「させてもらう」の敬語での使い方
「~する」の接客での敬語は「~していただく」になります。「~していただく」は「~してもらう」「~させてもらう」の意味の補助動詞で、相手の動作をありがたく受け取る気持ちを表す謙譲表現です。
明治時代に発展した使い方で、現在は頻繁に使われる言葉です。「~してくださる」のような尊敬語よりも最近は使用頻度が高いと言われています。
敬語を正しく使う
「~させていただく」と混同しないことが大切です。「~させていただく」の動作をしている人は上の立場の人になります。「~させていただく」の動作をしている人は立場が下の自分になります。
例えば、「お話させていただく」と「お話していただく」では、前の文は自分が話しているときに使う言葉であり、後の文は上の立場の人が話しているときに使う言葉なので、はっきりとした違いがあります。
「~させていただく」の動作をしている人は立場が下の自分になります。
「~させていただく」とは謙譲語
「~する」の意味の補助動詞で、自分の行為を相手にゆるしてもらう意味の謙譲語になります。関西の言葉の「~させてもらう」が敬語化されたのが由来です。ビジネス用途としてよく使われます。
尊敬語
そもそも尊敬語とは何でしょうか。尊敬語とは、相手の人格を認め、敬う尊敬の気持ちを表す言葉遣いです。
相手をリスペクトしているという気持ちを言葉で表現しており、社会生活を円滑にする役割があります。
社会生活の潤滑油
たとえ心の中では違う気持ちを持っていても、言葉の上では尊敬語を使うことが日常生活においては必要です。
言葉の使い方ひとつで、トラブルも起きれば、良好な関係を保つこともできるので、敬語は対人関係の潤滑油といえます。
過剰敬語を改める
しかし敬語と言えども、過剰な使い方をするとかえって失礼になります。嫌味に聞こえてしまったり、空々しく、不自然さを与えることになります。
正しい使い方をしてこそ、社会生活の中で敬語がその効果を与えます。
尊敬語の基本
尊敬語の基本は、相手側を高めることです。相手そのもの、また話題にしている第三者の行為(動詞と動作性の名詞)、ものごと(名詞)、状態(形容詞)を高める表現で伝えます。
例えば、
・忙しい→お忙しい
・美しい→お美しい
・立派→ご立派
のような使い方になります。
「させていただく」は一般型の尊敬語になります。「お(ご)~になる」などで表現されます。
謙譲語
尊敬語が相手の行為、ものごと、状態について相手を立てて、高めるのに対し、謙譲語は、自分の行為、ものごとについて、低める(へりくだって)ことによって相手を高めます。
「お~頂く」は、謙譲語の中の一般型の使い方です。
「させていただく」
ビジネスシーンでよく使われる「~させていただく」は謙譲語です。いろいろなシーンで使える便利な言葉です。相手の行為による恩恵を受けた自分を低めて相手を高めています。
丁寧語
「させてもらいます」「させてもらいました」は丁寧語です。ですますを付けることで丁寧語になっています。
します、させますも丁寧語です。決して失礼な言葉ではないものの、接客などで使う場合は、聞いた人によっては失礼だと感じてしまう場合もあります。尊敬語や謙譲語を取り入れて伝えた方がよいときもあります。
させてもらうとさせていただく・させてくれるの違い
前述した話をわかりやすく説明すると、「させてもらう」と「させていただく・させてくれる」の違いがわかるとおもいます。ここではこれらの言葉について詳しく説明していきます。
共通点と違い
「させてもらう」も「させていただく」も相手の動作の恩恵を受けています。「させてもらいます・させてもらいたいです」なら丁寧語になり、「させていただきます」なら、自分をへりくだった言い方になり、謙譲語になります。
「させてくれる」であれば「させてくださる」にして尊敬語として、相手の動作をありがたく受け取る表現になります。
「させてもらう」の例文
「させてもらう」に「ですます」をつけ、丁寧語にした例文をあげてみましょう。
・のちほどお電話をかけさせてもらいます
・会議にてご報告させてもらいます
・たて替えさせてもらいました
電話をお電話、報告をご報告にすることで、「させてもらう」を使うだけでもより丁寧になります。特に失礼な言い方にはならないのではないでしょうか。
「させてもらう」の言い換え
前述の「させてもらう」の例文を「させていただく」の例文に言い換えてみましょう。
謙譲語にしてみると雰囲気が変わります。
・のちほど電話をかけさせていただきます
・会議にて報告させていただきます
・立て替えさせていただきました。
と、謙譲語にすると「私のような未熟なものが発言することを許してほしい」という低姿勢が際立ちます。あまり丁寧すぎるとかえって不自然になるので、「お」や「ご」は取り除きました。
「させてもらう」は失礼なのか
「させてもらう」は「です」や「思います」をつければ丁寧語になるので、失礼ということは本来ありません。しかし、接客時や立場が上の方に対して使う時は、少し気をつけたい言葉です。
かなり年上のきちんとされた方などは、謙譲語で伝えたほうが無難といえます。人によっては、気持ちよく受け取ってもらえない場合もあります。
また、丁寧すぎることが不自然な場面もありますし、人によっては堅苦しいと感じる場合もあります。
より丁寧に使った方がよさそうな場面では、「させて頂きます」の言い方にして、相手の人の年代が若く、親しみをこめてもよさそうな場面では「させてもらう」を丁寧語にしてみればよいのではないでしょうか。
人や場面によって使い分けてみることをおすすめします。
間違った使い方
今どき「させて頂く」はよく聞く言葉です。テレビでアイドルや若い俳優もよく使っているのをみかけます。
そんなとき、「お仕事をさせて頂く」が一番よく聞く言葉です。受恵表現といい、恩恵を受けているときに使う謙譲語です。この場合、仕事を受けるという恩恵を受けています。相手の許可や同意を得て恩恵にあずかる場合に使われます。
けれど、例えば「反省させていただく」や「反省させてもらう」とは言いません。反省は相手からの恩恵ではなく、自業自得の追い込まれた状況なので、「反省いたします」が正しい表現です。
「させてもらう」の使い方
他にも「させてもらう」の他の使い方をあげてみましょう。少し言い方を変えるだけで印象はだいぶ違ってきます。
何かをさせてもらうときは、了承を得ることが必要になる場合が多いのではないでしょうか。
「させてもらってもいいですか?」とお尋ねする形を使ってみてはどうでしょう。やわらかい言い方になるので、失礼には当たらないのではないでしょうか。
また別の言い方として、「させてもらってもよろしいですか?」とより丁寧に伝えてみても悪くないのではないでしょうか。ここでも了承を得る必要がある場面で使うことになりますが、これなら年上の人や立場の上の人に伝えても失礼にならないと思われます。
メール
メールでは顔が見えないやり取りなので、なるべく丁寧に失礼のない伝え方の方が無難です。文章がずっと残りますし、トラブルを招かないためにも正しい敬語を使う必要があります。
そのためメールでは、「~させて頂きます」のように謙譲語を使うのが相応しいのではないでしょうか。
話し言葉としては丁寧すぎると感じる場面があるとしても、文として残る言葉は気をつけて伝えるほうが良いでしょう。
時と場合によって言葉を使い分ける
敬語の使い方は間違えるとかえって失礼にあたり、気を付けたいものですが、基本をしっかり把握していれば心配することはありません。
言葉遣いは、時と場合によって、丁寧すぎておかしく感じたり、フランクすぎて失礼になってしまうということがあります。
臨機応変に使い分けて、社会生活を送る上での潤滑油としての敬語を利用することを心がけてみましょう。