「感心する」の意味と使い方
まず「感心」という言葉の基本的な意味合いは「相手の立派な行動や心掛けに対して、深く心を揺り動かされること」を言い、つまり「相手のあり方に気持ちを動かされる、感動させられること」を指します。
この「感心」という言葉はその使い方にも許容範囲があり、たとえば「目下の人から目上の人に対して使う」というのは失礼に当たる場合が多くあります。そのため、ビジネスシーンでは「感心しました」という言葉を使う相手は必ず同僚か部下に対してであり、上司の人やあるいは先方買会社の社員に対して使うことは一般的にありません。
「感心する」の類義語
この「感心する」という言葉にはいくつかの類義語があるため、それぞれの言葉をきちんと場面ごとに分けて使いこなすことが大切です。特にビジネスシーンでは「敬語表現をはじめ、どんな場面においても言葉・表現の適切な使い方が求められる」というルールがあるため、この「感心」という言葉を使う際でも十分に配慮しておきましょう。
感動
「感心する」という言葉を使う際には、この「感動する・感動した」という言葉・表現もその類義語のうちに含まれます。先述のように「感動する」という言葉の意味合いは「相手のあり方によって深く心が揺り動かされた・気持ちが動かされること」にあるため、「感心する」という意味合いとほぼ同義語として扱われます。
・彼の技量にはほとほと感動させられました。
・わたしは彼が作成したこの映画を観て感動させられました。
・彼らの文化のあり方を見ていると、本当に心から感動させられます。
このように「感動する」という場合はその言葉の意味合いから「受け身」的に使用されるのが一般的であり、この「感動」の箇所をすべて「感心」に置き換えても意味合いは通用します。
感激
「感激」という言葉の基本的な意味合いは「感動する・感心する」などの言葉を使う際でも、特に「激しく心が揺り動かされること」を指します。
・彼らがあの子を助けたその行動に、わたしはひどく感激いたしました。
・A国がB国の支援のために義援金を送ったことに、わたしたちは感激しております。
・感激的なドラマが、この社内で起こっていました。
感嘆
「感嘆(かんたん)」という言葉の意味合いは「感心して、その相手を褒めること」や「何らかの物事・できごとなどを見て嘆き悲しむこと」を指します。この場合は2つの意味合いがあるため、「感心」の意味合いと対照させて使う際には注意が必要です。
・彼らの優しい行動にわたしたちは感嘆の声をあげました。
・感嘆詞の使い方については、必ず参考書を見てその使い方を調べておきましょう。
・結局、彼と破局した彼女は、その夜、感嘆の涙に暮れていました。
このように、「感嘆」という言葉を使う際には特に名詞的扱いとなるため、「感嘆の○○を」などと、他の品詞とは区別して使われることは一般的に多く見られます。
感服
「感服(かんぷく)」という言葉は「相手の行動やあり方を見て、その様子に感心して敬服する程の気持ちを覚えさせられること」を意味し、特に「感心する」と言う場合には同じ意味合いをもって扱われます。
・彼らの行動と覚悟に感服しながら、わたしはお茶を飲んでいました。
・その偉人がしたことに、すべての人が感服の念を覚えていました。
・彼女は彼の意見に大いに感服し、自分のその後の行動を改めました。
・拙者、大いに感服つかまつった。
目を見張る
「目を見張るものがある」などと表現する場合がありますが、この「目を見張る」という言葉の意味合いは「他の物事や行動と比べて、その物事・その人の行動が抜きん出て素晴らしいこと・抜群の成果をあげていること」に対して敬服するという気持ちを指します。
・彼女の論文の成果には、科学界において非常に目を見張るものがあります。
・現代科学の躍進を見ていれば、今後の経済的発展において大いに目を見張る実力があります。
・彼らの教育熱心には、他の国の教育界と比較してみても、非常に目を見張るものがあって感心します。
唸らせる
「唸(うな)らせる」という言葉の意味合いは、半ば比ゆ的に使われる形をもって「声を上げることを我慢できない程に、その相手の行動や他の物事のできばえや成果に対し、大きく感動すること・感心すること」などを指します。
・彼が書いたその歌詞を見て、その曲を作った人は「うーむ」としきりに唸らされました(感心させられました)。
・唸る程の資産が彼女にはあります。
・誰もが唸らされる程の豪邸が、この国の至る所に建っています。
言葉を呑む
「言葉を呑む」という言葉の基本的な意味は、「何かを言おうとしていた際に、相手の言動のあり方や、珍しい(びっくりするような)できごとと出会ったことによって、そのまま何も言えない状態になってしまうこと」を指し、これも比ゆ的表現によって「あまりに感心が大きいことから、何も言えなくなる」という形で使われることがあります。
・唸る程の資産が彼にあることがわかり、我々は思わず言葉を呑んでしまいました。
・理想的な教育を目指そうとしていましたが、教育界がお金で動いていることを知って誰もが言葉を呑みました。
・彼らの懸命の努力を目の当たりにし、わたしたちは何も言えず、言葉を呑んだままでした。
「感心」と「関心・感動」の違い
