二重敬語の例・敬語・過剰敬語・最高敬語の違い|天皇/拝受いたす

ビジネススキル

二重敬語って?

目上の方と話すときやビジネスシーンなどで私たちは「敬語」を多く使います。学校の授業でも敬語は取り上げられ、用法や言い回しについては学習するほど、敬語は日本人に根付いた文化です。

ところで皆さんは、「二重敬語」と呼ばれる言い回しがどのような表現かご存知ですか。例えば、外食した際、「お召し上がりください」という言葉を店員さんからかけられたり、POPに書き添えられていたりするのを目にします。実は、この言い回しこそが「二重敬語」にあたる表現です。

「二重敬語」とは、敬語表現が重なってしまった言い回しのことを言います。厳密には、尊敬語にあたる表現が重なっているか、謙譲語にあたる表現が重なっているかのどちらかになります。

二重敬語を使ってしまったからといって、重大なマナー違反になる、ということではありません。しかし、使わない方がスマートです。でが、どのような言い回しが二重敬語にあたるのでしょうか。

二重敬語ってどんな言い回し?

ところで皆さんは、どのような言い回しが二重敬語にあたるか区別できていますか。二重敬語は、1つの単語に対して「尊敬語+尊敬語」や「謙譲語+謙譲語」のように敬語表現が重複している言い回しのことを言います。

実際にどのような言い回しが二重敬語にあたるのかは、分かりにくい部分があります。以下に、いくつか例を挙げているので、それをみてみましょう。

二重敬語の典型的な例って?

二重敬語は、1つの単語に同じ種類の敬語が重なってしまっている敬語のことを言います。日常生活で使ってしまいがいな典型的な二重敬語の例として、「尊敬語+尊敬語」の二重敬語があります。

以下のような言い回しが、その二重敬語です。
・ご覧になられる→「ご覧になる」+「~れる」
・おっしゃられる→「おっしゃる」+「~れる」
・お召しになられる→「お召しになる」+「~れる」

これらは、典型的な二重敬語の例です。「見る」を「ご覧になる」のように、単語を敬語にした上に「~れる」という敬語の表現を加えています。

その他にも、「拝受いたしました」や「させていただいております」「ごください」のような言い回しが使われていることがあります。これらは、二重敬語なのでしょうか。また、それぞれどのような構造になっているのでしょうか。

「拝受いたしました」は二重敬語?

「拝受いたしました」は、よく使われる言い回しです。この表現は、二重敬語にあたるのでしょうか。

「拝受いたしました」は、構造上は二重敬語ということができます。しかし、ビジネスシーンでは、ビジネス用語とも言えるほど頻繁に使われている表現です。

おさえて欲しい点として、二重敬語は間違いでもタブーはありません。よって、「拝受いたしました」は構造上は二重敬語ですが、社会的に容認された一種のビジネス用語として使用上の問題ありません。むしろ、使うべき場ではしっかり使いたい表現と言えるでしょう。

「拝受いたしました」の文法的な構造は、次で簡単にまとめています。

「拝受いたしました」の構造って?

「拝受」は、「受領」の謙譲語にあたります。「受領」は、「受:受ける」と「領:手に入れる」という漢字から成る熟語で、意味も「受け取る」となります。「拝受」は、「拝み受け取る」となり、受け取るモノへの態度を示し、ひいてはモノをくれた人に敬意を払う意味を持つ謙譲語です。

「拝受いたしました」という言い回しは、「拝受」と「する」+謙譲語の「致す」という構造になっています。あえていえば、「拝受する」の謙譲語のように使われ、ビジネスシーンではよりへりくだった印象となる表現です。

「させていただいております」は二重敬語?

「させていただいております」についても見てみましょう。

「させていただく・させていただいております」という言い回しそのものは、二重敬語ではありません。しかし、基本的にこの言い回しは、頭に「拝見する」などの謙譲語が付けられ、結果、「拝見させていただく」と二重敬語になりがちです。

ビジネスシーンでは、よりへりくだった印象を相手に与えるため、謙譲語の二重敬語はよく使われています。それは、二重敬語が「間違った敬語」ではないためです。

「させていただいております」の構造って?

「させていただいております」は、「させる」「いただく」「おります」から構成されています。詳しくみると、「させる」は使役の助動詞+「いただく」は「もらう」の謙譲語+「おります」は「いる」の謙譲語である「います」をより丁寧にした言い回しという構造です。

また、構成の見方によっては、「させていただいております」は、「させていただく」は謙譲表現とも受け取ることができます。

どちらにせよ、頭に組み合わせる言葉によって二重敬語になることもある表現です。その点は念頭においておきましょう。

「ご~ください」って二重敬語?

