「目を通す」の敬語・類語・例文・ビジネスでの使い方|謙譲語

ビジネススキル

「目を通す」の敬語

「ざっと見る、ひととおり見る」の味を持つ「目を通す」という言葉は、「書類に目を通す」などの表現で、ビジネスシーンでも頻繁に使われます。

ただし、「目を通す」は「ざっと読む」の意味からして軽い印象が否めません。目上の人に対して、「ざっと読んでおいてくれませんか」とお願いするのも失礼ですし、相手に渡された種類などを自分が「ざっと読む」のも、これまた失礼です。

ですから、「目を通す」は、上司や取引先など目上の人に使う場合、敬語に言い換えをしなければなりません。日本語には、謙譲語、尊敬語、丁寧語といった3種類の敬語があり、「目を通す」にもそれぞれの言い方があります。相手に合わせて使い分けましょう。

謙譲語

謙譲語とは、自分がへりくだる表現のことで、自分を下げることで相手を敬う気持ちを表します。では、「目を通す」を謙譲表現すると、どのような言葉になるかご存知ですか。結論から先に言うと、「目を通させていただく」は間違いです。

「目を通す」の謙譲表現は、「拝読させていただきます」あるいは「拝見させていただきます」となります。シチュエーションや相手によっては堅苦し過ぎると思える場合もあるでしょう。そんなときは、「読ませていただく」でも問題ないでしょう。

尊敬語

相手を高める尊敬語で「目を通す」を表現すると、「ご覧いただく」「ご一読いただく」となります。「ご高覧ください」「ご高覧賜る」なら、より丁寧な印象です。シーンによっては、もう少し砕けた印象のある「ご確認いただく」「お読みいただく」でも問題ないでしょう。

既述したように、「目を通す」は、目上の人には使えません。「お目を通していただけますか」「目を通してくださいますか」などの表現は、一見、丁寧で問題ないようにも感じられますが、これは間違った表現ですから、うっかり使わないよう注意してください。

丁寧語

「目を通す」を丁寧な言い方にすると、「目を通してください」となりますが、前にも触れたように、「目を通す」の言葉自体、上司や取引先とのやり取りでは使えません。もちろん、同僚や部下に対してなら、「目を通してください」でも大丈夫です。

「目を通す」に「お」をつけて「お目を通していただけますか」と表現しても、目上の人には使えません。しかし、「目を通す」ではなく、よく似た言葉「目通し」に「お」をつければ丁寧語として使うことが可能です。「お目通しいただけますか」といった表現なら、敬語として成り立ちます。

「目を通す」の類語

「目を通す」には「ざっと見る」といったニュアンスがあります。目上の人に対して使うのが失礼に当たるのは、「目を通す」という行動に大雑把な印象があるからですが、類語に置き換えると、また違った印象になります。「目を通す」の類語はたくさんありますが、ここでは、その一例をご紹介します。

一読する

「一読する」の意味は、「最後までひととおり読むこと」「一度ざっと読むこと」です。目上の人に書類などを読んで欲しいとき、「ご一読いただけますか」といった表現をします。

「一読」は「ざっと読む」のニュアンスを含みますが、「ご一読ください」は、しっかり読んで欲しいときにも使えます。「ざっとでいいので読んでください」の表現にすることで、言われた側の負担が軽くなるため、あえてこうした表現にすることがあります。

斜め読みする

「斜め読みする」とは、「本や書類などをパラパラとめくってざっと読む」「ところどころ飛ばしながら文章を読むこと」「全体の流れをつかむために、細かい部分を飛ばしてサーッと流し読むこと」などの意味をもっています。

よく似た言葉に「走り読み」「拾い読み」があります。前者は、「全体を詳しくは読まず、急いでひとおり読むこと」を意味しています。後者は、「文章の大事な部分だけを選んで読むこと」です。

通覧する

「通覧する」の意味は、「本や書類などの全体に最後までひととおり目を通すこと」です。例えば、「人気コミック全55巻を通覧した」といった使い方をします。また、「今年の卒業生の作品を通覧すると〜」などと、本や書類以外のものにも「通覧する」は使われます。

「通覧する」によく似た言葉として、ここで紹介している「目を通す」「一読する」「斜め読みする」のほか、「総覧する」「一覧する」などが挙げられます。

「目を通す」の例文

「新聞に目を通しながら朝食をとるのが私の日課になっている」
「部下から提出された報告書にざっと目を通した」
「ネットでチラシに目を通してからスーパーに買い物に行った」

