「頂き」の敬語・読み方・使い方・「いただき」との違い|教えて

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「頂き」の読み方と意味

「頂き」は「いただき」と読み、カ行5段活用の動詞「頂く」の連用形です。また、連用形が名詞化した名詞としての「頂き」、あるいは漢字一文字で「頂」「いただき」とも読みます。

「いただき」という言葉は普段の会話の中でも必ず出てくるような使用頻度の高い言葉で、非常にたくさんの意味があります。

名詞としての「頂き」

「頂」には「頭のてっぺん」や「物の最も高い部分」「うやうやしく上にささげ持つ」という意味があります。物の最も高い部分という意味では「頂上」や「頂点」「山頂」「絶頂」など多くの熟語に「頂」という漢字が使われていることからも分かります。

そのほかにも、「有頂天」や「愚の骨頂」などの慣用句にも使われています。「有頂天」「うちょうてん」とは仏教の中では、世界で最も上に位置する所という意味がありますが、転じて得意で夢中になっていることをさして「有頂天」といいます。

また、「愚の骨頂」「ぐのこっちょう」とは「この上なく愚かなこと」という意味で「頂」という漢字が使われています。

動詞としての「頂き」

「頂き」の終止形「頂く」という動詞は、「もらう」や「食べる」「飲む」という意味の謙譲語として、「もう、十分頂きました」のような形でよく使われています。

また、「この試合は頂きだ」のように苦労もなく手に入れること、「お小言を頂きました」のようにしかられることという意味でも使われます。

そのほか、「頂く」には「頭にのせる、かぶる」や「敬意を表して高くささげる」「敬って自分の上の物として迎える」という意味もあります。

補助動詞としての「いただき」

「教えていただきありがとうございます」のように動詞の後につく形で補助動詞の役割を持つ「いただき」もあります。

補助動詞としての「いただき」は、相手から恩恵となるような動作を受けるという意味や相手にその動作をしてもらう、あるいは相手に自分がしようとする動作についての許可を求めるという意味の謙譲表現です。

「頂き」は敬語なの?

「頂き」の終止形「頂く」は「もらう」「食べる」「飲む」という意味の謙譲語になるので、敬語として、目上の人やビジネスシーンで使うことができます。

謙譲語とは?

敬語には、丁寧語、尊敬語、謙譲語の3種類があり、「頂き」はその中の謙譲語にあたります。

謙譲語とは、敬語の中でも自分を低く表現することによって、相手を立てる表現で、自分や自分側の立場を主語とする時に使います。

謙譲語の反対で、相手を主語とする場合には、尊敬語を使い、「もらう」は「お受け取りになる」または「お納めになる」、「食べる」は「召し上がる」、「飲む」は「お飲みになる」となります。

「いただき」の漢字表記

「いただき」の漢字表記には、「頂き」と「戴き」の2種類があります。

「頂」と「戴」を使った「頂戴」「ちょうだい」という熟語があります。「頂戴する」という言葉も「頂く」と同じように「もらう」や「食べる」「飲む」という意味で使われる謙譲表現ですが、「頂く」よりも丁寧な印象になります。

「頂き」と「戴き」の違いとは?

「頂き」と「戴き」は同じ意味を含んでいますが、漢字自体の持つ意味が違うため、少し使い方に違いがあります。

「頂」という漢字には「物の最も高い部分」という意味があり「戴」という漢字には「頭にのせる、かぶる」「敬意を表して高くささげる」という意味の違いがあります。

よって、「戴き」はかしこまって物をもらうという意味で、「頂き」よりも相手に対する敬意を表すことができます。

「頂き」と「戴き」の違いのポイントは、「頂き」は物や行為に対して使うのに対し「戴き」は物に対してのみ使うという点です。

しかし、現在では「頂き」が常用漢字であり、教科書や公文書など一般的には「戴き」の意味も含み、「頂き」という漢字を使います。「戴き」は常用外漢字であるため、普段「戴き」という漢字が使われることはあまりありません。

