「とりあえず」を敬語にするときなんて言うの?
社会人に慣れてくると、ついつい普段使いの言葉が出てきてしまうことがあります。普通に話していたつもりなのに、周りの空気がなんだかおかしい。そうならないために、普段から言葉には気を付けましょう。今回はつい使ってしまう、とりあえずという言葉を、ビジネスシーンでどう使っていくかを紹介します。
ひとまずと言い換えてみる
「とりあえず」という言い回しは便利なので、うっかり使ってしまいます。口癖になってしまう方も多いこの言葉は、敬語としては使えません。会話だけならまだしも、ビジネスメールで使ってしまうと「この人は敬語が使えないのかな」という印象を与えてしまいかねません。ではどうしたらよいのでしょうか。
「とりあえず」に代わる言葉を覚えてしまうとよいでしょう。皆さんも一度は聞いたことある「ひとまず」という言葉は厳密には敬語ではなく副詞になりますが、「とりあえず」という言葉に比べると相手からの印象は格段に良くなります。
想像より堅苦しさがない言葉なので、日常会話で使っても違和感が少ないです。今日から「とりあえず」と言いそうな場面で「ひとまず」を使ってみてください。
「とりあえず」と言いたくなったらどう言う?
とりあえずの代わりとして、ひとまずという言葉があると書きました。今度は様々でシーンに合わせて、とりあえずと言う言葉を使いたくなったら、どんな言い回しをすると相手にすんなり伝わるのかを紹介します。
ビジネス会話で不快にさせない言い回しとは?
皆さんが日常会話で「とりあえず」と言う時はどのような場面が多いか、思い出してみてください。おそらく今すぐできる手段や一番先にやるべきことを差して言う場合が多いのではないでしょうか。そのような場合に相手に印象良く伝える例をいくつか載せます。
・とりあえず見積もりを出します。→まずお先に見積もりをお出しします。
・わかり次第とりあえず連絡します。→わかり次第至急にご連絡します。
「とりあえず」ではなく、相手に伝わりやすく良い印象を与えてくれそうな言葉を選ぶのがポイントです。「お先に」と言われると、すぐにやってくれそうだという印象になります。「至急に」という言葉も、すぐに動いてくれそうな好印象を与えることができます。
「とりあえず」と言う言葉は、ビジネスの場面においては残念ながら印象を良く捉えてもらえないので、堅苦しい敬語とまではいかなくても、相手がイメージしやすい言葉を使うといいでしょう。
メールで使いたい「とりあえず」の書き方
メールは文字として後々まで残ってしまう分、正しい言葉遣いや敬語ができていないとその印象がずっと残ってしまいがちです。うっかりと「とりあえずご報告まで」などと書かないように、好印象を持たれる書き方をしましょう。
・とりあえずご報告までに。→ひとまずご報告いたします。
・とりあえずご案内します。→略儀ながらご案内いたします。
会話と違って文面で伝える時は少し難しい熟語を使うのも問題ありません。「略儀」という言葉を覚えておくと、敬語としてメールだけではなくお礼状にも使えます。「ひとまず」という言葉もひらがな表記である分、柔らかな印象を与えるので自分の言葉にして問題ないでしょう。
取り急ぎはアリ?
「取り急ぎご報告まで」も、よく聞く言葉の一つです。「とりあえず」よりも響きが良さそうな印象がありますが、これは敬語なのでしょうか。答えはNOで、「取り急ぎ」は「とりあえず」の代わりには使えません。
ここ数年、個人のブログで多用されている方も多くなりました。しかし敬語ではないので、ビジネスの場面で使うのは控えた方が良いでしょう。使うとすれば、とても親しい間柄同士などの場合に留めます。それでもビジネスの場面で使う時はその後に丁寧なフォローを心がけると良いでしょう。
こんな時は?お急ぎメールの送り方って?
急ぎでメールを送らないといけない。まさに、とりあえずと言いたくなるような状況ですがこんな時に使える文例などを紹介します。急ぎといえども、メールは文章に残ってしまいます。読んだ相手がその時は何も感じなくても、後々見返したらなんだか不快になったということにならないようにしましょう。
すぐに報告!そんな時の最初の一文
ビジネスのシーンでは、一分一秒を争う場面も多々あります。相手にすぐに連絡をしなければならないことも多いです。状況や相手の方の性格にもよりますが、電話は相手の時間を割いてしまうことがあるので、報告だけの要件でしたら文字で残るメールの方がベターです。
相手からすぐに連絡してほしいという場合なので、「とりあえず」という言葉を「ひとまず」や「一旦」「一度」などの言葉に置き換えて、報告する旨を書きましょう。
報告だけの急ぎのメールでしたらなるべく簡潔にまとめ、時候の挨拶などももちろん不要です。「一度」という言葉も敬語ではありませんが、「とりあえず」よりは相手にも良い印象で伝わります。
とりあえず報告してからはどうする?
