敬語の種類
「言う」の敬語表現について説明する前に、敬語の基本的な種類について説明します。敬語は尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類とされていましたが、現在ではもう少し細かく分類され5種類となっています。
そのため、敬語は尊敬語・謙譲語I・謙譲語II(丁重語)・丁寧語・美化語というように分けられています。
尊敬語
尊敬語は相手の行動を持ち上げることで、敬意を表す敬語表現となっています。例としては「先生がいらっしゃいました」のいらっしゃるの部分が尊敬語になります。
また、尊敬語は目上の人の行動に対して使う敬語になります。そのため、立場が同じか下に当たる人や自分自身の行動には使いません。具体的には自分自身から見て、上司や先生と言った立場の人に対して使うことになります。
謙譲語I
謙譲語Iは相手に対して、自らの行動を下げることで敬意を表す敬語表現になります。謙譲語Iも尊敬語と同じく目上の人に対して行われる敬語表現ではありますが、相手の行動を上げることで敬意を表す尊敬語に対して、正反対と言えるでしょう。
具体的な例としては「先生の家に伺います」の伺うが謙譲語Iになります。
謙譲語II
敬語が3種類だった時には、謙譲語Iと謙譲語IIは区別なく謙譲語と呼ばれていました。謙譲語IIは謙譲語Iと同じく、自身の行動を下げて敬意を表す敬語表現ではありますが、謙譲語Iと異なり、話を聞いている相手が上の場合などに使用します。
また、場合によっては謙譲語Iでも謙譲語IIでも表現できることもあります。謙譲語IIは丁重語とも呼ばれています。
丁寧語
丁寧語は言葉を丁寧に表現することで、敬意を表す敬語表現になります。尊敬語や謙譲語と異なり、目上などの立場関係なく使用することが可能です。具体的な例としては所謂「です・ます調」と呼ばれているものが丁寧語となります。
美化語
美化語は敬語が3種類であった時は丁寧語に分類されていた言葉で、言葉の前に「お・ご」といった言葉を付けることで言葉をきれいに表現したものになります。こちらも相手の立場や自身の立場に関係なく使用することが可能です。
具体的な例としては「お箸」「お盆」「ご飯」「ご機嫌」と言ったものが、美化語に当たります。
「言う」の謙譲語・尊敬語・丁寧語
敬語の基本的なことを説明したので、次からは「言う」の敬語表現について、詳しく説明します。「言う」敬語表現は尊敬語・謙譲語(謙譲語I・謙譲語II)・丁寧語があり、それぞれについて説明します。
「言う」の謙譲語「申し上げる」
自身を下げることで相手への敬意を表す謙譲語ですが、「言う」の謙譲語表現も「言う」の尊敬語表現と同じく、2つあります。「言う」の謙譲語表現の内「申し上げる」は謙譲語Iに分類される言葉になります。
例文としては「先生に報告を申し上げます」と言った文になります。この場合は文中の先生に対して敬意が向かっている表現となります。
「言う」の謙譲語「申す」
「言う」の謙譲語表現にはもう一つ「申す」というものがあります。「申す」は謙譲語II(丁重語)に分類される敬語表現になります。例としては「鈴木と申します」と言った文になります。文中には敬意を表す対象が無く、話の聞き手に対して敬意を表しています。
「言う」の尊敬語「おっしゃる」
目上の人の行動を持ち上げることで敬意を表す、尊敬語で「言う」を表現する言葉は「おっしゃる」と「言われる」の2種類あります。
2つある「言う」の尊敬語表現の内「言われる」と「おっしゃる」では、「おっしゃる」の方がより丁寧な印象を与えます。例としては「先生がおっしゃるには」と言ったような文になります。
また、「おっしゃられる」という言い回しは、敬語が二つ重なってしまった、二重敬語と呼ばれるもので、間違いであり、逆に失礼ととられることがあります。間違いやすい表現となっているので注意が必要です。
「言う」の尊敬語「言われる」
「言う」のもう一つの尊敬語表現である「言われる」は同じ尊敬語ではありますが、上記したように「おっしゃる」よりも丁寧さが低いように感じます。
