「拝見いたしました」の意味
「拝見いたしました」という言葉は主にビジネスシーンでよく使われており、どの場面でも立派な敬語表現として認められています。これは主に「見る・見せてください」と言う際に使われる敬語表現となり、特に話者が自分の立場をへりくだらせて使用する「謙譲語表現」となります。
「拝見いたしました」の読み方
「拝見」の読み方になりますが、これはそのまま「はいけん」となります。日本語には当て字や造語などの「特殊な読み方をする漢字」がありますが、この「拝見いたしました」という場合の読み方は「はいけん」だけをインプットしておいてかまいません。
相手別「拝見いたしました」の使い方
敬語表現というのは特にビジネスシーンで頻繁に使われる言葉になりますが、それぞれの場面や相手によって、いろいろな使い分けがなされます。とにかくいつでも「相手・場面に適した敬語表現をすること」が大切で、そのためのボキャブラリを増やしておくことが大切です。
謙譲語表現
「拝見いたしました」という表現は敬語表現の中でも謙譲語表現となり、先述のように「話者が相手に対してその立場や姿勢をへりくだらせておき、相手に対して自発的に敬意を示す敬語表現」となります。
この謙譲語表現というのは主に尊敬語とは正反対の敬語表現となるため、特に注意が必要です。尊敬語の場合は「相手の言動に対して敬意を示す敬語表現」となりますが、この謙譲語は「自分の言動を修飾する敬語表現」となるため、この「相手の言動」と「自分の言動」を修飾するという点に明確な違いが見られます。
尊敬語
尊敬語表現というのは先述のように、特に「相手の言動に対して敬意を示す敬語表現」となるため、謙譲語表現とは対照的な敬語となります。「話者が一方的に相手に対して敬意を示す敬語表現」として一般的に知られているため、主にビジネスシーンで使う言葉・表現としては最適の表現となります。
丁寧語
丁寧語表現というのは主に「です・ます」を接尾辞に付けて表現する敬語表現であり、ビジネスシーンや日常生活を問わず、非常に多くの場面で使われるメジャーな表現となります。
そのため多くの敬語表現を扱う際でも、この丁寧語表現を使うことによって「場面に即さない場合」が出てくるため、丁寧語・尊敬語・謙譲語の表現を区別する際には、日頃からその場面分けを的確にしておくことが重要となります。
上司
上司から部下に対して言葉を使う際には、この「拝見いたしました」という表現は適切ではありません。先述のとおり、この「拝見いたしました」という言葉は謙譲語表現となるため、そのまま上司が部下に対して使った際には「上司が部下に対して敬意を示す形」になってしまいます。
そのため上司が部下に対して「拝見いたしました」という意味合いの旨を伝える際には、単純に「確認しました」、「受領しました」、「了解しました」などと、「その文面・書面を受け取った内容を確認した」という別の表現に置き換える必要があります。
目上
目下の人から目上の人に対して「見た・見ました・読みました」などの旨を連絡する際には、この「拝見いたしました」という表現をそのまま使ってかまいません。謙譲語表現による「部下から上司への敬意を示した敬語表現」がそのまま伝えられることになるため、特に問題はありません。
「拝見いたしました」の例文
日本語や外国語を学習する際には、例文や会話での表現をインプットして覚えたりと、実践的な学習方法が非常に効果的になります。この例文を作成する場合には、まず例文そのものにいろいろな状況・条件・環境などを設定しておき、そこで覚えるべき言葉を組み合わせる形で覚えることがベターでしょう。
・彼の作品を拝見いたしました。
・先日その資料を拝見いたしました。
・試験解答と模範解答は、すでに拝見いたしました。
拝見いたしましたが
「拝見いたしましたが」という表現も「拝見・拝見いたしました」という言葉を使う際には非常によく使われる表現となるでしょう。この場合は「○○が」という言葉が付くため、英語でいうところの「but」の意味合いが含まれ、その後述では逆説の意見提示が想定されます。
・その資料を拝見いたしましたが、いまいち腑に落ちません。
・彼らの論文内容を拝見いたしましたが、これだけでは彼らの主旨がわかりません。
・その国の議定書を拝見いたしましたが、彼らの議決においては、その国の未来は確証されないでしょう。