「感心」と「関心・感動」の違いについてですが、まず「感心」というのは「心が動かされること・深く気持ちを揺さ振られること」などを意味するため、特定の物事への興味や強い魅力を感じさせられた際に味わう「心の動き」になります。
この「心の動き」という意味的側面においては「関心」や「感動」なども同じ意味合いになりますが、それぞれの言葉の使い方においてはその用途で分かれてきます。この場合、「感心」と「感動」は「人の気持ちが大きく揺り動かされること」を念頭に置く形の意味で共有されますが、「関心」の意味合いは少し違ってきます。
「関心」の場合は、「ただ心が引き寄せられること」をメインの意味合いとするため、「深く感動した・気持ちが大きく揺さぶられた」などの「感激」を示す側面はありません。
「感心する」の敬語
「感心する」という言葉は先述のように「部下が上司に対して使うべき言葉ではない」となるため、この「感心」という言葉をどうしても使わなければならない場面においては、別の敬語表現に置き換える必要があります。特にビジネスシーンでは適切な敬語表現が求められるため、この点についてはしっかり把握しておきましょう。
・感銘を受けました
・感謝いたしております
・驚かされました
・驚愕の至りにございます
・感服させられました
一般的には上記の言葉・表現が使われており、「感心」という言葉は極力避ける必要があります。
尊敬語
尊敬語というのは特にビジネスシーンでは一般的に使われる表現であり、主に「目下の人が目上の人に対し、一方的に敬意を示す敬語表現」として扱われています。この尊敬語はよく謙譲語と混同されて使われる場合があるため、この点においてはしっかり区別することが大切になります。
尊敬語というのは基本的に「相手のあり方・相手の行動に対する敬語表現」となるため、「ご覧になられた」や「ご訪問されます」などとその接頭辞に「御(お)」を付けたり、また「○○される・なられる」などと、その行動を直接修飾する形で表現されます。
上記を踏まえた上で「感心する」という言葉を尊敬語表現する場合でも、「ご感心されていました」や「大変深く感心なされていました」などと「感心する」という行動を相手の行動に見立てた上で、客観的にその様子を尊敬語表現に置き換える必要があります。
丁寧語
丁寧語は尊敬語や謙譲語と比べると簡単な表現となり、主に語尾に「です・ます」を付けるだけでOKの表現となります。
・まったく感心です。
・感心させられました。
・彼らの行動は本当に感心させられるばかりです。
このように、基本的に語尾・文末に「です・ます」を付けておくだけで丁寧語表現として認められます。
「感心」の例文
さて、先述では「感心」の意味合いや用法について多角的にご紹介してきましたが、ここでは「感心」を使った例文についてご紹介します。日本語や外国語を覚える際には、例文や会話表現などを使って「実践的に学習すること」が非常に大切で、そうすることによって、場面・状況ごとに1つ1つの言葉を柔軟に使い分けることができるようになるでしょう。
感心ながら
「感心ながら」という表現も「感心」を使う際に非常によく見られる表現です。この場合は「○○に感心します」と言いながら別の物事についても評価するといった、2つの物事への気持ちを表現します。
・彼らの行動はとても感心ながら、わたしは彼女の発言にも大きく賛同しました。
・A国の協力のあり方は歴史的に見ても感心ながら、さらに躍進的な成長につながっています。
・勉強に向かう姿勢は感心ながらも、それよりすごいことは、彼の「勉強することへのビジョンのあり方」です。
感心しています
「感心しています」という表現は「感心」を使う際には最も一般的な表現となるでしょうか。この場合はそのまま「特定の物事への心の動き・感動の表れ」を示す形になります。
・彼の行動のあり方には我々一同、深く感心しています。
・勉強に対するモチベーションの高さには、ほとほと感心しています。
・部下の活躍には、日々、感心いたしております。
感心する
「感心する」と言う場合も、先述の「感心しています」と言う場合と同じく「感心」を使う際には最も一般的によく使われる表現となるでしょう。
・わたしは彼らの行動と覚悟のあり方に感心する。
・誰が何と言おうと、わたしは彼女の勇気に感心する。
・その国の文化のあり方には、おそらく誰もが感心するだろう。
感心しきり
「感心しきり」という表現も一般的によく見られるもので、この場合は特に「特定の物事にずっと感心させられっぱなし」という状況をそのまま伝える表現となります。
・彼らの継続的な努力のあり方には、わたしはずっと感心しきりの状態です。
・○○大学の提携教育のあり方とその理念には、多くの市民や学生が感心しきりです。
・ネット通販に見られる即戦力を持った積極的な販売には、いつもながら感心しきりです。
感心させられる
「感心させられる」という表現も、先述の「感心する」や「感心しています」の場合と同じく、「感心」を使う上では非常によく見られる表現となるでしょう。この場合は文字どおりに「受け身の表現」となるため、特に「感心させる物事」をメインにした表現となります。
・彼の勇気には感心させられる。
・いつもながら彼女の勇気と律儀さには、どんな場面でも感心させられる。