「戴き」の使い方

常用外漢字であまり使われることのない「戴き」ですが、もらうという意味の謙譲語としては「戴き」のほうがより敬意を表す表現となります。

相手が自分より目上の人で、かしこまって物をもらう時などにあえて「戴きます」という表現を使い相手に敬意を表すことがあります。

また、詩や小説などの自由な表現の場では、かしこまったニュアンスを表現することができるので、「戴き」の漢字が使われることがあります。

ひらがなの「いただき」

「頂き」と「戴き」の違いが分かったところで、使用頻度の高い補助動詞としての「いただき」との違いについて説明していきます。

ひらがなで表記する「いただき」は補助動詞です。動詞の「頂き」を平仮名で「美味しくいただきました」と表記するのは間違いではありませんが、補助動詞の「いただき」を漢字で「教えて頂き」と表記するのは間違いになるので、注意しましょう。

「頂き」と「いただき」の違い

「頂き」と「いただき」、どちらを選んでもよいという訳ではなく、それぞれに意味があり用途が違います。

また「いただき」に限らず補助動詞はひらがなで表記するというルールがあります。「お願いいたします」の「いたします」や「教えてください」の「ください」、「実行してみる」の「みる」なども補助動詞なので、平仮名で表記するのが正しい書き方です。

分かりにくい場合には、「いただき」の部分を「頂戴する」に言い換えて確かめることができます。「頂戴する」ということばに言い換えても違和感がなければ、動詞の「いただき」であり、「頂き」と漢字を使うことができます。

「頂戴する」という言葉を当てはめて違和感がある場合は、補助動詞の可能性が高いので、平仮名の「いただき」を使うようにしましょう。

「頂き」の使い方

「頂き」は物を「もらう」「食べる」「飲む」という意味の謙譲語で、自分自身がへりくだることで相手に敬意を表したい時に使います。

よって、「頂き」を使うのは物品をもらった時や行為に対して、食べ物を食べる時、飲む時に使うのが正しい使い方です。

「頂き」を使った例文

「頂き」を使った例文としては、「ご飯は十分頂きました」「美味しく頂きました」「美味しく頂いております」や「先生からプレゼントを頂きました」「先輩からよいアドバイスを頂いた」などがあります。

「ご連絡を頂き、ありがとうございます」は正しい表現ですが、「ご連絡して頂き」という使い方はできません。この場合の「いただきは」補助動詞の役割なので、正しくは「ご連絡していただき、ありがとうございます」となります。

「頂き」の類語

「頂き」と同じような意味を持つ言葉をいくつか紹介します。

「頂き」なのか「いただき」なのか迷った時などには、別の言葉で言い換えることもできるので、覚えておくと便利です。

「頂戴する」を使った例文

「頂戴する」を使った例文には「昨年、御社から10周年の記念品を頂戴しました」「お言葉に甘えて、遠慮なく頂戴します」「上司に相談したいことがあるので、少々お時間を頂戴してもよろしいですか」などがあります。

「頂戴いたしました」という表現を耳にすることがありますが、「頂戴」と「いたす」の二重敬語になってしまうのでその場合、「頂戴しました」で相手に対する敬意を表すことができます。

「賜る」を使った例文

「賜る」を使った例文には、「この度は、結構なお品物を賜り、まことにありがとうございます」や「ありがたいお話を賜りました」などがあります。

「賜る」は「たまわる」と読みます。「もらう」の謙譲語で目上の人から物品や意見などの言葉を受け取るという意味で使われています。「頂く」や「頂戴する」に比べ、より丁寧であらたまった表現として使われ、もらうには恐れ多いもの受け取ったというニュアンスです。

「もらう」を使った例文

「もらう」という表現を使った例文は、「友達からたくさんの誕生日プレゼントをもらいました」「以前、母にもらった物です」などがあります。

「もらう」は身内や近い関係の人に対して使います。友達のように同等の人や目下の人、あるいは会社から、学校からという時にも使えます。また、会社の上司であっても話している相手が職場を訪れた第三者である場合などには、「もらう」という表現を使います。

