「ご意向」とは
意外とよく耳にすることの多い「ご意向」という言葉ですが、みなさんは聞いたことがありますか。「ご意向にそえるよう」「ご意向にそぐわない場合は」など、さまざまな言い方をすることができます。今回は、「ご意向」という言葉の意味や使い方について学び、例文や類語についても触れていきます。
普段日常生活の会話で使う機会は少ないです。しかし仕事先や目上の人との会話、重要な書面、ビジネスメールなどで頻繁に使われます。
「ご意向」の意味と使い方は?
「ご意向」という言葉はなんとなく耳にしますが、正確な意味をご存知でしょうか。文脈やニュアンス、雰囲気でだいたいの意味を理解している方は非常に多いです。そこで、「ご意向」の正しい意味と、その使い方について説明していきます。
「ご意向」という言葉はかしこまった場面ではよく用いられる言葉ですので、ぜひ覚えておきましょう。意味も使い方もまったく難しくないので、これを機に理解していきましょう。
まずは「ご意向」の意味を確認!
「ご意向」とは、「どうするつもりかという考え」「思惑」「心の向かうところ」という意味を持ちます。漢字を見ても分かる通り、「意」の「向かうところ」という意味であり、「考えの方向性」や「どう思っているのか」「本心」という意味合いを含みます。
ざっくりシンプルにいえば、「考え」ともいえます。「ご意向を確かめる」というように使われたら、「あなたの考えを確認したい」という意味になります。
「ご意向」の使い方
「ご意向」は、相手の本当の気持ちや何を考えているのかを知りたいときに使われます。「ご意向」という言葉には、さまざまは動詞を組み合わせることができます。例えば、「そぐ」「沿う」「聞く」「確かめる」などがあげられます。
特別な使い方はありませんが、「ご意向」は普段の生活や親しい人との会話ではあまり使われません。目上の人や取引先の人、お客様など丁寧に対応しなければならない人の意見を聞きたいときに用います。
「ご意向」の敬語は?
「ご意向」という言葉自体が、敬語表現にあたります。元の形は「意向」という熟語であり、それに「御」をつけた敬語です。目上の方に対しては「ご意向」という形で用いられます。
注意しておきたいのが、「お意向」とは言わないということです。「意向」の前につくのは「ご」であり、「ご意向」とセットで覚えましょう。
私のご意向?私の意向?
目上の人と会話をしている場合、自分の意見や考えを述べる場合は「ご意向」でしょうか、「意向」でしょうか。相手が目上の人であれ、自分の考えの方向性を伝える際は「意向」となります。あくまで自分の考えを指すので、自分に対して敬語を使うのは間違っています。
相手が偉い人だからといって間違って「自分のご意向」とは言わないようにしましょう。違和感がありますし、相手も「え?」と思ってしまいます。
「ご意向」の例文を知ろう!
これまでは、「ご意向」の意味と使い方、敬語について説明してきました。続いては、実際の文章や会話の中でどのように使われるのか例文をいくつかご紹介します。「ご意向」はさまざまな使われ方をするので、例文もたくさんありますが、頻繁に使われるものばかりですのでこれを機に覚えましょう。
使い方が多いですが、例文をそのまま覚えれば実用性もあります。また「ご意向」とセットでよく用いられる言葉があるので覚えましょう。
沿う
「ご意向に沿う」という表現は非常によく使われます。「ご意向に沿う」とは、「意見や考えの方向性に従う」という意味になります。「沿う」というのが寄り添うイメージを含むので、そちらの考えを重視するということにつながります。
「意向に沿う」という言葉は自分の意向については使いません。相手の意向に沿うという形で使われます。自分の考え方に沿うというのは違和感があり、相手に対して用いるようにしてください。
沿えず
「ご意向に沿えず」という形で使われる、先ほど紹介した「ご意向に沿う」の否定形となっています。相手の意見や考えに賛同できない場合は、「ご意向に沿えず」という言い方をします。
意向に沿えないのは自分ですが、相手のご意向に沿えないということなので、意向には「ご」がつきます。ややこしいですが、どちらのご意向なのかを考えればすぐにわかることです。
賜る
「ご意向を賜る」は敬語表現であり、「相手の考え方の方向性を聞く」という意味合いです。「賜る」という動詞は「もらう」の謙譲語であり、この場面では意見を聞く、伺う、頂戴する、拝聴するという意味で使われています。
