「なるはや」の意味と使い方・敬語・いつまでか・失礼になるのか

ビジネススキル

「なるはや」の意味と使い方

「なるはや」という言葉をご存知でしょうか。ビジネスシーンでたまに耳にする言葉です。「なるはやで」と言われると「急がされているのかな」とか、「特に期限はないけど急ぐという意味なのかな」とか、いろいろ考えてしまいます。「なるはや」にはどんな意味があって、どんな使い方をするものなのでしょうか。

「なるはや」は略語なのか?

食パンは主食用パンの略語、ファミレスはファミリーレストランの略語、スマホはスマートフォンの略語、DIYはDo It Yourselfの略語です。世の中にはいろんな略語がありますが「なるはや」もその一つです。「なるはや」は「なるべく早く」を略した言葉です。

「なるはや」の本当の意味は「なるべく早く」です。なぜそんな短い言葉を略す必要があったのか疑問に思うところです。ところが「なるべく早く」と口に出して言ってみると確かに「なるべく」の「べく」の部分が言いにくいような気がしないでもありません。

「なるはや」はビジネス用語?

学生のときに「なるはや」を耳にする機会はあまりないのではないでしょうか。

学校を卒業して社会に出るといろんな言葉を耳にします。「学生のときには知らなかった」「こんな言葉は会社でしか使わないだろうな」と思う言葉に出くわすこともあります。「なるはや」もそんな言葉の一つです。

「なるはや」を最もよく耳にするシーンといえばビジネスシーンです。「なるはや」は急いでいて、なるべく早く何かをしてほしいときに使うビジネス用語です。

「なるはや」は失礼なのか

あまり馴染みのないビジネス用語「なるはや」ですが、「なるはや」という言葉は知っているという人が意外に多いです。ところが、いざ「なるはや」を使うとなると、「あまり使おうと思わない」とか「使ったことがない」と考える人が多いです。

中には「なるはやを使われると不快に感じる」という人や、「なるはやは失礼だ」という人もいます。「なるはや」は失礼な言葉なのでしょうか。

「なるはや」は敬語ではない

「なるはや」を見てみると「お願いします」とか「ください」などがついていません。「なるはや」は敬語ではありません。「なるはやが失礼だ」と考える人は「なるはや」という言葉が馴れ馴れしいと感じています。

「なるはや」は同じ会社の同僚や気心の知れた相手に「なるべく早くしてほしい」ということを伝えるための言葉です。「なるはや」を使える間柄ならそれでいいのですが、敬語を使う間柄の人には使わない方が無難です。

「なるはや」の代わりの言葉も考えておく

「なるはや」は便利な言葉ですが目上の人に使うと失礼になります。では、目上の人に「なるべく早く」ということを伝えるには、どのような表現をしたらよいのでしょうか。

「なるべく早く」と言うよりも「なるはや」と言った方が短いですし、言いやすいです。慣れというのは恐ろしいものです。「なるはや」を使い慣れている人の場合、相手が目上の人と分かっていてもつい習慣で「なるはや」と言ってしまいそうになります。

目上の人に「なるはやで」とうっかり言ってしまわないように、普段から代わりの言葉を用意しておくとよいでしょう。

「なるはや」を敬語で言い換えると

では「なるはや」を敬語で言い換えると、どんな言葉になるのでしょうか。目上の人に「なるべく急いでほしい」ということを言いたい場合、嫌味のない表現でスマートに伝える必要があります。そのためにはどんな言葉を使えばいいのか例文を見ながら考えていきましょう。

「至急」

「至急」は「しきゅう」と読みます。「至急」には、「とても急いでいる」とか「大急ぎ」という意味があります。「至急」も何かを急いでお願いしたいときに使う言葉ですので、「なるはや」の代わりに使うことができます。

「至急」を使った例文には次のようなものがあります。

・「至急の用件がございます。」
・「至急、お戻りください」
・「至急、ご返信お願いいたします。」

「至急」と書くと「なるはや」と書くよりもキチンとした印象の表現になります。「至急」と言うことによって、本当に急いでいる印象を与えることができますし優先順位の高い事なのだなと思ってくれます。

