「くださる」と「いただく」の違い・用法・敬語|下さる/漢字

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敬語の種類

敬語はビジネスや改まったシーン、目上の人に対してや日常でも頻繁に使われます。敬語は聞き手や話題にしている人物に対して、話し手が敬意を込めて表します。今回は「くださる」と「いただく」の敬語の表現について見ていきます。

最初に敬語についてご紹介します。敬語は大きく分けると尊敬語、謙譲語、丁寧語の3つになります。「くださる」と「いただく」も敬語の表現ですが種類が違います。敬語の種類をそれぞれ見ていきましょう。

尊敬語

尊敬語は動作や動作の主体に対して、話し手が敬意を表すときに用いられます。例えば「する」が「なさる」に「食べる」が「召し上がる」の尊敬語に変化します。

謙譲語

謙譲語は自分側の動作をへりくだって言うことで、聞き手や話題の人物に対して敬意を表すときに用いられます。例えば「行く」が「伺う」に「する」が「致す」の謙譲語に変化します。

丁寧語

丁寧語は聞き手に対して直接敬意を表して丁寧に言うときに用いられます。語尾に「です」や「ます」を付けたり、接頭語として「お」や「ご」を付けて「お茶」「ご飯」などのように丁寧に言うことができます。

「くださる」の敬語

「くださる」は「くれる」「与える」の尊敬語に当たります。「~してくれる」の尊敬表現は「お(ご)~くださる」または「~てくださる」の形にします。動作の恩恵を受ける立場の人が、動作の主体に対して敬意を込めて表しましょう。

「くださる」の用法

「下さる」「お(ご)~くださる」「~てくださる」の用法は次のようになります。

「誕生日にプレゼントを下さる」
「受付でお待ちくださる」
「経験談をお話しくださる」
「応接室にご案内くださる」
「こちらの都合をご理解くださる」
「電話番号を調べてくださる」
「傘を貸してくださる」

「いただく」の敬語

「いただく」は「もらう」「食べる」「飲む」の謙譲語に当たります。「~してもらう」の謙譲表現は「お(ご)~いただく」または「~ていただく」の形にします。

「いただく」は人から恩恵などを受けたときに、相手に対して恐縮した気持ちを表す表現として使われます。また、自分の意思で相手にお願いしてやってもらうときにも用いられる表現です。

「いただく」の用法

「頂く」「お(ご)~いただく」「~ていただく」の用法は次のようになります。

「毎年年賀状を頂く」
「美味しいランチを頂く」
「こちらにお越しいただく」
「先生にお褒めいただく」
「事情をご理解いただく」
「時間になったので帰っていただく」
「10時まで待たせていただく」

「くださる」と「いただく」の違い

「くださる」と「いただく」の敬語表現がそれぞれ理解できたところで、2つの違いを比べてみましょう。

「くれる」と「もらう」

「くださる」と「いただく」は似ていて区別が難しい表現です。「お土産を下さる」や「洋服を頂く」のような物などをもらうシンプルな表現は、敬語にする前の基本の言葉に戻すと理解しやすくなります。

「くださる」は相手が「くれる」という意味のため、相手の行為にスポットを当てた尊敬語です。「いただく」は自分が「もらう」という意味であり、自分の行為にスポットを当てた謙譲語になります。

「お(ご)~くださる」と「お(ご)~いただく」

「くださる」と「いただく」の違いを「お(ご)~くださる」「~てくださる」と「お(ご)~いただく」「~ていただく」の表現からも見てみましょう。

例えば「コピーを取ってくださる」と「コピーを取っていただく」はどちらも「相手がコピーを取る」という同じ内容ですが、主体が違います。「コピーを取る側」と「コピーを取られる側」のどちらにスポットを当てるかによって敬語が違ってきます。

「くださる」は「コピーを取ってくれる」という相手の行為に注目した、相手が主体の尊敬語の表現です。「いただく」は「コピーを取ってもらう」という恩恵を受ける自分に注目した、自分が主体の謙譲語の表現です。

