「快復」と「回復」の違い・使い分け方法
パソコンやワープロで「かいふく」と入力して、漢字に変換すると、「快復」「回復」「開腹」などが変換候補として挙げられます。
「開腹」については、「腹を開く」ことであり、「快復」や「回復」とは用途の違いが明確ですが、「快復」と「回復」とでは、どちらを使うべきか迷ったことが一度くらいはあるのではないでしょうか。
ここでは、「快復」と「回復」の使い方の違いについてご紹介します。
「快復」と「回復」の違い
「快復」と「回復」は、病気や故障などが元の状態に戻ることを指して使われますが、両者の明確な違いをきちんと理解せずに使っている人も多数見受けられます。
「快復」は「病気がなおること」、「回復」は「悪い状態になったものが、もとの状態に戻ること」「もとの状態に戻すこと」という意味です。
「快復」に関しては、病気の「かいふく」に関してのみ使える熟語だといえます。
天気
「天気がかいふくするでしょう」というときは、「回復」を使います。
「天気は西の方がからかいふくし、快晴となるでしょう」という場合、「快復」を使ってもよさそうに思えますが、「快復」には、「病気が治る」という意味しかありません。
天気がだんだん良くなってくることを伝える「天気がかいふく」は、「回復」を使って、「天気が回復する」と表現します。
自動車など機械もの
自動車や機械などが壊れ、状態が復活した場合には、「機能がかいふくした」という表現を使う場合があります。このときの「かいふく」も「回復」を使います。
先にご紹介したように、「快復」は病気が良くなることを表現する際にか使うことができません。機能のかいふくは、迷うことなく「回復」を使うことになります。
病気
「病気のかいふく」では、「快復」と「回復」のどちらも使うことができます。
「快復」は「すっかり良くなった」ことを表現するときに使います。「快復して良かったね」といえば、相手が完治していることを示唆しています。
最悪の状態から徐々に良い状態に向かっている状態は、「回復」で表現します。「回復して良かったね」といえば、完治ではなくても、体の状態がよくなってきている、ということを示唆しています。
「快復」の意味と使い方
それでは、あらためて「快復」の意味と使い方を見てみましょう。ここまでご紹介した内容からすると、「快復」が使えるのは、ごく限られたシチュエーションといえます。
ここでは、あらためて「快復」を使う場合の意味を確認し、「快復」の使い方について、誤り例も含め、ご紹介していきます。
意味
「快復」の意味は、「病気がなおること」のみです。「病気」がなおることとされているものの、病気には怪我も含んでおり、「傷病がなおること」という意味だと解されます。
使い方
「快復する」が使えるのは、あくまでも「傷病がなおる」ことを表現する場合のみです。また、「なおりかけ」の場合は、「快復」という表現だと誤っていることになります。
「快復する」が使えるのは、「すっかりよくなった」「完治した」という場合のみで、「少し良くなってきた」「前よりはよくなった」「なおってきている」場合は、「回復」を使います。
「快復」の例文
使える状況としては少ない「快復」ですが、実際にはどのような使い方ができるのか、例文をご紹介します。
「快復」が、病気がなおることを表現することばなので、「快復」を使えるのはお見舞いの言葉などが多くなります。
ご快復
「ご快復」と丁寧語で言い表すのは、「快復するのは自分や身内以外の誰か」という場合です。主に、目上の人へのお見舞いの言葉として使われます。
【例文】
・〇〇様の一日も早いご快復をお祈り申し上げます
お見舞い言葉として「ご快復をお祈り申し上げます」を使う場合、「回復」を使っても意味としては誤りではありませんが、全快を望んでいるという気持ちを伝えるためにも、「快復」の方が相応しいとされています。
怪我
怪我をした相手に対して、「早く治ればよいね」という主旨を伝えたい場合も、「快復」が相応しい言葉となります。
少し良くなることを望んでいるわけではなく、完全に元の生活に戻れることを願っている、という気持ちを込めるため、「快復」を使うのが妥当です。
【例文】