謙譲語は自分の動作をりくだって相手を立てる敬語表現です。特に敬意を払いたい人や目上の人に使う際は、このような敬語を用いるとより良いでしょう。
お聞かせください
「ご意向をお聞かせください」は、「あなたの思惑を聞かせてください」という意味です。これはそのままの意味であり、相手がどう考えているのかを教えてほしいときや、意見を聞きたいときに使われます。
注意する点は、「ください」という表現が人によっては失礼にあたる可能性があるということです。「ください」はあくまで命令形なので、目上の人に対して指図しているような印象に取られる場合があります。使う場面には注意です。
そぐわない
「ご意向にそぐわない」とは「期待通りではない」「本意ではない」という意味の言葉です。「意にそぐわない」と言いますが、それと同じ意味です。「そぐわない」というのは、「合わない」「似つかわしくない」「釣り合わない」という意味で、考えの方向性に合わない、思惑とは違うというニュアンスの言葉です。
「ご意向にそぐわない」と「ご意向に沿わない」はほぼ同じ意味です。「今回の発表は社長のご意向にそぐわない」のように使われます。
沿えるよう
「ご意向に沿えるよう」とは「期待に答えられるよう」「思惑通りになるよう」という意味で使われます。「沿う」は話し手の行為であり、「期待に答えら行為をする」と断定的に言っています。一方、「沿えるよう」というのは「期待に答えることができるようなんとかしてみる」というニュアンスが含まれ、確実に沿うかどうかはわからない可能性があります。
汲む
「ご意向を汲む」とは「相手の気持ちを慮って判断の参考にすること」という意味です。もっとわかりやすく言えば、相手の考えや思惑を推し量る、立場・事情などを察して理解する、相手の望みに合わせて動くということです。「気持ちを汲み取る」で使われる「汲む」と同じ意味です。
「妻の意向を汲んで、披露宴は盛大に行うことにした」という使い方をします。妻の披露宴を盛大にやりたいという本心を汲み取ったということです。
承知
「承知」は「依頼や要求を聞き入れること」「事情などを知ること」という意味の言葉です。「ご意向」は考えの方向性を表すので、相手の本心を知る、相手が期待していること・やってほしいことを受け入れるという意味で「ご意向を承知する」という言葉が使われます。
ただし、あまりご意向という言葉と承知を組み合わせることはありません。マイナーな表現方法です。
「ご意向」の類語は?
さきほど「ご意向」の例文を紹介しましたが、いろいろな動詞があり、さまざまな組み合わせ方があることを説明してきました。「ご意向」と言葉だけで聞くとかたくるしいイメージがありますが、「考えの方向性」「思惑」といった相手の本心という意味の言葉なので、使い方はそう難しくありません。
「ご意向」という言葉の類語も豊富にあり、言い換えや同じ意味の言葉がいくつかあります。つぎは、「ご意向」の類語を紹介しましょう。
「意向」の類語
まずは「意向」という熟語について類語をご紹介します。考え ・ 意見 ・ 考え方 ・ 評価 ・ 主張 ・ 所見 ・ 見解といった言葉と似たような意味を持ちます。考え方や意見、どのように思っているかというニュアンスの言い換え表現が可能です。
「ご意向」の場合は?
「ご意向」という敬語表現となると、より丁寧な言い方になります。類語としては、ご意志 ・ 思し召し ・ ご意思 ・ お考え ・ 御考え ・ おぼし召し ・ みこころというがあります。非常にかしこまった言い方が多いですが、普段使うとすればお考えやご意思だと使いやすいです。
「ご意向」と「ご要望」の違いとは
まず「要望」の意味は物事の実現を強く望むことです。「ご要望」と敬語表現の場合は、目上の相手が何かを望むときに使われる言葉です。使い方としてはどちらも似ていて、「ご要望に沿えるよう」も「あなたの期待に答えられるよう」という「ご意向に沿えるよう」と同じニュアンスになります。
ただしご意向は望みというより、考え方や見解を聞くだけに対して、ご要望は希望や望みを聞くという意味です。少し意味合いが変わります。
「ご意向」をうまく使いこなそう!
今回は「ご意向」の言葉の意味や使い方、例文、類語などをご紹介しました。「ご意向」は見解、思惑、本心といった考えの方向性を意味する言葉で、さまざまな動詞と組み合わせて使われます。特にビジネスや重要なメール、書類などでは頻繁に用いられる便利な言葉です。
使い方は難しくないですし、考えと言い換えれば簡単に文中で使うこともできます。ぜひ参考にして「ご意向」を上手に使いこなしていきましょう。