ニュアンスの違い

「くださる」と「いただく」は主体がどちらにあるかという違いの他に、ニュアンスにも違いが見られます。「道を教えてくださる」と「道を教えていただく」を例に考えてみましょう。

相手の意思による

あなたが道に迷ってキョロキョロしていたら、通りがかりの親切な人が道を教えてくれたとします。あなたが頼んでもいないのに、相手の厚意により道を教えてくれたときは「道を教えてくださる」の表現になります。

「くださる」の表現を使うときは、相手の意思によるものであるかがポイントです。相手の意思による行為に感謝し、相手を敬う尊敬語の表現を用いましょう。

依頼してやってもらう

道に迷ってキョロキョロしていたら親切そうな人がいたため、お願いして道を教えてもらったらどうでしょうか。あなたの意思で相手に頼んで道を教えてもらったため「道を教えていただく」の表現が適しています。

「いただく」は自分が依頼したものであるかがポイントです。自分の依頼を受けてくれた相手に対して感謝を込めて、自分をへりくだる謙譲語の表現を使いましょう。

「~くださいますか」と「~いただけますか」の違い

「お待ちくださいますか?」と「お待ちいただけますか?」の依頼の疑問文はどちらも丁寧な敬語のため、問題なく使えそうですが実際はどうでしょうか。

「お待ちくださいますか?」の「くださる」には「相手の意思により行うこと」という意味があります。そのため相手への要求のニュアンスが込められてしまいます。言い方は尊敬表現のため丁寧ですが、あまり相応しい表現ではありません。

「お待ちいただけますか?」の「いただく」には「自分からの依頼でしてもらう」という意味があります。自分をへりくだって「待つことをお願いできますか」と丁寧に聞いているため、相手に対して恐縮した印象を与えます。「~いただけますか?」の方がお願いをするときには相応しい表現です。

「くださる」と「下さる」の違い

「くださる」の書き言葉は、平仮名と漢字の「下さる」があります。書き分けには違いはあるのか、あるとしたらどのように使い分けたら良いのでしょうか。

漢字

漢字で「下さる」と書くときは「何かをくれる」ときです。例えば「花束を下さる」「手紙を下さる」のように書きます。

平仮名

平仮名の「くださる」は「何かをしてくれる」ときに書きます。「お(ご)~くださる」または「~てくださる」の形の尊敬語の表現です。例えば「お話くださる」「ご紹介くださる」と書きます。

「いただく」と「頂く」の違い

「いただく」の書き言葉は、平仮名と漢字の「頂く」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。

漢字

漢字で「頂く」と書くときは「何かをもらう」ときです。例えば「お茶を頂く」「ハンカチを頂く」のように書きます。

平仮名

平仮名の「いただく」は「何かをしてもらう」ときに書きます。「お(ご)~いただく」または「~ていただく」の形の謙譲語の表現です。例えば「ご案内いただく」「お越しいただく」と書きます。

「くださる」の類語

「くださる」の類語は次のようになります。「くだされる」「お与えになる」 「与える」「授ける」「授与」「給(たま)う」「賜(たま)う」「差し上げる」「捧げる」「奉ずる」「贈る」「遣(つか)わす」「進ずる」「恤(めぐ)む」「遣(や)る」などがあります。

「いただく」の類語

「いただく」の類語は次のようになります。「戴(いただ)く」「頂戴(ちょうだい)する」「賜(たまわ)る」「授かる」「受け取る」「授与される」「提供される」「受領する」「与(あずか)る」「拝受する」「供与(きょうよ)される」などがあります。

状況により使い分けを

似た表現の「くださる」と「いただく」には、違いがあることがご理解いただけましたでしょうか。

例えばお礼を言うときに「~くださいましてありがとうございます」なのか「~いただきましてありがとうございます」のどちらなのか、状況を正しく捉えて使えるようになりましょう。

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