・お怪我をされたとのことですが、早期に快復されることを願っております
・骨折したそうですね。早く快復すると良いですね
「快復」の類語
「快復」の類語には、多くの同義語・類義語があります。その中でも、「快復」の特徴ともいえる「病気がなおる」という意味のある言葉として、「治癒」「平癒」「快癒」「全快」「床上げ」などがあります。
これらの類語も、「快復」と同じ状況で使えるとは限らず、文章によってどの言葉を選択すれば、一番伝わるのかは考える必要があります。
また、ほかの類語についても、言葉を補うことで「快復」と同じ意味を伝えることもできます。
病気を治すことだけを意味する類語
「快復」と同じように「病気がなおる」ことだけを意味している類語をご紹介します。これらの言葉は、ほかの言葉を補完することなく「病気がなおる」ことを伝えることができます。
ただし、「快復」とそっくり同じ使い方ができるわけではありません。「ご快復をお祈りします」の「快復」の代わりに「治癒」が使えるわけではありません。「全快」を使うことはできます。
治癒
「治癒」は、「病気・けがなどが直ること」という意味です。
専門的には、治癒とは完全に元の状態に戻ったことを指します。 後遺症や再発の危険性があるが、生活に支障がなく暮らせる状態には、「寛解」という言葉を使います。
【例文】
・がんの治癒に向けて、医療チームが一丸となって治療計画を検討している
・小さな擦り傷だったので、短い期間で治癒するに至った
平癒
「平癒」は、「病気がなおること」の意味で使われます。会話の中で使われるよりも、文字として書いて使われることの方が多い言葉です。
「平癒」は、その意味自体が「”病気”がなおること」ですが、あえて「病気」という言葉も書き足して、使われることもあります。お守りやお札の文字として、目にしたことがあるのではないでしょうか。
【例文】
・病気平癒
・一服吞むとすぐ平癒する妙薬だ(夏目漱石「明暗」)
快癒
「快癒」には、「病気やけがが、すっかりなおること」という意味があります。完全に治ることを意味しているので「快復」と同義であるといえます。
【例文】
・難病が快癒したので、お祝いをしよう
・難しいと思っていたが、すっかり火傷が快癒したので、安心した
全快
「全快」は、「病気や傷が完全になおること」という意味です。「完全に治る」という意味で「快復」と同義といえます。言い換えても同じ意味の文章になります。
【例文】
・一日も早く全快してください
・退院したら、全快祝いをしましょう
床上げ
「床上げ」には、「長い病気または産後の疲労などから回復して、寝床を片付けること」という意味があります。また、病気から回復したお祝いのことを指して「床上げ」を使うこともあります。
【例文】
・全快して、床上げをした
・産後の床上げについて知りたい
治る
「治る」は、「病気やけががよくなって、もとの健康な状態に戻る」という意味であり、「快復」と同義語といえます。
しかしながら、会話の中で使う場合は、「なおる」という発音になり、「直る」と混乱しがちです。病に関する言葉を補完して伝えるのがおすすめです。
「直る」は「正常な状態になる、もとのよい状態に戻ること」という意味で、故障したものが修理によって元の状態に戻ることなどを表現します。
【例文】
・風邪が治る
・怪我が治る
病気以外も含め「なおす」意味を持つ類語
「快復」の類語として、「なおす」という意味も持つ言葉をご紹介します。
ただし、ここでご紹介する言葉は、「病気以外を治す」場合にも使えるので、「病気を治す」の意味であることが分かりやすいよう、ほかの言葉などを補完が必要な場合もあります。
回復
「回復」には、「もとのとおりになること」「もとどおりにすること」という意味があります。
病気がなおっていく過程を表現することもできますが、先にご紹介したように、「快復」とは決定的に意味が異なる部分もあります。
病や怪我が治っていく過程には、「回復」を使い、完全に正常な状態になり「治った」といえる場合は、「快復」を使います。
【例文】
・彼の病も、徐々に回復の兆しが見え始めてきた
・腕の怪我は、回復してきてはいるが、まだまだ全快には至らない
克服
