「する」の謙譲語・尊敬語との違い・例文|ビジネス/いたす

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なにかを「する」

私たちが普段生きている中で、「何かをする」ということは必ず付きまといます。例えば、「本を読む」「寝る」「歩く」「食べる」など、さまざまな行動とともに生活しています。「する」という表現は私たちの生活と切っても切り離せないものであるといえます。

今回は「する」という言葉について、その敬語表現について詳しく解説していきます。敬語の中でも特に謙譲語について説明していきます。

「する」の謙譲語

「する」の謙譲語は「いたす」という動詞です。「いたす」は、漢字で「致す」と書き、自分側の動作や行為を低めて言ったり、改まった気持ちで言ったりすることで相手に対する敬意を払う表現です。「いたします」という形で用いられます。

また、「〜申し上げる」という表現もあります。これは「言う」の謙譲語ではありますが、「お」や「ご」を頭につけた動詞の連用形や動作性のある名詞の後ろに付いて敬意を表すことがあります。

「いたす」そのものの意味とは

「いたす」そのものには、いくつか意味があり、「全力で事を行う、心を尽くす」「届くようにする」「ある状態に立ち至らせる」という意味があります。

たまに「不徳の致すところ」という表現を耳にしますが、この表現も「する」の謙譲語というわけではなく、ある物事の結果良くない結果を招く」という意味で使われる「いたす」です。「いたす」は謙譲語だけでなく、さまざまな使い方があります。

謙譲語「〜申し上げる」

「する」の謙譲語として使う際は、「お礼申し上げる」「お話し申し上げる」「ご依頼申し上げる」のような使い方がされます。礼や依頼という名詞の頭に「お」や「語」をつけたものと組み合わせて使ったり、「話す」という動詞に「お」をつけて申し上げるを後に続けたりすると、謙譲語の意味として用いられます。

「する」の尊敬語と謙譲語の違いは?

「する」の尊敬語は「なさる」「される」という表現を使います。例えば、「社長がパーティーに出席なさる」「取引先の方が訪問される」といった使い方をします。「あそばす」という尊敬語もありますが、今ではほとんど使われないので、基本的には「なさる」と「される」の2つを覚えておきましょう。

尊敬語と謙譲語の違いをおさらい

尊敬語は目上の人に対して、相手の行為を建てる時に使われる、謙譲語は自分をへりくだるときに使い、自分がへりくだることで相手を立てる表現です。尊敬語は自分に対して使う言葉ではなく、目上の人や敬意を払いたい相手の行動に対して用いられます。一方、謙譲語は自分の行為や動作をへりくだっていうことで、逆に相手を立てるという手法です。

自分が「なさる」「される」ことはない!

尊敬語は相手の行動に対して使われ、自分の行動に対して「なさる」や「される」を使うことは決してありません。自分が相手に連絡いたしますということはあっても、連絡なさりますや連絡されますとは言わないということです。

尊敬語と謙譲語の区別はしっかりと行いましょう。敬語を使うという姿勢はとっても大切ですが、使い方を間違ってしまえば逆に非常識な人間と思われてしまいます。敬語は正しく使わなければ意味がありません。

「する」の謙譲語の使い方

「する」の謙譲語は、自分が何かをすることに対して、「する」をすべて「いたす」で言い換えることで謙譲語の表現になります。特に、自分が一方的に行う行為の場合は「いたす」、相手からの許可や好意によって恩恵を受ける行為の場合は「させていただく」を使うとより自然になります。

「させていただく」とは

「させていただく」というのは一般的に相手からの許可を得たうえで、自分の行動に対して、恩恵を受けることへの敬意を払っている場合に使われる言葉と言われています。頻繁にビジネスシーンなどでは「ご連絡させていただきます」「改めて伺わせていただきます」のように、「させていただく」と使われます。

「させていただく」も間違いではない

「する」の謙譲語として、「させていただく」も間違いではありません。しかし、相手からの許可や行動に対しての恩恵を受けるかどうかなどの条件が加わったくるので、少し複雑な使い方であるといえます。

