「お伺い」の意味
「お伺い」という言葉の意味は基本的に「聞く・聴く」、「行く・訪問する」、「尋ねる」などの意味合いを持ち、それぞれの謙譲語表現として認められます。「お伺いします」と言う代わりに「お聞かせください」などと別の表現が取られることがあり、場面によっていろいろな使い分けがなされます。
「お伺い」と「窺う」との違い
「お伺い」と「窺う」との違いについてですが、これは日常用語においてもよく聞かれる意味の違い・質問に見られます。基本的に「窺う」という言葉の意味は「相手の心の中を覗き見る・探る」といった「奥まった内容を調べる」という意味的内容があり、単純に「人に聴くこと」や人の家を訪問すること」を指す「お伺い」の意味とは外れてきます。
・あの人が心の中で何を考えているのかを窺った。
・人の心理を窺うことは、表面を知るよりもむずかしいことです。
・昨日、○○さんのご自宅を伺ってきました。
・少し、この件についてお伺いしてもよろしいでしょうか
このように使い分けられます。
「お伺い」は謙譲語表現
この「お伺い」という言葉は「御(お)」という尊敬語に特有の接頭辞が付いているのに関わらず、一般的には謙譲語表現として認められます。それは「お伺い」という言葉そのものの意味合いが「行く」や「聴く」などの話者の言動を指しており、そのあり方をへりくだらせて相手に伝える表現としてあることに起因します。
聞く
「お伺い」の意味合いにはまずこの「聞く・聴く」という行動が含められ、この「聞く・聴く」の謙譲語表現として認められます。
・少し、お伺いしてもよろしいでしょうか。
・ニュースについて、ぜひお伺いさせてください。
・今回の事件について、どのようにお考えですか。少々、その辺りをお伺いしたいのですが。
このような形で「お伺い」の意味は使われます。
尋ねる
「聞く・聴く」という意味合いに続いて、この「尋ねる」という用途においても頻繁にこの「お伺い」は使用されています。もともと「尋ねる」という目的で「お伺い」が使用される場合が多いため、「聞く」というよりも、初めから「尋ねる」という意味合いでこの「お伺い」の意味を把握するとよいでしょう。
訪問する
「お伺いさせていただきます」などの用法によって、この「○○さんのご自宅をご訪問します」という「訪問」の意味合いでも、この「お伺い」は頻繁に使用されています。
・○○さまのご自宅へ、明日中にお伺いさせていただきます。
・先日、○県○村をお伺いさせていただきました。
・このような時期にこの場所へお伺いさせていただけるとは、願ってもない光栄です。
行く
この場合の「行く」という意味合いも、先述しました「聞く・聴く」と「尋ねる」の意味関係の場合と同じく、「訪問する」という意味・用途とほぼ近い形で使われます。
・一度、その場所へお伺いさせていただければと存じます。
・パワースポットへお伺いさせていただくことは、女性にとってとても嬉しいことです。
・いつでもあなたのご自宅へお伺いさせていただきます。
この場合の「尋ねる」の意味合いとの微妙な違いでは、「行く」という意味合いでは「初めて行く場所」という想定を念頭に置く形で、まったくそれまでに接点のない人の家や場所に行くという場合に使われることになり、単純に「行きます」という用途で使い分けられる形になります。
「お伺い」の例文
日本語や外国語を学ぶ際には、いろいろな条件や場面を設定した上での例文を活用することによって、実践的に学習することが実に効果的となるでしょう。この「お伺い」という言葉には、たくさんの微妙なニュアンスの違いが秘められた意味合い・用途があるため、ぜひこの「実践的に学習する」という方法でインプットしてみましょう。
お伺いします
「お伺いします」とい言葉は、「お伺い」を使う上では最もオーソドックスな表現となるでしょう。
・その件についてお伺いします。
・少し、聴きにくいことについてお伺いしたいです。
・あなたの授業方針についてお伺いさせてください。
お伺いさせていただきます
「お伺いさせていただきます」という表現は「お伺い」という謙譲語表現に加えてなおかつ「させていただきます」という謙譲の姿勢を盛ることによって、さらに謙譲(へりくだった姿勢)を改めて伝える丁寧な敬語表現として認められます。
・先日のニュースにつきまして、少しお伺いさせていただきます。
・あなたの信仰について、お伺いさせていただきます。
・その研究方法につきまして、どのような環境設定が具体的によいか、それについての詳細な考案をお伺いさせていただきます。
お伺いいたします
「お伺いいたします」という言葉は、「する」という動詞の謙譲語表現としてある「いたす」が付随するため、基本的には先述の「お伺いさせていただきます」という用法と同じ謙譲語表現となります。