「克服」は、「努力して困難にうちかつこと」「困難をのりこえること」という意味を持ち、直接「病を治す」という意味は持っていません。
「困難に打ち勝つ/乗り越える」という意味において、「治す」「治癒する」といった意味と同等に使われることがあります。
【例文】
・彼は子供の頃から悩まされてきた病をついに克服し、普通の生活を送れるようになった
・医者から宣告された半身不随を、不屈の精神で克服した彼は、素晴らしいとしか言いようがない
復調
「復調」には、「体のぐあいなどがもとの調子にもどること」という意味があります。「変調された信号波から原信号を再生すること」という意味もありますが、こちらは「快復」の類語となりえません。
「復調」も基本的に「体の調子」を意味しているので、病や怪我からの回復を表現しています。「もとの調子に戻る」という意味なので「快復」と同義ともいえます。
【例文】
・ようやく復調の兆しがみえてきた
・少し体を休めることができれば、復調するはずです
リカバリー
「リカバリー」は、「回復」「復旧」「とりもどすこと」という意味です。機械の故障がなおったときにも使うことができる言葉です。
「快復」の類語として使う場合は、病や怪我といった言葉も補完して、「治る」の意味で使っていることを明確にしましょう。
【例文】
・骨折からのリカバリーにはまだまだ時間がかかりそうだ
・手術直後は病室に戻らず、リカバリールームで一夜を明かした
同音異義語を使いこなす
「快復」と「回復」のような、紛らわし同音異義語を理解し、正しい使い方を心がけたいと考えている人には、「同じ読みで意味の違う言葉の辞典」をおすすめします。
同音異義語に出くわしたときに、さっと意味をひくことができ、正しい意味を理解するのに役立つことでしょう。
使い分けがわかりやすい解説もついており、また、類語による言い換えが可能なよう、それぞれの類語も紹介されています。
「快復」の敬語
立場の異なる人たちに、それぞれ「快復を願っています」と伝えたいとき、どのような敬語を使えば、相手に失礼にあたらないのでしょう。
取引先や上司などの「目上の人」に対して「快復」を使いたい場合の言葉遣い、同僚や後輩に向けて使う場合の言葉遣い、それぞれについてご紹介します。
目上の人につかう「快復」
取引先の担当者が入院した、上司が入院した、という場合には、直接お見舞いに伺うこともあれば、メールなどでまずお見舞いをすることなどもあります。
お見舞いの言葉として、「(かいふく)を祈る」という文章を使うことがあります。この「かいふく」は、文字で書く場合は「快復」を使うのが望ましいといわれています。
「回復」では、治っていく過程のことを指しているように受け取られることもあり、病の克服を望んでいるニュアンスが薄れます。「少しでも治っていけば良い」とも受け取れます。
一日も早い完治を願っている、ということを伝える意味で「快復」を使いましょう。目上の人に対しては、「ご」をつけて丁寧語にします。「ご快復」です。
【例文】
・一日も早いご快復をお祈りしています
・一日も早くご快復されますよう、心からお祈り申し上げております
同輩や目下に使う「快復」
同輩や目下の人に対して、お見舞いの言葉をかける場合は、必ずしも敬語を使う必要はありません。単に、「快復を祈ってるよ」ということもできます。
お見舞いの文言ということで、少し形式ばった言い方をするのであれば、同輩や目下の人であっても、丁寧語を使えば「大人の言葉遣い」になります。
【例文】
・一日も早い回復を祈ってます
・一日も早いご快復をお祈りしています
同音の言葉は意味をきちんと理解して使いましょう
「快復」には、読みが同じで意味まで似ている「回復」という言葉があります。
「なんとなく近い意味かな」という感覚で、あいまいなまま使ってしまうと、相手に真意とは異なる意味で伝わってしまう危険性があります。
同音類義語、同音異義語のある言葉は、自分が伝えたい意味が正しく相手に伝わるように、前後に言葉を補完したり、説明を少し加えるなど、工夫が必要になります。
伝えたい内容がきちんと相手に伝わるよう、言葉を選んだり、選んだ言葉を補足する言葉を加えたり、コミュニケーションには工夫を施しましょう。