「精進してまいります」とは?語句を分解
「精進してまいります」はどのような意味をもつ語句なのでしょうか。正確な意味を知るため、成り立っている語句を分解して、一つ一つの言葉を理解してから繋ぎ合わせた全体の意味を理解しましょう。
語句は感覚だけで頭の中の引き出しにしまっておくと、いざ使おうとして引き出しを引いたとき言葉の整理整頓ができてなくて、自分の意図しない意味で伝わってしまうことがあります。
伝える相手に失礼にならないように、語句の意味を頭の中の引き出しに整理整頓しておくことは大切なことです。また、整理整頓した言葉は応用も利くでしょう。
いろいろな意味をもつ「精進」
精進は仏教用語で「しょうじん」と読みます。具体的な意味は、上記のとおり4つあります。
精進の言葉を見たり聞いたりすると、いろいろなイメージや、身が引き締まる気持ちが起こる方も多いでしょう。一つ一つの意味は違いますが、共通しているのは、楽をすることや楽しい行いではなく、自分を戒める言葉です。
「精進してまいります」の中でで使われる精進は、4の「一つのことに精神を集中して励むこと」や「一生懸命に努力すること」の意味で使われています。
1.雑念を去り、仏道修行に専念すること。2.一定の期間行いを慎み身を清めること。3.肉食を立って採食をすること。4.一つのことに精神を集中して励むこと。一生懸命に努力すること。
「精進料理」について
「精進」が付く語句について少し寄り道をしてみます。精進を含む語句のなかで「精進料理」があります。この精進料理とは、具体的にどのような料理なのでしょうか。
精進料理とは、肉食をしないで採食にすること、また、質素な料理を思い浮かべるのではないでしょうか。
精進料理から家庭に普及したものに、「高野豆腐」や「がんもどき」などがあります。がんもどきなどの「もどき料理」とは精進料理から生まれたもので、植物性の食材を肉や魚の動物性の食材に似せた料理のことです。辛い修行から生まれた工夫なのでしょう。
ところで、精進料理では、ある条件のもとでは肉食も禁じていないという考え方もあります。また、ネギやニンニクなど禁じられている野菜もあります。
精進料理の根本的な意義は、肉食を避けた野菜中心の料理という定義ではなく、仏道修行をする者に対して施される食事のことで、修行の一環です。
「して」
「して」は、接続詞・格助詞・接続助詞・副詞として用いられます。「精進してまいります」に使われている「して」は格助詞になり、「する」という意味になります。
「まいります」
「まいります」は、まいる(参る)が「行く」または「来る」の謙譲語です。「ます」は丁寧語ですから、「謙譲語+丁寧語」から成り立っています。
「まいります」は、その前につく言葉に対して「~します」という意味の敬語表現になります。
「精進してまいります」とは?
精進してまいりますは、上記のとおり3つの言葉から成り立っています。また、精進してまいりますの精進は、一生懸命に努力するという意味で使われています。
3つの言葉を繋ぎ合わせた意味は、相手に対して「一生懸命に努力していきます」や「仕事など一つのことに集中して励みます」ということを伝える敬語表現になります。
「精進してまいります」の例文
「精進してまいります」の意味を理解しましたので、ここでは、例文を取り上げてみます。上司や取引先、懇意にしている目上の方に自分が努力することを伝えたいときに用いましょう。
日々
「日々精進してまいります」の例文を取り上げてみます。
・先日の失敗を踏まえて、二度と同じことを繰り返さないように、日々精進してまいります。
・更なる目標達成を目指して、日々精進してまいります。
・会社の発展に貢献できるように、日々精進してまいります。
「日々」+「精進してまいります」は、文字どおり、相手に対して毎日努力し続けることを表現する文書になります。
期限付き目標へ向かって!
日々精進することはとても大切なことです。ところで、自分がある大きな目標に向かって使われることもあるでしょう。例文をみてみます。
・3か月後の昇進試験の合格を目指して、より一層、試験勉強に精進してまいります。
・来月のマラソン大会に向けて、ベストな体調管理を目指して精進してまいります。
未来へ向けた努力に変わりはありませんが、間近にある明確な目標があると、強い意志を表現することができます。
「精進してまいります」の意味と使い方
「精進してまいります」の意味と使いか方を、いろいろな場面ごとにみていきましょう。同じ語句でも、相手関係や場面ごとで前後の語句にも違いがあることでしょう。
精進は仏教用語ですから含蓄のある表現も多いです。各場面ごとに適切な表現方法を覚えておいて、自分の気持ちが聞く相手にとって効果的に伝わる使い方を覚えておきましょう。
「ビジネス」
ビジネスの場面で「精進してまいります」を使う場合は、上司や取引先など目上の方に結びの語句として使われることが多いです。
例えば、ミスをしてしまった後、お詫びの文書や会話の最後に「~精進してまいります」と加えることにより、今後、上司や取引先などへミスをしないようにする努力を表現することができます。
また、会社で昇進をしたときの挨拶にも「~精進してまいります」を用いることで、会社に対して昇進を謙虚に受けいれ、今後の更なる努力を伝達することができます。また、自分への戒めにもなります。
ただ注意したいのは、やみくもに精進してまいりますではなく、自分の能力の範囲をよく考えて、達成できる具体的な文言を入れると相手への伝わり方も分かりやすいということです。
年賀状
年賀状では、目上の方などへ、新年の決意表明を表現するに用います。以下、例文です。
・旧年中は大変お世話になりました。本年も精進してまいりますのでよろしくお願いいたします。
・今年も精進してまいりますので、ご指導ご鞭撻をお願いいたします。
・旧年中は大変お世話になりありがとうございました。本年は昨年の売上を上回るよう精進してまいりますのでよろしくお願いいたします。
年末年始は、一年を振り返っての反省や見直し、また、新しい年へ向けての新たな目標を立てる時期です。心を込めて「精進してまいります」を伝えましょう。
メール
メールで精進してまいりますを使う時はビジネスメールで使われることが多く、ビジネスの場面と同じような使い方になるでしょう。
また、懇意にしている目上の方や年上の親類の方などへお礼などのメールを送信するとき、結びの語句として用いるのも効果的なメールになるでしょう。
挨拶
挨拶では、会社で転勤したときや、人事異動のときの挨拶状として用いることが効果的です。
転勤や人事異動は新たな出発になる場合がほとんどでしょうから、自分が新天地で努力する姿勢を示すにはとても適切な語句になります。
お詫び
「精進してまいります」はお詫びのときにも用いることができます。お詫びをするということは、相手に対してミスをして何かしらの迷惑を掛けたはずです。お詫びと共にもう二度と同じミスをしないための努力を相手に伝えることが必要です。
お詫びの場合は、相手が納得できるような具体的なミスの防止策を「精進してまいります」の前後に加えると、相手の効果的な信用回復の文書や会話になるでしょう。
「精進してまいります」の敬語
「精進してまいります」は語句自体が敬語です。より丁寧な表現にしたいときは、「精進する所存でございます」や「より一層の精進を重ねてまいる所存です」に言い換えることができます。
よく使うけど重みがある語句です!
「精進してまいります」の意味や使い方を中心にみてきました。また、仏教用語の「精進」が付く「精進料理」についても少し掘り下げてみました。
「精進してまいります」は、自分が未来へ向けた努力をする意表明を相手に伝えることでしょう。ビジネス・年賀状・メール・挨拶で使われるすべてが未来へ向けての発信です。
未来への決意表明は、そのあとの行動が大変重要になります。精進してまいりますと発信して終わりではありません。精進してまいりますを伝えたのち、具体的にどのような行動をしたのかが一番大切なことでしょう。