「致します」と「いたします」の違いは?
「致します」と「いたします」の違いは、「致します」が決定事項などを相手にそのまま伝える場合に使用するのに対して、相手に伝える姿勢で使用する場合は「いたします」を使います。
「致します」は、動詞で、具体的には「私の不徳の致すところ」といったような場合に使用します。
「いたします」は、「する」の謙譲語の「いたす」に丁寧語の「ます」を合成した敬語です。目上の相手やお客様への敬意を払い「○○をさせていただきます」「○○をさせてもらいます」といった意味で自らが率先して行動する場合に使用します。
公文書
公文書は、動詞は漢字で、補助動詞はひらがなで書きます。公文書では、漢字については、常用漢字表に基づいて使用します。「致」は、当然、常用漢字表の中に入っています。
文化庁の内閣訓令第1号「公⽤⽂における漢字使⽤等について」で定められていて「いたします」のような補助動詞を公用文の中で使う場合、すべてひらがな表記を用いることになっています。
正しい
「致します」と「いたします」は、動詞の場合は、「致します」が正しく、補助動詞の場合は「いたします」が正しくなります。「致します」と「いたします」を正しく使い分けれるようにしましょう。
「いたします」は、ビジネスシーンでも多く使用される敬語です。間違った使い方をしては、相手にマイナスの印象を与えてしまいビジネスチャンスを失うことにもなりかねません。
日頃から使い分けに注意して間違えないようにしましょう。
漢字とひらがな
「いたします」は「致します」という漢字と「いたします」のひらがなの二通りの表記方法があります。
漢字表記の「致します」は、通常の動詞で単独でも使えます。「致します」の意味としては、「そこまでに到達する」の意味と「する」を丁寧に表現した言葉の二種類があります。
ひらがな表記の「いたします」は、補助動詞でさまざまな動詞と組み合わせて丁寧な表記にすることができます。
「致します」と「いたします」の対義語は?
「致します」の対義語は「致しません」で「いたします」の対義語は、「いたしません」です。
「致しません」と「いたしません」の違いは、「致しません」が否決事項などを相手にそのまま伝える場合に使い、相手に伝える姿勢で使用する場合は「いたしません」を使います。
人気ドラマドクターXで米倉涼子が演じた大門未知子の決め台詞「いたしません」は、後者の方です。
「致します」と「いたします」の例文
ここでは「致します」と「いたします」の例文をそれぞれいくつか紹介します。「致します」は、動詞として使用して、「いたします」は、助動詞として他のさまざまな動詞と組み合わせて使用します。
お願い
「お願い」の後に「いたします」の場合は「お願いいたします」とひらがなで表現するのが正しく「お願い致します」と漢字表記するのは間違いです。
「お願いいたします」は、相手に何かを依頼するときにお願いする表現です。相手に願いを聞いてもらえるように前後の文章も工夫する必要があります。
「お願いいたします」で代用できる言葉として「お願い申し上げます」があります。「申し上げる」という表現は、言葉が相手にかかる響きが強いので相手にお願い事をするときは、「お願いいたします」の方が相手に与える印象がいいです。
・今度こちらに赴任しました。○○と申します。よろしくお願いいたします。
・あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
・初めてお目にかかります。私○○と申します。以後よろしくお願いいたします。
・いつもお買い上げいただきありがとうございます。今後ともごひいきによろしくお願いいたします。
失礼
「失礼」の後に「いたします」の場合は「失礼いたします」とひらがなで表現するのが正しく「失礼致します」と漢字表記するのは間違いです。
・本日は大変ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。本日はこれで失礼いたします。
・作業終了しました。異常などはありません。これにて失礼いたします。
・お足元失礼いたします。
・本日は、悪天候の中お集まりいただき誠にありがとうございます。高いところから失礼いたします。
確認
「確認」の後に「いたします」の場合は「確認いたします」とひらがなで表現するのが正しく「確認致します」と漢字表記するのは間違いです。
・被害などは、ありませんでした。念のため再度確認いたします。
・会場の手配ができているかこれから確認いたします。
・ご本人かどうか身分証にて確認いたします。
・残留者がいないか確認いたします。
ご連絡
「連絡」の後に「いたします」の場合は、連絡の前に「ご」を加えて「ご連絡いたします」とひらがなで表現するのが正しく「ご連絡致します」と漢字表記するのは間違いです。
・本日は、ご搭乗いただき誠にありがとうございます。機内の皆様にご連絡いたします。
・お忙しい中お越しいただきありがとうございます。会場内の注意事項についてご連絡いたします。
・いつもお世話になっています。新製品の情報が入りましたのでご連絡いたします。
・先日は、弊社の中途採用にご応募いただき大変ありがとうございます。選考結果についてご連絡いたします。
致します
「致します」は、通常の動詞で「そこまで到達するようにする」「する」の丁寧語の「します」をさらに丁寧に表現した言葉です。
・いつも気にかけてくれていた前の課長に思いを致す。
・すべて私の不徳の致すところであり弁解の余地はありません。
・上の部屋からほのかな心地よい匂いが致します。
・今回のイベントの準備は、一切こちらで致します。
「致します」と「いたします」の敬語
「致します」は、「致す」の丁寧語で「いたします」は、「する」の謙譲語です。「する」の謙譲語には「します」もありますが「致します」は、「します」をさらに丁寧に表現しています。
「致します」「いたします」と似たような関係には?
「致します」「いたします」と似たような関係のある語として「参ります」「まいります」があります。
「参ります」は「行く」の謙譲語と丁寧語である「ます」を合成した敬語です。「まいります」は、補助動詞「いく」「くる」の謙譲表現として他の動詞とセットで使用します。
「参ります」の漢字表現のときに動詞となり、「まいります」のひらがな表現のときに補助動詞になる点が、「致します」の漢字表現のときに動詞になり、「いたします」のひらがな表現のときに補助動詞になる部分と共通しています。
致しますといたしますはメールはどちらがいいのか?
「致します」と「いたします」はメールでも使う意味によって使い分けます。
「致します」と「いたします」の違いは、「致します」が決定事項などを相手にそのまま伝える場合に使い、相手に伝える姿勢で使用する場合には「いたします」を使います。
メールを使用する際に入力時に変換すると「いたします」が正しいのに「致します」と出てきたり、「致します」が正しいのに「いたします」と誤変換することがよくあります。このときに間違えて入力してしまわないように変換された文字が正しいか間違っているか確認します。
「致します」と「いたします」の違いを理解しよう
「致します」と「いたします」の違いをしっかりと理解して使い分けましょう。
ここまで「致します」と「いたします」の違い、「致します」と「いたします」の対義語、「致します」と「いたします」の例文、「致します」と「いたします」の敬語、「致します」と「いたします」の似たような関係、「致します」と「いたします」はメールでどちらがいいのか、について説明・紹介してきました。
「致します」と「いたします」を間違えて使用すると大きな恥をかいてしまいます。特に、ビジネスシーンでは、イメージダウンになってしまいかねません。
それぞれについてしっかりと理解して「致します」と「いたします」を間違えないように使い分けましょう。