「お招きいただき」という敬語
上司や知人に招待された際、あるいはパーティーなどへ誘われた際など、「お招きいただき」という言葉を使う場面には多く遭遇します。しかし、この「お招きいただき」という言葉は正しい敬語なのでしょうか。
結論から言えば、「お招きいただき」は尊敬語に当てはまるため、目上の人に対して使う敬語表現として正しいと言えます。「いただき」という部分のみを見ると謙譲語のように思えますが、「お招き」という言葉が尊敬語に分類される上、招いていただいた相手を主軸として使う言葉のため、尊敬語に当てはまります。
しかし、上記でも触れているように「いただく」という言葉自体は謙譲語です。したがって、「お招きいただき」という言葉は謙譲語に分類されるという見方もあります。どちらにせよ、「お招きいただき」は目上の人に対して使う言葉として適切です。
「お招きいただき」の使い方
「お招きいただき」という言葉は、その言葉どおり開催された催し物に招待された際に使用する敬語表現です。招いてくださったことに対してお礼の言葉を述べる時に使用されることが多いですが、具体的にどのような場面で使われることが多いのでしょうか。
次に「お招きいただき」は実際にどのような場面で使用されているかをご紹介します。皆さんも下記のような場面に招待された際にはぜひ積極的に使用しましょう。
結婚式
一般的に広く使われる場所として最も多く挙げられる場面が結婚式です。上司や職場の人、目上の人の結婚式にお呼ばれした際に使用することはもちろん、知人や友人の結婚式に招待された際にも「本日はお招きいただきありがとうございます」と使います。
友人の結婚式の場合、カジュアルに「呼んでくれてありがとう」と相手に伝えることもあります。しかし、セレモニーという場であることを考え、友人相手であってもその日の主役である友人に敬語表現を用いることは珍しくありません。
また友人ではなく、友人のご両親やご親戚の方々、あるいは面識の少ない友人のパートナーに対しても、失礼の無いよう「お招きいただき」という言葉を使用するべきでしょう。
ビジネスシーン
敬語表現が使われる場として最も多いシチュエーションがビジネスシーンでしょう。ビジネスの場合、自分が招かれた立場であることを前提にさまざまな場面で「お招きいただき」という敬語表現は使用されます。
例えば、取引先の方が主催している催し物に招待してもらった際、相手に挨拶するときに「本日はお招きいただきありがとうございます」という言葉を使用します。この言葉から始まり、催し物に関する感想や日々のお礼を言うという方も少なくないでしょう。
中には会社の行事として講演会に呼ばれた講師側が「お招きいただきありがとうございます」と挨拶することもあります。このように少し意識をして見てみると、ビジネスシーンで使われる場面は非常に多いです。
ホームパーティー
目上の人からホームパーティーに誘われるという機会も珍しくありません。このようなシチュエーションで訪問する場合、玄関先で「本日はお招きいただきありがとうございます。楽しみにしておりました」などと挨拶をしましょう。
また目上の人ではなく友人に招待されたホームパーティーであっても、相手のご家族やパートナーが一緒に出迎えてくれた場合、「お招きいただき」と使用することがあります。面識の少ない相手であれば、失礼の無いように、目上の相手という立場でなくても敬語表現を使うべきでしょう。
「お招きいただき」の例文
「お招きいただき」という敬語表現はビジネスシーンだけでなく、結婚式やホームパーティーに招待された際にも使用されることが多いことをお話ししました。次に、具体的な「お招きいただき」の使用例をご紹介します。
「実際使おうとしてもその場で正しく相手に使うことができないかも」という不安を持っている方は、こちらで紹介する例文を参考に活用してみてはいかがでしょうか。
ありがとうございました
「お招きいただき」の使用例として最も幅広く使われている例文が「お招きいただきありがとうございました」です。これはビジネスシーンでも使用されますが、先ほど紹介した結婚式やホームパーティーなどでも頻繁に耳にする言葉です。
なお、その催し物が終わった後などは「ありがとうございました」と過去形になりますが、催し物が始まる前、主催者に対し使う場合は、「ありがとうございます」と現在形に直して使用しましょう。