資料を拝見いたしました
「資料を拝見いたしました」という表現もビジネスシーンは非常に多く使われる表現であり、また大学や講演会などの公式な場所においても、皆が使う日常用語として多くの場面で見掛けられます。
・彼らが提出してくださった資料を拝見いたしました。
・今度、新しく出版される辞書の説明資料を拝見いたしました。
・新しい発明内容が記載されている研究資料を拝見いたしました。
「拝見いたしました」は二重敬語なのか
よく「拝見いたしました」は二重敬語なのかという疑問が持ち掛けられますが、結論から言えばこれは二重敬語です。二重敬語というのは一般的に「ワンセンテンス・1つの表現に2つ以上の敬語が含まれていること」を言い、この場合は「拝見」という言葉と「いたしました」という言葉がそれぞれ敬語となって二重敬語となります。
「拝見」というのは「見る」という言葉の謙譲語表現(敬語表現)となり、「いたしました」という言葉も「する」という言葉の謙譲語表現「いたす」という敬語が含まれることにより、それらをまとめて二重敬語として扱われます。
一般的に違和感なく使われていればOK
先述で二重敬語についてご紹介しましたが、それでもこの「拝見いたしました」という言葉・表現はビジネスシーンの多くの場面で普通に使われています。
その理由は、その言葉・表現を受け取る相手にとって特に不快なイメージ・感覚を与えることがなく、また言葉の響き・ニュアンスとしても特に不自然さがないため、使ってもOKとされていることに起因します。
このように、世間一般で使われている敬語表現には、「二重敬語でもその言葉が特に不快感を与えず、そのニュアンスもおかしくない」とされる場合には、多くの場面で普通に使われる場合が非常に多く見られています。
「拝見いたしました」の使い方
「拝見いたしました」という表現はすでに謙譲語による敬語表現として扱われ、それぞれの用途によってその形態を変えてきます。それではどのような場面においてどのようにその語形を変えるのでしょうか、その1つ1つを確認していきましょう。
敬語
特に敬語表現というのは「日常生活でもビジネスシーンでも使われるメジャーな表現」として知られますが、特にビジネスシーンで使われる敬語表現の場合は、その用途や場面によって「間違った使い方」を必ず避けることが求められます。
この敬語表現は、それぞれの言葉の用途によってまず語形の変化が独自に見られ、加えて場面・状況に変化によって、まったく別の言葉・表現に置き換えられることもあるため注意しましょう。
拝見させていただきます
「拝見させていただきます」という言葉もビジネスシーンで普通に使われており、この表現は「拝見します・いたします」よりもさらに丁寧な敬語表現として認められます。
・それではお送りいただきました資料を拝見させていただきます。
・その本の内容を拝見させていただきますと嬉しいのですが。
・展示物の説明書を拝見させていただきたく存じます。
拝見します
「拝見します」という言葉は、ビジネスシーンで使われる敬語表現としてはあまりにもスッキリしすぎている表現に取られますが、しかしこれも丁寧語表現による立派な敬語となります。
・それでは送っていただきました資料を拝見します。
・説明書を拝見します。
・あなたの家内を拝見します。
・鞄の中身を拝見します。
・今回のご計画内容を拝見します。
拝見いたします
「拝見いたします」という表現は「拝見いたしました」の現在形の表現となるだけで、今回ご紹介しています「拝見いたしました」の意味合い・用法とほぼ同じ内容となります。
・その資料を拝見いたします。
・お送りいただいた荷物の中身を拝見いたします。
・これからあなたの持ち物を拝見いたします。
この現在形の敬語表現の場合は特に「これから拝見します」というケースが多く見られ、「まだその内容を見ていない」という背景設定が前提となることが多いでしょう。
拝見させてください
「拝見させてください」という表現は文字どおりに「拝見します・拝見いたします」という言葉の依頼形の表現方法となります。
・どうかその鞄の中身を拝見させてください。
・できましたら、当時に配布された資料を拝見させてください。
・ぜひ、同時代資料として、そのユーチューブの内容を拝見させてください。