「ご~ください」は、何らかの熟語に、「御(ご)」と「下さい(ください)」をつけくわえた言い回しで、この表現そのものは二重敬語ではありません。

このうち「御(ご)」は、尊敬語や丁寧語の接頭語です。「下さい」は、尊敬語ではありますが、「野菜ください」のように、モノをくれるように要求する動詞の意味と「〜して下さい」という要求・命令の補助動詞の2つの意味を持ちます。

この表現は、「ご」と「ください」の間にくる熟語によって誤りとなることがあります。要するに、尊敬語となる熟語さえ組み合わせなければ、二重敬語とまではなりません。使う際は、その点に注意して使いましょう。

そもそも「敬語」ってどのような表現?

そもそも、「敬語」とはどのような表現のことを示すのかご存知ですか。

「敬語」は、「敬(うやま)う言語」という文字のままに、敬意を表す言い回しのとこをいいます。敬語を使うということは、話し手は対象への敬意を言葉の使い方で示すということです。

蛇足ですが、「敬語」は、日本語独特の言語表現ではありません。他の言語が各々特有のルーツを持つように、その言語において「日本語でいう敬語」にあたる表現方法を持つ言語は多くあります。ここでは、あくまで「日本語における敬語」であり、全ての敬語的表現に該当するわけではないことはおさえておきましょう。

敬語は、敬意を示す言い回しです。そのため、敬意の向け方により敬語の種類が異なります。日本語の敬語の種類は、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3つです。送り手から受け手への敬意を表現する「尊敬語」「謙譲語」と、聞き手に対して話し手の敬意を直接に表現する「丁寧語」とがあります。

尊敬語って?

「尊敬語」は、相手への敬意を示し、相手を立てる敬語です。そのため、目上の人に対して使うことの多い敬語と言えます。

以下に主な言葉の尊敬語表現を例示しているので、参考にしてください。

・「する」→なさる
・「来る」→いらっしゃる、お越しになる
・「知る」→ご存知
・「見る」→ご覧になる
・「言う」→おっしゃる

謙譲語って?

謙譲語は、相手への敬意を示すために、自分の言動を下げて表現し、へりくだって述べる敬語です。あくまで、自分の言動をへりくだって言い表すため、主体は自分となります。相手の言動に対し、謙譲語表現をすることは主旨に反します。

以下に主な言葉の謙譲語表現を例示しているので、参考にしてください。

・「する」→いたす
・「来る」→参る
・「知る」→存じ上げる
・「見る」→拝見する
・「言う」→申し上げる

丁寧語って?

丁寧語は、尊敬語や謙譲語のように敬意を表す敬語ですが、敬意の対象を限定する敬語ではなく、丁寧な言い回しをしたいときに用いられる敬語です。

基本的に、「です・ます」と語尾に付けることで丁寧さを表すため、「ですます調」とも言われています。ただし、これらの表現のみではなく、文脈によっては「ございます」と付けることもあります。

その他の敬語表現ってある?

敬語は、尊敬語・謙譲語・丁寧語と分類されますが、文法的に細かく見ていくと助動詞や接頭語などにも敬語表現が存在します。

結局は、敬意の対象や示し方により、尊敬語や丁寧語に分類されますが、敬語表現は動詞や名詞にのみ適応されているわけではないということは覚えておきましょう。二重敬語を見分けるコツにもなります。

敬語・二重敬語・過剰敬語・最高敬語の違いって?

ここまでで、敬語と二重敬語について簡単にふれてきました。他にも「○○敬語」という表現はあるのでしょうか。

敬語と名のつく表現は、大まかに「敬語」「二重敬語」「過剰敬語」「最高敬語」があります。他にも捉え方によって「○○敬語」と呼ばれている表現がないわけではありませんが、ここではこの4つがどのような表現なのかをまとめてみました。

「敬語」ってどのような表現?

「敬語」は、会話などにおける受け手(聞き手)や話題にのぼっている人物・物事に対し、送り手(話し手)の敬意を表す言語的な表現のことをさします。敬語が使われる際には、その場にいるいないに関わらず、敬意を向けられる対象が存在することになります。

もっと簡単に言うと、会社における社長さんや学校の先輩に対しては、一般的に気のおけない友人に話すため口とは違い、丁寧な言葉遣いで話さなければなりません。その「丁寧な言葉遣い」が「敬語」です。

日本語の敬語には、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3つの種類が存在します。この三種類は、敬意の向け方によって区別され、それぞれ言い回しが異なります。この敬意の表し方と言い回しが、日本語の敬語表現において大切な要素です。

「二重敬語」ってどのような表現?