「いただき」の使い方と例文

平仮名で「いただき」と表記する補助動詞としての役割をもつ「いただき」は動詞のあとにつけ、主に次のような場合に使います。

まず1つ目は、「教授に褒めていただきました」「のように相手から恩恵となるような動作を受ける場合です。

次に、「ご心配いただきましたが」「お越しいただき」のように相手にその動作をしてもらう場合にも使います。

また、「もう少し待たせていただきたいので」のように相手に自分がしようとする動作についての許可を求める場合にも使います。

教えて「いただいた」と「くださった」の違い

「先生に教えていただいたので、ようやく理解することができました」と「先生が教えてくださったので、ようやく理解することができました」はどちらも同じ意味です。

「先生に教えていただいた」と「先生が教えてくださった」の違いは主語がどこにあるかという違いになります。謙譲語は主語を自分にし、尊敬語は主語を相手にするという法則があります。

前者の「先生に教えていただいた」は主語が自分であり、「わたしは先生に教えてもらった」という意味の謙譲語として使われており、後者の「先生が教えてくださった」は主語が相手であり、「先生は私に教えてくれた」という意味の尊敬語ということが分かります。

どちらを使うのか迷った時は、直接相手に敬意を表す「先生が教えてくださった」を使った方が、敬意はストレートに伝わりやすいでしょう。

「いただきます」の由来

食事を始める時、挨拶の言葉として「いただきます」と言う習慣があります。漢字で書くと「頂きます」となります。

「いただきます」という挨拶は、「もらう」「食べる」「飲む」の謙譲語から派生した言葉で、神様にお供えしたものを食べる時や位の高い人から物を受け取る時に頭の上、つまり「頂」「いただき」に掲げたことから、「頂く」が使われるようになったと言われています。

「いただきます」には料理を作ってくれた人や米や野菜を作ってくれた人、その料理に携わった全ての人に感謝の気持ちが込められています。

また、肉や野菜の命を頂くという意味で、食材に感謝の気持ちを込めているという説もあります。

ご馳走様の由来

ちなみに、食後に使うご馳走様という挨拶は、「馳」という漢字も「走」という漢字もともに「走る」という意味を持ち、走り回って食事の用意をしてくれたことに対する感謝の気持ちを表す言葉です。

現代のように食材を簡単に確保できなかった時代、食事の用意をするためには遠くまで馬を走らせ食材を調達しなければならず、また走り回って用意したことから、食事を準備してくれた人への感謝を込めて「馳走」に「御」と「様」がついたと言われています。

注意!「頂き」「いただき」の間違った使い方

「いただき」という言葉は、普段から非常によく使われている言葉ですが、反面間違った使い方がされている場面も多く見られます。

「お休みを頂いております」は間違い?

電話などで、社外の人に「○○さんはいらっしゃいますか」と聞かれた時の対応として、「○○は、本日はお休みを頂いております」という返答をしてしまうことはありませんか。

頻繁に使われるので、違和感を感じない人もいるでしょうが、「お休みを頂いております」という表現は間違っています。

まず、身内の行動に対して敬語の「お」をつけて「お休み」というのは、社外の人に対しては適切ではありません。また、「頂く」という表現も、休みを与える側の自分の会社に対する謙譲語のように聞こえてしまうので、不適切だと言えます。

この場合、「○○は、本日は休みを取っております」と答えるのが正解で、「申し訳ございませんが、○○は本日休みを取っております」とするとより丁寧な対応となります。

「させていただきます」は間違っている?

「させていただきます」という言葉も非常によく聞きます。丁寧な印象を与える言葉ですが、実は「させていただきます」という使い方は間違っている場合が多く、文法的には正しくても「させていただきます」を多用することで、分かりにくくなり、回りくどい印象を与えてしまいます。

「○○させていただきます」とは、「日程を変更させていただいてもよろしいですか」のように自分の行為に対して相手の許可を受け、またそのことで自分が恩恵を受ける場合に使うのが正しい使い方です。

「拝見させていただきます」は「拝見」と「いただき」の二重敬語となるので、「拝見します」、「ご連絡させていただきます」は「ご連絡いたします」「ご連絡差し上げます」、「臨時休業とさせていただきます」は「臨時休業といたします」とするのが正解です。

上手に使いこなしましょう!

目上の人やビジネスシーンで、へりくだって話す時、「頂き」「いただき」という言葉は使い勝手がよく重宝される表現です。

だからといって、使いどころを間違えたり、むやみやたらに使うことは謙虚な気持ちが逆効果となってしまうので、使い方には注意が必要です。

使いどころをしっかり頭に入れて、上手に使いこなしましょう。

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