「来訪」の意味と使い方
「来訪(らいほう)」という言葉の意味は「誰かが訪ねてくること」を意味し、その場所がどこかまでは特定しませんが、とにかく「他人がどこかからやってくること・誰か(あるいは場所)を訪ねてくること」を指します。
この「来訪」と同じような意味合いを持つ言葉は他にも非常に多くあるため、それぞれの言葉の意味合い・用途をしっかり把握しておくことが大切です。
「来訪」は訪れる場所を明示しない
先述でご紹介しましたように、「来訪」という言葉は基本的に「誰かが訪ねてくること」は意味しますが、「その誰かがどこに訪ねてくるか」という場所の特定までは含みません。
他にも「来館」や「来園」などの「場所をある程度でも特定している言葉との意味合い・用途の区別がこの点にあるため、どんな場合でも間違った用法をしないよう配慮しておくことが大切になります。
メール
たとえば、会社では多くの連絡のやり取りを電子メールを使って行なうため、この「来訪」の意味合いを相手に伝える際でもメールで知らせることは普通に多々あります。その場合でも、「来訪」の意味合い・用途をきちんと把握した上で表現することが望ましいため、あらかじめ「どのように伝えるか」についてシミュレーションしておくことが大切です。
・午前中に○○さまが△△へご来訪されます。
・来訪時に備えて会場の設営をしておく必要がございます。
・明日から一週間にかけて、○○署の皆さまがご来訪されます。
このように、「来訪」という言葉を使う際には「○○さまが△△へ来訪される(来られる)」ということをきちんと明記しておくことが大切で、その内容を誰が見てもわかるようあらかじめ配慮しておくことが重要です。
「来訪」の敬語
「来訪」の敬語表現についてですが、一般的に多く使われる敬語表現としては「御(ご)」という接頭辞を付けて「ご来訪」とする形になります。また「来訪」という表現をあえて崩しておき、「来られます」や「ご来社されます」などとその表現だけで「どこに来るのか」が相手に伝わるよう明記する方法などが取られます。
・○○さまがご来訪されます。
・○○さまが来られます。
・○○さまが△△へお越しになられます。
・○○さまがご来社されます。
他にもいろいろと表現方法はありますが、「来訪」というのは基本的に「相手がする行動」となるため、この場合の敬語表現としては尊敬語表現か丁寧語表現に置き換えるのが一般的となります。
謙譲語
謙譲語というのは一般的に「話者と相手の立場や関係性を問わず、話者が自発的に自分の立場や姿勢を低めて敬意を示す敬語表現」となるため、話者がへりくだって相手に敬意を示す形の言葉遣いが求められます。
この場合は先述の例とは違い、まず「ご来訪」という言葉は相手の行動となるため使うことができません。謙譲語は飽くまで「自分の行動を修飾する形で敬意を示す敬語表現」となるため、「ご訪問させていただいても」や「お伺いさせていただきます」などのように、行動の主格を相手から自分へ置き換えることが先決になります。
・伺わせていただきます。
・お伺いさせていただきます。
・ご訪問させていただきます。
このような形になるため、「来訪」の意味にある「誰かが来る」と言う場合に比べて「自分が行く」という形への転換が認められます。
尊敬語
尊敬語というのは先述でも少し触れましたが、一般的に「目上の人に対して話者が一方的に敬意を示す敬語表現」となるため、特に「相手の行動に対して敬意を示す敬語表現」の形を取ります。この点で謙譲語表現とは真逆の形容のあり方になるため、しっかりとインプットしておきましょう。
・○○さまがご来訪になられます。
・○○さまがお越しになられます。
・○○さまがご来校されます。
このように、「誰かが何かをする・やって来る」という表現をそのまま敬語表現に置き換える形となるため、「ご来訪」という表現がそのまま使えるのみならず、比較的簡単に敬語表現に直すことが可能になります。
「来訪」の例文
日本語を覚える際でも外国語を勉強する場合でも、その「覚えるべき言葉」を実際に使って覚えるということはとても大切です。そのように実践的に学習することによって柔軟な学びが伸ばされるため、いろいろな場面において表現を流用することが可能になります。
・彼らがこの場所へ来訪するということは、それまでにこの場所に新たな設営所を作っておくことが必要になります。
・このように部屋が荒らされている経過を見る以上、必ずその時間帯に誰かが来訪していたことが明らかになるでしょう。
・明日の3時までに、先方の佐藤さまがご来訪されます。
される
「ご来訪される」という表現についてですが、これは先述しましたように基本的には尊敬語表現による修飾の形となるため、この「される」という言葉は「相手の行動をそのまま敬語表現に置き換える際に使われる表現」として扱われます。
・社長はご来訪される。
・課長がご来訪されます頃には、おそらく夕暮れ時になっていることでしょう。
・部長がご来訪されるまでに、なんとか会場設営を済ませておいてください。
「来訪」の反対語・対義語