・使いやすいインターネットサイトについてお伺いいたします。
・それでは、今回の受賞の気持ちをお伺いいたします。
・あなたにとって、役立つ人間関係の方法についてお伺いいたします。
お伺いを立てる
「お伺いを立てる」という言葉の基本的な意味合いは、「特定の物事・計画・企画をした上で、その内容について特に問題や課題がないかどうかについて、上司をはじめ他人や専門家の意見を聞く(尋ねる)」ということを指します。
・今回の企画の進め方について、先日、経営コンサルタントの専門家にお伺いを立ててきました。
・大学受験制度のあり方について、来週末にでも、文部省にお伺いを立てる所存です。
・十分な計画というものは、きっちり専門家にお伺いを立てた上で、さらに不足している点を補充することによって成り立ちます。
お伺いしたい
「お伺いしたい」という表現は英語で言うところの「want(したい)」という意味合いが含まれるため、話者の「どうしてもお伺いしたい」という気持ちが強い姿勢がうかがえる表現になります。
・今回の事件につきまして、あなたは当事者ですから、どうしてもその経過についてお伺いしたいのですが。
・この新しい研究成果を収めた博士ご本人に、その成果の内容をお伺いしたく存じます。
・早急にお伺いしたいことは、あなたの環境についてです。
お伺いしてもよろしいでしょうか
「お伺いしてもよろしいでしょうか」という表現は、基本的に謙譲語表現としても上級の敬語表現となります。この場合は「させていただいても」という表現と併用されることが多くあります。
・飛行機事故につきまして、少々、ご専門のあなたの意見をお伺いしてもよろしいでしょうか。
・思い出したくない過去の記憶かとは存じますが、できましたら、その件につきましてお伺いしてもよろしいでしょうか。
・どの辺りにあなたのご実家があるか、お伺いしてもよろしいでしょうか。
お伺いさせていただく
「お伺いさせていただく」という言葉は先述の「お伺いしてもよろしいでしょうか」という表現と併用される場合が多く、その意味合い・用途はほぼ同じになります。
・その件につきまして、ぜひお伺いさせていただきます。
・どうしてもお伺いさせていただきたい件がございまして、来週中にご訪問させていただきます。
・この件についてお伺いさせていただきますのは、次の研究の支障にならないようにするためです。
「お伺い」の使い方
「お伺い」という言葉の使い方についてですが、先述しましたように、「お伺い」という言葉の表現・用途の使い方・意味合いの分かれ方などは、それぞれの場面において非常に多く見られています。
それぞれの状況に見合わせた上で、特にビジネスシーンでは正確な敬語表現の使い方が求められるため、日頃からしっかり言葉の用法や、敬語表現の使い方について、独学でインプットしておくことが大切になるでしょう。
「お伺い」というのは基本的に「尋ねる」や「インタビューする」という意味合いで使われることが多く、その意味では「窺う」という言葉の根本的な意味合いと近付く傾向が見られます。
しかし「お伺い」の意味は飽くまで「表面からうかがう」という意味・用途になり、また「行く・訪問する」などの別の意味合いも含まれるため、「窺う」とは別の用途で使い分けられます。
メール
会社では電子メールで連絡交換をはじめ、さまざまな意見交換・文書の転送などがなされており、そのメールにおいてもいろいろな言葉の表現や敬語表現がふんだんに使われることになります。
メールで「お伺い」という言葉を使う場合でも特に先述の用法と変わることはなく、基本的には「行く」、「聞く・尋ねる」、「訪問する」などの意味合いの表現をする際に、この「お伺い」が使われます。
「お伺い」の敬語
「お伺い」という表現はすでに「御(お)」という尊敬語を示す接頭辞が付いているため、尊敬語(敬語表現)として一般的に認められます。この最低限の尊敬語表現が付けられた「お伺い」に、いろいろな言葉による修飾が付く形で、また状況に見合った個別の敬語表現がなされます。
・お伺いさせていただきます。
・お伺いさせていただいてもよろしいでしょうか。
・ぜひ、お伺いしたいのですが。
・このようなことをお伺いさせていただきまして、大変申し訳ございません。
・ぜひその場所でお伺いしたいです。
・今週中に、あなたのご自宅へぜひお伺いさせていただきます。
他にもいろいろな「お伺い」が使用された例文は見られますが、どの場合でも「相手に対して○○を聞く」という意味合いや、「○○へ行く」などの話者の行動をへりくだらせて表現する意味合いを持ちます。
「お伺い」の類語