・その国の文化に見られる緻密な人々の交流のあり方には、いつもながら深く感心させられる。
「感心する」の目上の人への使い方
先述でもご紹介しましたが、「感心する」という言葉は(特にビジネスシーンでは)目上の人・上司に対して使うことはNGとなります。「感心する」という場合の基本的な言葉・表現のニュアンスには、「その状態でよくぞここまで感動的な行動をしたものです」といった、やや上から目線の感覚がどうしてもあるため、目上の人に対する言葉には向きません。
・感服いたしました
・感銘を受けました
・誠に感謝申し上げます
・ありがとうございます
・大変救われました
「感心する」という言葉の基本的な意味合いは「心を揺り動かされること・感動させられること」となるため、その「心を揺り動かされること」の理由を念頭に掲げる上で、その「感動の元」に直接的に謝意を伝えるような敬語表現に置き換えるとよいでしょう。
「感心」の英語表記と意味
「感心」という言葉を英語に直す場合、それぞれの英単語の意味合い・用法に配慮した上で以下のようにピックアップされます。
・admire(感心する、憧れる、感心させられる)
・long for(憧れる、感心する)
・yearn after(憧れる、感心する、興味を持つ)
・love(愛する、愛でる、感心する、興味を覚える)
・praise(ほめる、感心する、感動する、称賛する)
・commend(称賛する、ほめる、見上げる)
・extol(感心する、称賛する、ほめる)
・raise one’s eyes(見上げる、感心する、目を見張る)
・worship(崇拝する、ほめる、称賛する、感心する)
・applaud(ほめたたえる、称賛する、感心する)
・respect(尊敬する、ほめる、感心する)
「感心」の英語表現と意味(1)
先でご紹介しました「感心」の英語表記を参考にして、「感心」の意味合いを含めた英語の例文をいくつかご紹介します。
・I was deeply impressed by his way of speaking.
「わたしは彼の言動のあり方に深く感心しました。」
・Perhaps, everyone will be impressed with the content of her paper.
「彼女の論文の内容には、おそらく誰もが感心するでしょう。」
・Everyone is impressed with the economic development by the culture of that country.
「その国の文化による経済的発展には、誰もが感心を覚えさせられます。」
「感心」の英語表現と意味(2)
先述しました「感心」の英語表現に引き続き、さらに具体的な「感心」の例文をご紹介します。
・When trying to figure out the degree of admiration that they gave to me and the degree of admiration that her work gave to children, it is inevitable that the essential laws in life are questioned.
「彼らがわたしに与えた感心の度合いと、彼女の仕事が子どもたちに与えた感心の程度を図る場合、どうしても生活においては必須の法律のあり方が疑問視されます。」
・People are impressed by profit.
「人が感心するのは利益によります。」
「感心」の英語表現と意味(3)
先述の具体的な「感心」の英語表現に引き続き、今度はいろいろな場面で使われる「感心」の例文をご紹介します。
・The use of the word “admiring” is basically almost the same as the use of the meaning of “impressed”.
「「感心」という言葉の用途は基本的に「感動」の意味合いの用途とほとんど同じです。」
・The meaning of “admiration” and “interest” is totally different in that use, especially in business scenes, appropriate use is necessary.
「「感心」と「関心」の意味合いはその用途においてまったく違い、特にビジネスシーンでは適切な使い分けが必要です。」
「感心」の正確な意味と用法を覚えましょう
いかがでしたか。今回は「感心する」の意味と使い方・類語・「関心・感動」の違い・敬語と題して、「感心する」の意味と使い方・類語・「関心・感動」の違い・敬語についての詳細情報のご紹介をはじめ、いろいろな場面で使われる「感心」の用例についてご紹介しました。
「感心・感心する」という言葉は基本的に「心を揺り動かされること・気持ちが大きく揺さぶられること」を意味する表現として使われ、その用途は場面・状況によってそれぞれに使い分けられます。特に「関心」の意味合い・用途とは個別に切り離して使う必要があるため、両者の言葉の根本的な意味合いの違いによく注意しておきましょう。