注意点は、「至急」と言うと「かなり急いでいる」というイメージを持たれてしまうことです。あまり乱発しない方が良いでしょう。「なるはや」よりも「至急」の方が急いでいる印象がありますので、本当に急いでいるときに「至急」を使いましょう。

「早急」

「早急」は「さっきゅう」または「そうきゅう」と読みます。「早急」には「非常に急いで」という意味がありますので「なるはや」に意味が似ています。「早急」も「なるはや」の敬語表現として使える言葉です。

「早急」を使った例文には次のようなものがあります。

・「早急にご対処をお願いします」
・「早急なご対応をお願い申し上げます」

「早急」も「至急」と似たような意味なのですが、どちらかというと「至急」の方が緊急性が高くて急いでいる意味が強いです。「早急」は「至急」とまではいかなくても、かなり急いでいるときに使います。

言い換えできない言葉

「なるはや」に意味が似ていても言い換えできない言葉があります。目上の人に使うべき表現ではない言葉や、相手の行動に対して使うべき表現ではない言葉です。意味が似ていると、「なるはや」を敬語で表現する場合に代わりに使ってしまいそうになりますので気を付けましょう。

「取り急ぎ」

「取り急ぎ」は「取りあえず急いで」という意味です。そしてこの「取りあえず」には本来、「取るべきものも取ることができない状態だけど」という意味があります。ですので「取り急ぎ」というと「まだ十分な準備ができていない状態で申し訳ありませんが、とても急いでいる用件なので」というニュアンスがあります。

「取り急ぎ」を使った例文には「取り急ぎご連絡いたします」などがあります。

急いでいるという意味では「なるはや」に似た言葉ですが、「取り急ぎ」は自分の行動に対して使うことが多い言葉です。相手の行動に対して「なるはや」の代わりに「取り急ぎ」を使うと、聞きなれない表現なので違和感を感じる人もいます。他の言葉で代用した方がよいでしょう。

「なるべく早く」

「なるべく」には「可能な限り」という意味がありますので、「なるべく早く」というと「可能な限り早く」という意味になります。

「なるはや」に意味が似ていますが「なるべく」という言葉は敬語ではありません。「なるべく」は「成る」に助動詞の「べし」(連用形)をつけたただけの言葉です。「なるべく早く」を目上の人に使うのは本来、マナー違反です。

ビジネスシーンで非常によく使われる言葉ですが、目上の人には使わない方が無難です。

「できるだけ早く」

「できるだけ」には「能力でできる範囲内で」とか「できる限界まで」という意味があります。「できるだけ早く」というと「全力で急いで」といったニュアンスになります。

「できるだけ」もビジネスシーンで非常によく使われる言葉ですが、「できるだけ早くお願いします」と上司に言うと、上から目線の言葉になってしまいます。同僚や目下の人に使うには問題ない言葉ですが目上の人には使わない方がよいでしょう。

お礼の言葉

目上の人に「なるはや」で対応してもらったら、すかさずお礼を言うのがマナーです。注意したいのは、お礼を言うときにも「なるはや」の代わりになる敬語を使ってお礼を言うということです。

「なるはや」の代わりになる敬語を使ったお礼には次のようなものがあります。

・「迅速なご対応ありがとうございました」
・「早急にご対処いただき、ありがとうございました」

丁寧にお礼を言って爽やかな印象を与えましょう。

「なるはや」を使う人の心理

「なるはや」を使う人はどのような心理で使っているのでしょうか。「なるはや」を使う心理には次のようなものが考えられます。

・真っ先に仕上げてほしい仕事ではないが、できるだけ早く取り組んでほしい
・期限が差し迫っているということを伝えたい

「なるはや」は「とにかく早くしてほしい」という意味を込めて使う人が多いです。

相手への配慮で使っている場合もある

ところが、相手への気遣いで「なるはや」を使っている場合もあります。

・「早くして」と言うとキツイので優しく伝えるため
・忙しそうにしているのでプレッシャーを与えたくない、遠回しに伝えるため

といった理由がそうです。

いずれにせよ「なるはや」を使っている場合は急いでほしいことに変わりありません。「なるはやで」と言われたらなるべく早く対処しましょう。

「なるはや」はむかつく言葉なのか

「なるはや」を目上の人に使うのはマナー違反ですが、「なるはや」があまり使われない理由は他にもあります。

まず、「なるはや」という言葉の響きがイライラするという理由です。「なるべく急いでお願いします」と丁寧に言われたとしても、人間あまりいい気がしないものです。ましてや「なるはやで」と言われると略語だし、せかされているし、横柄だなと感じる人もいます。

