敬語表現の重要性
社会に出れば、この敬語表現をどれだけ正確に使えるかということについて、さまざまな場面で評価されます。
きちんとした敬語を使うことができなければ、それだけで「敬語もきちんと話すことができないのか」などと低評価を受けることがよくあり、またそれだけで出世に響いてしまうことさえあります。
敬語の種類と使い分け
先述で「敬語の正しい使い方」による社会からの影響についてご紹介しましたが、敬語表現というのは基本的にビジネス用語として必須の表現として認められます。そのため、誰でも会社に就職し、その後も安定してサラリーマン生活を送って行くためには、この敬語表現を正しくマスターすることが大切で、日頃からその練習をすることが必須となるでしょう。
主に敬語表現には「尊敬語」、「謙譲語」、「丁寧語」の3種類があり、これらの敬語を場面・状況によって使い分け、その場その場で正しい敬語の使い分けがなされます。この敬語表現を適切に使うことによって、その後の自分のステータスを上げていくことにさえつながるでしょう。
常用語の敬語表現ほどむずかしい
また敬語表現に配慮する場合、「日常でよく使っている言葉・表現ほど、それぞれを敬語表現に変換することがむずかしい」とよく言われます。たとえば今回ご紹介する「行く」の尊敬語は何かと問われた場合、どれだけの人が正確に答えられるかについては疑問が残ります。
「行く」という言葉は日常用語の中でも有数とされる程に頻繁に使われる言葉であるため、ついそのまま「行く」という語形をもって敬語表現をする場面でも使ってしまうことがあります。
この場合でも、「行く」の適切な敬語表現の使い分けをきちんとすることが大切で、特に改まった公式の場面においては、どれだけこうした「日常用語でも適切に敬語に置き換えることができるか」がポイントとされます。
「行く」の尊敬語をはじめとする敬語表現
さて、「行く」という言葉の尊敬語表現についてご紹介していきますが、まず尊敬語というのは「相手の言動に対して敬意を払う形容表現」となるため、「自分の言動」については修飾しません。この尊敬語と謙譲語の鉄則をまず把握しておき、「行く」という言葉の適切な敬語表現を心得ましょう。
「行く」という言葉は古くから日本において使われてきており、奈良時代の万葉集や平安時代の古典資料においても普通にこの「行く」という内容を意味する言葉が散見されています。この場合、まず「行く」という言葉が誰の言動なのかを見極めておき、その上で「その行動の主格に見合った敬語表現」を心掛けることが大切になります。
「行く」の謙譲語
次に「行く」の謙譲語表現についてですが、謙譲語というのは一般的に「相手と話者の関係や立場に関係なく、話者が自発的に自分の言動をへりくだらせて敬意を示す敬語表現」となるため、尊敬語表現の場合とはまったく違ってきます。
先述しましたように、謙譲語というのは尊敬語が「相手の言動への敬意を示す敬語表現」であるのに対し、「自分の言動」をへりくだらせて表現する敬語表現となり、尊敬語の場合とはまったくその形容の主格が逆になります。
参ります/伺わせていただきます/お迎えに上がります/伺わせていただいてもよろしいでしょうか
基本的に「行く」の謙譲語表現では上記のように使い分けることができ、特に「参る」と「伺う」という言葉が基本となって使用されます。
「行く」の丁寧語
「行く」の丁寧語表現についてですが、丁寧語というのは基本的に「です・ます」を接尾辞に付けただけの、きわめて単純・簡単な敬語表現として認められます。そのため、非常に多くの場面で使われやすい敬語表現となり、この場合でも「行く」の丁寧語が散見されることになるでしょう。
この丁寧語の扱い方では、尊敬語や謙譲語のように「行動の主格・修飾される主格」を問わなくてよいため、単純にその語尾に「です・ます」を付ける敬語表現としてインプットしておいてかまいません。
「行く」の尊敬語
さて、先述では「行く」の尊敬語、謙譲語、丁寧語に関する一般常識・知識についてご紹介しましたが、ここからはさらに具体的に「行く」の尊敬語・謙譲語・丁寧語の使われ方についてご紹介していきます。
まず「行く」の尊敬語ですが、この場合は先述しました「尊敬語の性質」によって、相手の行動に含まれる「行く」への修飾がなされます。
・おいでになられる
・いらっしゃいます
・お行きになります
・行かれます
・お出掛けになられます
基本的に上記の言葉・表現は「行く」の尊敬語として扱われますが、この中でも「おいでになられる」と「いらっしゃいます」などがメインで使われます。
尊敬語は「相手の行動」に敬意を示す
おさらいになりますが、尊敬語というのは「相手の言動」に対して敬意を示す言葉・表現となるため、その修飾する言葉に「自分(話者)の行動」が含まれることはありません。謙譲語では「自分の言動」をへりくだらせて表現する(修飾する)ため、この点がまず尊敬語と謙譲語の決定的な違いになります。
この尊敬語と謙譲語の区別がほとんど付かない人も多く見られるため、この上記の点をまず踏まえておき、あらゆる場面で適切な尊敬語・謙譲語の表現を区別して使えるようにしておきましょう。
いらっしゃる
先述でもご紹介しましたが、「行く」の尊敬語の中で最も使われる表現がこの「いらっしゃる・いらっしゃいます」という表現になります。
・課長が本日いらっしゃいます。
・社長は現在、○○館にいらっしゃるご予定です。