「二重敬語」とは、1つの単語に対して同じ種類の敬語表現を重ねて使ってしまうことを言います。単語が2つ以上あり、それぞれに敬語表現がされた単語が接続詞などで繋がっている場合は二重敬語にはあたりませんので、区別が必要です。

また、ここでいう種類とは、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」という敬語の種類です。ケースとしては、尊敬語が重なってしまう場合と謙譲語が重なってしまう場合とがあります。

「過剰敬語」ってどのような表現?

「過剰敬語」とは、文字のままに、過剰に敬語表現が使われていることをさします。二重敬語も過剰敬語と言えますが、二重敬語のように尊敬語+尊敬語と同じ種類の敬語の重複にとどまらず、謙譲語と尊敬語が混在するといった場合も過剰敬語には含まれます。

また、この次に紹介する「最高敬語」との違いは、敬語を使う対象にあります。「最高敬語」は、天皇や皇族に対して用いられる敬語です。対して、過剰敬語は対象が限定されているわけではありません。

敬語は、要は敬意を示すために用いる表現です。そのため、敬意が篤い場合は、敬語表現の重複で表すことも可能です。

例えば、職場の上司と天皇に向ける敬意は同程度でしょうか。上司に対し、皇族に対するレベルの敬意をもった敬語を用いることは行き過ぎです。この行き過ぎた敬語を過剰敬語と表現されています。

「最高敬語」ってどのような表現?

他者への敬意を示す敬語ですが、その中には、「最高敬語」と呼ばれる敬語が存在します。

「最高敬語」は、敬語の中でも特に上位の敬意表現であり、日本でいう天皇陛下や皇族の方々に、他国の国王陛下や王族の方々に対してのみ用いられる最上級の尊敬語です。ただし、大統領・国家主席などに対して最高敬語が用いられることはありません。

第二次世界大戦以前の日本では、今よりもより厳密に皇室典範や宮中の慣例として、所作や儀礼、言葉遣いなどが規定されていました。ですが、現在ではその頃に比べると簡略化が進み、報道などでは理解しやすいように、敢えて表現を改められるようにもなってきています。

とはいえ、最高敬語は現在でも使用されており、その言い回しには一般的な敬語とは異なる特徴があります。簡単に以下で紹介していますので、見てみましょう。

最高敬語ならではの敬称って?

「最高敬語」には、「陛下」や「殿下」といった特有の敬称が存在します。日常生活で使う敬称もありますが、それらとは別格で、むやみに使用することはできません。

最高敬語における敬称は、皇室典範により厳密に規定されています。なお、皇室典範に規定されているのは、天皇と皇族の敬称のみです。他国の国王・王族に対しての敬称は、それらを基に、それに準じる敬称が用いられています。

以下が、各々の敬称の対象となる方々です。根拠となる皇室典範第4章第23条も引用として参照しているので、確認されてください。

・「陛下」:天皇・皇后・皇太后・太皇太后への敬称
・「殿下」:上記以外の皇族への敬称

これらは、公の場での敬称とされ、メディアでの報道の際には、天皇以外の皇族方々には、平仮名で「さま」と敬称をつけることが義務化されています。

第4章 成年、敬称、即位の礼、大喪の礼、皇統譜及び陵墓第23条 天皇、皇后、太皇太后及び皇太后の敬称は、陛下とする。2 前項の皇族以外の皇族の敬称は、殿下とする。

http://www.houko.com/00/01/S22/003.HTM

最高敬語特有の用語って?

最高敬語には、特有の敬称の他に伝統的に使われる用語も存在します。それらは、最高敬語で使われる用語のため、一般的には皇族関係のニュースで耳にすることがほとんどです。

以下に、最高敬語特有の用語をいくつか紹介しています。用語に使われる漢字や読み方自体が特殊な用語もあるので、意味と併せて確認してみましょう。

【外出関係の用語】
・「行幸(ぎょうこう・みゆき)」:天皇の外出
・「行幸啓(ぎょうこうけい)」:天皇・皇后両陛下ご同伴の外出
・「行啓(ぎょうけい)」:皇后・皇太后・太皇太后・皇太子・皇太孫・皇太子妃(天皇以外の直系皇族)の外出

【亡くなった際に使われる用語】
・「崩御(ほうぎょ)」:天皇・皇后・皇太后・太皇太后が亡くなった際の用語
・「薨去(こうきょ)」:上記以外の皇族が亡くなった際の用語

【特有の言語表現】
「畏(かしこ)くも」:天皇陛下に対して用いられる、畏(おそ)れ多い、もったいないという意味の用語

多重敬語って?