自分の行動に対しては、「目を通す」の言葉はそのまま使うことができます。上記は一例ですが、「ざっと読む」「一読する」「ひととおり見る」など「目を通す」の意味を考えれば、使えるシチュエーションは相当数にのぼるでしょう。生活のさまざまなシーンで使える言葉です。

「目を通す」のビジネスでの使い方

ビジネスのシーンでは、書類やメールなどに「目を通す」機会にあふれています。それだけに「目を通す」という言葉を使う頻度も高いのですが、うっかり間違った使い方をすると、上司や取引先の機嫌を損ねたり、失笑を買うことにもなりかねません。ビジネス時、「目を通す」はどのような表現で相手に伝えればいいのか、シーンごとに例文を挙げて解説しましょう。

依頼をする場合

ビジネスでは「目を通す」ことを誰かに依頼するシーンにしょっちゅう遭遇します。報告書、企画書、パンフレット、メールなど、「目を通す」ものはさまざまあり、そして、部下、同僚、上司、取引先、顧客と、依頼する相手のいろいろです。ここでは、相手別に「目を通す」の使い方を紹介します。

上司・取引先・顧客などに

「この報告書をご覧いただけますでしょうか」
「説明書をご一読ください」
「お渡ししたパンフレットをご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます」

前にも触れましたが、「目を通す」は、そのままの言葉は目上の人に対して使うことができません。したがって、上記のような言い換えをします。「ご高覧」は、より相手に示す敬意の度合いが高くなりますから、かしこまったシーンで使うといいでしょう。

「企画書をご確認していただけますか」
「レポートを読んでいただけますでしょうか」

上記は、「目を通す」の敬語表現の中でも、カジュアルな部類に入ります。相手との関係性によっては、これくらいの表現でも構いません。

同僚や部下などに

同僚や部下に対してなら「目を通してください」と、ストレートな表現をしてもかまいません。部下になら「目を通しておきなさい」「目を通してくれたまえ」で大丈夫でしょうが、「目を通しておいてくださいね」などと言うほうが、丁寧な印象になります。

気心の知れた同期に対して「ご一読ください」「ご高覧賜りますよう」などと言うと、「堅苦しいやつ」といった印象を与えることもあります。丁寧な表現が必ずしもいいとは限りません。相手との関係性を考えながら、言葉を選ぶようにするのが正解です。

自分が人の書類などを読む場合

ビジネスシーンでは、自分が人に対して「目を通す」ことを依頼するだけではなく、自分自身が誰かから「目を通す」ことを依頼される場合もあります。そんなときには、どのような表現をするといいのでしょうか。

対目上の人

「部長のレポートを拝見させていただきます」
「社長の一代記を拝読させていただきました」

目上の人に対しては、間違っても「目を通させていただきました」などと言ってはなりません。「目を通します」などとストレートな表現はもってのほかです。上司や取引先の人などに対しては、自分の行動であろうが「目を通す」は使えません。上記の例文のように、「目を通す」を「拝見」「拝読」に言い換え、謙譲表現をするのが正解、失礼に当たりません。

対同等&目下の人

「明日までに君の企画書に目を通しておくことにするよ」
「あなたの報告書にさっそく目を通させていただきます」
「もらった調査書を一読させていただく」

同僚や部下などに、自分と同等、あるいは目下の人に対しては、上記の最初の例文のように「目を通す」はそのまま使うことができます。しかし、「いただきます」と謙譲語をつけたり、「目を通す」の丁寧語としての言い換え表現「一読させていただく」を使えば、丁寧な印象を相手に与えます。カジュアルか、少しフォーマルか。どちらがいいかは、相手の関係性などを考えて決めましょう。

「目を通す」は相手の関係性考えて使用しましょう

ここまでを読んで、日常的によく使う「目を通す」は、単純なようで、とても奥深い言葉だということがおわかりになったでしょうか。

相手によっては言葉自体が使えず、別の言葉に言い換えなくてはならない複雑さを持っています。最初は「面倒」と感じるでしょうが、セオリーを覚えれば簡単です。使用方法の決まりをいったん覚えてしまえば、あとは臨機応変、相手やシチュエーションに合わせてアレンジし、自由自在に使いこなすことができます。「目を通す」は、ビジネスシーンで使う機会がとても多い言葉です。セオリーをしっかり覚えておきましょう。

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