」の違い

「いらっしゃる」という言葉と「お越しになる」という言葉の違いについて解説していきます。

同じ意味の言葉として活用しても、一見するとまったく問題なさそうな言葉に見えますが実際のところはどうなのでしょうか。二つの言葉の違いについて、それぞれ解説していきます。

「いらっしゃる」を使う場面

「いらっしゃる」言葉を使う場面としては、「偉い人がこちらへ向かってやってくる」という状況を示す場合に活用する言葉です。ビジネスの場面などでよく活用される事がある便利な表現ですので、覚えておく事が大切です。

「1時間後に課長がいらっしゃいます」などという表現として活用する事ができます。なお、上記の言葉を伝える相手が目上の立場の人物である場合には、下記で紹介させていただく「お越しになる」を活用するようにした方が適しています。

「お越しになる」を使う場面

いらっしゃるという言葉と似ている言葉で、「お越しになる」という言葉を使う事もあり、これは「いらっしゃる」よりも相手を謙遜した表現になります。また、「お見えになる」という言葉を活用する事もあります。これは、お越しになると同義語となっており、同じ意味の言葉として活用する事が可能です。

なお、この言葉については間違いやすい表現で、「お越しになられます」「お越しになられる」という表現をしてしまう事があるため注意しましょう。「お越しになる」「お越しになります」という表現で覚えるようにします。

それぞれの言葉の違い

上記を比較すると、「お越しになる」よりも、「いらっしゃる」という言葉の方が丁寧な表現となっています。とはいえ、実際のところほとんど変わりはなく、文学作品の作成を楽しんでいる場合などはともかく、それ以外の場合にはどちらを活用しても代用してもかまいません。

実際のところ、そこまで気にして活用している人も少なく、またどちらも丁寧な言葉であるため差し支えなく、鼻につく表現でもありません。しかし基本的には、相手が目上の立場の人物へ、来訪者が来る事を伝える場合「お越しになる」という言葉を使うようにしましょう。

「いらっしゃる」の漢字

いらっしゃるという言葉を漢字表現するとどのような形になるのでしょうか。

一般的にいらっしゃるという言葉は漢字表現せず、「いらっしゃる」でも適切な表現となっています。ここではいらっしゃるという言葉の漢字表現について解説していきます。

居らっしゃる?

いらっしゃるという言葉を漢字表現した場合、「居る」と「らっしゃる」で「居らっしゃる」となる気もしますが、これは間違いです。そもそもいらっしゃるという言葉は「こちらへ向かって来る」という意味ですから、一見適しているようにも思えます。

しかし実際には「居る」という漢字を使わない意味合いを持っており、不適切です。細かく考えると居るという表現は、「今現在そこに居る」という意味ですので、「これから来る」という意味とは事なっている点に注意しましょう。

正確には「入らっしゃる」

実はこのいらっゃるという言葉ですが、「居る」ではなく、「入る」という漢字を使用する事になっています。「入る」と「らっしゃる」ですので、これから来るという意味合いとも受け取れます。

とても細かいのですが、「これからこちらの地域、管理部署へ『入られる』」という意味の言葉になります。いずれにしても、言葉の意味合いは雑学的な知識として知っておき、「これから来る、という意味」だと覚えておくのも良いでしょう。

地区ごとに違ういらっしゃる

なお、この「いらっしゃる」という言葉には、実は地方によって色々なバリエーションがあります。北陸地方では「おいでる」という表現を使う地域があり、一般に活用されても差し支え無い表現のようにも感じます。

ただ、厳密には標準語として「いらっしゃる」という敬語が用意されているため、「おいでる」は方言という事になっています。いずれにしても印象の悪い言葉ではありませんので、地域によって「おいでる」という言葉を使っている場合には、可能な限り合わせて使い分けられるといいでしょう。

このように、一見すると共通語の話をしている日本人語の中にも「いらっしゃる」という意味の言葉以外に、実は色々なバリエーションがある事がわかります。

「いらっしゃる」の類語

では、次はいらっしゃるという言葉と似ている言葉には、どのような言葉があるのか解説していきます。

いらっしゃるという言葉の類語としては、「おいでになる」「来られる」そして、上記でも解説した「お越しになる」があります。それぞれの言葉の意味や使い方について解説していきます。

おいでになる

「おいでになる」という言葉は、「いらっしゃる」という言葉の類語です。どちらかというと下記で詳しく解説する「お越しになる」という言葉と一緒で、目上の聞き手に対して口語として伝える言葉となっています。「おいでになる」という場合には、「◯◯課長がおいでになられました」と社長へ伝える場合などに適しています。

同僚同士で、「◯◯さんがおいでになられたようですよ」というのは、話し言葉として適していません。同僚どうしの場合では「◯◯さんがいらっしゃったようですよ」という言葉の方が適していると言えるでしょう。

お越しになる

この言葉も、「いらっしゃる」という言葉の類語表現です。こちらもおいでになるという言葉と一緒で、目上の聞き手に対して伝えるのが正しい言葉と言えます。

普段はあまり使う機会は少ないものの、ビジネスシーンや、旅館、飲食店などで働いている場合には覚えておきたい言葉のひとつです。自分が顧客の立場で「お連れの方がお越しになられました」と言われると、丁寧な表現で好感を持つ事ができます。