シンプルに「いたします」で十分相手への敬意は伝わります。謙譲語としても使い勝手のよい簡単な表現なので、悩んだ場合、謙譲語としては「いたす」が無難でしょう。

ビジネスシーンでの謙譲語の使い方

ビジネスシーン、特にビジネスメールで「する」の謙譲語を使う場合は、ひらがな表記を用いましょう。ひらがな表記の「いたす」は、「する」の謙譲語で補助動詞と言われています。一方、漢字表記での「致す」は動詞として使われます。区別するためにもひらがな表記で使いましょう。

会話の中では、上司や取引先の相手に対して「〜いたします」というふうに丁寧な言い方で使います。「いたす」ではなく丁寧語「ます」を入れましょう。

「する」の謙譲語の例文

それでは「する」の謙譲語の例文を見ていきましょう。敬語表現はなかなか使い方が覚えにくく、慣れないうちは間違った使い方をする人が多いです。しかし、ビジネスでは非常に重要な要素であり、敬語を正しく使うことができない社会人は会社でうまくやっていくのも難しいでしょう。

ビジネスシーンなどで頻繁に使われる「する」の謙譲語の表現を例文で確認しましょう。典型文として用いられるものもたくさんあります。

依頼する

・「ご依頼いたしました件についてですが、最終決定はいつ頃になるでしょうか。」

「依頼する」の謙譲語の表現はいくつかあり、「ご依頼いたす」や「ご依頼申し上げる」がよく使われます。ただし、「ご依頼いたします」は少し不自然なので、「ご依頼申し上げます」の方が無難です。

依頼は漢語なので、依頼の前には「お」ではなく「ご」をつけましょう。「ご依頼」は正しいですが、「お依頼」は一般的に間違いとされています。

連絡する

・「来月のイベントの件で、ご連絡いたしました。」

メールのやり取りでは、どの要件で連絡したのかを明記する必要があります。その際、〜の件でご連絡いたしましたという言い方ができます。

連絡も漢語なので「ご連絡」となります。連絡するという動作をへりくだって「いたす」を使っています。また、「ご連絡申し上げました」という使い方もあるので、好きな方を使ってください。

訪問する

・「明日は15時頃、訪問いたします。」

「いたす」の場合は必ず「お」や「ご」をつけなければならないわけではないので、「訪問いたします」だけでも謙譲語として成立します。一方、申し上げるを使う場合は「ご訪問申し上げます」という使い方でなければなりません。

「ご訪問させていただきます」という言い方ももちろんできます。しかし、少し回りくどい言い方ではあるので、シンプルに言うなら「いたす」が良いでしょう。

確認する

・「明日の打ち合わせについては、後で上司に確認いたします」

確認するという動詞の謙譲語として「確認いたす」が頻繁に用いられます。「ご確認申し上げます」「ご確認させていただきます」も頻繁に使われますが、「確認いたします」がとにかくシンプルで使い勝手がよいです。

まわりくどくなく、シンプルな謙譲語なので印象も良いです。短く言えるというのもオススメの点です。

「する」と「いたす」の謙譲語の違い

「する」の謙譲語として「いたす」がありますが、ほかの「お(ご)〜申し上げる」や「〜させていただく」とは少し違います。「いたす」は「する」という行動そのものの謙譲語です。

一方「申し上げる」はさまざまな動詞にくっついて「する」の謙譲語としての意味をなします。つまり、「私は確認をします」は「私は確認をいたします」と言い換えられても、「私は確認を申し上げます」とはならないということです。

「する」の謙譲語を正しく使おう

敬語表現は難しく、尊敬語や謙譲語の違いなど苦手意識を持ちやすいものです。しかし、大人になってからはさまざまな場面で敬語を使うことが多くなります。その際、誤った使い方をしてしまえば、非常識と思われかねません。

今回はよく使う「する」の謙譲語を説明しました。こ機会に「する」の謙譲語の使い方を身につけましょう。

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