日本語を覚える際にはその言葉の関連語もワンセットで覚えることが望ましく、そうすることによって1つ1つの言葉を多角的にインプットすることが可能になります。この「来訪」という言葉にもいろいろな類義語があり、その中には用途において対義語となる言葉も多く見られています。
往訪(おうほう)/訪問/視察/見舞い/出所/顔出し/見物/出掛ける/レジャー/観光/叩扉/訪れる/旅行/査察/参観/監査/往診/遊覧/遊山/行幸/出張/出て行く
上記の言葉が「来訪」の一般的な反対語としてピックアップされますが、どの言葉の意味合いにも「来る」の反対の意味である「行く」という意味が含まれます。
顔出し
「顔出し」という言葉の基本的な意味合いは、「特定の場所へ赴き、そこに集う知人・友人のためにちょこっと顔を覗かせること・その様子を少し覗くこと」を指し、この「顔出し」の意味も「どこかへ訪れる」という「来訪」と似たような意味・用途を持ち合わせます。
「顔を出す」などの使い方もされ、この「顔出し・顔を出す」という表現をする上でも「どこに行くか」という場所の特定まではその意味合いに含みません。
「行く」という意味を持つ言葉
「来訪」の反対語を調べる際には、その「来訪」の意味合いのメインにある「誰かが来る」という「来る」の反対の意味合いを持つ言葉をピックアップすればOKです。とにかく「こちらから出て行く」という形の「出所」や「出掛ける」、「レジャー」や「観光」などの意味合いを持つ言葉がこの「来訪」の反対語として普通にあげられます。
「来訪」の類語
次に「来訪」の類義語のご紹介ですが、この場合は「来る」という意味合いを持つ言葉をピックアップする形になります。
しかし、「訪問」という言葉などを含め、「相手にとって誰かが来る」という意味になる場合でも、その意味合いを持つ言葉は類義語としてピックアップされることになるため、この場合は「来訪」の語形そのものに配慮した上での類義語探しがメインになります。
訪問
「訪問」という言葉の基本的な意味は「自分が相手の所へ行く・向かう・出向く」となるため、一般的には「来訪」の意味合いとは反対の意味を持つ言葉として扱われます。
しかし、「来訪」の場合では自分にとって「誰かが来る」という意味合いを持つように、「訪問」の場合も「相手にとって誰かが来る」となることから、両者は類義語として扱われる側面があります。
・○○さまが午後よりご訪問されます。
・彼らが訪問する際には、きちんとおもてなしの準備をしておく必要があります。
・彼女がその場所を訪問する頃には、すっかり日暮れてしまいました。
このように、尊敬語にする場合でも「誰かが来る」という意味合いには変わりなく、その場合に主格と目的地との関係を文章で形容することによって、「誰かが来る」という表現に簡単に置き換えることが可能になります。
来社
「来社(らいしゃ)」という言葉の意味は「誰かが会社へ来る」や「誰かが神社へ来る」などといった、「所定の目的地へ誰かが来る」という内容を指します。
この場合は先述でもご紹介しましたように、「来訪」の意味が「どこへ行くのかという目的地を明示しない用法」とは違い、きちんと場所を特定しているためその用法は違ってきます。
来校
「来校」という言葉の意味は主に「学校に人が来る」という内容を指し、この場合も場所の特定をしっかり明示しています。
ただしこの「来校」という言葉は名詞的扱いで使用されることが多いため、「来校する・される」と言う場合は「お越しになられる」や「来られます」などと、そのまま崩した表現で示される場合が多く見られます。
尊敬語表現ではもちろん「ご来訪」と同じく「ご来校」となり、この場合は「目上の人が学校に来られる」という意味合いで使われます。
来園
「来園」の意味・用途も「来校」の場合と同じく、まずその「向かう場所」の特定がはっきりとなされ、その目的地は一般的に幼稚園や保育園、あるいは「○○園」などの名称が付けられた公共施設などが認められます。
この「来園」と言う場合でも「ご来園されます」という言い方がなされる場合もありますが、一般的な口語表現(会話表現)では「お越しになられます」や「来られる」といったかみ砕いた表現がされることがよくあり、「来園」は名詞的扱いによって示される場合が多く見られます。
来場
「来場」という言葉は非常に多くの場面で聞かれますが、この場合は「来訪」の場合と同じく、ただ「来場」と言うだけでは具体的な所定地・目的地を示すことはできません。
そのため、あらかじめ「○○会場で催しがある」などのコンセプトを皆が共有する中で、その場所の確定を暗黙の了解によって示される場合がほとんどとなります。
来所
「来所(らいしょ)」という言葉の基本的な意味は「事務所へ来る・来られる」という内容を指し、この場合も先述の来場の場合と同じく、あらかじめ「○○事務所に来る」という暗黙の了解による認識がなくてはその目的地を特定することはできません。
「ご来所される」という言い方も日常的にはあまり使われる機会はないため、どちらかと言えば「○○事務所へ来られる・お越しになられる」といったかみ砕いた言い方で表現される場合が多く見られるでしょう。
来館
「来館」という言葉は非常に多くの場面で使われる日常用語のように認められますが、この場合も「○○図書館」や「△△記念館」などの特定される場所をあらかじめ共有する認識にした上で表現されます。
