「言う」の意味は
「言う」という言葉には、どのような意味があるのでしょうか。「言う」は心で考えている事や判断を、相手に伝達するために表現する事です。口頭・文章どちらでも使用することができます。
表現としては、同格の場合は「〇〇と言う人」、数量を表わす言葉について「何十万と言う大群」となります。また、「と」の前につく事柄の意味を強める「これと言うものは何一つない」、「出口と言う出口が見つからない」などのように使う事もあります。
「言う」の敬語の使い方
敬語には、自分がへりくだる事で相手を立てる謙譲語、相手への敬意を込めて丁寧に言い表す丁寧語、相手に対する敬意を表わす尊敬語の3つがあります。「言う」という言葉は、敬語ではそれぞれどのように表現するのでしょうか。また、文字に書かれた言葉である文語で「言う」はどう表現するのでしょうか。それぞれについて解説します。
謙譲語
敬語表現では「言う」の謙譲語は「申す」になります。「恐れながら申しあげますが」や「担当の木村と申します」のように使います。また、取引先の人に、自分の職場の人が言っていた言葉を伝える際に「弊社の中村が申しておりました」のように使います。
謙譲語は、話す人が自分の側にあると言う時に、へりくだった表現で相対的に相手に対して敬意を表現します。謙譲のそもそもの意味は、へりくだることや謙遜の事です。
丁寧語
丁寧な言葉で表現するのが丁寧語です。「言う」の丁寧語は「言います」になります。「彼には私から言いますのでよろしくお願いします」のように使います。丁寧語は、必ずしも相手を尊敬する言葉ではありませんので、美化語とも呼ばれています。
丁寧のそもそもの意味は、動作や態度がぞんざいではなく、礼儀が正しい事、雑ではなく念入りに行われていることを意味しています。
尊敬語
敬語表現で話す方が、聞く方の動作や状態に対して敬意を込める言葉が尊敬語です。「言う」の尊敬語は「おっしゃる」になります。「先生がおっしゃられた」「社長はそのようにおっしゃっている」のように表現します。
そもそも尊敬とは、その人の人格を認め尊いものとして敬う事、業績などを優れたものとして認め敬う事を意味しています。
文語
文章や文学の世界で使われる言葉遣いを文語と言います。文章語や書き言葉とも言います。日本では明治時代になるまで、書記言語として、文語体と呼ばれている文体が使用されていました。文語体とは、文語を使われて書かれた文章形式のことを言います。文語は平安時代の文法が基礎となって発展しました
口語
文語が書き言葉であることに対して、話し言葉を口語と言います。口語は、話したそのままを言葉にしたものと考える人もいますが、正確には、話したことを元にして作った話し言葉に近い文体のことを言います。つまり、「言う」の敬語の例文を表現したものは、口語と言う事になります。
文語と口語は、書き言葉と話し言葉の違いと考える人もいますが、実際には古い言葉と新しい言葉ということになります。
「言う」の敬語の例文
「言う」の敬語には、前述の表現がありますが、文語での敬語表現もあります。ここでは、それぞれの敬語表現について、文語での「言う」の例文とともに解説します。
謙譲語
敬語の謙譲語では、「言う」を「そのように申す」などの表現で使用します。この「申す」を文語の敬語表現での謙譲語にすると「まうす」になります。つまり「そのように申す」は文語の敬語では「さやうにまうす」となります。また、「まうす」と同じ使い方で「きこゆ」もあります。その場合は「さやうにきこゆ」となります。
丁寧語
敬語の丁寧語は「言う」を「そのように言います」のように使用します。この「言います」を文語の敬語表現での丁寧語にすると「はべり」「さうらふ」になります。つまり「そのように言います」は文語の敬語では「さように言いはべり」「さように言いさうらふ」と表現します。
尊敬語
敬語の尊敬語は、「お~する」が基本となりますので、「言う」の尊敬語は「おっしゃる」になります。「先生がおっしゃられた」のように表現します。「おっしゃる」を文語の敬語表現での尊敬語にすると「のたまふ」や」「おはします」になります。つまり「先生がおっしゃられた」は「師のたまふ」や「師おはします」と表現します。
「言う」の敬語表現
「言う」の敬語表現として、「おっしゃる」があります。似た表現として「言われる」がありますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。「おっしゃる」と「言われる」について解説します。
おっしゃる
「おっしゃる」は「言う」の尊敬語です。相手に敬意を込めた言葉になります。尊敬語ですので、自分ではなく相手に対して使用します。
また、よく使う言葉として「おっしゃられる」がありますが、尊敬語の「おっしゃる」と尊敬を表す助動詞である「られる」となり、二重敬語になってしまいます。二重敬語は同じ種類の敬語が二個以上含まれていもので、間違った表現になります。
言われる
「言われる」という言葉は、敬語表現だと勘違いしている人もいますが、「言う」の敬語ではありません。むしろ、目上の人に対して使ってはいけない表現になります。「言われる」という言葉が、被害をこうむっているようにも受け取られ、適正な言葉遣いになりません。
「言われる」自体は、ワ行五段活用の動詞の未然形「言わ」に助動詞の「れる」がついた表現です。
相手別「言う」の敬語の例文
「言う」の敬語表現は、誰と会話するかによっても変ってきます。身内の場合と社長や上司や部下の場合でも違います。また、同じ「言う」の敬語でも、誰に伝えるかによっても変わります。ここでは、それぞれの立場ごとの「言う」の敬語表現について解説します。
身内
自分の家族や兄弟など身内と会話する際に、敬語を使う事は基本的にありません。冗談半分で「お母さまがのたまっておられた」や「お父さんがおっしゃってましたよ」と使用する事はあります。敬語表現はほとんどの場合は、身内のことについて、第三者に話すときに使います。
例えば、学校の先生や会社の上司らの目上の人に自分の身内の話をする場合は、「うちの父が申しておりました」「兄がそのように言います」のように、へりくだる謙譲語か丁寧語の表現にします。
社長
社長に対して敬語の「言う」を使用する場合は、「今期の事業報告を申し上げます」のように、自分をへりくだる謙譲語を使います。
取引先で自社の社長を紹介する際には「社長の〇〇と申します」と、社長に対して謙譲語の表現を使うこともあります。社長がいない席で社長を褒める、または、社長が褒めていたことを伝える場合などに「社長がそのようにおっしゃっていました」という表現を使います。
部下
部下に対して「言う」の敬語を使う上司は少ないですが、丁寧語の「言います」「言ってましたね」などの表現を使う事があります。また、取引先などに部下を紹介する際に「部下の田中と申します」と、謙譲語の表現としての「言う」を使う場合もあります。状況に応じて「言う」という言葉の敬語は変化します。
「言う」をうまく伝えよう
「言う」だけでは一つの単語ですが、前後の文章や状況によって、さまざまな意味に変化します。また、「言う」の敬語表現は尊敬語・丁寧語・謙譲語として存在し、文語表現としても存在します。
「言う」という言葉は日常的に使用されていますが、その実は時制や伝える相手方、話す人の立場がいろいろと考慮する必要がある言葉です。
「言う」という言葉をしっかりとマスターして、ビジネスシーンや文語表現で使ってみましょう。また、マスターする事で、「言う」の表現方法が広がっていきます。状況に応じた「言う」をうまく相手に伝えてみましょう。