・本日におきまして、現地へいらっしゃった皆さまには、誠に深く感謝申し上げます。
「いらっしゃる・いらっしゃいます」という言葉の意味には、「行く・来る」という意味合いの他にも、「現在そこにいる」という存在を示すだけの場合でも使われる表現となるため、その使用範囲は他の表現よりもさらに多くなります。
おいでになる
「おいでになる」という言葉はそもそも「御出でになる」と漢字表記され、その字面どおりに「○○から出て行かれる・出掛けられる」といった「行く」の意味合いを示します。この場合でも「行く」と「来る」の両方の意味合いを兼ねそろえる用法があるため、場面・状況に合わせた上で適切な敬語表現を心掛けましょう。
・課長が本日、このミーティングルームへおいでになられます。
・社長は本日、上海へおいでになられます。
・皆さまがおいでになられたことは、わたくしども、生涯忘れません。
行かれる
「行かれる」という言葉も「行く」の尊敬語として認められますが、現代で使用されている敬語表現においては、「行かれる」という言葉が単発で使用されることはあまり見られません。この場合は、「出て行かれる」や「○○を連れて行かれる」などと別の言葉を付随させて使われる場合が多く見られます。
・○○さまが、お子さまを連れて出て行かれる。
・キャンプ地に地図を持って行かれる。
・財布を取りに行かれる。
お行きになる
この「お行きになる」という言葉も先述の「行かれる」の場合と同じく、現代用語ではあまり使われる機会は少ないでしょう。この場合も「御(お)」という尊敬語特有の接頭辞が付けられ、「行く」という表現を敬語表現に置き換えて修飾されています。
・○○さまは今朝早く、アメリカへお行きになられました。
・あの人はパンフレットを持参してお行きになられます。
・さぁ、遠くの地までお行きなさい。
この「お行きになる」という言葉は基本的に古典用語として多く使われてきた言葉・表現であるため、昔は日常用語として「なさい」や「ください」などの言葉と一緒に使われていました。
尊敬語は基本的に「なさる・される」となる
尊敬語を使う際にポイントとなるのは、この「○○なさる・○○される」といった特有の形容表現をすることにあります。つまり、あらゆる文書においてこの「○○なさる・○○される」が使われている場合は、その修飾はすべて尊敬語表現となります。
相手の行動への敬意が払われる
先述しましたように、尊敬語表現というのは「相手の言動に対する敬語表現」となるため、その修飾する内容に「自分の言動」を含むことはできません。
この「相手の言動」に対する言葉や表現を敬語表現に置き換える際に、先述の「なさる・される」などの言い回しが使われ、それぞれの表現がすべて相手の行動への修飾語として扱われます。
古典での「行く」の尊敬語
先述でもご紹介しましたが、「行く」という言葉は日本において非常に古くから使われていた日常用語であったため、さまざまな場面で使い分けられる「行く」の敬語表現も非常に広い範囲で散見されています。
おはします/まします/おられる/いませられる/いまします/召される/お召を受ける/上がられる/上(のぼ)られる/参られる/参る/お伺いになる/いでます/いまそかり
他にも「行く」の敬語表現が古典資料の中で散見されますが、どの場合でも「その行動の対象・主格に合わせた敬語表現」が取られており、その主格の違いによって尊敬語と謙譲語との使い分けがなされています。
謙譲語は「自分の言動」をへりくだらせる
これもおさらいになりますが、謙譲語表現というのは基本的に「自分の言動」をへりくだらせて表現する際の敬語表現となるため、尊敬語の性質とは(主格の見極めからすれば)まったく正反対の敬語表現となります。
上記を踏まえた上で「行く」という言葉を敬語に直す場合には、「参る」と「伺う」という言葉が基本的に使われる表現となり、この2つの言葉を基準とした上で、場面に合わせてさまざまな形容がなされることになります。
参ります
「行く」の謙譲語として従来はこの「参ります」という言葉・表現が非常に多くの場面で使われていました。
これは日本古来より「行く」という言葉が「参る」という言葉に置き換えられて使われていたことが日常的な用法であったため、その風習に習って現代でも同じように使われていることに起因します。
丁寧語は「です・ます」を付けるだけで簡単
先述でもご紹介しましたが、丁寧語というのは基本的に「主格に配慮して言葉・表現を使い分けることがない」という性質を持ち合わせており、主に「です・ます」を接尾辞として扱うだけで表現することができるため、比較的簡単に表現することができます。
「行く」という言葉を丁寧語に直す場合には「行きます・行かせていただきます」などと、その語尾に「ます」という言葉を付ければそれでOKです。
「行く」の尊敬語の例文
日本語でも外国語を学ぶ際にも、その覚えるべき言葉や表現を実際に使って覚えるという「実践的な学習法」が実に効果を発揮してくれます。
・彼らは彼女の付き添いで○○大学へ行きます。
・課長は本日お忙しい中、代官山へお出かけになられます。
・社長は現在、専用車にて目的地までいらっしゃいます。
例文を使って実践的に言葉や表現を学ぶ場合には、その例文の中でいろいろな場面や状況を設定しておき、自分なりに楽しみながら言葉の意味合いや用途をインプットしていくことが効果的です。
「行く」と「伺う」の尊敬語の違い