来られる

「来られる」「来られた」という表現を使う時には、上記の様な気を使った表現とは少し異なり、崩した表現になっています。例えば「◯◯君が来られる」という場合には、配下の人に対して発言する表現として良く聞きます。社長さんなんかが、部下の人がこちらに来てくれるという時に使う言葉です。

同じ「来られる」でも「◯◯さんがこちらへ来られるようです」という風な使い方をすると丁寧な印象になります。使い方を間違ってしまわないように気をつけましょう。

「いらっしゃる」の例文

いらっしゃるという言葉の例文としては、どのような文章があるのでしょうか。主に口語としてで活用される言葉ですが、小説などでは文語として使われる事もあります。ビジネスシーンでも置き手紙などで活用する事ができるため、便利な言葉です。

先生はどちらからいらっしゃるのでしょう

「先生はどちらからいらっしゃるのでしょうか」という場合に活用されます。先生は一体どの地域から、どういう風にこちらへ向かってくるのか、目上の人へ聞きたい場合に使います。

例えば現在タクシーで向かっているなら、急いで支度をしなければいけませんし、歩いてくるならまだ時間がかかる場合もあります。目上の方へ尋ねる場合に覚えておくと活用しやすい表現のひとつです。

この言葉は、形が微妙に変化するだけで意味が変わってしまう事がある言葉です。相手に誤解されてしまったりしないように、注意して活用するようにしましょう。

これから先生がいらっしゃるので

「これから先生がいらっしゃるので」という場合には、「今後こちらに先生が来ます」という意味の敬語表現です。例えば病院などにおいて、語り手が看護師で、先生は医師、そして聞き手が患者というシチュエーションなどで活用される事がある会話です。

ソフトな敬語表現ですので、第三者が聞いても不快に感じることはなく、接客業などでも覚えておくと便利な言葉と言えます。いざという時にスマートに活用できるようにしておきましょう。

1時間ほど前にいらっしゃいましたが

「さっきまで居ましたが」という事を伝えたい場合に使う敬語表現です。上記の様に「さっきまで」という表現をつかうと、乱雑な表現にも聞こえます。

しかし「先ほどまでいらっしゃいましたが」という形に変えると、少しの工夫だけで丁寧な印象になります。「先ほどまでおられましたが」という意向について、聞き手にも謙遜した表現をしたい場合に活用しましょう。

「いらっしゃる」の過去形

これまで「いらっしゃる」という言葉の現在形について紹介してきましたが、今度は過去形について詳しく解説していきます。過去形の形にもまた様々な形が用意されていますが、間違いやすいNG表現もある点に注意します。くれぐれも間違った言葉を覚えてしまわないように、しっかり覚えておく事が大切です。

いらっしゃった

「いらっしゃった」という言葉は、いらっしゃるの過去形として活用される言葉です。過去に、目上の方などが「いらっしゃる」という場合に活用します。

事後報告などの場合に、上司へ説明する状況などで活用をするようにします。「来ました」というより「いらっしゃった」という言葉を使った方がより丁寧で印象が良くなります。

微妙に違うだけで意味合いが異なる会話にもなり、誤解を招くことがあります。言葉の形をよく覚えておいて、細かい部分は発音のイントネーション(会話の抑揚)を工夫したりしながら、注意して活用するようにしましょう。

来られた

「来られた」「来ました」という表現は、一般的に普段の会話で活用することができる表現です。例えば、毎日顔を合わせているような方へ報告する場合に「来られた」「来てましたよ」という言葉を耳にします。この表現は、普段親近感がある同僚などに使う場合には適していますが、上司や社長など目上の人に使うのはあまり適さない部分に注意しましょう。

普段から比較的ラフなコミュニケーションを活用する同僚どうしの会話などでは、「来られた」という表現を活用する事もできます。あまり、何度も同じような表現を使うとくどいような場合は、状況に応じてこの言葉を代用し使い分けてもいいでしょう。

お越しになった

こちらも、やはり「いらっしゃる」「お越しになる」という言葉と同様に、相手が目上の人物である場合に「お越しになった」を活用します。やや回りくどい表現の様にも感じますが、「お越しになりました」という表現を使います。上記でも紹介しましたが、「お越しになられた」は間違いであるため、「お越しになりました」を覚えておくようにしましょう。

お越しになられたという表現は、回りくどい言葉の様にも聞こえるため注意します。立場が目上の相手に対して謙遜して使う場合には「お越しになりました」を活用するのが適切です。

適切に覚えて間違え内容に活用を

文法に沿った表現で長くするほど丁寧になるという事はありますが、あまり長すぎてもくどく感じられる表現になりがちです。また、間違った敬語の使い方をしていると少し違和感を感じる方もおり、注意したいところです。

できれば難しい敬語を使う時には、事前に敬語の使い方や意味をしっかり覚えておいて、間違いの無いように使い方に気をつけましょう。

もし、あまり使ったことがない敬語表現で自信が無いという場合には、無理に使う必要はありません。興味がある敬語表現で、「これは使えそうな言葉だな」と感じた時には、どんどん練習していざという時にスマートな表現を行えるようにしておきましょう。

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