「言われる」も間違いではないのですが、会社や学校など目上の人に使用する場合は基本的に「おっしゃる」を使うほうが無難と言えます。
「言う」の丁寧語「いいます」
丁寧語は言葉を丁寧に表現することで、敬意を表す敬語表現で、目上などの立場に関係なく使う事ができる言葉です。「言う」の丁寧語表現は「言います」となります。例文としては「今から内容を言います」と言ったものになります。
敬語表現なので、親しい上司などなら「言います」でも良い場合があります。しかし、取引先や親しくない目上の人間などに使う場合は適切とは言えません。尊敬語表現の「おっしゃる」や謙譲語表現の「申し上げる」などを使うとよいでしょう。
古語での「言う」の謙譲語
古語での「言う(言ふ)」の謙譲語表現としては、現代語でも使われる「申す」や「聞こゆ」、「聞こえさす」などがあります。また「聞こゆ」は手紙を上げることや呼ぶの謙譲の意味もあり、「聞こえさす」は手紙などを差し上げるといった意味も持っています。
また、古語では特別な立場の人間に対しては別に謙譲語があり、天皇や上皇と言った立場の人間に対しては「言う」の謙譲語として、「奏す(そうす)」が使われ、皇后や皇太子などの地位の人には「言う」の謙譲語として「啓す(けいす)」が使われていました。
「言う」と「述べる・話す」の謙譲語での違い
「言う」「述べる」「話す」はどれも謙譲語として「申し上げる」や「申す」を使用することが可能です。「言う」と「述べる」と「話す」の言葉の意味は厳密には違いがありますが、意味のある言葉を発するという事では、似たような言葉であると言えるでしょう。
また、「話す」だけは「申し上げる」などのほかに「お話します」という言い回しをすることができます。
「言う」の謙譲語での使い方
「言う」の敬語表現について説明してきましたが、次に「言う」の敬語表現の使い方について、特にメールで文章を送るときの使い方についてご紹介します。
メール
ビジネスなどの畏まったメールを送る場合は、謙譲語Iと謙譲語IIの使い方に気を付けてより丁寧な印象を相手に持ってもらえるようにする必要があります。例えば謙譲語Iは文に敬う対象がある場合などに使用するので、「鈴木と申し上げます」と言った言い回しは間違いです。
相手別「言う」の謙譲語の使い方
謙譲語は基本的に自分自身の行動を下げて、相手を持ち上げることで敬意を表す敬語表現ですが、謙譲語を使う対象が自分以外である場合があります。
身内
「言う」の謙譲語を使うのが自分ではなく身内であった場合も謙譲語を使います。例えば、「言う」という行動を身内が行った場合に、それを目上の人物に伝えると言った状況が当てはまります。
例としては「書類はファイルにすべてまとめておきました。と鈴木が申していました」などがあります。この場合は言った対象と自分の立場が同じまたは相手が下となるため、敬う相手がいない謙譲語IIの表現になります。
また言った相手が自分より上であっても、聞き手が取引先と言った立場だった場合も同じように謙譲語II表現を使用します。
「言う」の謙譲語での例文
「言う」の謙譲語表現は「申す」と「申し上げるです」。「申す」の例文としては「鈴木と申します」「と、鈴木が申していました」などがあります。「申し上げる」の例としては「ご報告申し上げます」や「お祝い申し上げます」などがあります。
「言う」の敬語を使いこなそう
「言う」の敬語表現には尊敬語・謙譲語(丁重語)・丁寧語があります。「言う」の敬語表現はそれぞれ、尊敬語は「おっしゃる」「言われる」、謙譲語は「申す」「申し上げる」、丁寧語は「言います」となっています。
また、謙譲語は謙譲語Iと謙譲語II(丁重語)があり、「申し上げる」が謙譲語I、「申す」が謙譲語IIに分類されています。基本的に謙譲語は自身の行動を下げることで敬意を表しますが、言った対象が身内である場合も謙譲語IIを使用します。
「述べる」「話す」の謙譲語も「申す」や「申し上げる」を使います。また「話す」には「お話します」と言う謙譲語表現もありますが、畏まった場では「申し上げる」などのほうが適切です。
以上のことに気を付けて、「言う」の尊敬語表現を使いこなしましょう。