先述でもご紹介しましたが、「伺う」という言葉は基本的に「行く」の謙譲語表現となるため、主に話者が「自分の言動」をへりくだらせて表現する場合に使われる言葉になります。
・本日に、お伺いさせていただいてもよろしいでしょうか。
・弊社から貴社へ、今週末に2人の社員を伺わせていただきます。
・それでは明日中に伺わせていただきます。
このように、「伺う」の動詞の主格は必ずその話者側(または話者の関係者)となり、「行く」という言葉を「伺う」に置き換えることによって、その相手への敬意を示す表現とします。
「行く」の英語表記と意味
「行く」という言葉を英語に直す場合、それぞれの英単語の意味・用法に配慮した上で以下のようにピックアップされます。
・go(行く、向かう、発信する)
・ahead(向かう、前進する、行く)
・proceed(前進する、赴く、行く)
・grow(赴く、向かう、行く)
・visit(訪れる、行く、赴く)
・come(来る、参る、行く)
・leave(去る、残す、行く)
・be(いらっしゃる、いる、ある)
・pass away(消える、滅亡する、行く)
「行く」の英語表現と意味(1)
先でご紹介しました「行く」の英語表記を参考にして、「行く」の意味合いを含めた英語の例文をいくつかご紹介します。
・The president is coming to Daikanyama today.
「社長が本日、代官山へいらっしゃいます。」
・The section chief will go to this garrison while he is busy.
「課長はお忙しい中、この駐屯地まで足を運ばれます。」
・We would like to express my gratitude to everyone who came for today.
「本日、お越しいただきました皆さまには、誠に感謝申し上げます。」
「行く」の英語表現と意味(2)
先述しました「行く」の英語表現に引き続き、さらに具体的な「行く」の例文をご紹介します。
・Please use the pamphlet that I gave you the other day as a coupon ticket when you bring a child until this customer gets headed from this hotel.
「このホテルからお客さまが向かいのレストランとまで子どもを連れて行かれる際には、ぜひ先日にお渡ししましたパ
「」ンフレットをクーポン券代わりとしてお使いください。」
・When the president visits us from your company, please use our private car by all means.
「社長が貴社から弊社へお越しの際には、ぜひ弊社の専用車をご使用ください。」
「行く」の英語表現と意味(3)
先述の具体的な「行く」の英語表現に引き続き、今度はいろいろな場面で使われる「行く」の例文をご紹介します。
・Because the word “go” is a very frequently used everyday term, when converting to honorific expression, it is sometimes felt that it is quite difficult.
「「行く」という言葉はきわめて頻繁に使用される日常用語であるため、敬語表現に変換する際にはそれなりの難解を感じることがあります。」
・In the respected word of the word “go”, it is sometimes possible to convert the original form at all.
「「行く」という言葉の尊敬語表現では、その原形をまったく変換させられることがあります。」
敬語表現によってまったく語形が変わる場合がある
言葉によっては、敬語表現をすることによって「元の形の言葉のあり方」からまったくその語形を変えてしまう場合があります。この「行く」という表現にしても、使う場面によってはその語形を変えます。
足をお運びになられる/赴かれる/向かわれる/いらっしゃる/参られる/ご参拝される/訪問される/おられる/来られる/おはします(古典)/腰を上げられる
このように、「行く」の意味を持つ言葉でも敬語表現をすることにより、「行く」という語形からそのあり方をまったく変えてしまい、その場面に見合った形に変えられます。
「行く」の正確な尊敬語表現を覚えましょう
いかがでしたか。今回は「行く」の尊敬語・謙譲語・尊敬語・例文・伺うとの違い|古典と題して、特に「行く」の尊敬語・謙譲語・尊敬語・例文・伺うとの違いについての詳細情報のご紹介をはじめ、いろいろな場面で使われる「行く」の尊敬語表現についてご紹介しました。
「行く」という言葉は日常用語としてもとても頻繁に使われる表現であるため、かえって尊敬語表現に置き換える際には、それなりのむずかしさを感じることがあるでしょう。またその敬語表現(特に尊敬語表現)では、「行く」という原形の言葉のあり方から、まったく違った形での表現になる場合があります。
このように、日本語の活用では「場面や行動の主格によって、まったく違う語形に変化させてその敬語表現を示す場合」が多くあるため、それぞれの言葉や表現の活用方法を正確に把握しておくことが大切です。