最高敬語の特徴として、「多重敬語」という言い回しがあります。「多重敬語」は、最上級の敬意を示すため、意図的に敬語を重ねた言い回しです。

「多重敬語」は、構造上は、二重敬語と言えることもあります。しかし、使用される言葉そのものが最高敬語特有の言葉のため、最高敬語としてしか用いられることありません。

以下に、多重敬語の例を紹介しています。

・「あそばされる」:動詞「する」の尊敬語「遊ばす」+尊敬の助動詞「れる」で「~なさる」の最高敬語
・「あらせられる」:「いらっしゃる」の意。動詞「在る」+尊敬の助動詞「せる」+尊敬の助動詞「られる」で「いらっしゃる」の最高敬語
・「おかせられましては」:動詞「置く」+尊敬の助動詞「せる」+尊敬の助動詞「られる」+丁寧語の助動詞「ます」+接続助詞「て」+係助詞「は」で「於かれては」の最高敬語

「二重敬語」は誰に対して使うの?

敬語や二重敬語についておさえてきましたが、結局のところ、これらは誰に対して使うべき表現と言えるのでしょうか。

結論として、敬語や二重敬語は、「誰に対して使うべき」という厳密な対象設定は困難です。それはなぜでしょうか。

敬語は、敬意を伝える言語的表現です。そのため、使用されるのは、敬意がある場合と言えますが、日常生活内では敬語の使用が礼儀にあたる場面もあります。

このように考えると、敬語を使うべきと対象を限定することは困難です。しいて言うのであれば、case by case、状況に応じて使い分けるといったところでしょう。

二重敬語は、敬語使用時の言い過ぎた表現というニュアンスが強い言い回しです。間違いでもマナー違反でもありませんし、敬語と異なる表現でもありません。そのため、扱いそのものは敬語と大きく違いはなく、

天皇陛下へは二重敬語を用いるの?

天皇陛下のニュースなどを聞いていると、二重敬語が多用されているように聞こえます。それはあながち間違いではありません。しかし、二重敬語は天皇陛下を対象とした敬語であるということでもありません。

皇族は、古来より神の血筋とされ、身分制度が廃止された現代に到っても日本人にとって特別な敬意を抱く存在です。特に天皇陛下は、象徴という立場にあってなお、日本人が最も敬意を示す存在でもあります。

さて、敬語がどのような表現だったでしょうか。敬語は、敬意を表す言語的表現です。

そのため、天皇陛下に対しては、敬語が用いられます。ここで重要なのは、天皇陛下への敬意の度合いです。日常的に使用する敬語により敬意を重ねた結果、見かけ上、二重敬語ともなり得ます。

とはいっても、正確には、天皇陛下へは「最高敬語」が用いられるため、単語単位での敬意の重複をいう二重敬語を天皇陛下に対しての敬語とするには語弊があると言えます。

「二重敬語」はそもそも間違っているの?

二重敬語についてみてきましたが、前提として、二重敬語は間違っているというわけではありません。また、マナー的な観点からみても、重大なタブーあたることでもありません。

本来の古くから使われてきた敬語は、相手への敬意を言葉で示すための文法です。身分制度のあった時代であれば特に身分に応じた振る舞いが求められていました。最高敬語のように、単なる上位者より一層尊いとされる皇族へは、敬意を二重・三重に重ねる表現ができたことがその表れです。

この現代には、身分制度は廃止され、人々は平等だとされています。そのため、敬意を示すのであれば、敬意を二重に重ねる必要がないとされるため、二重敬語がかえって目立ち、違和感として受け取られがちです。

あまり難しく考え、気負うと余計にミスをしがちです。二重敬語は、気づく人は気づく違和感程度に考え、違和感を抱かれないように注意しようとする言葉遣いの問題と認識しておきましょう。

「二重敬語」なんて怖くない!

二重敬語は、敬語を使う際に1つの単語に敬語表現が重複してしまった言い回しのことを言います。

二重敬語は、重大なマナー違反でも言語的な間違いでもありません。ただし、日常会話などの一般的な場面で用いるには敬意を重ねて表現しすぎて回りくどく聞こえてしまうため、気をつけましょう、といった表現ではあります。

言ってしまっても、取り返しのつかない大失敗というほどのことではないので、「次は気をつけよう」とポジティブに考えましょう。

二重敬語は、ビジネスシーンでは当然のように使うこともあります。あまり難しく考え過ぎてしまうと、かえっておかしな表現になってしまうことになりかねません。例文などを参照し、頭の隅で確認しておく程度で十分です。

相手に敬意を示す際は、二重敬語を怖れず、しっかりと相手への気持ちを言葉にしましょう。

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