特に「ご来館されます」という言葉は「ご来場」などの言葉と同じくその使われる頻度がとても高いため、「来館」の場合はそのまま「来館されます・ご来館です」などと、それほどかみ砕いた表現をしないままで伝えられることが多く見られます。
「来訪」と「来宅」の違い
「来訪」と「来宅」の違いについてですが、先述しましたようにまず「来訪」と言う場合は「どこに来るのか」という場所の特定が含まれないため、「自宅へ来る」や「事務所に来る」などといった「確実にその場所に人が来る」という意味合いでは表現できません。
上記を踏まえた上で、「来宅」の意味は「自分の家に誰かが来る」となるため、「どこに人が来るのか」について明示できている点とできていない点とで、はっきとした意味・用途の違いが認められます。
「来訪」の英語表記と意味
「来訪」という言葉を英語に直す場合、それぞれの英単語の意味合い・用法に配慮した上で以下のようにピックアップされます。
・visit(訪れる、来訪、参観)
・call(訪問、呼び出し、来訪)
・interview(往訪、訪問、来訪)
・coming(来ること、来訪、到来)
・inspection(参観、来訪、訪問)
・attendance(出席、来訪、来臨)
・presence(存在、臨場、出席、来訪)
・drop in(立ち寄る、来訪、訪問)
・approach(立ち寄る、来訪、近付く)
「来訪」の英語表現と意味(1)
先でご紹介しました「来訪」の英語表記を参考にして、「来訪」の意味合いを含めた英語の例文をいくつかご紹介します。
・While noticing their visit, she did not do anything.
「彼らの来訪に気が付いていながら、彼女は何もしませんでした。」
・Let ‘s have a firm place to set up the venue in preparation for the president’ s visit.
「社長のご来訪に備えて、会場設営をしっかりしておきましょう。」
・The section chief will visit our office tomorrow.
「明日、課長が当所へご来訪されます。」
「来訪」の英語表現と意味(2)
先述しました「来訪」の英語表現に引き続き、さらに具体的な「来訪」の例文をご紹介します。
・The fact that they come to this place at this time probably means that the security of that country is very deteriorating or an attempt is made to take the foreign culture back home.
「この時期に彼らがこの場所へ来訪するということは、おそらくその国の治安が非常に悪化しているか、あるいは異国の文化を自国へ持ち帰ろうという試みが認められます。」
・Everyone is welcomed at the time of visit.
「来訪時には、誰でも歓迎されます。」
「来訪」の英語表現と意味(3)
先述の具体的な「来訪」の英語表現に引き続き、今度はいろいろな場面で使われる「来訪」の例文をご紹介します。
・The meaning of “visit” basically means “someone will come” but it will not explicitly state the location of that place.
「「来訪」という言葉の意味は基本的に「誰かが来る」ということを示しますが、その場所の特定までは明示しません。」
・The meaning of “visit” and “visit” are very similar, but there is a difference in usage of “going” and “coming”.
「「来訪」と「訪問」の意味は非常に似ていますが、「行くこと」と「来ること」の用法に違いがあります。」
「来訪」の正確な意味と用法をインプットしましょう
いかがでしたか。今回は「来訪」の意味と使い方・敬語・例文・反対語・類語・「来宅」の違いと題して、「来訪」の意味と使い方・敬語・例文・反対語・類語・「来宅」の違いについての詳細情報のご紹介をはじめ、いろいろな場面で使われる「来訪」の用例をご紹介しました。
「来訪」という言葉は基本的に「誰かが来る」という「来る」の意味をメインにした用法で扱われますが、その目的地(訪れる先)については明示しません。また「訪問」の意味合いと比べる際には、「訪問」は「自分が行くこと」を指し、「来訪」は「相手が来ること」を指すため、主格の行動の差異において明確な違いがあります。
このように、日本語には微妙な意味合い・用法の違いを持ち合わせながらその用法では似た感覚で扱われる場合が多くあるため、それぞれの言葉の根本的な意味合いを把握した上で、その言葉の扱い方をしっかり学んでおく必要があります。