むかつく理由

また、実用面でむかつくと感じている人もいます。「なるはや」が実用面でむかつく理由には次のようなことが考えられます。

・「具体的でない表現だから」
・「優先順位が分からない」

「なるはや」がどれくらいかは人によって違う

「なるはや」という言葉が具体的でない表現で優先順位が分からないのは、「なるはや」の解釈が人によって違うからです。

・数時間以内
・今日中
・数日以内
・一週間以内

など、それぞれです。「なるはやがどれくらいの期間をあらわすか」という解釈は人によって違ってきます。

「なるはや」がむかつく人に

「なるはや」という言葉は曖昧な言葉です。それだけでは具体的な期日は分かりませんし、真っ先に仕上げるべき仕事なのかそうでないのかも分かりません。

はっきりと言うと角が立つと思ってあえて曖昧な表現で「なるはやで」と表現しても、受け取る人によってはむかつく原因になってしまいます。「なるはや」と言われるのが嫌な人には使わない方がよいでしょう。

では「なるはや」と言われるのが嫌な人に「なるはや」で仕事をお願いするときにはどのようにすればよいのでしょうか。

明確な期日を伝える

まず、「なるはや」の期間がどれくらいなのかが曖昧だという問題点を解消するために、期日をはっきりと示しましょう。

「期日は〇月〇日です」とか「〇月〇日までにお願いいたします」といった表現で伝えてあげます。「なるはや」と言われるよりも期日が分かっている方が、いつまでにどのくらいのペースで仕事を進めればいいのかが想像できますので安心できます。

優先順位をを伝える

急ぎの仕事を何件も抱えているときに、この仕事を「なるはやで」と言われても混乱してしまいます。急ぎの仕事が多すぎて、頼まれた仕事がどのくらい急ぎなのか判断しにくいからです。

「なるはや」の優先順位が分かりにくいという問題点を解消するために、ほかの仕事との優先順位をはっきりさせましょう。「〇〇の件よりも先にお願いします」などの表現で優先順位の判断基準を伝えてあげます。

「なるはや」の反対語

仕事には正しい時間認識と順位づけが大切です。〇月〇日までにはこの仕事を仕上げて、〇月〇日にあの仕事に取り組むといった正しい時間認識と、そのためにどの仕事を優先させるかという順位づけができると、合理的に仕事を進めることができます。

そのためには「なるはや」でやってもらう仕事とそうでない仕事をはっきりさせることが必要です。なんでも「なるはや」で仕事をお願いしていたら、かえって仕事の効率が悪くなってしまいます。

「なるはや」でない仕事をお願いする表現を日ごろから考えておくといいでしょう。

「急ぎではない」を表現するには

「なるはや」の反対の意味は「急ぎではない」です。急がないでいいということを相手に伝えるには、「時間があるとき」や「お手すき」を使うといいでしょう。

同じ立場の人に対しては「時間があるとき」を使って、「時間があるときで結構ですので、よろしくお願いします」といった表現をします。

目上の人に対しては「お手すき」を使って、「お手すきのときで結構ですので、ご対処お願いいたします」とか「〇〇の件について資料を添付しましたので、お手すきの際にご確認をお願いいたします」といった表現をします。

上手に対応すれば仕事の効率UP!

いかがでしたでしょうか。「なるはや」は認知度が高い割には実際に使ったことがないという人が多い言葉です。

「なるはや」という言葉の使い方は人それぞれです。早くしてほしいということを優しく伝えるために使う人もいれば、ただ単に早くしてほしいというアピールのために使う人もいます。

そして「なるはや」は曖昧な言葉です。ある人にとっては「なるはや」は一日という意味だったり、ある人にとっては一週間という意味だったりします。「なるはや」でと言われたら、期日を確認したり優先順位を教えてもらったりして上手に対応しましょう。

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