拝見させていただいてもよろしいでしょうか
「拝見させていただいてもよろしいでしょうか」という表現は「拝見させてください」という場合のさらに上級の敬語表現となるため、この場合は非常に改まった場面において使われる敬語表現となります。
・お送りいただきました資料を、今から拝見させていただいてもよろしいでしょうか。
・少し、この館内の様子を拝見させていただいてもよろしいでしょうか。
・クラブ活動の様子を彼らと一緒に拝見させていただいてもよろしいでしょうか。
「拝見いたしました」と「拝見しました」の違い
「拝見いたしました」と「拝見しました」の違いの違いについてですが、大きな違いは「拝見いたす」と「拝見する」という点にあります。
先述しましたが、「いたす」というのは「する」という(話者の)行動をへりくだって示す謙譲語表現となるため、普通に「する」という意味合いで表現する「拝見しました」という場合よりもさらにへりくだった丁寧な表現となります。
「拝見いたしました」の英語表記と意味
「拝見いたしました」という言葉を英語に直す場合、それぞれの英単語の意味合い・用法に配慮した上で以下のようにピックアップされます。
・I saw(見た、拝見した、拝見いたしました)
・see(会う、見る、拝見、拝見いたしました)
・I have seen(見ました、会いました、拝見いたしました)
・We have recognized(確認しました、見ました、拝見いたしました)
・We have checked(チェックした、確認しました、拝見いたしました)
・I have confirmed(確認しました、拝見いたしました)
・collation(照合、確認、拝見いたしました)
・check(チェック、確認のサイン、拝見いたしました)
・comparison(照合、確認、拝見いたしました)
「拝見いたしました」の英語表現と意味(1)
先でご紹介しました「拝見いたしました」の英語表記を参考にして、「拝見いたしました」の英語の例文をいくつかご紹介します。
・I saw the contents of the paper he wrote.
「わたしは彼が書いた論文の内容を拝見いたしました。」
・I saw a scene where she comes out of my house.
「彼女が自宅から出てくる場面を拝見いたしました。」
・I have confirmed my master’s thesis.
「修士論文を拝見いたしました。」
「拝見いたしました」の英語表現と意味(2)
先述しました「拝見いたしました」の英語表現に引き続き、さらに具体的な「拝見いたしました」の例文をご紹介します。
・I saw a master’s thesis on the economic institution that she submitted, but there are many places that I can not quite convincing about overlooking the current American situation.
「彼女が提出してくださった経済機構に関する修士論文を拝見いたしましたが、現在のアメリカの世情を俯瞰する上では、いまいち納得できない箇所が多数あります。」
・I confirmed the contents of the protocol of that country this morning.
「その国の議定書の内容を今朝、拝見いたしました。」
「拝見いたしました」の意味と用法を確認しましょう
いかがでしたか。今回は「拝見いたしました」の使い方・例文・二重敬語なのか|相手別と題して、「拝見いたしました」の使い方・例文・二重敬語なのか|相手別についての詳細情報のご紹介をはじめ、いろいろな場面で使われる「拝見いたしました」の用例をご紹介しました。
「拝見いたしました」という表現はビジネスシーンでも日常生活でも非常に多くの場面で使われており、特に「拝見」という言葉の使い方が非常に一般的であるため、つい丁寧語表現として認識している人は多く見られます。
丁寧語・尊敬語・謙譲語の使い分けをしっかり識別しておき、それぞれの場面・状況において正確に敬語表現の区別ができるよう日頃から注意しておきましょう。