また「お招きいただきありがとうございました」の前には、「本日は」や「この度は」といったその催し物や日時を指定する言葉を付けるとより丁寧に聞こえます。
光栄です
「光栄です」という言葉は、招待してくださった相手に「ありがとうございます」とお礼の意味を持ちます。さらにお礼の意味に加え、「招待されたことを嬉しく思う」というニュアンスも含まれる例文です。
しかし、注意しなければならないのは、「光栄です」という言葉は単に嬉しいという感情を表しているわけではないという点です。嬉しいという気持ちと同時に「誇らしい」「名誉に感じる」といったニュアンスも含まれています。
したがって、自分が「この催し物に招待されたことを誇りに思う」という意味を込めてお礼を言う際に使用するべきでしょう。友人の結婚式などには不向きな言葉です。
お招きくださり
最後にご紹介する例文は、「お招きいただき」を「お招きくださり」という言葉に言い換える例です。どちらも相手にされたことに対するお礼のニュアンスを含む敬語表現です。
しかし、最初にもお話ししたとおり「いただく」は謙譲語に分類され、「くださる」は尊敬語に分類されます。したがって、意味は同じですがこの言葉を使う人物は誰かをポイントに置くべきでしょう。
自分がしてもらったという意味を込めて相手に伝える場合は、謙譲語を使用した「お招きいただき」が適切です。ですが、「くださり」も間違いではないため、使用することに問題はありませんが、「いただき」の方が自然でしょう。
「お招きいただき」の友達への使い方
友人に対し招待してくれたことへの感謝を示す際に「お招きいただき」を使用するシチュエーションとして、最も多い場が結婚式です。
招待状への返信はがきに「お招きいただきありがとうございます」と記載する人も多いでしょうし、結婚式当日に友人へ直接伝える際に使用する人も多いでしょう。オフィシャルな場のため、仲の良い友人が相手であっても挨拶には敬語表現が適しているからです。
しかし、仲の良い友達同士で行うカジュアルなホームパーティーなどに参加する際は、このようなかしこまった言葉遣いは適していません。このように友人に使う場合は、場面によって使い分ける必要があります。
「お招きいただき」の類語
ここまで「お招きいただき」の敬語の種類や使い方についてご紹介してきました。最後に「お招きいただき」と似た意味を持つ類語をいくつかご紹介します。似た意味を持つ言葉であっても少々違いがあったり、あるいは言い換え表現として使用することもできます。ぜひ「お招きいただき」と一緒に覚えておきましょう。
お誘いいただき
「お誘いいただき」は「お招きいただき」を少しカジュアルに言い換えた表現です。「お誘いいただき」も「お~いただく」という謙譲語表現となり、敬語の種類や意味も同じということになります。
「お招きいただき」を少しカジュアルに直したと前述しましたが、謙譲語表現には変わりありません。そのため、ビジネスシーンでも使用することは可能です。
ご招待いただき
もう1つの言い換え表現として「ご招待いただき」という言い換え表現も挙げられます。言葉からもおわかりのとおり、「お招き」と「ご招待」は同じ意味です。したがって、この2つの意味は同じです。また「ご~いただく」という謙譲語表現である点も同じです。
お招きにあずかり
「お招きにあずかり」も「お招きいただき」の類語として当てはまります。この言葉の場合はその後に続く言葉の多くが「光栄です」になります。この「お招きにあずかり光栄です」はビジネスシーンにおいて使われることが多いです。
ちなみに「あずかる」は「預かる」と書く人が多いですが、この場合の「あずかる」はその物事に関わるという意味の「あずかる」です。したがって、物を預かるという意味の「預」は適していません。基本的には「あずかる」と平仮名で記載します。
招待を受けた際は「お招きいただき」を活用しよう
いかがでしたでしょうか。今回ご紹介した「お招きいただき」はビジネスシーンではもちろん、結婚式などのセレモニー行事やパーティーなどでも多く活用されます。ぜひ皆さんも目上の方やオフィシャルな場への招待を受けた際には「お招きいただきありがとうございます」「光栄です」といった言葉で気持ちを伝えましょう。