「お伺い」の類語についてですが、先述でご紹介しましたように「お伺い」の意味はいくつかあるため、その意味に分かれる形でそれぞれの類義語が示されます。
聞きたい/インタビュー/質問する/お願いする/請求する/リクエストする/申し入れする/懇請する/求める/依頼する/申し出をする/訪問する/行く/聴く/傾聴する/拝領する/詰問する/調べる
「お伺い」の類語を調べる上では上記の言葉がまず認められ、それぞれの用途や場面にしたがう形で的確な表現をすることが求められます。
拝聴する
「拝聴する」という言葉は「聞く・聴かせてもらう」という表現の謙譲語表現となり、基本的に話者が自分の立場や姿勢をへりくだらせて相手に伝える形になります。
この謙譲語表現という点でも「お伺い」の用法と近くなり、この場合は「訪問する・行く」などの意味合いを持つ「お伺い」の「聞く・聴く・尋ねる」という意味合いだけを示す表現となります。
・あなたのご意見を拝聴させてください。
・先生の講義を拝聴させていただきました。
・彼らのメッセージを拝聴させていただきたく存じます。
お聞きする
「お聞きする」という言葉は、そのまま「聞く・聴く・訊く」という意味合いで使われますが、この場合の「お聞き」という意味には「質問する・インタビューする」という姿勢が強く見られます。
・その件についてお聞きしてもよろしいでしょうか(お伺いしてもよろしいでしょうか)。
・少しわかりづらい内容について彼らにお聞きしたいのですが。
・「上手い勉強の方法」をお聞きすることは可能ですか。
「お伺い」の英語表記と意味
「お伺い」という言葉を英語に直す場合、それぞれの英単語の意味合い・用法に配慮した上で以下のようにピックアップされます。
・ask(聞く、尋ねる、質問する)
・watch(見る、確認する、調べる)
・listen(聞く、拝聴する、傾聴する、お伺い)
・go(行く、訪問する、お伺い)
・visit(訪問する、行く、お伺い)
・question(質問する、疑問にする、お伺い)
・query(尋ねる、聴く、お伺い)
「お伺い」の英語表現と意味(1)
先でご紹介しました「お伺い」の英語表記を参考にして、「お伺い」の意味合いを含めた英語の例文をいくつかご紹介します。
・I will ask about that matter.
「その件についてお伺いさせていただきます。」
・May I ask about the difficult contents?
「むずかしい内容についてお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか。」
・May I ask you at your home during this week?
「今週中にあなたのご自宅にお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか。」
「お伺い」の英語表現と意味(2)
先述しました「お伺い」の英語表現に引き続き、さらに具体的な「お伺い」の例文をご紹介します。
・I would like to ask about new research results of this time, but how do you think about how much research has been accomplished with the conventional national budget?
「この度の新しい研究成果についてお伺いしたいのですが、従来の国家予算でそれだけの研究が成し遂げられたことについて、あなたはどのようにお考えですか。」
・I’d like to ask your opinion about the materials we sent you last week.
「先週にお送りさせていただいた資料につきまして、ご意見をお伺いしたいのですが。」
「お伺い」の正確な意味と用法を覚えましょう
いかがでしたか。今回は「お伺い」の例文・敬語・使い方|メール/します/を立てると題して、お伺い」の例文・敬語・使い方|メール/します/を立てるについての詳細情報のご紹介をはじめ、いろいろな場面で使われる「お伺い」の用例をご紹介しました。
「お伺い」という言葉は基本的に「行く」、「聞く・聴く・尋ねる」、「訪問する」などといったそれぞれの個別の意味合いをもって表現される言葉となり、状況・場面に合わせる形で正確な敬語表現によって相手に示されることが必要になります。
特にビジネスシーンでは「どんな場面でも失礼のない言葉遣い・敬語表現」が求められるため、この「お伺い」という言葉の活用にしても、必ずその場面・状況に沿った正しい表現をするように心掛けましょう。