最近ではビジネスのシーンでも、LINEなどのSNSでやり取りするという方も増えてきました。会社のメールよりも迅速に相手と連絡が取れる便利なツールとして使っていくと良いです。一度とりあえずの報告のメッセージを送り、相手から問い合わせがあった時こそ、敬語を意識して丁寧な対応を心がけていきます。
報告した内容がなぜそうなったのか、どういったプロセスだったのかなど、とりあえずの後にしっかりとフォローができると、相手の印象も良くなるでしょう。SNSが普及したからこそ、迅速で真摯な対応をしていけるようにしましょう。
どんな敬語がいい?お礼の伝え方
ビジネスのシーンで接する人はお友達ではありません。何かをしてもらった時に返すお礼は、少し大袈裟なくらいでちょうど良いと言う方もいます。なるべく早くお礼の気持ちを伝えましょう。
感謝の言葉は心を込めて伝えよう!
「取り急ぎご報告まで」と同じ程度に、「取り急ぎお礼まで」という言葉もよく聞きます。もちろん敬語としては適切ではありません。ではどう伝えたらよいでしょうか。
そもそもお礼というのは、取り急いでするものではありません。「取り急ぎお礼まで」と言われると、あまり良い気分ではないです。お礼を受け取る立場になって、「相手からこんなふうにお礼があったらうれしいな」という伝え方を考えてみましょう。
電話や対面ができないならメールで伝える
相手にお礼を伝えるには、面と向かった状態や電話が最適な手段であるうえに、堅苦しい敬語を意識しすぎずに済みます。ですがビジネスでは、なかなかそこまで時間を割けないのが現状ではないでしょうか。そんなときに使う敬語の文章を考えましょう。
相手の顔や表情がわからない分、相手を敬った丁寧な言葉で伝えるのが原則です。メールでの敬語としてよく使われる、「略儀」や「末筆」といった表現がここでも役に立ちます。いくつか例を載せます。
・略儀ではございますが、まずはお礼かたがたご挨拶申し上げます。
・甚だ末筆ではございますが、まずはメールにてお礼申し上げます。
敬語には丁寧語や謙譲語など、いくつか種類があります。ここでは自分の立場を相手より下げるという意味の謙譲語が上手く使えると、相手にも心地よく文面が伝わります。
「一応」って敬語?「とりあえず」と何が違う?
とりあえずと同じくらいに使ってしまう言葉に、一応という言い方があります。意味もよく似ているように感じるこの言葉ですが、果たしてビジネスのシーンでは使えるのでしょうか。
使い方が違う?「一応」ってどんな意味?
「一応」と「とりあえず」。意味が似ているように感じますが、実はかなり違う言葉です。「一応」と「とりあえず」を含む文章の、それぞれの言葉を入れ替えると、まったく意味が違う文章になってしまいます。
いち おう [0]-わう 【一往】 ・-おう 【一応】〔本来は「一往」〕 十分といえないが、最低限の条件は満たしているさま。とりあえず。ひとまず。ひと通り。 「 -話はうかがっておきます」 「 -準備はできた」 「 -もっともだ」
そもそも「とりあえず」はどんな意味?
「一応」という言葉自体にも「とりあえず」の意味は含みますが、違いがあることがおわかりいただけましたでしょうか。
例えばショートケーキを作るのに、スポンジを作るのが面倒だからとホットケーキで代用しても、最後はしっかりと生クリームとイチゴを買ってきて乗せたものは「一応」です。生クリームはあるけれど苺が売ってなかったから仕方なく違う果物を載せた場合が「とりあえず」です。
両方とも同じショートケーキですが、相手がショートケーキと言えば苺のケーキという思いが強い方の場合、苺でないケーキを見た時にガッカリしてしまうでしょう。これが「一応」と「とりあえず」の違いです。
とりあえ ず とりあへ- [3] [4] 【取り敢▽えず】〔取るべきものも取らずに,の意から〕 ① 十分な対処は後回しにして暫定的に対応するさま。なにはさておき。 「 -これだけはしておかなければならない」 「 -お知らせ申し上げます」 ② 将来のことは考慮せず,現在の状態だけを問題とするさま。さしあたって。 「 -倒産はまぬがれた」 → さしあたり(補説欄)
「一応」も敬語ではありません!
日常の中でもたとえば、お店でわからないことを尋ねた際に「一応こちらになります」などと言われてしまうと、その店員に不信感を感じてしまいます。ビジネスでも「一応」や「多分」など、曖昧さがあるものは嫌がられてしまうことがあります。曖昧な契約を結ばれると、こちらも嫌な思いをします。
敬語というのはそもそも相手が受け止めて悪い気分にさせないことが第一条件となる言葉です。そういった観点からも「とりあえず」はもちろん「一応」や「多分」という言葉も敬語とは言えません。
今日から「とりあえず」を止めよう!
社会人になって最初の頃はとても気を遣うことも多い敬語。時が経ち社会人であることに慣れてくる時が、本当に敬語を使える人間かどうかを見極められる時期です。そのためには普段の生活からある程度言葉を改めていく必要も出てきます。
いきなり友達同士で敬語を使うのは相手も驚いてしまいがちなので、不快にならない言葉を使うようにしてみましょう。
今回は「とりあえず」と言う言葉が敬語でないだけではなく、ビジネスのシーンで不向きであることについて紹介しました。
「とりあえず」という、つい使ってしまいがちな言葉を普段から使わず、別の言い方で言い換えるようにしてみます。「とりあえず」をやめれば、社会人になってからのネットワークがさらに広がっていくことになるでしょう。